1.ノーベル化学賞受賞のAlphaFold2は、合成生命の時代を切り開いた(10.10 日経XTEC)
2024年のノーベル化学賞は、デビッド・ベーカー氏、デミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏の3氏に贈られた。ハサビス氏とジャンパー氏がディープマインドで開発したAlphaFold2(アルファフォールド2)は、「タンパク質の折り畳み」という科学界最大の難問の1つを解決した。
タンパク質は生命の基本要素だ。筋肉、血液、ホルモン、髪の毛など、ヒトの乾燥重量の実に75%がタンパク質でできている。タンパク質は体内にあらゆる形態で存在し、さまざまに重要な役割を担っている。たとえば骨同士をつなぎ合わせる靱帯や病原体を排除する抗体などだ。生物学に精通するための大きな第一歩は、タンパク質を理解することである。
AlphaFoldは深層生成ニューラルネットワークを使い、既知のタンパク質を学習させることで、DNA配列からタンパク質の立体構造を予測できるようにした。AlphaFoldの新しいモデルではアミノ酸残基の位置関係をさらに正確に推測できるようになった。
タンパク質の折り畳み問題を解決するのに必要だったのは、液体窒素を用いるクライオ電子顕微鏡法など以前からある専門的な手法ではなかったし、製薬や従来のアルゴリズム法の専門知識でもなかった。必要だったのは、機械学習とAIの専門知識と能力だった。AIと生物学が完全に一体化したのだ。
2.NTTコムが電話応対の回答案作成にtsuzumiを活用、生成AIでカスハラの発生を抑制(10.10 日経XTEC)
NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2024年10月9日、コンタクトセンターの電話応対に生成AI(人工知能)を活用するシステムのデモンストレーション(デモ)を行った。顧客からの問い合わせに対し、NTTの大規模言語モデル(LLM)の「tsuzumi」がリアルタイムで回答案を作成し、オペレーターに提示する。オペレーターの負担低減だけでなく、顧客が理不尽な要求や威圧的な言動をする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策として有効だ。
システムでは、コンタクトセンターの電話応対のやりとりを音声認識技術でテキスト化し、オペレーターにチャット形式で表示する。通話内容のテキストデータを受け取ったtsuzumiは、顧客からの問い合わせを認識すると、自動で回答案を作成する。回答案の作成時間は約5〜10秒だ。
3.建設分野で3Dプリンターやロボットの活用進む、働き方改革で高まる期待(10.11 日経XTEC)
人材不足や長時間労働といった深刻な課題が山積する建設産業。デジタル技術でそうした状況を乗り越えようと建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進む。東京国際フォーラム(東京・千代田)で開催中の「日経クロステックNEXT 東京 2024」で2024年10月11日、建設分野を取材する日経クロステックの専門記者が、3D(3次元)プリンティング技術とロボット技術を中心に建設DXの最新動向を紹介した。
建設3Dプリンターの活用動向については、日経クロステック/日経コンストラクションの坂本曜平記者が解説した。省人化や省力化、工期短縮などの効果が期待されている建設3Dプリンターは近年、着実に活用が増えてきている。建設業界の中でも特に活用が進んでいるのが土木業界だ。「印刷物」は集水升や歩車道境界ブロック、構造物の型枠などが中心だ。
建設ロボットの動向については日経クロステック/日経アーキテクチュアの星野拓美記者が、先進的な事例として大林組の耐火被覆吹き付けロボット、竹中工務店とアクティオの資機材搬送ドローン、鴻池組の4足歩行ロボットの3つをピックアップ。東京都内の建設現場や2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場工事で実際に使われている様子を交えながら、それぞれを紹介した。
4.パスワードは「複雑」より「長い」が重要、定期的な変更を義務付けてはならない(10.9 日経XTEC)
「設定するパスワードには、大文字・小文字・数字・記号の全てを使ってください」「前回設定してから6カ月が経過したので、パスワードを変更してください」――。Webサービスの多くが要求するこれらのことは、一見セキュリティーの強化に役立つように思える。
だが実は、セキュリティーの強度を下げる恐れがある要求なのだ。パスワードの常識はここ数年で大きく変わっている。Webサービスや認証サービスなどを提供する事業者はもちろん、利用者も改めて確認しておきたい。
パスワードに関するガイドラインは、世界中の組織や企業が公表している。その中で最も参照されているものの1つが、米国立標準技術研究所(NIST)の認証に関するガイドライン「NIST SP 800-63」である。
パスワードによるユーザー認証機能を提供する事業者に対して、SP 800-63が要求することの1つは、「パスワードに対して他の構成ルール(例:異なる文字タイプの混合を要求する)を課してはならない」である。多くのWebサービスが要求する、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせたパスワードはNGなのである。
異なる文字タイプを組み合わせればパスワードの候補が増えるので、強度が高まるように思える。だが、複雑なパスワードは必ずしも強力とは限らないとNISTは説明している。複雑さを要求された利用者は、極めて予測可能な方法で応じることが多いからだ。過去の研究で明らかにされているという。
それでは、パスワードの強度はどうやって担保すればよいのか。SP 800-63では、パスワードの複雑さではなく「長さ」で担保するよう推奨している。パスワードを単語ではなく文章にするのだ。いわゆる「パスフレーズ」である。
パスワードは定期的に変更したほうがよいのか――。こちらも以前から議論が続いているテーマだが、SP 800-63では「利用者に定期的なパスワード変更を要求してはならない」と断言している。定期的に変更させることで、パスワードの強度が弱くなる可能性があるからだ。
5.IDCが国内SD-WAN市場を予測、2028年には2023年の1.7倍に当たる251億円に(10.9 日経XTEC)
IDC Japanが、国内のSD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)市場規模に関する予測を発表した。2023〜2028年の年間平均成長率は11.2%で推移し、2028年の市場規模は2023年の約1.7倍に当たる251億1500万円になると予測している。2024年以降は、クラウドマイグレーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴うトラフィック増加などに対処するためのWANの見直しが、市場の成長をけん引するとの見立てだ。
同社によると、2023年の国内SD-WAN市場ではWANトラフィックの増加に対応するため、企業がSD-WANによるローカルブレークアウトをポイントソリューションとして導入する動きが続いたという。また特に大企業において、クラウドマイグレーションの促進やセキュリティー態勢の強化、運用の効率化を目的に、SD-WANの利用が進展した。
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