週間情報通信ニュースインデックスno.1443 2024/9/7


1.通信遅延の抑制とトラフィックを制御(9.6 日経XTEC)
NECは2024年9月6日、無線通信を用いた無人搬送車(AGV)を安定稼働させる技術を開発したと発表した。倉庫や工場などの作業現場における遮蔽(しゃへい)物や無線リソースの競合によって生じるAGVの不安定な稼働を防止できるとする。

 AGVを遠隔制御する際に通信品質が低下すると、AGVの稼働が停止したり、状態認識や制御などが不安定になったりする。NECはこうした課題を解決してAGVを安定稼働させるため、通信品質の変動を予測して無線ネットワークを切り替える技術や通信トラフィックを制御する技術を開発したという。開発した技術は、AGVとクラウドサーバー間の通信装置に搭載する。

 NECは2025年度中の実用化を目指して、今後実際の倉庫で実証実験を実施する予定だ。開発した技術は自動運転における遠隔管制やドローンの遠隔操縦、建設機械の遠隔制御などに適用できるとする。

2.生成AIサービス悪用が現実的な脅威に、プロンプトインジェクションで情報漏洩・侵入(9.6 日経XTEC)
生成AI(人工知能)を組み込んだシステムへの「プロンプトインジェクション」の脅威が迫っている。プロンプトインジェクションは、英語のinjection(注入・注射)になぞらえた大規模言語モデル(LLM)への攻撃手法だ。悪意あるプロンプトを「注入」、すなわち入力することにより、機密情報を盗んだり連係するシステムへ侵入したりする。

 生成AIを社内システムや社外向けのサービスに組み込む企業が増加している。2023年の生成AIブーム初期から、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由でLLMを使い、システムに対話機能を実装する企業が多く見られた。

 現在では、こうした対話機能において企業固有の内容を回答できるようにするため、企業のデータベース(DB)の情報をLLMが参照できるようにするRAG(Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成)を実装する事例が広がってきた。さらに直近では「生成AIエージェント」として、自然言語の指示をLLMが解釈し、指示に応じたシステムの操作をAIが自律的に実行する仕組みを試す企業も出ている。

 こうした事情を背景に、悪意のあるプロンプトによるプロンプトインジェクションの被害が現実味を帯びている。実は、2022年11月のChatGPT登場当初から、悪意のあるプロンプトで生成AIを攻撃するプロンプトインジェクションは存在していた。当時は、暴力や差別など本来サービス側が禁じている不適切な回答を引き出す意味合いが大きかった。

 一方で現在、前述したようなLLMとDBや既存システムとの連係が進んだことで、プロンプトインジェクションによる機密情報の窃取やシステムへの侵入が可能になった。

3.AI搭載パソコンは何ができる? オフライン処理や「消しゴムマジック」対応機種も(9.6 日経XTEC)
AI(人工知能)機能を搭載した「Copilot+ PC」と呼ぶWindowsパソコンが各社から発売された。米Google(グーグル)も「Chromebook Plus」と呼ぶAI機能搭載パソコンを展開している。生産性向上が期待できるような機能なのか試した。

 Copilot+ PCは米Microsoft(マイクロソフト)が提唱するAI機能を搭載したWindowsパソコンのブランドだ。Copilot+ PCを名乗るには条件がある。「NPU (Neural Processing Units)」と呼ぶAI処理専用のアクセラレーターを搭載し、1秒あたり40兆以上のAI処理(40TOPS、TOPSはTera Operations Per Secondの略)を実行できること、そしてDDR5またはLPDDR5のメモリーを16GB以上、SSDまたはUFS(Universal Flash Storage)のストレージを256GB以上搭載することだ。

 AIを使う機能やサービスは、インターネットを介してサーバー上で処理するものが多い。セキュリティーを保つ上で、インターネットに接続できない環境や、サービスを利用できない状況もある。その場合、パソコン上でAI処理を実行する必要があるが、現状では高性能なグラフィックボードが必要になるため、高価なパソコンが必要になる。

 そこで、オフラインで回数制限を気にせず、気軽にAI機能を利用できるようにと提唱されたのがCopilot+ PCだ。

 Copilot+ PCが搭載するWindowsには、Copilot+ PCだけで利用できる多数のAI機能を搭載する。 「Paint(ペイント)」には「Cocreator(コクリエイター)」という画像生成AIを搭載する。ペイントでラフ画を描き、プロンプトで詳細を指定すると、それを基に画像を生成する機能だ。

 Copilot+ PCの注目機能として「リコール(Recall)」がある。リコールは画面に表示したWebページや文書ファイル、画像ファイルといった画面に表示されている情報を、画像ファイルとして保存する。その画像ファイルから、AIが必要な情報を過去にさかのぼって抽出できる仕組みだ。

4.シャープと古野電気が船舶向け衛星通信アンテナの開発で協業、船舶業務のDXを支援へ(9.4 日経XTEC)
シャープは2024年9月4日、LEO(低軌道)・MEO(中軌道)衛星通信アンテナの開発で、古野電気と協業すると発表した。両社はモバイルデータ通信が困難な海上で、船舶業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する船舶向けアンテナの早期実用化を目指す。

 シャープはスマートフォンの設計で培った小型・軽量化技術や通信技術を利用し、衛星通信アンテナの小型・軽量化を進める。古野電気は船舶用電子機器分野に強みがあり、その知見と支援を得ながら開発を進める。

5.メール文章を生成AIが「コーチング」、TeamsとCopilotの組み合わせで実現(9.4 日経XTEC)
Microsoft OutlookでCopilot for Microsoft 365を利用すると、プロンプト(指示文章)からメール文章を作成したり、作成済みのメール文章に対する評価やアドバイス(コーチング)を受けたりすることができる。メールの作成では、文章のトーン(雰囲気やスタイル)や長さを指定して、状況に合わせたメッセージが生成可能だ。

 メール文章を作成するときは、新規メールの画面に表示される「Copilotを使って下書き」をクリックする。

 入力したプロンプトに基づき、メールの文章が生成される。文章に対する操作を画面下部のボタンから選択する。生成された文章を利用する場合は「保持する」、生成をやめる場合は「破棄する」、他の文章に生成し直す場合は「もう一度試す」をクリックする。

 生成する文章のトーンや長さを変更することもできる。メールの基となる情報を入力するとき、「生成オプション」をクリックしてトーンや長さを選択する。

 Outlookで使えるCopilotにはメール文章をコーチングする機能がある。コーチングは文章の内容を分析して、「トーン」「閲覧者の感情」「明瞭さ」の3つの項目に分けて(執筆時点)、それぞれの評価とアドバイスを表示する。アドバイスには書き換え後の候補を表示してくれるので、その文章を利用したいときはコピーして、メッセージに貼り付ける。

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