週間情報通信ニュースインデックスno.1384 2023/6/24


1.あらゆるデータを収集・活用する「データファブリック」、実現に向けて前進(6.23 日経XTEC)
データファブリックとは企業内外の関連するデータをすべて管理し、企業活動に生かすためのデータ管理の設計概念だ。企業内の業務システムから発生する定型データ、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などの新しいシステムから発生する非定型データに加え、取引先のデータや、消費者のスマートフォンなどから取得できる情報など、ありとあらゆるデータを活用可能にすることを目指す。様々なデータソースを布のように糸でつなげて面にすることから、ファブリック(布)に例えられる。

 例えば「サプライチェーンで発生している納期遅延の原因を知りたい」といった要望が現場から寄せられた場合、即座に遅延の要因を知るために必要な可能性のあるデータを網羅的に収集し、分析できる仕組みを作ることがデータファブリックの狙いだ。遅延の原因が自社内の製造の遅れにあるのか、部品を調達する取引先にあるのか、完成製品を輸送する物流会社にあるのか、それとも輸送経路で起きた交通事故にあるのかなど、調べたい事象に合わせて必要なデータを自動で集め、分析することで目的を達成することを目指す。

 これまでも企業はデータを分析し、業務に生かすための情報システムの整備に注力してきた。データマートやデータウエアハウスがその例だ。データウエアハウスの場合、複数の業務システムのデータをまとめて収集・蓄積し、必要に応じて分析できる環境を目的としたシステムだ。多くの企業がデータ活用に向けてデータウエアハウスにデータを蓄積している。

 いずれも企業でのデータ活用を目的にしているデータウエアハウスとデータファブリックだが、両者の違いは「特定の目的をもって用意されたかどうかだ」とガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門の一志達也シニアディレクターアナリストは説明する。データウエアハウスの場合、マーケティング分析や主要経営指標の把握といった目的を明確にして構築する。

 これに対してデータファブリックの場合、特定の事業部門や業務に絞った形での活用を想定するのではなく、幅広い問題に対処できるように網羅的に様々なデータソースを管理下に置くことを想定している。加えてデータを活用する目的も、特定の業務や課題だけを想定しているわけではない。どのような業務や課題に対してもデータ活用ができることを目指している。

 データファブリックにかかわる技術の成熟度は高まり、企業の理解も進んできたものの、本番環境でデータファブリックを実現するのは簡単ではない。取引先や消費者といった幅広いデータソースを収集するための合意を得ることや、メタデータの管理・更新の体制をつくること、データ分析の専門家でなくても活用可能な環境を用意することなど、様々な準備が必要になる。

2.サブブランドやMVNOも「大容量プラン」にシフト、携帯各社が抱えるジレンマとは(6.23 日経XTEC)
KDDIのサブブランド「UQ mobile」やMVNO(仮想移動体通信事業者)などが、相次いでNTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」に対抗する動きを見せている。その背景には、大容量のデータ通信をしたいというユーザーニーズの高まりがある。携帯各社やMVNOにとっては、政府の携帯料金引き下げ要請で大きなダメージを受けた利益を回復させる起爆剤になりそうだ。だが、大容量プランへのシフトを手放しで喜べない事情がある。

 だがここ最近の大手3社の決算を見ると、料金引き下げの影響は2022年度がピークだったようだ。今後は徐々に業績が回復するとの見方を強めている。その理由は従来より大容量のプランの契約が増えたことと、それに伴うARPU(1ユーザー当たりの平均売り上げ)の回復にある。

 政策によって携帯電話料金の引き下げが進められたにもかかわらず、なぜ大容量プランの利用が増えているのか。各社の説明によると、若い世代を中心とした動画サービスの利用増が背景にあるようだ。

 一連のプランはいずれも通信量が20GBで一定の音声通話定額が付き、1人で契約しても月額料金が2000〜3000円台で使えるという点で共通している。これらの料金プランは、NTTドコモのオンライン専用プランahamoを強く意識したものといえるだろう。

 ただしこの動きには1つの懸念がある。それは携帯各社が、大容量通信を可能にする5Gのインフラ投資を抑えていることだ。前述のように大手3社は政府の料金引き下げ要請により利益が大幅に低下した。新興の楽天モバイルは先行投資による大幅な赤字に苦しんでいる。このため投資意欲が非常に旺盛だった4Gの時代から一転し、5Gのネットワーク整備には非常に消極的になっている。

 決算などから携帯各社の5Gのネットワーク整備状況を読み解くと、高速大容量通信が可能な5G向け周波数帯の利用エリアを拡大することには、各社とも非常に消極的な様子だ。そうした周波数帯の活用は、都市部や主要駅といった生活導線上に絞っている。多くのユーザーに5Gらしい高速通信をいち早く体感してもらうというより、混雑が発生しないように5Gを用いている傾向が強い。

 だがそれだけ投資を抑制しているが故に、携帯各社の予想を超えたトラフィックが発生するとたちまち問題が発生する。例えば最近、NTTドコモのユーザーから「つながりにくい」という不満の声が多く上がっている。NTTドコモによるとその原因は、同社の5Gネットワーク整備がトラフィックの急増に追いついておらず、4Gのみでカバーしているエリアでトラフィックを収容しきれなくなったためだという。

3.書類の校正をPDF上で完結、手書きコメントには描画ツールを利用(6.22 日経XTEC)
受け取った書類をチェックして、修正の指示を入れて送り返すことがあるだろう。そんなとき、いったん紙に印刷して赤ペンで指示を書き込んでいるなら、やり方を改めよう。PDFなら、パソコンの画面上で直接赤字を入れて、ファイルのまま返送できる。Acrobat Readerが備える「コメント」ツールを利用するのだ。

 ツールパネルで「コメント」をクリックすると、画面上部には「コメント」ツールバー、画面右側には「コメントペイン」が表示される。コメントツールでPDF上に書き込むと、コメントペインの注釈一覧に順次表示される。書き込んだ文字列だけでなく、線や図形など、コメントツールで追加した要素がすべて表示されるので、PDF上では見づらい要素も、コメントペインを見れば漏れなく確認できる。

4.ローカル5Gに強敵登場? ソフトバンクが並々ならぬ力を注ぐ「sXGP」(6.21 日経XTEC)
5G(第5世代移動通信システム)の技術を使い、企業が独自の携帯電話ネットワークを構築する手法として「ローカル5G」がある。2019年12月に制度化され期待が高かったものの、導入はそれほど広がっていない。基地局や交換機などの費用が高く、依然としてPoC(概念実証)の域にとどまっている。

 これとは別に4Gの技術を使う「プライベートLTE」もある。現状は地味な存在となっているが、その1方式である「sXGP(shared eXtended Global Platform)」は2023年秋ごろに使用できる帯域が拡大する。当面は課題の多いローカル5Gより、sXGPのほうが先に導入が広がりそうである。

 sXGPが2017年10月に制度化された当初は使用できる帯域が狭かったうえ、同じ周波数帯を自営PHS方式やDECT方式(欧州で標準化されたコードレス電話規格)と共用するので必ずしも使い勝手がよくなかった。公衆PHSサービスが2023年3月に終了したことを受けて制度の見直しを予定しており、今後は10メガヘルツ幅システム(現在は5メガヘルツ幅)を使えるようになる。しかも自営PHS方式やDECT方式と共用せず、sXGP専用で使える帯域を新たに設ける。

 もっとも、使用帯域が10メガヘルツ幅に拡大したところで通信速度は下りで最大毎秒28メガビット、上りで同8メガビット程度。通信速度の低さにがく然とするかもしれないが、免許不要で手軽にプライベートネットワークを構築できるメリットがある。

 多くのベンダーがsXGPのソリューションを手掛ける中、携帯大手で並々ならぬ力を注ぐのがソフトバンクだ。2023年4月には子会社のビー・ビー・バックボーンが展開するsXGPサービスでiPhoneやiPadが利用可能になったと発表した。

 iPhoneとiPadは以前から、sXGPで使用する1.9ギガヘルツ帯(Band 39)に対応していたが、ソフトバンクから米アップルに働きかけてビー・ビー・バックボーンのsXGP専用プロファイルを共同開発した。ビー・ビー・バックボーンのSIMカード(別途eSIMも提供)を挿すと、同プロファイルをダウンロードしてsXGPの利用に必要なパラメーターを自動的に適用する。使用周波数もBand 39にロックされるので、圏外から戻る際に大量の周波数(Band)をサーチせずに瞬時で圏内復帰できる分、バッテリーの持ち時間が大きく改善したという。

 ビー・ビー・バックボーンによると、医師をはじめとした医療関係者の間ではiPhoneやiPadへの根強い需要がある。同社は今回、音声のVoLTE(Voice over LTE)対応により、通話品質と使い勝手も高めた。従来のVoIP(Voice over IP)方式はネットワークの混み具合によって通話品質が影響を受けやすく、専用アプリを使う必要があった。これを標準アプリで携帯電話と同様に使えるようにした。患者のナースコールもiPhoneで受けられる。

 ビー・ビー・バックボーンが提供する「sXGPポータブルキット」は4Gの交換機(EPC)×1台、基地局(AP)×1台、スマホ(AQUOS sense3)×2台などがセットで初期費用は50万円程度。追加の基地局も1台当たり十数万円という。一方、ローカル5Gはスターターキットだけで数百万円かかり、本格導入で最低数千万円とされる。

5.体と行動のインターネットって何?活用広がる「IoB」とは(6.19 日経XTEC)
スマートフォンなどと連携する機器やセンサーを通じて、人間の行動や体調を見守る技術。生活習慣の改善、健康状態の確認、日々の活動パターンを考慮した広告の表示などに利用される。

 IoBは「Internet of Bodies(体のインターネット)」と「Internet of Behavior(行動のインターネット)」の2つの用語の略称として使われている。

 前者は、スマートフォンなどと連携する機器やセンサーを使って食事や運動、睡眠、各種健康状態をモニターする。集めたデータはスポーツ技能の向上や生活習慣の改善などに活用できる。後者は、こうした健康情報に加えて、利用者の日ごろの活動地域やSNSの利用傾向、ネットショッピングの購買履歴など、個人の活動もモニターする。個人に適した広告を出し分けたり、社会保障上の脅威をいち早く検出したりする用途で使われる。

 IoBに対応する機器は、急速に市場が拡大している。体重計や血圧計、水筒、トイレ、トレーニングマシンなど、従来からある製品にセンサーやスマートフォン接続機能を追加し、体調や運動に関する情報を記録、分析できる。またスマートウオッチなど、長時間身に着ける機器に各種センサーを搭載し、1日の行動や睡眠のパターン、心拍数、心電図、体に取り込まれた酸素のレベルなども手軽に測定できる。専用機器より測定精度で劣ることも多いが、長期にわたって継続的に測定できるメリットがある。自覚するのが難しい体調の変化を確認したり、長い周期の変化パターンを比較したりすることで健康管理に役立てられる。

 こうした機器で収集されるデータは、利用者のプライバシーに関わる重要な内容を含んでいる。そのため、収集した健康状態に関する情報を基に保険の取り扱いを不利にさせられたり、ネット上での活動内容を拡大解釈されて反政府活動家のような扱いを受けたりする恐れもある。こうした本来の目的以外に利用された場合の不利益を懸念する声もある。

ホームページへ