1.AppleがAR端末「Vision Pro」発表、新型チップ「R1」が超低遅延処理を実現(6.6 日経XTEC)
米Apple(アップル)は米国時間2023年6月5日に開いた年次開発者会議「WWDC」でAR(拡張現実)対応のゴーグル型ヘッドマウントディスプレー「Apple Vision Pro」を発表した。新型半導体チップ「R1」を採用し、超低遅延のストリーミング処理を実現する。
価格は3499ドル(約49万円、ただし日本市場での価格は未定)で、米国での発売は2024年初頭から。2024年後半には「さらに多くの国で発売する」(アップル)としている。
「One more thing(もう1つある)」──。WWDCでは恒例となったこのセリフとともに、同社のティム・クックCEO(最高経営責任者)がVision Proを発表した。「かつてMacがPCを切り開き、iPhoneがモバイルコンピューティングを切り開いてきたように、Vision Proは空間コンピューティングを切り開く」とコメント。MacとiPhoneという一時代を築き上げた製品に連なるデバイスであることを強調した。
まずは主な機能を解説しよう。Vision Proは現実世界にデジタルのスクリーンやアプリなどを投影できるAR端末だ。コントローラーなしで視線やジェスチャー、声、本体に設けたボタンなどで直感的に操作する。
周囲の空間にデジタルコンテンツを重ね合わせることができ、メールやWebブラウジングなどの事務作業、映画やゲームなどのエンターテインメントを大画面で楽しむことができる。
VR(仮想現実)やARは長らく「次代のテクノロジー」と言われながら、ユースケースや参入企業が限定的で、市場としてはいまだ小さい。米IDCによれば、2022年のVR・AR端末の出荷台数は880万台で、前年比で20.9%減少した。
2.いす取りゲームが大流行か、出社回帰に揺れるオフィス(6.9 日経XTEC)
2023年は日本中で「いす取りゲーム」が大流行するかもしれない。と言っても幼稚園や小学校での話ではない。舞台は都市部を中心とするオフィスだ。在宅勤務から出社へと切り替えるビジネスパーソンが増え、新型コロナ禍の最中に縮小したオフィスで座席不足が生じつつある。調査によって働き方の動向を探る特集の最終回は、オフィスと生産性の最新状況について取り上げる。
フリーアドレスとは、社員が座席と机を自由に選べる形態を指す。社員の人数と同じ数の席を用意するのではなく、「全社員数の半分」など、配置数を絞ることが多い。一人ひとりに固定の席をあてがう従来型よりもオフィスの面積を減らせ、関連コストの削減につながる。
調査の結果、「フリーアドレスを導入している、利用できる」と答えた人の合計割合は44.3%に達した。フリーアドレスを導入している、利用できると答えた人のうち、テレワークを「週3日以上」利用している人の割合は50.0%に上った。
実際、座席不足に直面したとの証言が自由意見にあった。「テレワークが中心となってから、オフィスの座席が減り、出社しても席が足りないことがある」(40代、東京都、IT・通信、課長クラス)。
3.国内スマホメーカー3社が相次ぎ撤退・破綻、残るシャープとソニーは大丈夫なのか(6.9 日経XTEC)
バルミューダ、京セラが個人向けスマートフォンからの撤退を発表し、FCNTは民事再生法の適用を申請して事実上経営破綻。市場の急速な悪化で国内スマホメーカーが相次ぎギブアップした。残るシャープとソニーは大丈夫なのだろうか。
その4日後となる2023年5月16日には、高耐久スマホの「TORQUE(トルク)」シリーズなどで知られる京セラが、決算説明会の場で個人向けスマホ事業の終息を明らかにした。同社の場合、法人向けのスマホ事業は継続するので完全な撤退というわけではない。だが規模が大きいコンシューマー向け事業に見切りをつけたことで、事業規模は大幅に縮小すると考えられる。
そこで懸念されているのが、残る国内スマホメーカーの今後である。一気に3社が撤退したことにより、主要な国内メーカーとして残っているのはシャープとソニーの2社になった。両社とも世界的なシェアが決して高いとはいえず、国内市場への依存度が非常に高い。このため不安要素が大きいのは確かだろう。
ただこの2社がすぐに撤退するとは考えにくいと筆者はみる。まずシャープに関してだが、同社は既に台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の傘下にあり、純粋な国内資本の企業ではない。それだけに、製造や調達など規模の面で強みを持つ鴻海精密工業のリソースを存分に生かせることが、他の国内メーカーにはない強みとなっている。
ソニーに関して言えば、スマホ事業を巡って既にもっと厳しい経験をしていることが、現在の市場を生き抜く上で強みとなっている。それは2014年に経験した、ソニーモバイルコミュニケーションズの大赤字である。
そこでソニーは、現在のソニーグループ社長である十時裕樹氏がソニーモバイルコミュニケーションズの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任。十時氏の下で立て直しを図ることとなり、大幅なコストカットで事業規模を大幅に縮小。その結果国内外でのシェアは激減し市場での存在感が大きく失われたものの撤退に至ることはなく、数年をかけて利益が出る体制にまで持ち直した。
その後ソニーモバイルコミュニケーションズはソニーに吸収され、スマホ事業も高い性能を求めるクリエイター向けに特化。性能を大幅に強化した高額なハイエンドモデルを主軸にするなど、規模よりも利益の追求を徹底し事業継続を優先する方針を取っている。
以上のことから、少なくとも現時点で2社が撤退に至る可能性は低いとみる。だがこれ以上市場が悪化するとなれば話は別だ。そもそも3社が撤退・破綻に至ったのには、世界的なスマホ市場の飽和に加え、2019年の電気通信事業法改正による国内でのスマホ値引き規制、コロナ禍での半導体不足を機とした半導体の高騰、2022年半ばから急速に進んだ円安といった複数の要因が働いている。
4.コクヨがランサムウエア攻撃を受けたと公表、情報流出の有無は確認中(6.8 日経XTEC)
コクヨは2023年6月8日、同社グループが保有する情報システムの一部においてランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃を受けたと発表した。顧客情報や個人情報の流出の有無は現在確認中だ。
2023年6月5日から6日にかけて、標的型攻撃の対策ソフトが異常を検知するとともに、社内の会計システムなど複数のシステムが正常に動かなくなった。具体的な要求内容は示されていないが、脅迫ととれるメッセージが確認されているという。
5.「iOS 17」でコミュニケーションが進化、AIでライブ留守電や自動修正が可能に(6.7 日経XTEC)
iOSの新バージョン「iOS 17」に関しても、コミュニケーション関連機能を中心に多くのアップデートがあり注目された。そのベースとなっているのはAI(人工知能)技術だ。コミュニケーションにもAI技術が大きな影響をもたらしつつあることが見て取れた。
今回のiOSのアップデートにおける大きなポイントは、コミュニケーションに関連する機能の大幅強化である。実際、iOS 17では「FaceTime」「iMessage」だけでなく、モバイル通信の基本中の基本となる「電話」アプリもアップデートされた。
電話アプリの新機能の1つに挙げられるのが「連絡先ポスター」だ。文字通り、電話をかけてきた相手のポスターを表示する機能である。表示される写真や画像、名前のフォントなどは自由にカスタマイズできる。日本語と中国語については名前の縦書き表示にも対応する。
そうした機能強化の中で筆者が注目したのは、AI技術を活用したコミュニケーション機能が増えたことだ。その1つが電話アプリの新機能「ライブ留守番電話」である。
これは留守番電話のメッセージを文字に起こして表示する機能だ。テキストとして表示されたメッセージを確認してから、電話に出るかどうかを判断できる。その文字起こしにはNeural Engineによるデバイス上での機械学習処理が活用されている。Neural Engineとは機械学習処理に特化したSoC(システム・オン・チップ)の一部。プライバシーに配慮し、クラウドにはメッセージを送信しないのがポイントだ。
そしてもう1つ、AI技術を活用した新機能が「ジャーナル」だ。簡単に言ってしまえばiPhoneで日記を書く機能である。ただし単なる日記ではない。撮影した写真や行った場所といったiPhoneに保存されたデータを基に、日記に書く内容の候補を提示する。AI技術を用いて日記を書く動機を与えてくれるのが大きなポイントだ。
プライバシーを重視するアップルだけあって、一連の機能はAI技術を活用するといっても昨今注目されている「生成AI」とは異なる。またその処理もデバイス上で実施している。だが一連の新機能からは、AI技術がコミュニケーションの進化に欠かせなくなっていることがよく分かる。
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