週間情報通信ニュースインデックスno.1442 2024/8/31


1.NTTと中華電信が日台間で国際間APN開通、IOWN関連サービスを拡充へ(8.30 日経XTEC)
NTTと台湾通信大手の中華電信は2024年8月29日、日本と台湾の間で低遅延などの特長を備えるネットワーク「APN(オールフォトニクスネットワーク)」を開通した。世界初の国際間APNになる。同日にAPNで接続した日本と台湾の会場で開通セレモニーが開催され、NTTの島田明社長と台湾の中華電信で会長を務める郭水義氏が参加した。

 NTTは次世代ネットワーク構想である「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の実現に向け、技術開発を進めている。IOWNは、光通信技術を中心とした新たな高速大容量通信、膨大な計算リソースなどを提供するネットワーク・情報処理基盤だ。APNはIOWN構想を支える重要な要素の1つである。

 回線速度は100Gbpsで、日本と台湾の間の約3000kmを片道約17msecの遅延で接続できるようになる。同区間を一般のインターネット回線で接続した場合は、さまざまなネットワーク機器を介するので200〜500msecの遅延が生じるという。

2.個人情報保護法の3年ごと見直し、課徴金巡り有識者らの検討会が開始(8.30 日経XTEC)
個人情報保護法の改正は個人情報保護委員会(個情委)が同法の規定に基づいて施行後3年ごとに見直すこと。個情委は2024年7月に「3年ごと見直しに関する検討会」の第1回会合を開催した。2024年内に具体的な方向性をとりまとめて個情委に報告する。早ければ2025年の通常国会に改正案を提出する。

 中間整理は、主に3つの個人データの類型を取り上げている。身体の特徴を基にした「生体データ」や「子どもの個人情報」、クッキーなどの端末識別子を通じて収集された個人のWebサイトの閲覧履歴といった「個人関連情報」である。それぞれ適正な取得や、不適正な利用の禁止、第三者提供する際の同意の在り方、オプトアウト(利用停止)といった請求権などに関する論点を挙げている。

 個情委は中間整理で、社会的反響の大きかった問題事例として、駅周辺に多数の人工知能(AI)の機能を搭載したカメラを設置して人流データを取得・解析すると発表した事例や、刑務所からの出所者・仮出所者を含む不審者らを検知するとして顔識別技術を搭載した防犯カメラを導入した事例を挙げている。その上で、欧州連合(EU)や米カリフォルニア州など海外の法制度などを参考に、規律の在り方を検討するとしている。

3.生成AIが相手でも丁寧な対話が重要、追加情報を伝えながら対話を繰り返す(8.29 日経XTEC)
生成AIに何かを依頼するときは、プロンプトの入力が、やり取りするための不可欠な手段になる。つまり、プロンプトでどのように指示するかが、自分の意図に沿った的確な回答を得るためのポイントになる。

 基本に沿ったプロンプトでも、必ずしも思い通りの回答が得られるとは限らない。たいていの生成AIは、一定回数まで、同じトピックのままやり取りを続けられる。得られた回答が不十分だった場合は、その回答に対するプロンプトを返すことで、より良い回答にしていこう。

 具体的には、最初のプロンプトで得られた回答に対して、追加情報を与えて再構成させよう。最初のプロンプトの情報は保持されているので繰り返す必要はない。

4.身代金支払いの最高額が「100億円突破」、2024年のランサムウエア被害は史上最悪に(8.28 日経XTEC)
国内外で大きな被害をもたらしている「ランサムウエア攻撃」。セキュリティーベンダー各社は2024年7月から8月にかけて、2024年前半のランサムウエア攻撃を総括するリポートを相次いで発表した。

 同社が2024年8月15日に公表したリポートによると、2024年前半に支払われた身代金の総額は約4億5980万ドル(約668億円:1ドル=145.3円で換算、以下同)に上るという。

 これは、身代金の年間支払額が過去最高の約11億ドル(約1598億円)だった2023年の同時期(約4億4910万ドル:約653億円)を上回っている。このため同社は、2024年は身代金の支払額が過去最高になるのは確実で、「史上最悪の年」になるだろうとしている。

 一方で、身代金の支払いイベントの総数は、前年比で27.29%減少した。これは、身代金を支払う企業が減少していることを示している。

 身代金を支払う企業が減っているのに支払総額が増えているのは、攻撃者が奪える企業からたくさん奪っているためだ。チェイナリシスは「大物狩り(big game hunting)」が増えていると表現している。

 インターネットに接続している限り、どのような企業も標的になる。そして、対策がおろそかな企業から狙われる。引き続き、気を引き締める必要がある。

5.プロ棋士を超えた将棋AI、開発者が語った歴史と今後(8.26 日経XTEC)
将棋AI(人工知能)の強豪ソフトウエアである「やねうら王」を開発したやねうデザインのやねうらお氏と「水匠(すいしょう)」開発者の本八幡朝陽法律事務所の杉村達也弁護士は2024年8月22日、カンファレンス「CEDEC2024」(会期:2024年8月21〜23日)で「将棋AIの過去・現在・未来」と題して講演した。なぜ将棋AIは人間を超える実力を持つようになったのか、人間を超えた後の将棋AIはさらにどのような進歩を遂げたのか、両氏が将棋AIの歴史や現状などを語った。

 世界最古の将棋AIの研究開発は1974年、当時大学院生だった現早稲田大学の瀧澤武信政治経済学術院名誉教授が始めた。瀧澤氏が開発した将棋AIは、局面の形勢を数値化する「評価関数」と探索アルゴリズムの「ミニマックス法」を組み合わせたものだ。評価関数と探索アルゴリズムの組み合わせは、現在の将棋AIでも基礎となっている。

 次に、ミニマックス法を改良して探索の効率を上げた「αβ探索」が将棋AIに使われるようになった。一方、これまで人間が調整していた評価関数は複雑になり、パラメーター数が増えたことで、人間による調整が難しくなった。

 その後、最適化アルゴリズムの「SGD」(確率的勾配降下法)によるパラメーターの調整が可能であることが判明し、機械学習でパラメーターを調整するようになった。そして2013年、αβ探索とパラメーターを機械学習で調整した評価関数を組み合わせた「Ponanza(ポナンザ)」がプロ棋士の佐藤慎一四段(当時)との対局に勝利した。将棋AIが公式の場で初めて現役のプロ棋士を破ったのだ。

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