週間情報通信ニュースインデックスno.1413 2024/1/13


1.ユーザーローカル、生成AIが書いた論文を見破る「生成AIチェッカー」を無償提供(1.12 日経XTEC)
 ユーザーローカルは2024年1月12日、論文やリポートが「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)によって書かれたものであるか否かを判定する「生成AIチェッカー」を無償で提供開始したと発表した。会員登録は不要で、日本語で書かれた文章を判定できる。

 生成AI特有の言い回しや語彙の偏りを機械学習で検出する同社独自開発のアルゴリズムによって、AIが作成した可能性を自動で判定するという。

 ユーザーローカルは2023年12月にも、文章中の誤字・脱字を指摘して修正案を提示する校正サービス「ユーザーローカル文章校正AI」を無償で提供開始するなど、AI関連のサービスを拡充している。

2.ジュニパー買収で「Arubaの再現」を狙うHPE、エンタープライズITは不思議だ(1.12 日経XTEC)
 米Hewlett Packard Enterprise(HPE、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)が2024年1月9日(米国時間)、米Juniper Networks(ジュニパーネットワークス)を約140億ドルで買収すると正式発表した。HPEの狙いは2015年に買収した米Aruba Networks(アルバネットワークス)の成功を再現することにある。

 筆者にとってHPEによるジュニパーの買収は、違和感がなかった。なぜなら既にHPEにとってArubaブランドを中心とするネットワーク事業が、同社の経営の屋台骨を支える存在になっていたからだ。

 HPEが2023年11月28日(米国時間)に発表した2023年10月期決算では、Arubaブランドのネットワーク事業セグメントを示すIntelligent Edge事業の売上高は52億400万ドルで、営業利益は14億1900万ドルだった。HPEの全社売上高291億3500万ドルに占めるIntelligent Edge事業の割合は17.9%だが、全社の営業利益に占めるIntelligent Edge事業の割合は39.3%にも達する。

 HPEはジュニパー買収に際して発表したプレスリリースで、ジュニパーの分を合わせるとネットワーク事業の営業利益が、2023年10月期ベースで全社営業利益の56%を占めるようになると述べている。利益面で見ればHPEは、ネットワークが本業のメーカーになるわけだ。

 Arubaの買収がHPEにもたらしたのは、金銭面でのメリットだけではない。Arubaのネットワーク機器の特徴は、クラウド型の運用管理ツールにあった。HPEはArubaの買収によって、この技術を取り込むことができたのだ。

 HPEは今では、Arubaのクラウド型運用管理ツールのカバー範囲をネットワーク機器からサーバーやストレージにまで広げている。またクラウド型運用管理ツールには、AI(人工知能)によってシステムトラブルなどを検出して自動復旧を図る「AIOps」の機能やセキュリティー管理機能なども追加している。Arubaの技術と運用管理ツールのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)というビジネスモデルは、HPEのデータセンター事業にとって不可欠な存在になった。

 ジュニパーも近年、「Mist AI」というブランドでクラウド型のネットワーク機器運用管理ツールを強化していた。HPEはジュニパーの買収に際して「AI駆動のイノベーションを加速する」と述べている。それはジュニパーとArubaの技術統合によるAIOpsの強化を指している。

 HPEとシスコの両社が展開する大型買収によって、オンプレミスのデータセンター市場の競争軸が、SaaSとして提供されるAIOpsツールになることが明確になった。

3.思い込みによるミスは防げるか、羽田空港事故で知るAIの使い道(1.11 日経XTEC)
どんなプロフェッショナルであっても、どれほど注意深い人であっても、一度思い込んでしまうと勘違いを修正することは難しい。生成AI(人工知能)などを活用して、何とか勘違い、思い込みに対してアラートを出せる仕組み、修正する仕組みを作れないものだろうか――。

 2024年1月1日に能登半島を襲った大地震がもう1つの悲劇をもたらした。翌2日、被災地に救援物資を運ぶために新潟航空基地に向かおうとしていた海上保安庁の航空機が、羽田空港の滑走路上で日本航空の旅客機と衝突し、海保の職員5人の人命が失われた。

 国土交通省が3日に公表した管制の交信記録によると、管制官は海保機に離陸許可を出しておらず、滑走路手前の停止位置まで進むように指示していた。一方、海保機の機長によると、管制官の指示を復唱していたにもかかわらず、離陸許可が出たものと認識していたという。

 再発防止のためにも、責任の明確化は欠かせない。ただ人が機械を操る以上、ヒューマンエラーは避けがたいのも確かだ。特に一度思い込んでしまうと間違いに気づき修正することは、一流のプロであっても難しい。だからこそ、復唱や複数人での確認など万全を尽くすわけだが、思い込みや勘違いによるミスを撲滅するのは不可能だ。それが重大な事故につながる場合もあるのだ。

 考えられるのは思い込みや勘違いの可能性にアラートを出すシステムの導入だ。重い責任を伴う仕事では当然、人が判断しなければならない。ただ、システムは判断を支援できる。例えば人の会話を理解し人の行動を学習できる生成AIなら、ミスを犯す前に会話内容と行動の矛盾を見つけ警告を出せるはずだ。導入するだけで仕組みとして機能させられなければ意味はないが、不幸の数を減らすためにも最新技術は使いたい。

4.2023年のランサムウエア被害は過去最大、トレンドマイクロ調査(1.10 日経XTEC)
トレンドマイクロは2024年1月9日、2023年のサイバー脅威動向についてのメディア向けセミナーを開催した。同社の調査では、2023年に国内企業が公表したランサムウエア被害数は63件で過去最多だった。ランサムウエア被害にあった企業の過去3年間の累計被害額は平均で1億7689万円となったという。同社の岡本勝之セキュリティエバンジェリストは「企業単位でなく国全体で安全保障を考える必要がある」と警戒を促した。

 岡本氏は新たな脅威となりつつあるサイバー攻撃を3つ挙げた。1つ目はランサムウエアを活用してシステムの停止や設備を破壊する「サイバーサボタージュ」だ。直近では2023年7月に名古屋港でコンテナのターミナルシステムのデータがランサムウエアによって暗号化され、業務が停止した事例がある。

 2つ目のサイバー攻撃は、政府機関や企業などの重要情報を盗み出すことを目的とする「サイバーエスピオナージ」、3つ目はフェイクニュースを流布することで政府の意思決定に干渉することを目的とする「インフルエンスオペレーション」だ。国際情勢の不安定化に伴って日本も攻撃対象として狙われており、被害が表面化しつつあるという。

5.騒がしい場所での通話で効果抜群、iPhoneの「声を分離」を試してみよう(1.10 日経XTEC)
「電話を再発明する」として登場したiPhone。基本的な通話機能は当初から大きく変わってはいないが細かな部分で改良が加えられ、使いやすく進化している。今回は「iOS 17」時代の通話機能を紹介しよう。

 iOS 17では「ポスター」機能が新たに搭載された。これは「連絡先」ごとに写真やミー文字などを設定して、着信画面などで相手がひと目で分かるようにする機能  また音声案内などで番号を通知する際に使う「キーパッド」は、タップすると画面全体に数字ボタンが表示される。このときポスターがぼかされて背景になるのは、米Apple(アップル)流のこだわりといえるだろう。

 マイクモードが「通常」の場合は、これまでと同程度のノイズキャンセリングだ。だが「声を分離」に切り替えると、周囲のノイズが相手にはほぼ聞こえないくらいに低減される。また通話時のマイクモードの設定は次回以降も引き継がれる。

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