週間情報通信ニュースインデックスno.1464 2025/2/8


1.伊予銀行が次期勘定系システム開発の中止を検討、日立は滋賀銀行に続く痛手に(2.7 日経XTEC)
伊予銀行が日立製作所と進める次期勘定系システムの開発を中止する方向で検討していることが日経FinTechの取材で2025年2月7日までに分かった。現時点でプロジェクトの遅延は確実な状況だ。日立は滋賀銀行に続く勘定系システムの開発不調で、大きな痛手になる。

 複数の関係者が明らかにした。日立は「コメントを差し控える」(広報)としている。伊予銀行は2023年10月、次期勘定系システムの構築で日立と基本合意したと発表した。日立のオープン勘定系パッケージである「OpenStage」を活用し、稼働は2028年を見込んでいた。

 伊予銀行が独自に開発・保守する現行システムは、日本IBMのメインフレーム上で動作している。30年以上利用しているシステムであるため、技術面で老朽化が目立ち、システム人材の確保も難しくなっている。そこで、システム同士の結びつきが緩やかな「疎結合」のアーキテクチャーで社内外のシステムとも接続しやすいOpenStageを導入し、開発生産性などを高める狙いだった。

2.山梨県が全庁でローコード開発を導入し内製化、原課職員が課題を自己解決(2.5 日経XTEC)
山梨県は全庁規模でローコード開発ツールを導入し、原課の職員による内製化を推進している。現場が抱える課題を自ら解決できる体制づくりを支援し、業務の効率化を推進するためだ。

 全庁で導入している米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービス「Microsoft 365」のライセンスで利用できるローコード開発ツール「Microsoft Power Platform」を採用。2023年11月に全職員を対象に開発ツールを利用できる環境を導入し、講座などの教育・支援プログラムも始動させた。

 導入開始から現在までに約5000人いる全庁職員のうち1割以上が初級向け以上の研修を受講した。既に職員が開発した5〜6個の業務アプリケーションが稼働している。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も同時に導入し、一時的な運用も含めて50以上の業務を職員が自ら自動化したという。

 このため約5000人の職員に対して、初級向け講座の受講者は2023年度で600人弱、全3コースある講座の受講者は2カ年で延べ1200人程度とまだ一部に限られる。これまでに「アプリ開発を完結できるスキルを獲得した職員は10人程度だろう」(DX・情報政策推進統括官の新海直人主事)と見ている。ただし試作段階や開発途上のアプリ開発が数十あり、アプリ開発に取り組んでいる職員は増えつつある。

3.OpenAIと開発するAIエージェント、ソフトバンクGの孫社長は「AIの長期記憶」に期待(2.4 日経XTEC)
ソフトバンクグループ(SBG)と米OpenAI(オープンAI)が開発・販売で提携した企業用AI(人工知能)エージェント「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」。2025年2月3日に開催した発表会でSBGの孫正義会長兼社長は、クリスタル・インテリジェンスの特徴として「AIの長期記憶」を挙げた。

 クリスタル・インテリジェンスは企業内のあらゆるシステムやソースコードを学習し、経営の中核として自律的に業務を代行する。会議時のディベート相手やコールセンターの業務支援も担う。AIは企業データを秘匿するべく、個々の企業専用にカスタマイズした上で提供する。

 クリスタル・インテリジェンスがターゲットとする顧客は企業、特に大企業だ。「大企業には(AIが学習しやすい)良質なデータが大量にある」(孫社長)からである。また孫社長は「AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)は個人よりも先に企業、とりわけ大企業から始まる」「AGIを実現するには費用がかかり、それを払えるだけの財力があるのは大企業だ」という理由も語った。

 孫社長はクリスタル・インテリジェンスの紹介で「AIの長期記憶」の存在を強調した。オープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)も発表会において「今後、AIモデルにおいて長期記憶が重要になっていく」と発言した。従来のRAG(検索拡張生成)は、リアルタイムで情報を更新して最新情報を把握できる半面、コンテキストウインドーの長さに制約があるため短期記憶しか持てなかったとされる。

 クリスタル・インテリジェンスは過去の会議や交渉内容などを長期記憶として保存する。これにより、リアルタイムで更新した最新情報だけでなく長期記憶も踏まえた上で正しいアドバイスを出す。孫社長は「(長期記憶の実現で)プロンプトエンジニアリングが必要なくなる」とクリスタル・インテリジェンスへの期待を語った。

4.「KDDIのデータ資産がAIフル活用時代に価値を生む」、KDDIの松田次期社長が抱負(2.6 日経XTEC)
KDDIは2025年2月5日、松田浩路取締役執行役員常務が4月1日付で社長に就任すると発表し、高橋誠社長と松田取締役が記者会見を行った。次期社長となる松田取締役は「5G(第5世代移動通信システム)がいよいよ本格期を迎え、AI(人工知能)をフル活用する時代が訪れる。KDDIの稀有(けう)なデータ資産が先端AI技術によって新しい価値を創造する原動力になる」と抱負を語った。

 高橋社長は代表権のある会長に就任する。高橋社長は2018年4月から社長を務めていた。7年ぶりの社長交代となる。高橋社長は松田取締役を次期社長に選んだ理由として「6G(第6世代移動通信システム)ではなくAIの時代となってきた。通信単体だけではなく、遅延を抑えたAI時代の通信などを構築する必要がある。松田氏は技術に明るく、そして若い。新しいビジネス領域に挑むうえで適任ではないかと考えた」とした。加えて現在の中期経営戦略は2026年3月期までで、次の中期経営戦略は「新たな体制で実施することが望ましい」(高橋社長)。

5.NTTの2024年4〜12月期決算は3%増収も減益、NTTデータGが好調も通信収入が悪化(2.7 日経XTEC)
NTTは2025年2月7日、2024年4〜12月期連結決算(国際会計基準)を発表した。売上高に当たる営業収益は前年同期比3%増の10兆497億円、営業利益は6%減の1兆3992億円と増収減益だった。NTTデータグループのソリューション事業やNTTドコモのスマートライフ事業が好調で、「営業収益は4?12月期決算として過去最高を更新した」(島田明社長)。一方、携帯電話や固定電話での収入減などが減益要因になったという。

 セグメント別では主にNTTデータグループが占める「グローバル・ソリューション事業」が前年同期から2316億円の増収、389億円の営業増益となった。ソリューション事業は国内外ともに好調だったという。一方、NTTドコモやNTTコミュニケーションズなどで構成する「総合ICT事業」は484億円の増収に対し683億円の営業減益、NTT東西地域会社で構成する「地域通信事業」は267億円の減収、439億円の営業減益だった。

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