1.NTT、大阪万博でIOWN Perfume起用し「3D空間伝送」(3.21 日経新聞)
NTTは21日、大阪・関西万博のパビリオンの概要を発表した。時空を超えて旅する「PARALLEL TRAVEL」(パラレルトラベル)をテーマに、3つの建物をツアー形式で巡る。開発中の次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用した未来のコミュニケーションの姿を示す。
光技術を使うIOWNは、遅延がほぼない高速大容量の通信を可能にする。テクノポップユニット「Perfume(パフューム)」を起用し、離れた場所にある空間をリアルタイムで再現する「3D(3次元)空間伝送」を披露する。
映像や音楽だけでなくパフォーマンスの振動も再現することで、離れていても同じ空間にいるような感覚を味わえる。同日、都内で会見した島田明社長は「立体感を感じ取れる空間を作り、新たなコミュニケーションを示したい」と述べた。
2.賢い生成AIの大幅値上げは避けられない、「月額課金」はもう限界だ(3.21 日経XTEC)
生成AI(人工知能)により高い利用料金を支払うほど、より賢いAIが利用できる――。推論時に投入する計算量を増やすほどAIが賢くなる「テスト・タイム・スケーリング」によって、2025年はこんなトレンドが生じそうだ。これに伴いユーザーは、複雑な料金制度に困惑することになるだろう。
アルトマンCEOはこの日、オープンAIによる大規模言語モデル(LLM)のリリース計画を明らかにした。同社は現在、一般的な用途に使うLLMである「GPTシリーズ」と、同社がCoT(Chain-of-Thought、思考の連鎖)モデルやReasoning(論理的推論)モデルと呼ぶ「oシリーズ」という2種類のLLMを提供している。今後数カ月中にリリースする予定の「GPT-5」では、2種類のモデルを統合し、1つのモデルであらゆるシナリオに対応できるようにすると明らかにした。
GPTシリーズなど一般的なLLMにおいてはこれまで、CoTと呼ばれる深い思考をLLMに行わせる場合は、ユーザーがプロンプト(指示文)に具体的な思考プロセスを記述する必要があった。それに対してCoTモデルは、LLMがプロンプトに反応する前にじっくり考えて、自らが行うべき深い思考プロセスを自ら考案して実行する。
3.ネット闇市場の主力商品が麻薬から10年で激変、半数占める「アクセス権販売」の正体(3.19 日経XTEC)
インターネットでは非合法の商品やサービスが多数売買されている。セキュリティー企業のトレンドマイクロは、売買を仲介するアンダーグラウンドマーケットを長年にわたって調査し、ここ10年間の変化をリポートにまとめて2025年3月上旬に発表した。それによると、取り扱われている商品には大きな変化が見られるという。一体、どのように変わったのだろうか。
リポートではまず、アンダーグラウンドマーケットのうち通常のWebブラウザーでアクセスできる、いわゆるサーフェスウェブ(Surface Web)の状況を分析している。ここでは、サーフェスウェブのアンダーグラウンドマーケットを「ネット闇市場」とする。
2015年の調査では、北米のネット闇市場で扱われている商品のトップは麻薬で62%を占めた。次いで、盗まれたデータダンプ(データの塊)が16%、データの窃取といった犯罪を目的としたソフトウエアであるクライムウエアが15%だった。武器(2%)や殺し屋への依頼(1%)もあったという。
ところが2024年の調査では大きく様変わりする。10年前とは異なり、麻薬などの違法薬物は見当たらない。代わって半数を占めているのが、アクセス権販売サービス(AaaS:Access-as-a-Service)である。アクセス権の販売者はイニシャル・アクセス・ブローカー(IAB)などと呼ばれる。
アクセス権販売サービスの「ヘビーユーザー」と見られるのがランサムウエア攻撃者グループだ。アクセス権販売サービスを利用すれば、脆弱性を悪用したりフィッシングメールを送信したりする必要がないので、その後の攻撃や脅迫に専念できる。
それでは、今までネット闇市場で扱われていた違法薬物などはどこで取引されているのだろうか。それらはダークウェブに存在する市場(ダークウェブ市場)に移行したようだ。ダークウェブとは、匿名化のためのTor(The onion router)など特別なソフトウエアがないとアクセスできないインターネット空間。
4.揺るがぬエリクソン・ノキアの壁、Open RANは停滞ムードを打破できるか(3.19 日経XTEC)
RAN(Radio Access Network)の仕様をオープン化することで、異なるベンダー製品を接続しながら携帯電話網を構築できるOpen RAN。ベンダーロックインの回避やコスト低減といったメリットがあるものの、相互運用性の確保や投資対効果の不透明さなどで課題を残し伸び悩んでいる。そんな停滞ムードを打破すべく、日本企業をはじめとした多くのプレーヤーが知恵を絞る。だがMWC Barcelona 2025では、Open RANでも存在感を示していたのはスウェーデンのEricsson(エリクソン)やフィンランドのNokia(ノキア)だった。既存大手ベンダーの「揺るがぬ壁」が見えた。
MWC Barcelona 2025会期中の2025年3月4日、Open RAN(O-RAN)の拡大に向けた施策や今後の展望を議論する「O-RAN ALLIANCE Summit」が業界団体のO-RAN ALLIANCE主催で開催された。同団体は移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)と協力しながら相互運用可能なRANの構築を目指している。
同団体が推進するOpen RANの最大のメリットは、通信事業者のベンダーロックイン回避だ。総務省が公表した「令和6年度版 情報通信白書」によれば、2023年における基地局の出荷金額ベースのシェアは中国のHuawei Technologies(ファーウェイ)、エリクソン、ノキアの3社で約8割を占める。Open RANがこの寡占市場に風穴を開け、既存大手ベンダーからの脱却を促すことが期待されている。中でも動きが活発なのが日本だ。
2025年2月には京セラが5G基地局事業への参入を発表した。同社はMWC Barcelona 2025会期中の3月3日、台湾Alpha Networks、韓国HFR、台湾Microelectronics Technology、韓国SOLiD、インドVVDN Technologies、台湾Wistron NeWeb Corporation(WNC)の通信機器ベンダー6社とOpen RANの普及を目指す業界団体「O-RU(Open Radio Unit) Alliance」を独自に立ち上げた。
5.AIの勝負は半導体が決める」、NVIDIAの次を狙うPreferred Networksの決意(3.17 日経XTEC)
Preferred Networks(PFN)は2014年の設立以降、グループ会社と共に日本のAI(人工知能)開発をけん引してきた。同グループはAIチップ「MN-Core」シリーズや大規模言語モデル(LLM)「PLaMo(プラモ)」など、ハードウエアからソフトウエアまで垂直統合でAI開発を手掛けている。
PFNは世界のAI開発状況をどう見ており、何を仕掛けていくつもりなのか。同社の岡野原大輔代表取締役最高研究責任者は「本当に勝負するのは半導体」と明言する。「全方位でチャンスをうかがっている」(同氏)としつつ、GPU(画像処理半導体)で絶対的な強さを持つ米NVIDIA(エヌビディア)の次の王座を10年スパンで狙う。
現在のAI開発はよくゴールドラッシュに例えられる。ゴールドラッシュでは「一番もうけたのは金を採掘する人ではなく、つるはしを売った人だ」という話が有名だ。
大規模な基盤モデルを大々的に開発しているビッグテック各社は、現在は採算度外視で巨額の資金を溶かしながら開発を続けているといわれている。利益を一番上げているのは、こうした企業につるはし、すなわちGPUを提供しているNVIDIAだ。ここを狙うPFNの戦略は理にかなっているといえる。
AIチップの用途は大きく2つある。AIモデルの開発時に行う「学習」と、学習済みのAIモデルを動かして結果を得る「推論」だ。AIチップとして広く使われているGPUはこの両方を行う。ところが現在のGPUは、推論時にメモリーバンド幅がボトルネックになって性能が上がらないという課題を抱えている。
PFNはここに勝機を見いだした。推論に特化し、独自の技術でメモリーバンド幅を大きく向上させたAIチップ「MN-Core L1000」でこの課題を解決しようとしている。生成AIによる推論処理を既存AIチップの最大10倍に高速化できるという。同チップの提供開始は2026年を予定している。
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