1.新発表が相次いだMicrosoft Build 2023、ナデラCEOが強調した5大AI製品とは(5.29 日経XTEC)
米Microsoft(マイクロソフト)は2023年5月23〜24日(米国時間)に開催した開発者会議の「Microsoft Build 2023」で、新しい製品やサービスを大量に発表した。Satya Nadella(サティア・ナデラ)CEO(最高経営責任者)が基調講演でピックアップした5種類のAI関連製品・サービスを中心に、重要トピックスを見ていこう。
マイクロソフトは今回のBuildで、50種類以上のサービスを発表した。注目はやはり生成AI(人工知能)に関するもので、ナデラCEOは基調講演で「(生成AIによって)我々開発者がソフトウエアを開発する方法(How we build)が根本的に変化する」と何度も強調した。
ナデラCEOが基調講演で取り上げた1つ目の発表は、米OpenAI(オープンAI)の対話型AIサービスである「ChatGPT」の標準検索エンジンに、マイクロソフトの「Bing」が採用されたことだ。ユーザーがChatGPTで最新の情報について質問すると、ChatGPTはBingを使ってWebを検索し、それによって得られた情報に基づいて回答を生成するようになる。
従来のChatGPTは、2021年9月までの情報に基づいて回答を生成していた。検索エンジン機能が利用可能になることで、最新の情報に基づいた回答が可能になる。5月23日から有償のChatGPT Plusのユーザーに対して機能を利用可能にした。無償版のユーザーにも提供する予定だ。
ナデラCEOが2つ目に紹介したのは「Windows Copilot for Windows 11(以下、Windows Copilot)」だ。Windows 11に大規模言語モデル(LLM)をベースにしたAIアシスタント機能を実装した。2023年6月からプレビュー版の提供を開始する。
Windows Copilotではユーザーが文章でAIにタスクを依頼すると、AIがOSの設定変更やアプリケーションの操作、文章の要約などをサポートする。ナデラCEOはWindows Copilotによって「全てのユーザーがWindowsのパワーユーザー(高度に使いこなせるユーザー)になる」と主張した。
2.セキュリティーの死角を発見しシステム守る「ASM」、既存の防御策とどう違う?(6.2 日経XTEC)
攻撃対象領域管理(Attack Surface Management、ASM)とは、サイバー攻撃を受ける可能性のある全てのIT資産を「攻撃対象領域」として洗い出し、それらの脆弱性を検出して対処すること。IT資産の中でも特にインターネット上に公開されているサーバーやネットワーク機器などを管理する場合が多く、そのことを強調してEASM(External Attack Surface Management)と呼ぶ場合もある。
ASMの目的は、情報システム部門などが存在あるいは詳細情報を把握していないIT資産を見つけ出し適切な管理につなげることだ。あらゆる業務のデジタル化が進み、管理すべきIT資産は増加し続けている。結果としてネットワーク機器の脆弱性が放置されるなど、システムへの侵入や被害の拡大を許す原因となっている。
攻撃者の視点から不正侵入される場所がないかを探す手段としては、ペネトレーションテストが知られる。ペネトレーションテストは調査を希望する企業があらかじめ指定したシステムに対して実施するため、そもそも存在を把握していないIT資産の脆弱性を検出することは難しかった。
外部に公開されている攻撃対象領域を探し出すには、インターネット上の公開情報を使う。ASMサービスを提供するパロアルトネットワークスの室井俊彦Cortex営業本部SEマネージャーによると、調査対象の企業からは「会社名だけを提供してもらうイメージ」だという。公開情報から手に入るドメイン名やそのドメイン名の登録者情報(WHOIS情報)、IPアドレスなどの情報を統合していき、調査対象の企業が保有しているサーバーやネットワーク機器などを洗い出していく。さらに見つかった機器に対してHTTPなど一般的なリクエストを送り、レスポンスから機器の状態を解析していく。
ASMは未確認のIT資産や脆弱性を発見して終わりではない。見つかった脆弱性に対し適切に対処することまでを含む。例えばOSのバージョンを更新する、セキュリティーパッチを適用する、ネットワーク構成を見直すなど、リスクの度合いにより適切な対処方針を決定することが必要だ。ASMサービスの中にはリスクの度合いをスコア化したり、リスクを自動で修復したりといった機能を含むものもある。
3.5G-Advancedや6Gで有効利用できるRISの最新11事例、欧州標準化団体ETSIが紹介(6.1 日経XTEC)
ETSI(European Telecommunications Standards Institute、欧州電気通信標準化機構)は2023年5月16日、同団体のRIS(Reconfigurable Intelligent Surface)仕様策定グループが作成したリポートを公開した。RISは、電磁波の波長より小さい構造体を利用して電波の反射方向を制御するメタマテリアル技術を活用した次世代のマルチアンテナ技術。同リポートでは、RISを5G(第5世代移動通信システム)や5G-Advanced、6Gで有効活用するためのシナリオやユースケースについて解説している。
RISにより性能強化や新機能提供を可能にする11の具体的なユースケースを紹介している。カバレッジ、セキュリティー、ポジショニング、センシング機能を強化し、エネルギーや周波数を効率的に使用するための手法などが含まれている。
建物の壁、街灯、ポストなど様々な場所に設置できることから、柔軟な展開が可能となる。パワーアンプなど高価な能動部品を必要としないため、低コスト、低消費エネルギーでの運用も見込める。
4.クアルコム、5G/5G-Advanced/6Gに向けた周波数帯確保に関する見解を披露(5.31 日経XTEC)
米Qualcommは2023年5月24日(現地時間)、5G(第5世代移動通信システム)や5G-Advanced、6Gで必要となる周波数確保に関する見解を披露した。新しい周波数帯の割り当てに加え、高度な周波数共有技術や新しいユースケースに対応する革新的な技術が必要になるとしている。
現在5Gでは、低周波数帯、中周波数帯とミリ波帯を使った大規模な商業展開を行っている。今後のさらなる成長に向けては、既存の周波数帯域の効率利用を進めると同時に、MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術の性能向上や周波数共有技術の探求、新しい周波数帯の割り当て、新しいユースケースに対応できる技術の商用化が必要となる。
周波数共有は、異なる世代の移動通信技術を同じ帯域で共存するだけでなく、衛星と移動通信など、異なる分野の技術共存に向けても重要となる。
前世代技術からの大きな改善を行うためには、さらなる帯域確保が必要となる。5Gでは、帯域幅が従来の20MHzから100MHzに広がった。6Gでは、少なくとも500MHzの連続した帯域が必要となる。しかし、新しい周波数帯を確保することは容易ではなく、今後、既存のサービスとの共存や互換性についても、早急に調査を行う必要がある。
5.「TAKANAWA GATEWAY CITY」でKDDIがデジタルツイン、成功の鍵を握るのは何か(5.29 日経XTEC)
JR東日本とKDDIは2023年5月16日、JR東日本が東京・品川で開発を進める「TAKANAWA GATEWAY CITY」での共創を発表した。TAKANAWA GATEWAY CITYを壮大な実験場と位置付け、「デジタルツイン」による新たなまちづくりをアピール。KDDIも自ら本社を移転して共創に貢献する姿勢を示した。この共創の成功の鍵を握るのは何だろうか。
さらに同日に実施された記者説明会で明らかにされたのが、KDDIがTAKANAWA GATEWAY CITYのまちづくり共創パートナーとなったことである。同社はTAKANAWA GATEWAY CITYの「複合棟I Northオフィス」に本社を移転することを発表するとともに、JR東日本と「都市OS」の構築を通じた新しいサービス創出を可能にするまちづくりを進めるとした。
都市OSとは、街の設備や人のデータを収集・分析し、分野をまたいでデータを活用し合うことができるデータ基盤。TAKANAWA GATEWAY CITYではその都市OSを活用し、リアルの街から得られるデータをサイバー空間上に収集する。同時にJR東日本やKDDIが持つさまざまなデータも活用してサイバー空間上で分析し、街に関わるさまざまなサービスを提供するという。
具体的には、人々の行動データや鉄道、商業などのデータを組み合わせて分析し、リアルタイムにフィードバックすることで生活を快適にするサービスの開発を進める。加えて3Dの都市モデルと人流データなどを組み合わせた防災シミュレーションや、TAKANAWA GATEWAY CITYを走行するロボットが顧客にアプローチする回遊販売サービスなども目指すとしている。
一連の取り組みは、KDDIが最近力を入れているデジタルツインの取り組みの一環といえる。同社はここ最近、成長領域と位置付ける法人事業を主体に、中核事業としてデジタルツインに力を注いでいる。
ホームページへ