週間情報通信ニュースインデックスno.1354 2022/11/19


1.まさかのIBM離れ、「広銀ショック」が地銀システム共同化にもたらす2つの変化(11.17 日経XTEC)
広島銀行はふくおかフィナンシャルグループ(FG)との基幹系システム共同化の枠組みである「Flight21」から2030年度に離脱し、横浜銀行などが参画する「MEJAR」に乗り換える。Flight21は日本IBM、MEJARはNTTデータがそれぞれ支援しており、広島銀行はIBM陣営から抜け、NTTデータ陣営に新たに加わることになる。この動きは、地銀のシステム共同化にどんな変化をもたらすのか。

 「まさか」。2022年11月2日、広島銀行がFlight21から離脱し、MEJARに参画するという第一報を耳にした時の、記者の率直な感想だ。すぐにスマートフォンを手に取り、裏取りを進めたところ、複数の関係者が事実関係を認めた。記事執筆に着手したが、この時点でも「信じられない」という思いはまだ残っていた。それほど、広島銀行とMEJARの組み合わせは予期せぬものだったからだ。第一報から9日後の11月11日、広島銀行はMEJAR参画を正式に発表した。

 MEJARは現在、NTTデータの勘定系パッケージ「BeSTA」を富士通製メインフレーム上で稼働させているが、2024年1月に動作プラットフォームをオープンシステムに切り替える予定だ。そこからさらに一歩踏み込んで2030年度のクラウド適用を目指しており、このタイミングで広島銀行がMEJARに加わる形になる。

2.NTTデータが「銀行専用クラウド」投入、地銀陣営越えたシステム基盤を提供するわけ(11.18 日経XTEC)
 NTTデータは2028年をめどに「銀行専用クラウド」を投入する。同社が手掛けるシステム共同化に参画する地方銀行向けに、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)のプライベートクラウドとその運用を一体で提供する。同社は複数のシステム共同化を手掛けており、その陣営ごとにばらつきがあったシステム基盤を集約することで、運営効率を高める。

 2022年11月18日に「統合バンキングクラウド」の提供に向けて検討を始めたと発表した。2028年ごろの提供開始を見込んでおり、まずは西日本シティ銀行や京都銀行など地銀13行が参加する「地銀共同センター」への適用を目指す。さらに、2030年ごろに横浜銀行が中心の「MEJAR」に適用し、第二地銀が多く参画する「STELLA CUBE」や「BeSTAcloud」への適用拡大も視野に入れる。

 統合バンキングクラウドは、データセンターからサーバーなどのハードウエア、OS、ミドルウエアまでを一体で提供するプライベートクラウドである。これに運用サービスも組み合わせて提供する。銀行の勘定系システムは高い可用性が求められることから、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)や米Microsoft(マイクロソフト)などのパブリッククラウドの利用は現時点で想定していない。

 NTTデータの青柳雄一金融戦略本部金融事業推進部部長は「勘定系システムは『競争領域』ではなく『協調領域』となった。極力まとめることでコストを下げていくべきだ」と話す。富士通が撤退を表明するなどメインフレームの選択肢が狭まっている状況に手を打つ狙いもある。

3.いよいよ2023年3月商用スタートNTT・IOWN、第1弾「APN」の実力は?(11.18 日経XTEC)
NTTが2030年代の情報通信基盤を塗り替えようと一丸となって取り組む「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想。その第1弾となる「IOWN1.0」が早くも2023年3月に商用サービスを開始となる。超大容量かつ超低遅延の通信基盤となる「APN(All Photonics Network)」を使ったサービスだ。IOWN1.0として登場するAPN、そしてその後も続くIOWNの進化は、情報通信市場にどのようなインパクトを与えるのか。その実力に迫る。

 「2023年3月にIOWN1.0としてAPNサービスを商用化する。従来の200分の1まで遅延を抑えられる。これだけ低遅延なサービスを展開するのは世界で初めてでエポックメーキングだ」――。NTT社長の島田明氏は2022年11月14日に開催した説明会でこのように力を込めた。

 IOWN構想とはNTTが2019年に公表した次世代情報通信基盤構想のこと。低消費エネルギーという特徴を持つ光技術を、コンピューティング基盤から通信に至るまで活用し、世界の情報通信基盤を根本から変えていこうという壮大な構想だ。目標とする電力効率は現在の100倍、伝送容量は同125倍、エンド・ツー・エンドの遅延は同200分の1と野心的な目標を掲げる。

 今回商用サービスを開始するAPNとは、IOWN構想の主要な構成要素の1つであり、超大容量かつ低遅延を実現する通信基盤である。現在、都市間を結ぶような中継系のコアや都市内を巡らせるメトロネットワークに使われる光伝送技術を末端となるエンドユーザー近くにまで拡張。「1人1波長」のように超大容量の光のパスを用途ごとに柔軟に構成できるようにした。オンデマンドで1対1の光の専用線を張るようなイメージだ。

 2023年3月にIOWN1.0として開始するAPNサービスは、企業ユーザー向けに100Gビット/秒の専用線サービスとして提供する。利用者はエンド・ツー・エンドで光の波長を専有できる。途中にルーターなどの機器を挟まないため、従来の200分の1という超低遅延を実現した。当初は県内サービスとしてNTT東日本とNTT西日本がそれぞれサービスを提供する。

 hinotoriは、4本のアームを使って実際に手術を行う「オペレーションユニット」と、医師が高精細な患部の映像を見ながらアームを操作する「サージョンコクピット」で構成する。通常は同じ手術室内に置く2つのユニットを、APNサービスを使って約120km離れた環境から操作する実証環境を用意し、違和感なく遠隔から手術できるような様子を見せた。約120kmの伝送となるが、遅延は1ミリ秒以内に抑えられているという。

 IOWN1.0となるAPNサービスの料金について島田氏は、「基本的には相対料金。現状でも100Gビット/秒の高速大容量サービスを提供しているが、今のサービスよりも圧倒的に遅延を抑えられるために、それより料金を上乗せさせていただくことになる」とした。

 APNサービスの商用化に向けて、NECと富士通、光ネットワーク機器大手の米Ciena(シエナ)の3社が、APN対応の光伝送装置を用意した。まずはこの3社の製品を使って、APNサービスを展開するという。

4.マイクロソフトのナデラCEOが登壇、今後のビジネスのカギは「6つの領域」(11.16 日経XTEC)
日本マイクロソフトは2022年11月16日、日本のデジタル戦略に関わるイベント「Empowering Japan’s Future」を開催した。同イベントでは米マイクロソフトのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)が登壇し、「私たちのビジネスモデルは6つの領域にかかっている」と今後のビジネスの重要性について語った。

 ナデラCEOは、6つの領域として「Infrastructure」「Digital and app innovation」「Data and AI」「Modern work」「Business applications」「Security」を挙げた。「基本はセキュリティーだ。ゼロトラストを基軸にしたアプローチが重要であり、セキュアな環境を迅速に構築することが大切だ」(ナデラCEO)。また花王や川崎重工がマイクロソフトの「Power Platform」やデジタルツインの技術を利用して業務を変革をしていることを例に挙げつつ、「テクノロジー産業以外の業界にテクノロジーが求められている」と現状について語った。

 小野取締役は「今のDXは、デジタルを前提とした事業を再設計できるかどうかにかかっている。経営陣に技術系の人材がいることが重要な指標になる」と技術系人材の意義を語った。

5.導入や運用の手間が少ないデータ漏洩防止のクラウド、ゼットスケーラーが開始(11.15 日経XTEC)
米Zscaler(ゼットスケーラー)は2022年11月15日、セキュリティーのクラウドサービス「Zscaler Internet Access(ZIA)」で、導入や運用の手間が少なくて済むDLP(データ漏洩防止)機能を提供すると発表した。日本では同年11月22日に開始する。

 Webサイトやユーザー企業が契約する各種クラウドサービスと、端末との通信をZIAで検査する。「クラウドサービス上に保管されている機密データを無断でダウンロードする」「機密データを添付ファイル付きメールで外部に送信する」といったリスクの高い通信を検出すると、セキュリティー部門に警告する。セキュリティー部門は詳しい状況をクラウドサービスの管理画面から確認し、簡単な操作で従業員に通知を送るなどの対処ができる。

 DLPをうたう製品やサービスは以前から存在する。ただ、既存のDLPツールは一般に導入や運用が難しいとされてきた。例えば導入時には、さまざまなデータをどのように保護するかを分類する手間が大きくなりやすい。運用フェーズではリスクの高い通信を検出した際に、その通信をしていた従業員にセキュリティー部門が確認する作業の負担が大きくなりやすい。

 ゼットスケーラーのDLP機能は、機械学習などを活用することでデータを自動的に分類する。「導入が複雑になる課題に応えた」(ゼットスケーラー日本法人の高岡隆佳エバンジェリスト&アーキテクト)。リスクの高い通信を検出した際の応対フローを自動化する機能も備え、運用の負荷を抑えられるとする。

 ホームページへ