1.プライベートクラウドが上位に、1位は「内製」に舵を切ったあの会社(12.29 日経XTEC)
2022年にクラウド/エッジ関連分野で最も読まれた記事は、「5年で人員9倍に、知られざるシャープIT内製部隊の威力」だった。ベンダー依存からの脱却を進め、システムの「内製」に舵(かじ)を切った同社。そのシステム基盤は、オープンソースソフトウエアを活用したプライベートクラウドである。「システムの可用性でメリハリを付ければパブリッククラウドよりもコストが下げられる」という取り組みは興味深い。2位の「楽天グループが『オンプレ回帰』を決断、パブリッククラウドからIT基盤を戻す狙い」もプライベートクラウドの話題であり、こうした流れが続くのかどうか気になるところだ。
富士通によるメインフレームからの撤退は、IT業界に大きな衝撃を与えた。「富士通メインフレーム撤退はいばらの道、雲をつかめるか」(第3位)が指摘するように、同社の「クラウドシフト」の動向は要注目である。「NTTデータが勘定系オープン化に『くさび』、地銀顧客をつなぎとめられるか」(第7位)が示すように、今後のオープン化、クラウド化をめぐりベンダー間の競争も激しくなりそうだ。
2.上位に過去最大級の通信障害、トラブルとポイントが人気を分け合う(12.28 日経XTEC)
ネットワーク分野では目玉と言えるような話題は今年もなかった。こうなると、トラブル関連の記事が例年人気を博す。今回も1、3、6位にトラブル関連の解説記事が並んだ。一方でポイント関連の記事も人気だ。今年のランキングでは、2、5、8位がポイントにひも付いた記事だ。やはり「お得」は誰もが好きな話なのだろう。
1位となったのは、7月に起きたKDDIの大規模通信障害。このときは丸1日以上auの携帯電話が使えなくなり、多くの利用者が影響を受けた。日本の通信事業者が起こしたトラブルとしては最大級と言える。一方で技術に詳しい高橋誠社長の会見については、事前に作成した原稿を読むのではなく、記者の質問に適切に回答する姿が評判を呼んだ。
3.イーロン・マスクやビル・ゲイツは「読書の鬼」、知識の幅を武器にした天才たち(12.28 日経XTEC)
“読書の鬼”という言葉がまさにぴったりのイーロン・マスクとジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ。彼らが読んできた大量の本は、3人に強い影響を与えています。天才たちは少年時代から猛烈な読書家でしたが、大人になって起業家として大成功してからも多様なジャンルの本を読みあさり、知識をアップデートし続けています。
「学ぶことをやめるまで、本当に年を取り始めることはない。すべての本は私に何か新しいことを教えてくれたり、物事の見方を変えたりするのに役立つ。読書は世界への好奇心を刺激し、それが私のキャリアや仕事を前進させる力になった」。ゲイツはこう述べています。
書籍『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』で取り上げた100冊には、このような最近の変化に焦点を当てた新しい本が多数含まれています。それは“21世紀の教養”といってもいいでしょう。もちろんエドワード・ギボン、アダム・スミス、ピーター・ドラッカーなどの古典もありますが、それらは天才たちが今読んでも価値があると考えている本です。
もちろん「スマートフォンやパソコンで検索すれば簡単に情報が得られる時代に、本を読む意味なんてあるの?」という疑問を持つ人もいることでしょう。若い世代を中心に、インターネットを検索して見つかる情報だけで何でも理解できると考える人も少なくありません。
それでも物事の本質に迫る深い情報を得るにはやはり本が一番だと私は思います。断片的だったり、根拠があいまいだったりする場合も多いネット情報と比べると、専門的な研究を踏まえた本には裏付けがあり、多くの気づきを得られます。不確かな情報が氾濫している時代だからこそ、良い本の価値はむしろ高まっています。
4.国内の病院を襲ったランサムウエア、マイナカード関連も上位に(12.28 日経XTEC)
2022年もサイバー攻撃が相次いだ。特にひどかったのが、国内の病院を狙ったランサムウエア攻撃である。徳島県つるぎ町立半田病院に対するランサムウエア攻撃の記事は、1位と3位にランクインした。攻撃を受けたのは2021年10月だが、経緯などを詳細にまとめた調査報告書が2022年6月に公表されたため、2022年のITセキュリティ部門の1位になった。調査報告書は半田病院が公開しているので、セキュリティーに携わる方はぜひ読んでほしい。
サイバー攻撃は意外なところにも影響を与えている。5位と19位の記事で解説しているように、アニメ制作会社の東映アニメーションがサイバー攻撃を受けた影響で、人気アニメ番組の放映が延期。最新話の代わりに過去の回が再放送された。テレビの前でがっかりした子どもは多いだろう。
5.新規格「Wi-Fi 6E」はどれだけ速いか、対応ルーターWNR-5400XE6を試した(12.27 日経XTEC)
2022年9月に電波法が改正され、Wi-Fi用の電波周波数帯として6GHz帯が認可された。それに伴い、ネットワーク機器ベンダー各社がWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターを発売している。Wi-Fi 6Eは、Wi-Fi 6の拡張規格である。速度や通信の仕組みなどは従来のWi-Fi 6と変わらないが、新たに6GHz帯の周波数を利用できる。6GHz帯は5GHz帯や2.4GHz帯よりも多くのチャネルを確保できる。このため複数のチャネルを束ねて高速に通信するチャネルボンディングを活用しやすい。
今回、取り上げるバッファローの「WNR-5400XE6」もWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターの1つだ。5GHz帯と2.4GHz帯に加えて6GHz帯に対応し、3つの周波数帯を同時利用できる。最大通信速度は5GHz帯と6GHz帯は2401Mbps、2.4GHz帯は573Mbpsである。Wi-Fi 6やWi-Fi 6E対応のパソコンの多くは最大通信速度が2.4Gbpsなので、その性能をフルに生かせることになる。
WNR-5400XE6のきょう体の大きさは、幅75×奥行き140×高さ217mmだ。有線LAN端子は合計4個あり、すべて下向きである。端子部分にはカバーが付いている。端子や接続したケーブルを隠せるし、ケーブルが前後左右に出ることもない。ちょっとしたスペースに配置しやすいと感じた。有線LAN端子のうちWAN側の端子は2.5GBASE-Tの規格に対応する。IPv6 IPoEによる接続にも対応しており、対応プロバイダーでは回線接続の設定なしで接続できる。
一般に無線LANの通信は、周囲の電波状況や利用者数の影響を受ける。現時点では6GHz帯を利用しているユーザーは少ないため、高速な通信速度が期待できる。では、どれだけの通信速度が出るのか測定してみた。
測定の結果、6GHz帯の通信はとても高速だった。ダウンロードとアップロードのどちらも通信速度が1.5Gbpsを超えた。Wi-Fi EasyMeshを5GHz帯で構築した場合に比べ3〜4割速かった。
ただ、気になるのは端末の6GHz帯の対応だ。現時点では利用できる端末が少ない。もしWi-Fi 6Eの6GHz帯を利用できる端末を所持しているなら、今すぐにでも導入する価値はあるだろう。
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