週間情報通信ニュースインデックスno.1355 2022/11/26


1.NECが玉川に330億円で新棟設立、他社を呼び込みイノベーションの中心拠点(11.25 日経XTEC)
NECは2022年11月25日、玉川事業場(神奈川県川崎市)の敷地内に約330億円を投じて新棟を設立すると明らかにした。建物の収容人数は約4700人で、うち約4000人は研究者をはじめとするNECの社員が入居する予定だ。残りはスタートアップや大学・研究機関、他の企業などから幅広く入居者を募り、「玉川事業場をイノベーションの新しい中心拠点にしたい」(NEC広報)とする。

 2023年に着工し2025年6月に完成する予定で、現時点で他社からの入居者の選定基準は未定だ。NECからはR&D(研究・開発)や新事業開発などを手掛ける「グローバルイノベーションユニット」に所属する研究者などが入居予定だという。NECが2022年5月に構築を始め、玉川事業場内に設置したAI(人工知能)研究用のスーパーコンピューターを共有する。同スパコンは2023年3月に稼働開始予定で、計算性能は580PFLOPS(ペタフロップス)を超える見込みだ。

 NECはAIを活用した創薬や顔認証などに注力している。創薬においては2022年3月にスイスとドイツを拠点とするバイオテクノロジー企業のVAXIMM(ヴァクシム)を子会社を通じて買収し、AIを活用した個別化がんワクチンの開発に取り組む。新棟ではNECが強みとする領域だけでなく、同社がこれまで取り組んでこなかった領域の研究にも協業を通じて取り組む。

2.ノキアが5Gミリ波で高速化、6Gではセンシングを統合へ(11.25 日経XTEC)
フィンランドNokia(ノキア)は2022年11月16日(現地時間)、オーストラリアの通信事業者TPG Telecomとのライブデモにて、5G上りリンク時速度2Gビット/秒を達成したと発表した。TPG Telecom(TPGテレコム)の5Gミリ波(26GHz帯)を使用し、オーストラリアのシドニーにあるNokia 5G Futures Labにて確認した。

 デモには、Nokiaの5Gミリ波対応基地局「AirScale 5G」 と、基幹ネットワークとして「5G Core」を使用。キャリアアグリゲーション(CA)技術も導入し、26GHz帯の100MHz幅コンポーネントキャリア(CC)4つを束ねて実現している。端末には、米Qualcommの第4世代ミリ波アンテナモジュール「QTM545」を搭載する5Gモデム-RFシステム「Snapdragon X65」を使用している。

 今回の結果により、一般消費者に加え、IoTセンサーや産業用ロボットから大量のデータを5G経由でストリーミングするなど、上りリンク時の高速性と高信頼性が求められる産業分野へのサービス提供も可能になる。このソリューションは、対応端末が市場に登場する2023年には利用可能となる予定だ。

 6G時代は、デジタルと物理世界の融合に向けたセンシング技術が実現の鍵となる。Nokiaでは、センシングサービスと通信サービスが無線ネットワークに統合され、同期して制御できるようになる6Gビジョンの具現化に向けて、フロントエンド、ベースバンド、RANプロトコル、データ処理、セキュリティーなどの面から研究を進める。

3.なぜストリーミングオーディオはCDより高音質か、音楽配信が注目される理由(11.24 日経XTEC)
「高音質な楽曲が手ごろな料金で聴き放題」という、パソコンやスマホで利用できる定額制のストリーミング配信サービスが一気に普及した。これらの機器で利用できるオーディオ環境もここ数年で大きく進化。音楽CDを超える高音質の楽曲を手軽に聴けたり、アーティストが間近にいるような臨場感を楽しめたりするようになる。最新のサービスや技術を見ていく前に、これまでのデジタル音楽の変遷を概観しておこう。

 パソコンで音楽を楽しみ始めた当初は、音楽CDをリッピングし、MP3などの形式で楽曲ファイルとして保存していた。次に始まったのが、米アップルの「iTunes Music Store」に代表されるダウンロード方式の音楽配信。楽曲単位の買い切り型であり、MP3、AAC、ATRAC(アトラック)などの形式が主流だった。これらはいずれも、情報の一部を間引いてファイルサイズを圧縮する形式であり、音楽CDより音質は低い。とはいえ、サイズの小ささは、当時の低速なインターネット回線や、小容量ストレージの携帯音楽プレーヤーにとっては好都合だった。

 音質よりサイズという傾向は、2013年ごろから注目され始めた「ハイレゾ」音源の登場で変化する。ハイレゾとは高解像や高精細を意味する「ハイレゾリューション」の略。ハイレゾ音源は、より原音に近い高音質な音楽データで、一般に音楽CDの3倍以上の情報量がある。

 ハイレゾの盛り上がりと歩調を合わせるように、アップルやスウェーデンのSpotify(スポティファイ)といった海外勢が、ストリーミング方式による定額制の音楽配信を相次ぎ開始。ダウンロード方式の買い切り型に代わって、定額制の聴き放題サービスが国内でも定着した。

 最近のストリーミング配信は音質面での充実ぶりも目覚ましい。アップルや米アマゾンではハイレゾなど高音質な楽曲の提供を開始。さらに、聴き手を囲むような臨場感を実現する「立体音響」という新技術による楽曲も配信した。

 「ロスレス」もキーワードだ。音質を保ったまま圧縮する方式であり、可逆圧縮とも呼ぶ。一方、MP3などの形式は、データを圧縮する際に一部の音域を間引いてサイズを小さくするので非可逆圧縮と呼ぶ。圧縮時に失われた情報は再生時に元に戻せないため音質は確実に落ちる。また、ロスレスに対してロッシーとも呼ぶ。

4.メタバースで5Gや6Gはどう進化する?クアルコムがみるXRやデジタルツインの可能性(11.24 日経XTEC)
米Qualcomm(クアルコム)は2022年11月9日(現地時間)、メタバースに向けて進化を続ける5G(第5世代移動通信システム)についての解説を公開した。メタバースを、物理世界・デジタル世界・仮想世界にまたがる、パーソナライズされた空間インターネットと定義。5GでXR機能を強化することが、メタバースのより没入的な体験実現につながるとしている。

 XR体験強化に向けた5Gの進化もめざましい。3GPPのリリース15では低電力モードのBWP(Bandwidth Part)を導入。リリース16では、クロススロットスケジューリング、アップリンクへのリソース割当許可、スロットアグリゲーション、アップリンクのスキップなどの機能を追加している。リリース17では、スリープモードへの迅速な移行や、機能を縮小した規格(RedCap、NR-Light)を活用することで、低電力なARグラスを実現できるようになる。

 6Gでは、物理世界、デジタル世界、仮想世界の融合がさらに加速する。XRでの没入体験は、ユビキタスで低電力な通信とセンシングを介して、新たなレベルに引き上げられる。6G XRでは、デジタルツインと空間コンピューティングを活用。デジタルツインで、メタバースに向けた物理システムの動作監視、シミュレーション、分析、最適化、予測が可能になる。空間コンピューティングでは、6DoF(Degree of Freedom)対応のVRにより、頭、手、視線の追跡などの知覚があらゆる環境で使えるようになる。

5.IoTセンサーなど低消費電力機器に欠かせない無線通信技術「LPWA」とは(11.24 日経XTEC)
LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で遠距離の通信ができる無線通信技術の総称である。センサーデータの収集など、IoT(Internet of Things)デバイスに使われることが多い。特に製造業や流通サービス業、社会インフラといった産業向けの用途で有望視されている。

 一方、必ずしも高速のデータ通信を必要としない用途も少なくない。例えば定期的にIoTデバイスの死活を監視したり、環境測定センサーで温度や湿度を計測したりするだけなら、数十〜数百ビット/秒程度でも情報量的には十分だ。カバーすべき範囲が広くて電源ケーブルの敷設が難しいなど、設置場所によっては電池で長時間稼働できる省電力性能のほうが通信速度より重要視される場合がある。

 こうした「遅くてもいいから低消費電力で遠くまで飛ばしたい」という需要に応えるのがLPWAだ。最大伝送速度は数十〜数Mビット/秒と低速だが、1k〜数十kmの通信が可能である。

 LPWAの多くは、920MHz帯という免許不要の周波数帯を使う。920MHz帯は無線LANなどが使用する2.4GHz帯や5GHz帯に比べて使用できる帯域幅が狭い。また、電波を連続して送信できる時間や1時間当たりの電波の総送信時間の制限が定められている。このため省電力化しやすい代わりに、伝送できるデータ容量が限られる。

 その一方で2.4GHz帯や5GHz帯に比べて電波が遠くまで届き、通信範囲が広い。電波の直進性が低く、障害物があっても回り込む性質も高い。LPWAの通信速度が遅く、低消費電力で遠くまで通信できるのは、こうした920MHz帯の特性が関係している。

 LPWAは基本的にIPベースではないので、IoTデバイスとインターネットなどにつながるゲートウエイの間を結ぶ用途に使われる。ゲートウエイが各デバイスから収集したデータをインターネットなどを経由してサーバーに送信する。ゲートウエイを誰が用意するかによって、LPWAのサービスは「プライベート型」と「キャリア型」の2種類に大別できる。

 プライベート型では、IoTのシステムを実装する利用者が、インターネットなどにつながる回線とゲートウエイを自前で用意する。システム設計の自由度が高いが、回線やゲートウエイを調達する手間がかかる。

 一方キャリア型では、LPWAのサービスを提供する事業者がインターネットなどにつながるゲートウエイを用意する。利用者は、LPWA対応のIoTデバイスとデータ収集用のサーバーを用意すればよい。ただし利用できるエリアは事業者がゲートウエイを用意した場所に限られるなど、プライベート型に比べて自由度が下がる。

 LPWAが狙う産業用IoTの市場には、様々な用途がある。このためLPWAの規格も多様である。プライベート型では「Wi-SUN」や「ZETA」、無線LANのLPWA版である「Wi-Fi HaLow」といった規格がある。

 一方、キャリア型は「Sigfox」や、4G(第4世代移動通信システム)のLPWA版である「LTE-M」「NB-IoT」といった規格がある。このほかプライベート型とキャリア型の両方に対応する「ELTRES」や「LoRaWAN」などがある。

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