1.こじれるVMware問題、訴状と反論から読み解く「AT&T対ブロードコム」の全貌(10.3 日経XTEC)
VMware製品のライセンス変更問題を巡る騒動が、いよいよ法廷までもつれ込んだ。米国では通信サービス大手の米AT&Tが、米Broadcom(ブロードコム)と米VMware(ヴイエムウェア)を訴えた。日本でも公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いでヴイエムウェア日本法人の調査に乗り出している。ブロードコムによる一方的なライセンス変更に司法がどのような判断を下すのか、注目される。
AT&Tは2024年8月29日、ブロードコムとヴイエムウェアをニューヨーク州裁判所に提訴した。AT&Tは購入済みであるVMware製品の永続ライセンスに対するサポートサービスを、当初の契約通り続けるようブロードコム/ヴイエムウェアに求めた。
両社の争いは、2023年11月にブロードコムがヴイエムウェアの買収を完了した後、VMware製品のライセンス体系の見直しを進めたことに起因する。
ブロードコムはVMware製品の従来の買い切りライセンスを廃止してサブスクリプションモデルに一本化したほか、これまで単品購入できた各種コンポーネントをバンドル販売に限定するなどした。ブロードコムによればそれまで8000種類あった製品ラインアップ(SKU)が、4種類に統合されたという。これが多くのユーザーにとって大幅な値上げにつながることから世界中で不満が湧き起こった。
2.孫正義氏がOpenAIの新モデルo1をノーベル賞級と評価、AI進化は「思考」へ(10.4 日経XTEC)
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は2024年10月3日、自社イベント「SoftBank World 2024」の特別講演に登壇した。講演では、米OpenAI(オープンAI)が9月に発表した新たなAI(人工知能)モデル「o1(オーワン)」について、数学の証明問題や博士号レベルの問題に答えられるとし「ノーベル賞級だ」と評価した。
オープンAIは10月2日(米国時間)に総額66億ドル(約9600億円)の資金調達を発表したばかりで、出資企業にはSBGも名を連ねている。孫社長は生成AIの主要企業であるオープンAIとの緊密さをアピールした格好だ。
孫社長は今回のo1登場により、AIの性能はヒトの「理解」相当の水準から「思考」相当の水準に進化したとする。「これまでの検索やChatGPTでは速さが重要視されたが、o1の登場によって深さが重要視される時代が到来した」(孫社長)。
3.サーバーの処理をネットワークで、AIモデル訓練で注目「In-Network Computing」(10.4 日経XTEC)
In-Network Computingはネットワークデバイスがデータ転送だけでなく、サーバーなどホスト側が担っていた演算処理を代わりに実行する形態や考え方を指す。具体的にはNIC(Network Interface Card)やネットワークスイッチにデータ転送のほか、様々な処理ができる機能を加えて実現する。データ転送の過程でネットワークデバイスが演算処理をすることで、ホストCPUの負荷を下げ、システム全体の性能と効率を向上させる。近年、AI(人工知能)関連の処理にも利用が広がり、発展が期待される。
In-Network Computing登場の背景にあるのがデータセンター内の通信と処理の変化である。仮想化技術が浸透しアプリケーションの処理が複数の仮想サーバーに分散されるようになったことで、データセンター内のサーバー間の通信である「East-West(東西)Traffic」が増加している。
一方、ネットワークの経路をソフトウエアで制御したり、セキュリティー機能を複数の場所に実装したりするようになり、パケットに付与する情報量も増えて複雑化。パケットの処理をホスト側で実行するとホストCPUの負荷が増大し、アプリケーションの処理に影響を与えてしまう。
In-Network Computingはこうした状況下、ネットワークのトラフィックを効率的に制御し、ネットワークデバイスが自ら処理を担うことでホストCPUの負荷を下げ、アプリケーションにより多くの計算リソースを割り当てる手法の1つとして登場した。
In-Network Computingの代表的なネットワークデバイスが「SmartNIC」だ。2010年代後半に登場し、データセンターの拡大とともに導入されてきた。SmartNICはデータ転送のほか、パケットフィルタリングや負荷分散、セキュリティーに関連する機能などの処理を担える。
SmartNICは主に次の3つに分類できる。(1)特定用途向けにカスタム設計した集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を搭載する製品、(2)プログラム可能な論理回路を集積したFPGA(Field-Programmable Gate Arrays)をベースとした製品、(3)1つのチップ上にCPUやメモリーなど複数の機能を統合したSoC(System on Chip)もしくはDPU(Data Processing Unit)を搭載する製品――である。
現在、プログラム変更の柔軟性が高くC言語などを用いてプログラミング可能なDPUを搭載するSmartNICが主流になっている。
AIに関する処理にもIn-Network Computingの活用が進む。AIモデルのトレーニング(深層学習)は多数の計算サーバーが並列稼働し、ネットワークを介して演算結果を交換しながら処理を実行する。そのためネットワーク性能が処理時間に影響を与える。NVIDIAは高速性を重視するユーザーに広帯域で低遅延なInfinibandのアダプターやスイッチを提供している。このアダプターやスイッチなどのネットワークデバイスに計算サーバー間の集団通信などの処理をオフロードできる。
あらゆる場所でアプリケーションが処理・配信するデータが増え続け、ネットワークの通信量も増加の一途をたどる。効率的に処理する仕組みとしてIn-Network Computingの利用は広がっていきそうだ。
4メール回答の作成時間を6割短縮、コンタクトセンターで進む生成AI活用.(10.3 日経XTEC)
コンタクトセンターで生成AI(人工知能)の活用が進んでいる。メールの問い合わせに対する回答の草案作成や電話の会話記録の要約など、オペレーターの業務をサポートする用途で使われている。
「生成AIを顧客向けに直接使用するのではなく、オペレーターの業務を支援する用途に使うことで、より高い効果を発揮する」。日本コンタクトセンター協会(旧日本コールセンター協会)の松原健志副会長は生成AIについてこう語る。
生成AIは自然言語でやり取りができるため、オペレーターの代わりに顧客に質問の回答などをさせることはできる。しかし、生成AIは誤った情報を出力する「ハルシネーション(幻覚)」を引き起こす可能性がある。松原副会長は、「誤った情報を顧客に届ける可能性があるため、問い合わせ業務を全て生成AIに切り替えることは難しい」と話す。そこで、顧客と接する業務以外で生成AIを活用することが、業務の効率化につながるという。
生成AIを活用するコンタクトセンターなどに取材を進めると、2つの効果的な活用方法が見えてきた。1つ目はメールの回答の草案作成だ。従来はあらかじめ用意したFAQ(よくある質問と回答)やCRM(顧客関係管理)システムのデータをオペレーターが参照し、テンプレートに沿って顧客に回答していた。しかし、生成AIを使えば、質問メールの本文から回答の草案を作成できる。オペレーターは生成AIが作った回答の草案を参考にしながら、顧客に回答メールを送信できる。
2つ目の用途はオペレーターが応対後に行う会話の要約だ。コンタクトセンターでは、FAQの更新や問い合わせ記録の振り返りを目的として、顧客との応対後にオペレーターが応対記録の要約を行う。オペレーターは、メールやチャットの履歴、または電話音声を「文字起こし」したテキストなどを要約する。この作業を生成AIで置き換えることで、オペレーターの応対後の業務を効率化できる。
5.日本の「デジタル赤字」は2024年に6兆円超えへ、クラウド普及背景に増加の一途(10.2 日経XTEC)
日本の企業や個人から海外のIT企業に対する支払いが増え続けている。その規模は日本企業が海外で稼ぐデジタル関連の取引を大きく上回り、いわゆる「デジタル赤字」の拡大が続いている。
日本銀行の統計によると、日本の国際サービス収支のうち、デジタル関連を抜き出して支払額から受取額を引いたデジタル赤字は2023年に5兆5194億円だった。前年から16%の増加で、比較ができる2014年実績から約2.6倍に膨らんだ。この10年間はほぼ増え続けている。
デジタル赤字の増加基調は2024年も続いている。月次ベースで見ると上下動はあるものの、上半期(1〜6月)の赤字額は3兆円を超えた。最新の月次実績から1年間遡った2023年8月〜2024年7月の赤字額は6兆858億円に達する。
日本のデジタル赤字は国際比較が可能な指標を見ても世界の中で突出している。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「日本のデジタル赤字は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最大で、実質的に世界最大のデジタル赤字国といえる」と指摘する。一体、日本のどこが問題なのか。
デジタル赤字の拡大はクラウドサービスやソフトウエア、ネット広告などで米IT大手への依存が強まっていることが主因だ。もっとも米国依存が強まっている状況は欧州や他のアジア諸国も同じ。だが日本には大きな弱点がある。海外への支払いに比べ、海外からの受け取りが少ないのだ。2023年は9兆2717億円の支払いに対し、受け取りが3兆7523億円。海外から稼ぐ約2.5倍もの金額を海外に支払っている。
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