週間情報通信ニュースインデックスno.1441 2024/8/24


1.NTTが新会社「NTT AI-CIX」設立、R&Dの経験生かし連鎖型AIの実現目指す(8.23 日経XTEC)
NTTは2024年8月26日付でAI(人工知能)関連事業の新会社「NTT AI-CIX(AI-Cross Industry transformation)」を設立する。新会社が担うのは、様々なAIを業務・業界横断で互いに連携させる「連鎖型AI」と呼ぶ仕組みの社会実装だ。個別業務からサプライチェーン全体の最適化まで実現する。

 新会社のNTT AI-CIXはNTTの100%子会社で、資本金(資本準備金を含む)は19億5000万円。まずは30人ほどの規模で立ち上げる。

 NTTはAI関連事業の一環として、AIによる社会のトランスフォーメーションを「AIX」として打ち出している。NTT AI-CIX という社名は、AIXのコンセプトの下でAIを活用した「業界横断(Cross Industry)」での最適化を実現すること、さらにそうした取り組みをコアコンピタンス(中心的な競争力の源泉)として新たな産業変革を目指すことから付けたという。

 AIを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)を巡っては近年、個々の企業内の取り組みだけでなく複数の企業や業界を横断する形にシフトしてきているとNTTは見ている。そうした業界横断のAI導入のニーズを新会社で取り込んでいく。

 具体的には、これまで個別の企業・業界に閉じていたAIやデータなどの連係を図る。コンサルティングやAIモデルの開発、開発したAIのプラットフォームサービスとしての提供を一気通貫で手がけるところが特徴だ。

2.リコーがオンプレミスで利用できる700億パラメーターのLLM、販売体制も強化(8.22 日経XTEC)
リコーは2024年8月21日、日本語処理性能に優れた700億パラメーターの大規模言語モデル(LLM)を開発したと発表した。2024年秋から国内顧客への提供を開始する。開発したLLMはオンプレミスで稼働できるため、機密情報を多く扱う金融業や製造業などの需要を取り込みたい考えだ。

 リコーが今回発表したLLMは、安定した日本語応答ができるほか、中国語と英語に対応することが特徴だ。米Meta(メタ)が公開したオープンLLMである「Meta-Llama-3-70B」を基に東京工業大学と産業技術総合研究所の研究チームが日本語性能を向上させた「Llama-3-Swallow-70B」をベースモデルに、リコーが独自の追加学習などを行って開発した。

3.KADOKAWA夏野社長「サイバー攻撃からの巻き返し図る」、通期業績を修正(8.20 日経XTEC)
「セキュリティー体制を強化し、再発防止に全力を尽くす。大規模サイバー攻撃で受けた影響から早期の巻き返しを図る」。KADOKAWAの夏野剛社長CEO(最高経営責任者)はそう言い切った。

 KADOKAWAは2024年6月8日に発生した大規模サイバー攻撃を受けた影響を踏まえ、2025年3月期通期業績予想を修正した。KADOKAWAの夏野社長が2024年8月14日、米Google(グーグル)の動画配信サービス「YouTube」上で説明した。特別損失36億円を計上見込みとし、純利益を97億円に修正した。クリエイターへの補償費用や、サイバー攻撃の調査・復旧費用で特別損失が発生する。同社は同日、詳細を発表した。

 ?規模サイバー攻撃によって、売上?が84億円、営業利益が64億円の減少影響を?込む。ただ電子書籍やゲーム、アニメなどの事業が好調で減少影響を埋め合わせ、2025年3月期の通期連結業績予想は期初予想を維持して売上高は2713億円、営業利益は期初予想比5%減の156億円となる。前述した通り、純利益は特別損失の計上で期初予想比28%減の97億円となる。

 KADOKAWAは、同社データセンター内にあるドワンゴ専用ファイルサーバーなどへランサムウエアを含む大規模なサイバー攻撃を受けた。被害拡大を防ぐため、サーバーをシャットダウンするなど緊急措置を取った。ドワンゴが運営する動画配信サービス「ニコニコ動画」だけでなく、グループ内の事業活動や経理機能を管理する基幹システムの一部も機能停止した。出版事業の既刊の出荷部数が平常時の3分の1程度に落ち込むなどの悪影響が発生した。

4.村田製作所がアンテナ間干渉対策に「世界初」部品、スマホで威力発揮(8.20 日経XTEC)
村田製作所は、スマートフォンに内蔵された複数のアンテナ間の干渉を抑制する小型部品「Radisol(ラディソル)」を開発し、2024年6月から量産中である。米Motorola Mobility(モトローラ・モビリティ)の最新スマホ「edgeシリーズ」に採用され、Wi-Fiアンテナの特性改善に寄与しているという。村田製作所によれば、Radisolのような部品はこれまでにはなく、世界で初めて開発されたという。

 現在のスマートフォンやウエアラブル端末はWi-FiやBluetooth、GPSといった様々な無線通信機能を備え、各無線通信に対応する複数のアンテナが高密度に搭載している。村田製作所によれば、端末に搭載されるアンテナは、今後も増える傾向にある。例えば、通信品質を上げるために多数のアンテナを併用するMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)方式を採用したり、非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)に対応したりすることで、アンテナ数が増大していく。

 ただし、近い帯域のアンテナ同士が高密度で実装されると、空間に放射されるべき電波(電力)の一部が近隣のアンテナ(図2の左図のアンテナB)に流入し(放射に干渉し)、干渉されているアンテナ(図2の左図のアンテナA)の放射特性が低下してしまう。アンテナ同士の距離を十分に離せば干渉を防げるが、スマートフォンやウエアラブル端末では、小さな筐体(きょうたい)内でそのためのスペースを確保することが難しい。

 村田製作所は、独自のセラミック多層技術とRF回路設計技術によって、良好なフィルター特性を持ちながらも低挿入損失を実現する新しい部品としてRadisolを開発した。Radisolをディスクリート部品のLC並列共振回路の代わりに挿入することで、低い挿入損失で近接するアンテナ間の干渉を防ぐことができるため、双方のアンテナの放射特性を良好に保てるという。

 Radisolは寸法が0.6mm×0.3mm×0.2mm(いわゆる0603サイズ)という小型チップ部品。

5.太陽光発電で防災無線に障害の恐れ、東京都のパネル設置義務化を前に総務省が警鐘(8.23 日経XTEC)
太陽光発電が原因とされる電波障害が急増している。とりわけ防災無線への影響が深刻だ。総務省は2024年5月、関連団体に対策を求める依頼文を出した。障害が増えた背景には住宅用パネルの増加がある。2025年4月から東京都などで新築住宅の一部に太陽光パネルの設置が義務化されるため、影響を注視する必要がありそうだ。

 「ここ数年、我々の把握する電波障害が急増している」。総務省総合通信基盤局電波部電波環境課の今泉崇紀電波監視官はこう話す。2021年以降、太陽光発電システムが発する不要電波によって通信が妨害される障害が、疑わしい事例も含めると44件発生しているという。背景には家庭用太陽光パネルの爆発的な増加がある。

 影響を受けやすい周波数帯は「数十MHzから百数十MHz帯」(今泉監視官)だ。中でも影響が深刻なのは防災無線で、完全に遮断されてしまったという報告もある。地震や津波といった災害から人命を守るための警報が届かなくなる恐れがある。

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