週間情報通信ニュースインデックスno.1414 2024/1/20


1.AWSが日本に5年で2兆2600億円投資、クラウド需要見据えデータセンター設備増強(1.19 日経XTEC)
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)は2024年1月19日、2023年から2027年までの5年で日本に2兆2600億円投資すると発表した。データセンターの建設やデータセンター間をつなぐネットワーク機器への投資、データセンターの運用や保守にかかる費用などが含まれる。

 同日の会見に登壇したアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)の長崎忠雄社長は投資計画について、「データのさらなる利活用に向けたAWSのコミットメントだ。日本の顧客の成長に貢献したい」とした。クラウドシフトや生成AI(人工知能)の普及に伴う需要を見据え、設備を強化する考えだ。

2.人気セキュリティー製品の不満点は何か、CASBやSASEなどの利用実態に迫る(1.19 日経XTEC)
日経クロステックが2023年11〜12月に、ユーザー企業が実際に利用しているセキュリティー製品を調査した結果を解説している。対象としたセキュリティー製品は、接続元を問わず常にアクセスを精査し認証・認可する「ゼロトラスト」に関する8カテゴリーの製品だ。 

 具体的には、CASB(Cloud Access Security Broker)、SASE(Secure Access Service Edge)、SIEM(Security Information and Event Management)、DLP(Data Loss Prevention)である。 

 まずCASBを見ていこう。CASBとは、従業員のクラウドサービスの利用状況を可視化したり、制御したりする仕組みである。利用するSaaS(Software as a Service)の認証機能やデータ保護基準などが、国や業界の規制や利用企業のコンプライアンスに違反していないかを調べる機能を持つ製品もある。 

 調査では、アンケートの有効回答126件のうち、42件が利用しているという回答だった。最も人気を集めたのは米Microsoft(マイクロソフト)で14件だった。2位は米Zscaler(ゼットスケーラー)で9件、3位は米Netskope(ネットスコープ)で8件だった。 

3.能登半島地震の携帯電話網復旧に船上基地局やドローンが活躍、残された課題は何か(1.19 日経XTEC)
2024年1月1日に発生した能登半島地震により、被災した地域の多くで生活に不可欠なインフラが途絶した。その1つが携帯電話のネットワークだ。携帯各社はあらゆる手法を尽くして復旧に当たっている。それらを見ると、従来の手法より大きく進化しているようだ。だがその一方で、通信の途絶を防ぐという点では課題も残っている。

 連絡や情報収集に欠かせない携帯電話のネットワークインフラも今回の地震により、広範囲にわたってサービスを提供できなくなっているようだ。携帯各社が公開している復旧マップを見ると、大きな被害を受けている石川県の珠洲市や輪島市を中心に多くのエリアでサービスが中断している(原稿執筆時点)。

 これほど広範囲にわたってネットワークが停止している最大の要因は停電である。これまでの大規模災害を振り返っても、携帯電話のネットワークが停止する要因は、基地局などの設備の物理的な破壊よりも停電のほうが大きい。

 そのため2011年に発生した東日本大震災以降、携帯各社は発電機や24時間駆動できるバッテリーなどを各地域の主要な基地局に用意。電力が途絶しても、ある程度の時間は基地局を稼働できるようにした。それ故最近の大規模災害では、通信が広域で途絶することは少なくなっている。

 とはいえ基地局の設置場所や面積、コストなどから搭載できる設備やバッテリーの容量には限界があるので、停電が長期間にわたればいずれ停止してしまう。そうした事態に備えて、携帯各社は移動電源車や発動発電機なども用意している。だが現地への輸送路を確保できない場合にはそれらを持ち込めない。今回の大規模災害において通信サービスの中断が長期化しているのはそのためだ。

 電力や道路の復旧がままならない状況では、地上から携帯電話のネットワークを復旧させるのには限界がある。そこで携帯各社は、地上以外から復旧させる取り組みを加速している。

 例えばNTTドコモとKDDIは2024年1月6日、船上基地局の運用を開始したと発表した。船上基地局は文字通り船舶の上に設置した基地局だ。そこから電波を送信することで沿岸のエリアをカバーする。KDDIは過去2回、船上基地局を運用したことがあるが、NTTドコモは今回が初となる。

 一方、異なるアプローチで復旧を進めているのがソフトバンクだ。同社は「有線給電ドローン無線中継システム」の運用を開始したことを2024年1月6日に明らかにしている。

 またドローンの活用となるとバッテリーと飛行時間が気になるが、このシステムでは有線で基地局と接続するので、ドローンに電力を直接供給し続けられる。それ故連続100時間の飛行が可能とされている。天候が良ければ4日間はドローンを飛ばし続けて通信を維持できる。

 だがそうした手法をもってしても、復旧が難しいエリアは少なからずある。そういったエリアにおいて、いかに通信の途絶を防ぐかが今後の課題だ。その課題解決に有望視されるのが、「NTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)」である。

 今回の能登半島地震では、米Space Exploration Technologies(スペースX)と提携しているKDDIが、同社の低軌道衛星群「Starlink」を用いた衛星ブロードバンド通信を前述の船上基地局のバックホール回線として活用。また2024年1月7日には、Starlinkを利用するための機器を石川県に350台提供し、避難所などに設置することを明らかにした。自衛隊や電力会社などへの提供も含めると約700台に上るという。

 ただ現在のStarlinkは、従来の衛星通信と比べれば手軽とはいえ、それなりに大きいアンテナを設置して電力を供給する必要がある。電力が途絶している被災地での活用は難しい。それだけに今後期待されるのは、スマートフォンと衛星やHAPSとの直接通信だ。地上のインフラが途絶しても、スマホのバッテリーさえあれば最低限の通信が可能になる。

 ただ明るい兆しもある。KDDIは2024年1月3日、スマホと直接接続できる衛星の打ち上げに、スペースXが初めて成功したと発表した。KDDIは2023年8月にスペースXと新たな提携を結び、同社の衛星とスマホを直接接続して通信できるサービスを2024年中に提供予定であることを明らかにしている。今回の衛星打ち上げ成功によって、その実現が一歩近づいたことは間違いない。

 とはいえ衛星やHAPSによる通信にはリソース面で制限があり、大容量通信には適していない。NTNは災害対策として有効なことは間違いないが、地上のネットワークを維持・復旧するための取り組みは今後も求められる。

4.TOPPAN、顧客の声をAIで可視化し分析するVOC分析サービスの提供を開始(1.18 日経XTEC)
TOPPANは2024年1月17日、AI(人工知能)を活用し顧客の声(VOC:Voice of Customer)を可視化・分析するサービス「コンタクトログマネジメント」の提供を開始すると発表した。顧客接点の改善などに役立ててもらう。

 同社によると、近年は顧客価値向上のためコンタクトセンターなどで得られる顧客の生の声をCX(カスタマーエクスペリエンス)の改善に活用することができるVOC分析への期待が高まっている。しかし、VOC分析における全量データの可視化や課題抽出は人手による業務負荷が高く、それを読み解く人の主観で分類することによる解読ムラなどもあり、実践できている企業はまだ少ないという。

 そこで、同サービスでは構造化が難しいデータをAIで解析し、顧客接点における課題の抽出と改善策の提示をする。様々なコンタクトチャネルに集まったログの全量データをAIで分類・可視化。人手で実施していた際の業務負荷を軽減し、解読ムラを防ぐことで顧客満足度の向上や問い合わせ対応の最適化を目指す。

5.安くてかわいい「スタックチャン」が楽しい、手元に置けるAIロボットに挑戦しよう(1.18 日経XTEC)
 2014年には、ソフトバンクロボティクスから「Pepper」も発売された。個人的には顔がかわいくないので興味はなかったが、それでも個人で人型ロボットを持てる時代、すなわちパーソナルロボットの時代がやってきたというのを強く感じさせる出来事だった。

 さらにシャープが人型のスマートフォン「ロボホン(RoBoHoN)」を2016年に発売し、2017年にはロビと同じようにパートワークで「鉄腕アトム」を組み立てる「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」がスタート。2018年にソニーから「aibo」が復活した。2019年にはGROOVE Xの「LOVOT(らぼっと)」が登場したし、ロビの成功を受けてデアゴスティーニ・ジャパンが「ロビ2」を開始している。気にして見ていると毎年のようにパーソナルロボットに関する話題はあった。

 なかなか普及しない理由はいくつかあると思う。まずランニングコストだ。スタンドアロンで動くロビはともかく、それなりの「知的」な処理をさせるためにはバックエンドのサービスは必須。これが月額でいくらかかかる。例えばLOVOTであれば月額1万998円(税込み)から。ロボホンはWi-Fiだけなら月額1078円(同)、音声通話付きプランは月額2728円(同)。aiboも月額3278円(同)かかる。こうした月々の負担は軽いとは言えない。

 「役に立たない」存在であることも普及を妨げているだろう。ある意味、こうしたロボットは「おもちゃ」の延長である。コンセプトとしては間違っていないし、記者も何か役に立つ機能があるべきだとは考えていない。

 だがここにきて、がぜん楽しい存在が浮上してきた。中国M5Stackの箱入りマイコン「M5Stack」を使ったロボット「スタックチャン」である。ロボット関連のメーカー/ベンダーであるアールティのエンジニアであるししかわ氏が2021年に公開したオープンソースのプロジェクトだ。

 M5Stackはディスプレーが付いた箱形のマイコンで、このディスプレーを顔に見立てている。M5Stackの後部に箱を取り付け、その中にサーボモーターが2個配置されている。これで左右と上下に首を振るというとてもシンプルな構造だ。

 スタックチャンのいいところはなんと言っても安いこと。M5Stack本体は円安の影響で一時期よりだいぶ高価になったが、7500円程度から入手できる。「M5Stack Basic」や「M5Stack Core2」などいくつか種類がある。これに5000〜6000円程度加えればパーソナルロボットが手に入る。

 スタックチャンも基本的には「何もしない」。M5Stackに入れるファームウエアの内容にもよるが、単にきょろきょろするだけのものや、あらかじめ設定した言葉をランダムにしゃべるものなどがある。「radiko」のプレーヤーになるスタックチャンもあるようだ。

 そうした中で、生成AI(人工知能)を応用したスタックチャンのファームウエアが公開された。robo8080氏が公開した「AIスタックチャン」だ。スタックチャン人気を高める一因となっている。音声で質問などを投げかけると、対話的に応答してくれるというものだ。かわいいロボットと対話できるので、これをやりたくてスタックチャンを使い始めたという人も多数いるようだ。

 実際に話しかけてみると、少々M5Stack Basicには重い処理なのか、「考え中」の表示が結構長い。リアルタイムでポンポン会話する、というわけにはなかなかいかない。スマホを介しているので、「会話」という気分でもない。とはいえロボットとやり取りできるというだけでもそれなりに気分は上がる。

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