週間情報通信ニュースインデックスno.1357 2022/12/10


1.ノートPCにWi-Fi 6Eや5Gは必要か?2023年に選ぶべき無線通信機能(12.9 日経XTEC)
場所を問わずに利用できるノートパソコン(PC)には、無線通信機能が搭載されている。無線LANを使ってアクセスポイントやスマートフォンなどを介してインターネットにつなげられる。外出での利用をメイン用途に想定したノートPCには、4G LTE/5Gの携帯電話網を使う通信機能を搭載する製品もある。ここでは、これらの通信機能の仕様をおさらいし、いま選ぶべき通信機能はどれなのかを見ていこう。

 ナンバリング表記は、Wi-Fi Allianceが従前の表記だと規格の世代が利用者にとって分かりにくいと考え、それを改善するために採用した。Wi-Fi 4は2007年に策定されたIEEE 802.11nに、Wi-Fi 5は2013年に策定されたIEEE 802.11acに、Wi-Fi 6は2019年に策定されたIEEE 802.11axに相当する。

 現在はWi-Fi 6対応製品が主流で、一部Wi-Fi 5の製品も残っているという感じだ。この2つの仕様は確実に押さえておきたい。

Wi-Fi 6とWi-Fi 5の規格と最大通信速度
ナンバリング表記 規格 最大通信速度 周波数帯
Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax  9.63Gbps 5GHz帯、2.4GHz帯
Wi-Fi 5 IEEE 802.11ac  6.9Gbps 5GHz帯

 Wi-Fi 5とWi-Fi 6で使われる周波数帯(バンド)には「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の2種類がある。2.4GHz帯は、最大通信速度がやや劣るものの、遮蔽物の影響を受けにくく、広い範囲に電波を届けられる。また、モバイルWi-Fiルーターといった屋外で使用する製品で利用可能だ。

 一方の5GHz帯は、遮蔽物の影響を比較的受けやすいが、最大通信速度が速いという特徴を持つ。Wi-Fi製品の最大通信速度は、5GHz帯を使ったときの速度を指すことが多い。また、5GHz帯のWi-Fiは特定の条件を満たさないと屋外利用が認められていない。このため、モバイルWi-Fiルーターには採用されていない。

 Wi-Fi 6の後継規格の製品についても見ていく。Wi-Fi 6の次の世代に当たる「Wi-Fi 7」は2024年の仕様策定を目指すとされている。Wi-Fi 7では、Wi-Fi 6で使えなかった「6GHz帯」を含む、広い周波数帯を利用する。理論上の最大通信速度は、Wi-Fi 6の9.6Gbpsから、Wi-Fi 7は46Gbpsと大幅に向上する予定だ。

 携行性を重視したノートPCでは、携帯電話網で通信できるモバイル通信機能を搭載した製品がある。この機能を搭載したPCは「WWAN(ダブリューワン、Wireless Wide Area Network=無線広域通信網)対応」と表現されることが多い。

 モバイル通信の世代としては、4G LTEと5Gの2種類がある。5Gに対応するハイエンド機種を選択したほうが、最大通信速度は速くなる。動画編集や大容量ファイルのアップロードなど、想定用途として日常的に大容量通信が必要になる場合には心強い仕様だ。

2.ルネサスが10TOPS/W実現の推論速度1000倍MPU、2023年に登場へ(12.9 日経XTEC)
ルネサス エレクトロニクスは、かねてマイクロプロセッサー(MPU)のAI(人工知能)推論処理を1000倍速く実行可能にすると宣言してきた。10倍や100倍にしたMPUはすでに製品となっている。いよいよ2023年には1000倍のMPUが登場する。そのための技術を開発したとの発表を、同社と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共同で2022年12月8日に行った。

 MPUのCPUコアで動作するソフトウエアに比べて10倍速く推論できるMPUは、ルネサスの「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」と呼ぶアクセラレーターハードウエアで実現した。100倍速いMPUはDRPの強化版である「DRP-AI」を集積することで実現した。今回、DRP-AIを改良し10倍処理速度を高めた。これでCPUコアで動作するソフトウエアに比べて1000倍速い推論処理の実行が可能になった。

3.固定電話網のIP移行は24年1月以降、NTT東西が詳細日程を発表(12.8 日経XTEC)
NTT東日本とNTT西日本は2022年12月8日、固定電話網(PSTN)をIP網に移行させる計画の正式な実施日程を発表した。移行開始日は2024年1月以降で「短縮ダイヤル」や「キャッチホン ・ ディスプレイ」など一部の付加サービスも同日から利用できなくなる。

 固定電話網向けの交換機の一部は製造が終了しており、老朽化や保守部材の枯渇で2025年ごろに固定電話網の維持限界を迎える。これを受けてNTT東西は、2024年1月から固定電話網をIP網に移行させる計画を以前より公表していた。今回は固定電話網上で提供している各種サービスの終了日など詳細な日程を明らかにした。

 EDI(電子データ交換)での企業間取引などに使われてきたISDNのデータ通信サービス「INSネット ディジタル通信モード」も、2024年1月1日から利用できなくなる。NTT東西は既存のISDN端末を使い続けられる補完策を企業など向けに用意し、2027年ごろまで続ける予定だ。

4.QRコード決済と銀行口座で送金が容易に、「全国銀行データ通信システム」とは(12.5 日経XTEC)
国内における振込取引や、銀行間で資金をやり取りする「決済システム」。2023年にも資金移動業者の接続を認める予定。実現すれば、QRコード決済サービスと銀行口座の間で送金しやすくなる。

 全国銀行データ通信システム(全銀システム)は、国内の振込取引や、銀行間の資金のやり取りをする「決済システム」。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営する。1973年に運用を開始し、現在では銀行や信用金庫、農業協同組合など、国内のほぼ全ての預金取扱金融機関が参加する。日本の経済取引の基盤としての役割を担う。

 最近は、QRコードなどを使ったキャッシュレス決済の利用者が急増している。こうしたキャッシュレス決済の多くは、金融機関ではなく、PayPayなどの資金移動業者が提供しており、各金融機関との送金ニーズが高まっている。

 これまでは、全銀システムへの接続は金融機関に限られていた。そのため、金融機関と資金移動業者間の送金を実現するには、各業者が個別に金融機関と交渉してシステムを構築する必要があった。QRコード決済の残高を他人の銀行口座に直接送金したり、別の決済サービスに送金したりといった柔軟なサービスを実現するのが難しかった。

 しかし、資金移動業者の全銀システムへの直接接続が実現すれば、銀行と資金移動サービス間で送金しやすくなる。また、資金移動業者間を超えた送金に対応する新しいサービスが増え、利便性が高まりそうだ。

5.アマゾン「Alexa」部門で大規模リストラ、音声アシスタントは生き残れるか(12.5 日経XTEC)
米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」などを担当するデバイス&サービス部門のリストラを打ち出したことが注目されている。LINE社の音声アシスタント「CLOVA」のデバイス販売やサービスの終了もあって音声アシスタントの先行きに不透明感が漂っているが、時代の寵児(ちょうじ)として注目された音声アシスタントのビジネスは、今後どのような方向に向かうのだろうか。

 中でも注目されたのはアマゾン・ドット・コムだ。同社は米国時間の2022年11月3日に新規採用の凍結を発表したが、それに続いて2022年11月17日にはデバイス&サービス部門の大規模なリストラを発表している。この部門は音声アシスタントの「Alexa」のほか、スマートスピーカー「Echo」シリーズや電子書籍端末「Kindle」などのハードウエアを担当する部門で、消費者に近い分野を担っているだけにその影響を危惧する声は少なくないようだ。

 ただAlexaの動向を見た場合、現在もEchoシリーズの販売は継続されておりコンシューマー向けのサービスやデバイスの提供が終了に至っているわけではない。しかも従来注目されていたスマートホームのハブとしてのEchoやAlexaの存在は、スマートホームの標準化規格「Matter」がようやく確立されたことで今後重要性が大きく高まる可能性がある。

 とはいえリストラの対象となったことからも分かるように、デバイス&サービス部門がアマゾン・ドット・コムの売り上げにつながっていないのもまた確かだろう。それゆえ今後アマゾン・ドット・コムは、AlexaやEchoシリーズの売り上げ増加に力を入れてくるのではないかと考えられる。

 その代表的なソリューションの1つが「LINE AiCall」である。これは従来のCLOVAで培った音声認識と音声合成、会話制御を組み合わせ、コールセンターなどでの電話対応を自動化するというもの。その導入事例も増加傾向にあるようで、LINE社が実質的にソフトバンクの傘下となったこともあって、2022年11月7日にはソフトバンクがカスタマーサポートの一部にLINE AiCallを導入していると発表している。

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