1.NTTドコモが社長交代、「経済圏」重視の人事だが課題山積のネットワークはどうなる(6.7 日経XTEC)
NTTドコモの前田義晃副社長が2024年6月14日付で社長に昇格する。NTTグループの生え抜きでないなど、異例尽くしの社長交代となる。その狙いは、出遅れ感が目立つ経済圏ビジネス強化にある。一方で通信品質の低下に懸念の声が上がり、成長が見込めない5G(第5世代移動通信システム)ネットワークへの投資が重くのしかかる。新体制で難局を乗り越えられるだろうか。
今回の社長人事が異例だという理由は大きく2つある。1つは年齢が54歳と若いことだ。そしてもう1つは、前田氏がNTTの生え抜き社員ではないことである。これまでNTTドコモの社長は、いずれもNTTグループの生え抜き社員が就任してきた。だが前田氏はリクルートの出身であり、2000年にNTTドコモに入社している。生え抜きではない社員が社長に初めて就任したというのも、大きなサプライズといえるだろう。
これまでの慣習を大きく変えてまで前田氏を社長に就任させる理由はどこにあるのか。前田氏が現在の副社長の立場でスマートライフ事業を取り仕切っていることを考えると、前田氏に求められているのがスマートライフ事業、ひいては経済圏ビジネスを強化することだというのは明白だ。
そしてもう1つはEC(電子商取引)だ。こちらも競合が「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」といった強力なECサービスを持つ中にあって、NTTドコモは強みがなく停滞が続いていた。そこで2024年4月にアマゾンジャパンと提携。EC大手の「Amazon.co.jp」で、NTTドコモの「dポイント」がたまる・使えるという施策を展開してテコ入れを図っている。
前田氏の新体制で経済圏ビジネスの強化が進められることは間違いないだろう。その一方で非常に気になるのが、主力のモバイル通信事業である。とりわけNTTドコモは2023年、新型コロナウイルス禍明けの需要を読み違えて通信品質が著しく低下した。大きな問題として取り沙汰され、品質改善を急ぐ必要に迫られた。
その理由は少子高齢化による市場の飽和と、政府による携帯電話料金引き下げの促進にある。その一方で、現在の主力となる通信規格5Gでは、当初期待されていたメタバースや法人需要などの開拓が世界的に全く進んでおらず、スマホに続く新たな需要開拓も見込めなくなっている。
それだけに競合他社の動向を見ると、稼げなくなった5Gから、稼げるAIへと投資を明確にシフトする動きが目立つ。
NTTドコモは通信品質の低下に加え、低価格の料金プラン「irumo」の提供が競合他社より遅れたこともあって、現在もARPU(契約当たり月間平均収入)が減少。モバイル通信事業は厳しい状況が続いている。だがモバイル通信は社会インフラなので、もうからないからといって投資を削減し、通信品質を落とし続けることは許されない。
2.NECが大阪万博に顔認証システム導入、入場や決済の利便性向上狙う(6.5 日経XTEC)
NECは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に同社が開発する顔認証システムを導入すると発表した。万博の入場時や会場内店舗での決済時に使用する。手ぶら決済による利便性向上やセキュリティー強化を狙う。
入場時の顔認証システムは、万博会場入り口にある51箇所の入場ゲートに搭載する。対象は万博の通期パス、夏パスの購入者で、事前に顔画像を登録する必要がある。入場時はチケットに記載されたQRコードをゲートにかざした後、追加で顔認証による確認も行う。チケットの貸し借り等によるなりすまし入場を防ぐ狙いだ。
決済時の顔認証システムは、万博会場内の決済端末「stera terminal」が設置された店舗に導入する。対象は万博の通期パス、夏パスの購入者と、大阪・関西万博で提供予定の電子マネー決済サービス「ミャクペ!」の会員登録者。ユーザーがミャクぺ!の登録時に顔登録するかどうかを選択できる。登録すると決済情報がひも付けられ、決済時に顔認証だけで引き落としが完了する。
3.速くて省電力! AI処理は専用の「NPU」におまかせ(6.5 日経XTEC)
現在、AIを活用するアプリはクラウドを利用するものがほとんどだが、今後はプライバシー保護の面などからローカルでAI処理を行うアプリが増えると予想されている。マイクロソフトがAI PCを推進しているのはそのためだ。マイクロソフトが提唱するAI PCでは、CPU、GPUとは別にAI処理専用のプロセッサー「NPU」を搭載することが必須条件となる。そのため、今後はNPUを搭載したプロセッサーがスタンダードになるとみられる。NPUを搭載するCore Ultraは次世代CPUの先駆け的な存在だ(AMDなどのCPUにもNPUを搭載する製品はある)。
Core UltraのNPUは、SoCタイルに内蔵されており、8ビットの整数演算と16ビットの浮動小数点演算に対応したMAC Array(行列演算器)などで構成されている。AI処理をCPUよりも高速かつ、低消費電力で実行できることが特徴だ。
4.ミリ波5G対応ドローンを使った在庫管理、Ericssonなど3社が実証実験を開始(6.4 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は、ミリ波帯の5G(第5世代移動通信システム)に接続して動作する自律型ドローンの概念実証実験を開始した。米国にある同社の5Gスマートファクトリー内で、在庫管理の自動化などに向けた実験を行う。産業用ドローンのソリューションプロバイダーであるイタリアDronusと米Qualcomm(クアルコム)の協力を得て実施している。
今回のドローンは、ミリ波の広い帯域幅を使った高性能な通信が可能な企業や産業向けに設計されたものとなる。このようなドローンを使うことで、工場内の高い場所に保管された製品のバーコードを自動でスキャンするなどの操作が可能になる。今回は、工場内の倉庫の在庫管理自動化、屋内飛行用に最適化された自律型ドローンの制御、5G接続されたドローン格納ステーション、工場内センシング用のライブ動画ストリーミングカメラなどに関する実証実験を行う。
5.テレワーク実施率に異変、日本人の働き方は新たな「第3フェーズ」突入へ(6.3 日経XTEC)
2024年春、ゴールデンウイーク中に新幹線や特急列車などを利用した人の数が新型コロナウイルス禍前の95%程度まで回復する中、ビジネスパーソンの働き方にはどんな変化が起こっているのか。2020年春からほぼ半年おきに実施してきた調査の最新結果を見ると、在宅勤務を活用する人の割合が2年ぶりに上昇した。仕事の内容や都合によって働く場所を使い分ける、「ハイブリッドワーク」が広がり始めた実態が浮かび上がった。
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは「ワークスタイルに関する動向・意識調査」を2020年春から定期的に実施しており、2024年4月に最新となる9回目の調査をした。「あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と尋ねたところ、「週3日以上」と答えた人は39.8%だった。2023年秋の前回調査よりも8.9ポイント増えた。
週3日以上テレワークを利用する人の割合は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置が2022年3月に解除されてから減り続け、2023年10月の前回調査では最低割合を更新していた。2年間に及んだ減少傾向が止まり、上昇に転じたというのが、最新調査における最大のポイントだ。
コロナ禍におけるリスク対策の観点からテレワークを半ば強制された時期を第1フェーズとすると、緊急事態を脱した多くの企業が出社回帰へとかじを切った2022年春から2024年春までの第2フェーズを経て、新たな「第3フェーズ」への転換点を迎えている。
第3フェーズとは、ビジネスパーソン一人ひとりが目的などに応じて出社と在宅勤務を自律的に使い分ける時代だ。
別の理由とは「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」といったものだ。前者を選んだ人は前回調査より13.2ポイント増え、後者を選んだ人は同10.0ポイント増えている。
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