週間情報通信ニュースインデックスno.1406 2023/11/25


1.高校「1人1台端末」継続に暗雲、故障とコスト増でGIGA受け皿に危機(11.24 日経XTEC)
全国各地の公立高校が2020年以降の新型コロナウイルス禍で急ぎ導入した1人1台のパソコンなどの端末。その継続が危ぶまれる事態が起こっている。原因は端末の故障とコスト増だ。約3割の端末が故障し、修理や更新の見通しも立たず、授業で1人1台体制が維持できない状況に直面する地域が出てきた。

 1人1台端末の継続を危うくする第1の原因、端末の相次ぐ故障という事態に今まさに直面している例が徳島県だ。 2023年11月13日時点で1万6500台中、5865台の端末が故障――。徳島県の県立高校など28校に導入された生徒1人1台の学校端末の故障率が約3割に上り、授業に支障を来している。故障が発覚した端末が3000台以上となった10月には後藤田正純徳島県知事が再発防止に向けて発注の経緯を検証するよう指示。同県の榊浩一教育長が学びの場に不自由をかけたとして会見で陳謝するなど異例の事態になっている。その後も端末故障が発覚し続けている状況だ。

2.ITエンジニア不足をAIが救うか、ガートナーが2024年に注目すべき技術を発表(11.22 日経XTEC)
「2023年は生成AI(人工知能)の登場により、人間とコンピューターが新たな関係になった。2024年は人間とコンピューターの変化に過度な期待が寄せられるピークになる一方で、台頭しているAIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)、5G、クラウドコンピューティングなどの技術は着実に進化していく」

 ガートナージャパンの池田武史リサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデントアナリストは、米ガートナーがグローバルで発行するリポート「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の2024年版についてこう説明する。

 同リポートは、2024年に企業や組織に重要なインパクトを与える10の技術トレンドを取り上げている。「将来はヒト、モノ、デバイスがすべてつながり、データ化されていく。これを生かして分析し、タイムリーな意思決定につなげていくことが前提になる」(池田バイスプレジデント)。こうした動きを踏まえて、10の技術トレンドを「投資の保護」「ビルダーの台頭」「価値のデリバー」の3つの領域に分類した。

 1つ目の投資の保護には、AIの活用を支援する「AI TRiSM」、脅威側に注目したセキュリティー管理の考え方である「CTEM(継続的な脅威エクスポージャー管理)」、ESG(環境・社会・企業統治)を踏まえてIT資源の効率化などを支援する「持続可能なテクノロジー」の3つの技術トレンドが含まれる。

 特に注目すべきがAI TRiSMだ。TRiSMは「Trust(信頼性)」「Risk(リスク)」「Security Management(セキュリティーマネジメント)」の頭文字をとった言葉だ。AI TRiSMはAIのコンプライアンス(法令順守)を支援する技術を指す。

 池田バイスプレジデントは、「AIのリスクマネジメントは重要なテーマになっている」と強調。ガートナーの調査によると、「(AIの活用に取り組む企業の)40%がプライバシーやセキュリティーの問題が発生したと回答している」(同)という。

 セキュリティーの問題に加え、「生成AIの回答は一見流ちょうに見えるものの、全く間違っているといったリスクもあり、そのまま使える状況ではない」と池田バイスプレジデントは指摘する。

 ガートナーはAI TRiSMを「ガードレール」と表現。「ガードレールがなければ、AIモデルは急速に悪影響を及ぼし、制御不能に陥り、期待していた効果を得られなくなる」と指摘する。「AI TRiSMを実現するツールも出ており、事例も出始めている状況だ」(池田バイスプレジデント)。

3.KDDIと清水建設が建設現場DX、建設中の超高層ビルの通信をStarlinkで構築(11.24 日経XTEC)
KDDIと清水建設は2023年11月24日、建設中の超高層ビルで、法人向け衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を利用する実証実験を行ったと発表した。より具体的には、携帯電話の通信圏外にある高層施工フロアで通信環境構築を目指した。時期は2023年8〜10月、場所は清水建設が施工する都内の超高層ビルである。

 高層施工フロアは携帯電話の電波が届きにくく、光ファイバーなどを敷設して通信環境を構築する必要がある。しかもビルの階層が上がるたび、地上から施工階とその下の一部階層までネットワークを構築し直さなければならず、手間とコストを費やしていた。

 そこでKDDIはStarlink Businessのアンテナを建設現場の最上層に位置するタワークレーン上部に設置し、通信環境を構築、タワークレーンの旋回時や悪天候時の通信品質などを検証した。結果としてはクレーン旋回の影響を受けず、さらに豪雨・強風などの環境下でも安定して高速な通信が可能だった。光ファイバーなどの敷設時と同様に、高層施工フロアから映像伝送やオンライン会議などができるため、手間とコストを抑制しつつ、業務効率を向上できたとする。

4.デジタルツインを活用する6G向け管理システム、ZTEと中国移動が高速鉄道向けに構築( 日経XTEC)
中国ZTEは2023年11月10日、デジタルツインを活用して精密なネットワーク管理を行う環境を構築したと発表した。中国China Mobile(中国移動)天津支社と連携し、高速鉄道向けのシステムとして実施した。

 デジタルツインを使うことで、より正確なネットワーク管理を可能にし、技術者による調査工数を大幅に削減する仕組みを構築した。6G時代のネットワークプランニングに向けた先進的な取り組みになるとしている。

 無線ネットワーク用のさまざまなデジタルツイン機能を用意している。そのうち、サイトツインでは、データ収集やモデル生成などのマイクロサービスを利用して高品質なネットワーク構築を、チャンネルツインでは、モデル生成やシミュレーション、可視化、戦略最適化を含むマイクロ サービスを利用し、高精度で高効率なネットワークプランニングを支援する。

5.業績好調の携帯大手3社、苦境が続く楽天は2024年早期の「離れ業」に注目(11.22 日経XTEC)
携帯大手3社の2023年4〜9月期連結決算(国際会計基準)が出そろい、全社が増収増益と好調だった。大手3社は2021年の官製値下げによるダメージが大きく、このマイナス影響を法人事業や非通信事業の拡大、コスト削減などで補う構図が続いていた。足元ではトラフィックの拡大でARPU(契約当たり月間平均収入)が下げ止まりつつあり、最悪期からの脱出がいよいよ見えてきた。

 最も勢いがあるのはKDDIだ。増益率こそ大手3社の中で最も低いが、2023年4〜9月期で通信ARPU収入の反転に成功した。DX(デジタルトランスフォーメーション)や金融、エネルギーといった他の主要事業も利益が順調に伸びている。これまで官製値下げをはじめ、大規模通信障害、燃料費高騰、楽天モバイルからのローミング収入減少など頭痛の種が多かったが、「2024年3月期以降はマイナス要素がなくなっていく。プラスの要素をどれだけ伸ばすかの戦いになる」(高橋誠社長)と手応えを示す。

 ソフトバンクも好調だ。モバイル(携帯電話事業)売上高の前年同期比の減収幅が改善してきており、下期には増収に転じる見通し。営業利益の通期予想(7800億円)に対する進捗率は2023年4〜9月期で65.9%。「メディア・EC」や「エンタープライズ」をはじめ、全セグメント実質増益の達成に向けて計画通りとした。

 NTTドコモも至って順調である。主力の「コンシューマ通信(携帯電話事業)」は減収が続くとはいえ、2023年4〜6月期以降は増益を維持している。解約率も他社の1%前後に対し、0.62%(2023年7〜9月期)と飛び抜けて低い。非通信領域の「スマートライフ」や法人の営業利益は先行投資などが響いて伸び悩むが、下期で挽回できる見込みだ。

 一方、東証の業種分類で「情報・通信業」ではなく「サービス業」となる楽天グループの2023年1〜9月期連結決算(国際会計基準)は売上高が前年同期比9.7%増の1兆4912億円、営業損益が1795億円の赤字だった。前年同期の2929億円の営業赤字からは改善したが、「モバイル」のセグメント損益は2662億円と楽天モバイルが全体の足を引っ張る状況が続く。

 2023年10月に獲得したプラチナバンドも総務省に申請した基地局の開設計画があまりに消極的、見方によっては「やる気のない」内容だったことは既報の通り。喉から手が出るほど欲しかったプラチナバンドにもかかわらず、決算説明会でも「最初に都心部建物内のカバレッジ対応に集中し、計画の10年間では後半に設備投資が集中」といかにも後回しのような説明だった。投資家を安心させることが最優先とはいえ、残念な気持ちしか残らなかったのは筆者だけだろうか。

 楽天モバイルの動きを見ていて興味深いのは、ネットワーク費用と販売管理費の大幅な削減を打ち出しつつも、契約数やARPUなどの大幅な上積みを標榜している点だ。筆者にとってはこの2つの費用をケチってもろくなことがない、それができれば苦労しないイメージなのだが、どのような「離れ業」を見せてくれるのか楽しみである。

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