週間情報通信ニュースインデックスno.1393 2023/8/26


1.NECが防災関連の新技術、LLMと画像分析技術で被災状況把握を迅速化(8.25 日経XTEC)
NECは2023年8月25日、大規模言語モデル(LLM)と画像分析で被災状況を把握する技術を開発したことを発表した。災害が発生した際に集まる被災現場の画像を目的に応じて絞り込み、被災場所を番地レベルで地図上に表示する。2026年3月までの実用化を目指す。

 新技術の特徴は、(1)利用者の目的に応じた画像の絞り込みができることと、(2)被災状況や場所を地図上に番地レベルで表示できることの2つだ。NECビジュアルインテリジェンス研究所の寺尾真ディレクターは「LLMによる言葉の意味解釈と画像の類似判定を組み合わせることで多様な目的に沿って、画像を見つけられるようになった」と説明する。現状、オープンソースのLLMのモデルを利用している。

2.ZTEと中国移動が動的RISの5G実験、杭州アジア大会の自転車競技会場で実施(8.24 日経XTEC)
中国ZTEは2023年8月14日、中国China Mobile Research Institute(中国移動研究院)、China Mobile浙江支社と連携したRIS(Reconfigurable Intelligent Surface)の5G(第5世代移動通信システム) 適用実験の結果を公開した。同年9月に杭州市で開幕する「第19回アジア競技大会」の自転車競技会場にて実施した。

 China Mobileは杭州アジア大会の公式通信サービスパートナーとしてネットワークサービスを提供する。高画質な動画生配信やその他サービスなどに向け、競技場内で高品質なネットワーク需要が高まっている。構築時の複雑さや費用を抑えながら、いかにネットワーク品質を保証するかが大きな課題となる。

 今回の検証では、RISの動的ビームスキャンとユーザー追跡機能により、信号カバレッジと通信速度が大幅に改善され、アジア大会の会場で必要となる大容量通信を効果的に提供できていることを確認した。

 競技場でのRSRP(Reference Signal Receiving Power、基準信号受信電力)が最大20dB(デシベル)向上し、上りリンク、下りリンクともユーザー端末の通信速度が数倍程度改善した。また、動的RISにより、競技場内を移動するユーザーを常に正確に追跡して、安定した信号強度と通信速度を保ち続けるという。

 RISは基地局の信号伝播やビーム制御を最適化し、信号品質を向上させ、基地局のカバレッジを拡張するマルチアンテナ技術である。加えて、低コスト、低消費電力であることから、5Gの次規格である5G-Advancedや6Gなどにおいて、ネットワークの可能性を広げるものとして期待されている。

3.小型で省電力な低価格5Gウエアブル機器、エリクソンなど3社がRedCap通信試験(8.23 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2023年8月16日(現地時間)、オーストラリアOptus(オプタス)、台湾MediaTek(メディアテック)と連携して、Ericssonの商用前Reduced Capability(RedCap)対応ソフトウエアを使った無線データ通話試験を行ったと発表した。Optusの5Gネットワーク上で確認した。

 小型でバッテリー寿命も長く、十分なスループットを提供するRedCap端末は、スマートウォッチなどのウエアラブルや健康管理機器、AR(拡張現実)用機器など多くの一般モバイルユーザー向けアプリケーションに適用できる。産業向けアプリケーションに向けても、5Gプライベートネットワークと共に使用するなどして、監視カメラやセンサーなど、堅牢な産業向けIoTを、低価格で実現することができる。

 今回は、このRedCap対応ソフトウエアを使って、TDD方式とFDD方式、それぞれの環境下で、5G低周波数帯、中周波数帯での利用が可能なことを確認した。Optusでは、この結果を基に、シンプルで低消費電力、低価格なRedCapを一般消費者、産業、ビジネスの様々な用途に向けて活用していく。

4.スマホの月額利用料金は2年で1千円減とマイナス傾向続く、MM総研調べ(8.22 日経XTEC)
MM総研は2023年8月22日、「携帯電話の月額利用料金とサービス利用実態(2023年7月調査)」の結果を発表した。スマートフォンやフィーチャーフォン(従来型携帯電話)の利用者を対象に、月額利用料金や音声通話、データ通信サービスの利用実態などをアンケート調査でまとめたものだ。

 スマートフォン利用者の月額利用料金は4317円と、2023年1月の前回調査から141円減少した(有効回答数は1万1039人)。2020年12月時点との比較では1017円減少となった。MM総研は「月額料金は国としての政策方針もあり、2年半で1000円以上安くなった」とする。

5.次期全銀システムのRFPに施した「ある工夫」、ベンダーロックイン脱却への布石に(8.22 日経XTEC)
全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は2023年9月、2027年の稼働を見込む次期全銀システムの開発ベンダーを選定する。これまで一貫して開発・保守を手掛けてきたNTTデータの優位は揺るがない。一方で、全銀ネットはベンダーロックインからの脱却を狙い、RFP(提案依頼書)に「ある工夫」を施した。

 全銀ネットは2023年3月、ステークホルダーや有識者で構成する検討会議での議論を経て、「次期全銀システム基本方針」をまとめた。この基本方針に基づき、5月にRFPを策定し、「全銀システム高度化ワーキンググループ(全銀高度化WG)」に参加しているITベンダーに提案を依頼。全銀ネットは各社の提案内容を比較・検討した上で、9月に開発ベンダーを選定する予定だ。

 このRFPに全銀ネットの思惑が見え隠れする。全銀ネットは次期全銀システムの開発に当たり、アーキテクチャーを刷新する方針を打ち出した。それが主要業務を担う「ミッションクリティカルエリア」と、新機能・サービスを実装する「アジャイルエリア」に切り分けるというもの。今回のRFPでは、スコープをミッションクリティカルエリアに限定し、アジャイルエリアは全銀高度化WGの議論などを踏まえ、必要に応じて別途実施するとしたのだ。

 RFPのスコープを絞った理由について、全銀ネットは「開発を確実に進める観点」を挙げるが、狙いはそれだけではない。NTTデータに過度に依存した開発・保守体制からの脱却を模索していることが読み取れる。

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