週間情報通信ニュースインデックスno.1367 2023/2/18


1.JUASの調査で見えたDXの長い道のり、推進企業に共通する3つの施策(2.17 日経XTEC)
「まだまだDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の道のりは長そうだ」。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2023年1月から順次、速報値として結果を発表している「企業IT動向調査2023」を踏まえてこう指摘する。

 同調査は、JUASが企業のIT投資やIT戦略などに関する最新の動向を調べたものだ。調査は2022年9月9日〜10月27日に実施。東証上場企業とそれに準じる企業4500社のIT部門長に調査を依頼し、Webアンケートで1025社から回答を得た。

 冒頭の指摘は、同調査の質問項目のうち「DX推進ができていると思うか」への回答結果を踏まえたものだ。この質問について「非常にそう思う」「そう思う」と答えた企業は合わせて全体の24.7%だった。2021年度に実施した前回調査に比べて増えてはいるものの、1.9ポイント増にとどまった。

 では企業が長いDX推進の道のりを乗り越える工夫はないのだろうか。この調査では社内におけるIT・デジタル関連の取り組み状況などについても尋ねている。調査担当であるJUASの山畔秀雄事業部シニアマネージャーは、調査結果のクロス集計などにより、DXを推進できている企業に3つの特徴を見いだした。

 具体的には、(1)CIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)を設置している、(2)IT戦略を経営戦略に強く組み入れている、(3)IT部門が事業部門や経営層と連携している、である。

「企業IT動向調査2023」のうちIT・DX施策に関する結果の一部(速報値、単位は%) (出所:日本情報システム・ユーザー協会の資料を基に日経クロステックが作成)
「DXを推進できていると思う」と回答した企業% 「DXを推進できているとは思わない」と回答した企業%

「役職として定義されたCIO等がいる(専任)」と回答した企業(n=54) 46.3 27.8
「CDOを設置済み」と回答した企業(n=102) 54.9 17.7
「経営戦略を実現するためにIT戦略は無くてはならない」と回答した企業(n=262)
45.1 22.2
「経営者直轄の独立した組織が定義されている」と回答した企業(n=146)
53.4 12.4
「IT部門内にDX推進チームを組成している」と回答した企業(n=136)
59.6 16.9

2.5G固定回線・法人サービスや郵便局店舗閉鎖、楽天モバイルの急な動きは何を示すのか(2.17 日経XTEC)
楽天モバイルが2023年早々、いくつかの大きな動きを見せている。固定ブロードバンドの代替サービス「Rakuten Turbo」や法人向けプランを新たに提供する一方、郵便局内に展開してきた簡易型店舗を約200店閉鎖すると発表。これだけ大きな動きが相次いでいるのは、楽天モバイルを取り巻く厳しい現状がある一方、今後一層踏み込んだ施策を打つための布石にも見える部分がある。

 まず新サービスの提供開始を相次いで打ち出した。その1つが2023年1月26日に発表した「Rakuten Turbo」である。これはモバイル回線を利用した固定ブロードバンドの代替サービスで、NTTドコモの「home 5G」やソフトバンクの「SoftBank Air」などと同じ位置付けとなる。Rakuten Turboに対応した据え置き型のWi-Fiルータータイプの端末「Rakuten Turbo 5G」を設置すると、固定回線を引かずに自宅で高速通信が利用できることが特徴だ。

 そしてもう1つ、2023年1月30日に発表した「楽天モバイル法人プラン」である。こちらはその名前の通り法人向けのモバイル通信サービスであり、専用アプリ「Rakuten Link Office」を用いることで国内通話がかけ放題になる点が大きな特徴となっている。

 楽天モバイルは2023年に再び多くのユーザーを失ってでも料金プランに大ナタを振るうのかどうか。同社が赤字解消のためどこまで踏み込んだ策を打ち出すかは、再び携帯電話業界全体に大きな影響を与えることに間違いないだろう。

3.5Gミリ波の世界情勢をOokla調査、進むライセンス取得と進まない端末・サービス対応(2.17 日経XTEC)
インターネットの接続性能評価サービス「Speedtest」を運営する米Ooklaは2023年2月13日(現地時間)、ミリ波帯を使った5Gの世界情勢や、活用が進む米国での速度などを調査した結果を発表した。ミリ波運用時の課題や、今後の活用のヒントとなるミリ波の利点などについても言及している。

 5G NRで利用可能なミリ波帯として、2019年11月のWRC-19(世界無線通信会議)では、24.25G〜27.5GHz、37G〜43.5GHz、45.5G〜47GHz、47.2G〜48.2GHz、66G〜71 GHzを割り当てた。3GPPのリリース15ではこのうち、24.25G〜52.6GHzを利用可能としている。最近標準化が完了した3GPPリリース17では、免許不要の60GHz帯を含めた71GHzにまで拡張されている。

 ミリ波帯の割り当ては当初、米国、日本、韓国で積極的に行われたものの、2022年はインドとスペインで行われた26GHz帯のオークション2件のみだった。そのうちインドでは、衛星プロバイダーが28GHz帯の割り当てに反対したため、規制当局が26GHz帯のみの競売を実施し、重複や干渉の問題を最小限に抑えている。

 ミリ波帯の周波数割り当ては現在、欧州で機運が高まっている。これまで欧州では14カ国がミリ波帯のライセンスを取得しているが、今後ハンガリー、オーストリア、英国などがライセンス取得を計画している。GSA(Global Mobile Suppliers Association)によると現在、ミリ波帯のライセンスを取得している国は26カ国である。

 ミリ波帯は、一般消費者向けに加え、工場のロボットやAGV(無人搬送車)など、より大容量・低遅延を必要とする企業が使い始めている。各国の規制当局が、企業向けに中・高周波帯域を使った独自ネットワーク配備を奨励していることから、これまでにオーストラリア、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、日本、香港、フィンランド、スウェーデン、韓国などが企業向けの5Gミリ波帯を確保している。

 この事例から、ミリ波帯対応5G端末の整備が重要としている。GSAの最新調査によると、市販されている5G端末のうち、サブ6(6GHz未満の周波数帯)対応が85.7%、ミリ波帯対応はわずか8.9%となっている。

 例えば米国では、「iPhone 12」「iPhone 13」「iPhone 14」の全モデルがミリ波帯とサブ6に対応しているが、韓国では未サポートとなっている。同様に、Androidスマホの「Pixel 6 Pro」は、米国、オーストラリア、日本でのみミリ波帯をサポートしている。米国の価格は、サブ6G対応機種が599米ドル、ミリ波帯対応機種が699米ドルとなっている。後者は米Verizonや米AT&Tなど通信事業者経由で提供されているが、この価格差はミリ波専用のアンテナなど部品により生じている可能性が高い。なお最近では、香港に本社を置く調査会社Counterpoint Researchの調べによると、サブ6対応機種とミリ波対応機種の価格差は平均して10〜20ドルに縮まっているとする。

 米国では、AT&T、米T-Mobile、Verizonがミリ波を使用したモバイルサービスを提供し、米US CellularがFWAを展開している。Speedtestではミリ波対応5Gの下り通信速度して最大1.6Gビット/秒を確認しており、これを米国の5G周波数帯全体で比較すると、中周波数帯の4.29倍、Cバンドの6.86倍、低周波数帯の26.1倍となる。

 Ookla傘下のRootMetricsは、通信が混雑した環境での5Gミリ波の下り速度中央値が231.40Mビット/秒となり、中周波数帯利用時の44.80Mビット/秒、低周波数帯時の49.50Mビット/秒に比べ、4倍以上の値を示したことを報告している。混雑時の5Gミリ波で観測された231.40Mビット/秒は、混雑していない環境での中周波数帯5G速度256.80Mビット/秒とほぼ同等となっている。

4.ランサムウエア被害に遭うシステムの3つの「ない」、攻撃を前提とした対策を急げ(2.17 日経XTEC)
病院や製造業、サービス業など、業種・規模を問わず、ランサムウエアを使った攻撃の被害が発生している。ランサムウエア対策はすべての企業において急務となっている。

 対策として、ほかのマルウエアと同様に侵入を防ぐための境界型防御が有効だ。そのほかにも、ランサムウエアはパソコンやサーバーのデータを暗号化するため、データのバックアップも効果的だ。

 しかし、ランサムウエア被害に遭った徳島県つるぎ町立半田病院や大阪急性期・総合医療センターで、初期対応などに当たったソフトウェア協会(SAJ)の板東直樹理事は、「システムに侵入されない対策やバックアップだけでは不十分だ」という。必要なのは、「攻撃を前提とした対策」だ。

 具体的にどのような対策をとればよいのか。ランサムウエア被害に遭ったシステムの特徴やランサムウエア攻撃の手法を見ながら、費用を多くかけなくても導入できる効果的な対策を紹介しよう。

 ランサムウエアの被害に遭ったシステムの特徴として、板東理事は以下の3つを挙げた。(1)詳細なネットワーク構成図がない、(2)セグメントを分けていない、(3)ログの管理ができていない、だ。この3つの「ない」は、被害組織においてセキュリティーの意識や情報システム担当者などの人的リソースが不足していることを表している。

5.ミリ波利用はほぼゼロ、日本の5G再興に求められる「選択と集中」(2.15 日経XTEC)
日本で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まってから早くも3年が過ぎようとしている。韓国や中国など近隣諸国と比べて日本の5Gの出遅れが指摘される中、特にミリ波帯(国内では28GHz帯)を使った5G展開の難しさが浮かび上がっている。ミリ波帯で処理されるトラフィック量がほぼゼロであり、ほとんど使われていない実態が明らかになったからだ。ミリ波帯の5Gを後回しにし、Sub6帯(2.5G〜6GHz帯)以下の周波数帯を使った5G展開に注力すべきだという意見も出ている。

 「5Gのトラフィック量は、国内すべてのモバイルトラフィックのうちの3?4%にすぎない。特にミリ波帯で運ばれるトラフィック量は非常に少ない」 2023年2月9日に開催された総務省の有識者会議「5Gビジネスデザインワーキンググループ(WG)」にて、楽天モバイル執行役員技術戦略本部長の内田信行氏は、日本の5Gの実態をこのように訴えた。

 国内の5G基地局は、5G専用帯域のSub6帯やミリ波帯のほか、4G帯域を転用した700MHz帯や1.7GHz帯、3.5GHz帯などのローバンド・ミッドバンドによって展開されている。5Gならではの高速・大容量通信を実現するためにはSub6帯やミリ波帯を活用する必要がある。

 なぜミリ波帯の5Gはこれほどまでに使われていないのか。理由は2つある。1つは、ミリ波帯のような高い周波数帯は、遮蔽物によって電波を遮られやすく、エリア展開が難しいという点だ。米国など諸外国でもミリ波帯の活用は、スタジアムや医療関連施設など、スポット的な活用が主なユースケースだ。

 ほぼ10年ごとに世代交代する携帯電話サービスにおいてスムーズな移行を果たすためには、「ネットワークの展開」と「端末の普及」、そして利用を促す「新たなサービス」という3つの要素が不可欠だ。

 4Gは、世代交代に必要な3つの要素がこれまでにないほどそろっていた。「スマホ」という4Gの利用を促す新たなサービス像が見えており、端末の普及が見込めたことから、携帯電話事業者はネットワークへ積極的に設備投資できたからだ。3つの要素を推し進めるサイクルがうまく回る構造にあった。

 5Gは、携帯電話の世代の中でも「最も長いサイクルになる」(エリクソン・ジャパン社長のLuca Orsini氏)という指摘がある。5Gは段階的に機能拡張が施されるほか、展開される周波数帯も多岐にわたるからだ。5Gネットワークの整備は10年単位で拡張が続く可能性がある。

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