週間情報通信ニュースインデックスno.1361 2023/1/7


1.NTTドコモが5Gの本命「SA」対応のモバイルルーター、下りで最大4.9Gbps(1.6 日経XTEC)
NTTドコモは2023年1月6日、5G(第5世代移動通信システム)対応の高速モバイルルーター「Wi‐Fi STATION SH-54C」を、1月16日に発売すると発表した。5G単独のネットワークを使う通信方式「5G SA」に対応しており、下り(受信)で最大4.9Gbps(ギガビット毎秒)、上り(送信)で最大1.1Gbpsのスピードで大容量コンテンツを快適に楽しめるのが特徴だ。

NTTドコモは5G SAを法人向けに2021年12月から提供し、2022年8月から一部のスマートフォン向けに提供している。 もっとも、5G SAで通信可能な場所は主要ターミナル駅の構内やその周辺、イベント会場、商業施設など、ごく一部のスポットに限られる。例えば東京都では2022年11月末時点で丸の内駅前広場の1カ所だけ。大阪府など西日本エリアがスポット展開で先行しており、2023年5月頃から東日本エリアでも増える見通しだ。

 新商品のSH-54Cは5G SAの高速通信機能を生かすため、子機をつなぐ無線LAN規格にWi-Fi 6を採用し最大2.4Gbpsの高速通信が可能だ。付属のUSB-Ether変換ケーブルによる有線LAN接続や、USBテザリングにも対応している。

2.チャットボットAIの返答は全て「幻覚」、最大の難関はハルシネーションの善悪問題(1.6 日経XTEC)
2023年における最重要テクノロジーは「ChatGPT」に代表されるチャットボットAI(人工知能)だ。Webを検索せずともユーザーの調べたいことに答えてくれるチャットボットは、Google検索を脅かす存在になると見なされ始めている。

 米メディアのThe Informationは2023年1月3日(米国時間)、米Microsoft(マイクロソフト)が2023年3月にも、同社の検索エンジンBingにChatGPTベースの機能を提供する可能性があると報じている。

 ChatGPTベースのBingではユーザーが検索クエリーを入力すると、その結果としてURLのリストが従来のように表示されるだけでなく、ChatGPTが生成した回答文が出所表記付きで出力されるのだという。ユーザーはURLに飛んで原文を読み込まなくても、ChatGPTが生成した文章を読むだけで調べ物を完結できるようになる。

 しかしChatGPTのような巨大言語モデルベースのチャットボットAIには、大きな弱点がある。根拠のないデタラメな内容や人種差別的な表現が含まれる文章を生成してしまうことだ。これは米Meta(メタ)が2022年11月に公開したチャットボットAI「Galactica」が炎上した原因でもあった。

3.インフラ・スマホ・通信行政、2023年の携帯電話業界で最も関心を呼ぶ話題は何か(1.6 日経XTEC)
円安に通信障害、「1円スマホ」問題にプラチナバンド騒動と、混乱が続いた2022年の携帯電話業界。2023年はそこから抜け出し、明るい未来を打ち出せるのだろうか。インフラ、端末、そして通信行政の3つの視点から、2023年の注目すべき話題を見ていこう。

 まずはインフラについてだが、携帯電話各社は5Gのネットワーク整備を積極的に進めており本来であればそちらが注目されてしかるべきだ。だが正直なところ日本では年々、5Gの影が薄くなる一方だ。2023年もエリアの拡大や、5Gの本領を発揮できるスタンドアローン運用への移行などは進められるだろうが、コンシューマー向け、法人向け共に5Gの実力を生かせるキラーデバイスやキラーサービスが登場していない現状、2023年も関心が大きく高まるとは考えにくい。

 2023年は、世界的にも低軌道衛星を活用した通信サービスが増加する可能性が高く、中でもスマートフォンと衛星を直接つないで通信しながら、iPhone 14シリーズのSOSよりも高度なサービスが受けられる環境整備が進むことが期待される。国内でも「スペースモバイル計画」で衛星とスマートフォンとの直接通信を目指す楽天モバイルが低軌道衛星を活用した通信サービスの準備を進めており、その実現に向けた法整備も同時に進められるとみられることから、期待が高まるところだ。

4.携帯大手の「魔の3年」がようやく終わる、ARPU反転の2023年にあの会社はどうする(1.4 日経XTEC)
「魔の3年の終わりがようやく見えてきた」―― 。ソフトバンクの宮川潤一社長がこう表現する通り、携帯大手3社は2021年の官製値下げの減収影響からいよいよ抜け出しつつある。2023年は競争激化につながる要素も見当たらず、強いて挙げれば「MNP(モバイル番号ポータビリティー)のワンストップ化」ぐらい。5G(第5世代移動通信システム)の普及拡大による成長を模索する1年となりそうだ。

 携帯大手3社は官製値下げでARPU(契約当たり月間平均収入)の下落が続いていたが、足元では下げ止まりの兆しが出ている。NTTドコモは2022年7〜9月期の「モバイルARPU」が4080円と、4〜6月期の4030円から50円増加した。中大容量プランの契約数が順調に伸びており、同社の井伊基之社長は2022年11月の決算説明会で「トリガーは『YouTube』だと思う」との見立てを示した。エンターテインメント系に限らず映像をスマホで見る文化が広がっており、「4000円程度で下げ止まるのではないか」(同)とした。

 携帯各社が期待を寄せるのは、5GによるARPUのさらなる押し上げだ。5Gの契約者は4Gに比べて利用トラフィックが多くなる傾向があるほか、今後は5Gの本命とされる「SA(スタンドアローン)方式」の本格展開が始まる。5G SAでは通信品質などの要件に応じてインフラを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」や、ユーザーの最寄りで処理する「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)」などにより、追加料金を徴収しやすくなる。現状は不在のキラーコンテンツ/サービスを生み出せれば大幅な上積みもありそうだ。

 シティグループ証券の鶴尾ディレクターは、楽天モバイルの単年度黒字化の時期を2028年12月期とみる。その前提となる契約数は1000万件、ARPUは3000円とした。どちらも現在の2倍以上の水準に高めなければならない。

5.なぜ拡張が必要だったのか、「Wi-Fi 6E」と「Wi-Fi 6」の違いとは(1.4 日経XTEC)
 「Wi-Fi 6E」は無線LANの最新規格です。使っている技術は現在主流となりつつある「Wi-Fi 6」と同じですが、6GHz帯の周波数帯も利用できるようにしました。Wi-Fi 6を拡張したため「Extend(拡張)」を意味する「E」が付いています。

 Wi-Fi 6を含め、これまでの無線LANは2.4GHz帯と5GHz帯の周波数帯を使ってきました。これらの周波数帯は混雑気味で干渉が悩みの種です。2.4GHz帯は無線LANだけでなくBluetooth対応機器や電子レンジも使用しています。

 5GHz帯もスマートフォンなどの利用が増え、混雑してきました。さらに航空レーダーや気象レーダーもこの周波数帯を使っています。レーダーは無線LANより優先して使われます。レーダーの電波を検知すると、無線LANは通信を1分間停止しなければなりません。

 Wi-Fi 6Eは6GHz帯も利用することで悩みを解消します。6GHz帯は2.4GHz帯や5GHz帯と比べて無線LAN以外の機器と干渉する心配が少なく、レーダーによる通信の一時停止もありません。これまでの無線LANでも使われていないので、余裕を持って帯域を確保できます。複数の通信チャネルを束ねて高速化する技術を利用しても、安定した通信が期待できます。

 日本では、総務省が電波法関連省令を2022年9月に改正し、Wi-Fi 6Eを利用できるようになりました。これを受けて複数のベンダーがWi-Fi 6E対応のルーターやパソコンを発売しました。2022年12月時点では対応端末はまだ限られますが、今後の広がりが期待されます。

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