週間情報通信ニュースインデックスno.1429 2024/5/18


1.AIを120回連呼したGoogle、ピチャイCEOが記者団に語ったOpenAIとの競争(5.16 日経XTEC)
米Google(グーグル)のスンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)が2024年5月15日(米国時間)、年次イベント「Google I/O」に合わせて記者団の取材に応じた。基調講演ではAI(人工知能)という単語を120回以上使い、新サービスは「AI一色」。AIモデル「Gemini」のアップデートやAIを使った検索機能の拡充、次世代のAI半導体、動画や画像などの組み合わせに対応するマルチモーダルを利用した「AIエージェント」など、去年から続くAIの革新がさらに進んでいることを印象付けた。

 ピチャイCEOは米OpenAI(オープンAI)との競争に対して「1日や2日で起こった出来事からズームアウトする視点を持つことが大切だ」と語り、各国で議論が進むAI規制に対しては「重要な役割を果たすが、バランスが大切だ」とけん制した。

AIのこの先について、何を最も期待していますか?
 Google I/Oで私たちがどのようにAIを製品に導入し、人々の役に立っているかご覧になったでしょう。私たちの製品の規模を考えると、多数の人々の役に立っているはずです。この技術の進化は息をのむほどのものです。Geminiはマルチモーダルのモデルであり、(コンテキストウインドーが)200万トークンのプレビューを発表しました。画期的です。(AIを利用した)エージェントの片りんも見えてきました。複雑なクエリーを検索できたり、旅行を計画できたりすることも示しました。

Google I/Oの直前にオープンAIが新しいサービスを発表しました。これをどのように感じていますか。
 1日や2日で起こった出来事からズームアウトする視点を持つことが大切です。私たちが話しているのは、人類が取り組む最も深いテクノロジーの1つなのです。我々は長い間、それに投資してきました。最先端モデルを開発し、数十億人の生活に変化をもたらす方法について取り組んでいます。私にとって、それが(目指す)北極星であり使命なのです。

2.次の主役「生成AIエージェント」、GoogleやOpenAIがまだ出さない怖い理由(5.18 日経XTEC)
今週、2024年5月第3週は、米OpenAI(オープンAI)と米Google(グーグル)が相次ぎ、生成AI(人工知能)の新機能を発表した。しかし期待されながらもリリースされなかった機能があった。生成AIが様々なアプリケーションをユーザーに代わって操作する「生成AIエージェント」だ。

 今の生成AIの主役は「チャットボット」であり、ユーザーの指示(プロンプト)に対して返事をしてくれるだけだ。しかし生成AIエージェント(AIエージェントとも呼ばれる)は外部のプログラムをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やUI(ユーザーインターフェース)経由で操作できるので、ユー  ピチャイCEOは生成AIエージェントについて、論理的な思考(Reasoning)と行動計画(Planning)、作業内容に関する長期記憶(Memory)の能力を備え、未来に関する多段階の思考が可能であり、様々なソフトウエアやシステムを操って、ユーザーの代わりに業務を遂行できる存在であると定義した。

 既に一部のオフィスソフトには、ユーザーに代わって作業をする生成AIベースの機能が搭載されている。米Microsoft(マイクロソフト)の「Copilot for Microsoft 365」やグーグルの「Gemini for Google Workspace」などだ。

 これらの機能は、各アプリの中に閉じて作業をする。文書作成アプリであれば、文書作成だけを行うといった具合だ。それに対して生成AIエージェントは、どのアプリを使って、どのような作業を行うかも自分で考える。

 このように生成AIエージェントは、ユーザーの利便性を飛躍的に向上させられる可能性がある。それにもかかわらず、なぜまだリリースされないのだろうか。  グーグルのピチャイCEOはGoogle I/Oの基調講演で、生成AIエージェントは「まだ初期段階」であると強調した。また生成AIエージェントにおいては「重要なのはユーザーによる監視(Supervision)の下に実行されること」とも指摘した。

 米コーネル大学やイスラエル工科大学は2024年3月に発表した論文で、生成AIエージェントに対して攻撃をしかけることで、ユーザーの情報を盗み取ったり、自己拡散したりできるワームが実現できることを示した。研究者らはこうしたワームを防ぐためには「生成AIエージェントに権限を与えすぎないことが重要だ」と指摘した。

3.Webサイトのコンテンツを運ぶ「HTTP」、通信効率を高めてきた歴史を振り返る(5.15 日経XTEC)
HTTP(HyperText Transfer Protocol)は、文書や画像などのコンテンツをWebサーバーとクライアントがやりとりするためのプロトコルである。WWW(World Wide Web)の考案者であるティム・バーナーズ=リー氏が開発し、1991年に原型となる仕様が定義された。

 Webブラウザーなどのクライアントがデータの取得や送信を要求(リクエスト)するメッセージを送ると、Webサーバーがその結果を応答(レスポンス)する仕組みだ。

 HTTPは1996年に、RFC 1945として公知された。その後Webサイトの数やWebページのデータ量が大幅に増えたため、通信効率を改善する方向で進化した。HTTP/1.0、HTTP/2、HTTP/3の各バージョンを比べてみよう。

 HTTP/1.0はクライアントからの要求に対し、Webサーバーが1つずつ応答していた。HTTP/2は、一度に複数のリクエストとレスポンスを処理できるようにした。HTTP/3ではさらに、複数の通信路を使ってデータをやりとりできるようになった。

 詳しく見てみよう。HTTP/1.0の特徴は、1つのリクエストとレスポンスごとにTCP(Transmission Contorol Protocol)のコネクションを張り、終わると切断する点だ。やりとりが増えるほどコネクションを張る回数も増え、通信効率が低下してしまう。

 HTTP/1.0の改良版であるHTTP/1.1では、TCPコネクションを使い回せるようにしてコネクションを張り直す手間を減らした。ただ使い回せるようになっても、原則として1本のTCPコネクションでは同時に複数のリクエストとレスポンスを処理できない。要素が多いWebページを表示するにはTCPコネクションを複数張らなければならず、Webサーバーの負荷が増えてしまう。

 そこでHTTP/2では、1本のTCPコネクションの中に仮想的な通信路である「ストリーム」をつくり、このストリームで複数のリクエストとレスポンスを同時にやりとりできるようにした。1本のTCPコネクションで多数の処理を実行できるようになったわけだ。

 HTTP/3ではさらに処理を高速化するため、TCPの代わりにUDP(User Datagram Protocol)を基にしたQUIC(Quick User datagram protocol Internet Connections)というプロトコルを採用した。これにより、幾つかの処理をHTTP/2よりもさらに高速化している。

4.自然災害や緊急医療に5G活用、Ericssonがミッションクリティカル通信専門イベントで(5.15 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)はミッションクリティカルな通信ソリューションの展示や発表などが行われるイベント「Critical Communications World 2024」(2024年5月14〜16日、アラブ首長国連邦・ドバイ)に最新のネットワーク関連ソリューションを出展する。同社が2024年5月8日(現地時間)に自社サイトで発表した。同イベントは、公共安全や公共事業、鉄道、防衛などに向けたもの。

 次世代のミッションクリティカルサービスとして、低遅延5Gを使って山火事などの監視を行うSmart Grid Monitoring、救助活動や重要インフラの点検などに向け、航空機やヘリコプター、ドローンなどと地上との通信を最適化するDigital Airspaceのデモも披露する。これらを活用することで、公共安全や緊急時のオペレーション、ミッションクリティカルな用途に向けたインフラ設備に必要な高性能で回復力が高く安全な接続性を確保できるようになるとしている。

5.NECが再エネ100%のデータセンター2棟を稼働、生成AI向けGPUサーバーにも対応(5.14 日経XTEC)
 NECは2024年5月14日、再生可能エネルギーだけで稼働するデータセンター2棟を5月中に開設すると発表した。データセンターの需要増に応えながら、温暖化ガスの削減にもつなげる。

 神奈川県にある「NEC神奈川データセンター」で2期目となる新棟と、神戸市にある「NEC神戸データセンター」で3期目となる新棟が完成した。それぞれ5月中に稼働させる。ともに再生可能エネルギーで発電した電力だけを調達するほか、敷地内に設置した太陽光パネルによる発電も活用するという。

 消費電力を抑制するため、高温冷水を使う水冷技術や自然エネルギーを使う冷却技術も導入した。データセンターの省電力性能を示すpPUE(Partial Power Usage Effectiveness、部屋単位などの電力使用効率)の設計値は1.16を達成している。pPUEは1に近いほど効率が高く、一般に国内では、1.2以下の設備は高効率とされている。

 2つの新棟には高発熱の生成AI(人工知能)向けGPU(画像処理半導体)サーバーを設置できるエリアも設けた。天井を高くしたほか冷却装置を強化したことで、ラック当たりの消費電力が20キロワット(kW)を超えるサーバーの排熱にも対応したという。空冷式としては高い性能を達成しており、冷却性能を高めるため今後は水冷式の設備導入も検討するとしている。

ホームページへ