週間情報通信ニュースインデックスno.1351 2022/10/29


1.テレワーク実施率は17.2%と低調、日本生産性本部による意識調査(10.28 日経XTEC)
日本生産性本部は2022年10月28日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響について調べた「働く人の意識調査」の最新の結果を公表した。テレワーク実施率は低調で、新型コロナウイルス感染の不安は薄れる傾向にあると分かった。

 働く人の意識調査は、日本生産性本部が2020年5月から四半期ごとにアンケートで実施しているものだ。最新の調査は11回目で、感染第7波のピークが過ぎた2022年10月11日から12日まで、20歳以上の日本の雇用者1100人を対象にインターネットで実施した。

 今回の調査におけるテレワーク実施率は17.2%だった。2022年7月に実施した前回調査と比べて1.0ポイント高かったものの、「低調に推移している」(日本生産性本部)という。

2.スペースX「Starlink」が日本でサービス開始、衛星通信をスマホで利用する課題(10.28 日経XTEC)
低価格で利用できるサービスが出てきたことで、急速に注目を集めるようになった衛星通信。米Space Exploration Technologies(スペースX)の「Starlink」が日本でサービスを開始するなど国内でも大きな動きが出てきているが、スマートフォンで衛星と直接通信するにはまだ課題もあるようだ。

 衛星を使うことで世界中のどこからでも通信できるようにする取り組みは古くからあり、国内でも災害発生時などに活用されてきた。だが衛星を打ち上げて運用するコストの高さや、地上から数万kmもの距離がある衛星と通信することもあって、利用コストが高い上に端末側に大型のアンテナを搭載する必要があるなど、様々な制約があって広く活用されるには至っていない。

 だがここ最近、その衛星通信を巡る動向が大きく変わってきており、より多くの人が衛星通信を利用できる環境が整いつつあるようだ。理由の1つは約3万6000kmの軌道を飛行する静止衛星ではなく、より低い2000km以下を飛行する低軌道衛星を活用することで、従来よりも大容量かつ低遅延の通信を実現できるようになったことだ。

 そしてもう1つは、そうした低軌道衛星を低コストで多数打ち上げられる環境が整ってきたことだ。それをいち早く実現したのが、実業家のイーロン・マスク氏らが設立したことで注目されているスペースXである。同社は独自開発のロケットを用いて多数の衛星を打ち上げることに成功、既に3400基を超える「Starlink」という通信衛星群を構築している。

 このサービスは衛星と通信するための専用アンテナを屋外に設置し、Wi-Fiルーター型の端末を経由してスマートフォンなどをインターネット接続する。地上から500kmくらいの低い軌道を飛んでいるとはいえ、距離が非常に離れていることに変わりはないので、衛星からの電波を受信するためのアンテナはそれなりに大型で、上空が見通せる場所に置く必要があるようだ。

 サービス開始当初、日本で利用できる場所は一部を除く東日本に限られており、利用可能なプラン「レジデンシャル」はアンテナなどハードの価格が7万3000円で、月額1万2300円の料金がかかることから導入のハードルが低いわけではない。だが個人でも契約可能、かつ非現実的な料金ではないことを考えると、衛星通信を非常に身近なものにしたことは確かだろう。

 スペースXは2021年9月にKDDIと提携、KDDIが基地局のバックホール回線としてStarlinkによる通信サービスを利用し、光ファイバーの敷設が難しい山間部や離島などでの高速通信を実現することを明らかにしていた。だがその後、両社はさらに踏み込んだ取り組みを進めるに至ったようで、2022年10月12日にはKDDIが、法人や自治体向けの衛星通信サービス「Starlink Business」を提供すると発表している。

 これは先のサービスの法人向けバージョンで、大きな違いの1つはサービス開始当初から国内でのエリア制限がなく、日本全国で利用できる点である。衛星の配置の都合上一部地域で通信しづらい場所が存在するとのことだが、東日本だけという制約はなく国内の大半のエリアで利用可能なようだ。

 そしてもう1つは法人向けに優先して帯域を割り当てる仕組みを用意したことであり、混雑時には個人向けのサービスよりも高速に利用できるという。アンテナも現在個人向けに提供されている丸形のものと比べ、利得が2倍以上高い四角形のものが提供されるとのことだ。

 KDDIはさらに、Starlink Businessの提供に合わせてStarlinkインテグレーターの認定を取得。国内では唯一、世界でも4社程度しか存在しない認定インテグレーターとなることで、ネットワークの提供だけでなく設置・導入の支援やカスタマーサポートの提供、さらにはクラウドやセキュリティーといった他のサービスと組み合わせた提案なども実施していくとしている。

 KDDIではStarlink Businessを山間部や離島、これから開拓を進める地域など、まだモバイル通信が整備されていない場所での提供、さらには企業や自治体のBCP(事業継続計画)対応に向けた活用などを想定しているとのこと。同社では音声通話が必要、なおかつ広域をカバーする必要がある場合はStarlinkを活用した基地局を整備し、オフィスや山小屋など特定の場所だけをカバーしたいというニーズにはStarlink Businessの導入を勧めていく考えのようだ。

 個人・法人を問わずStarlinkによるサービスが国内で利用できるようになったことが、衛星通信をより身近なものとする大きな一歩になったことは確かだろう。だが衛星通信をより身近にするためにも期待されているのは、衛星とスマートフォンとが直接通信する仕組みの実現であることに間違いない。

 実際、米Apple(アップル)の「iPhone 14」シリーズが衛星通信に対応し、緊急時のSOSを発信できる機能が搭載されたことは大きな話題となった。またスペースXも米国の通信事業者であるT-Mobile USと提携し、米国においてスマートフォンで衛星と直接通信し、テキストによるメッセージをやりとりできるサービスの実現を2023年に目指すと発表して注目を集めている。

 だが一方で、低軌道とはいえ地上から大きく離れた衛星と、手のひらサイズのスマートフォンとが直接通信するには課題も多い。実際iPhone 14シリーズの衛星通信の仕組みを見ても、非常に短いメッセージをさらに圧縮し、空が開けた場所で指定の方向に15秒以上向けて通信することで、ようやく送信できるなど、通常のモバイル通信と比べれば利用条件が非常に厳しいことが分かる。

3.JTB、クラウドサービスの設定ミスで1万人超の個人情報漏洩(10.26 日経XTEC)
JTBは2022年10月25日、観光庁の補助事業者として実施している地域振興事業で、補助金交付を申請した事業者など1万人超の個人情報が漏洩したと発表した。原因は情報共有用のクラウドサービスにおけるアクセス権限の設定ミスだった。2022年10月26日時点において「監督者を増やすなど、再発防止に向けた体制強化を進めている」(同社)と説明する。

 JTBが管理・運営するクラウドサービスは本来、申請した事業者が自社の申請書以外にはアクセスできない仕様だった。ところが運用担当者がデータへの個別アクセス権限を誤設定したため、ログイン権限を持つ事業者のデータが相互に閲覧可能な状態になっていた。この結果、最大1万1483人分の個人情報を含む1698件の申請書類などが、他の事業者が申請書をダウンロードすることで漏洩した。漏洩した情報には組織名や氏名、連絡用の電話番号、メールアドレスなどが含まれていた。

 JTBは2022年9月にアクセス権限の誤設定に関する調査を実施。補助金交付が決まった事業者により申請書がダウンロードされたのは18件だと判明した。アクセス権限の修正を終え、データをダウンロードしたすべての事業者から2022年10月25日までに削除完了の通知を得たという。JTBは「関係者に迷惑をかけ申し訳ない。ダブルチェックの徹底など再発防止に取り組む」と話す。

4.IIJが1枚で複数の携帯電話網に接続できるSIMカードを開発(10.25 日経XTEC)
インターネットイニシアティブ(IIJ)は2022年10月25日、1枚のSIMカードで複数の携帯電話網に接続できる「マルチプロファイルSIM」を開発したと発表した。マルチプロファイルSIMを使えば、携帯電話の利用者が任意のタイミングで携帯電話網を切り替えて利用できる。

 これまでも通信機器に複数のSIMカードを搭載する「デュアルSIM」や、携帯電話網のローミング技術を使うことで、複数の携帯電話網を切り替えて使うことはできた。だがそれぞれ基盤上の面積を専有しすぎる、事業者の加入者データベースに障害があった場合には携帯電話網を切り替えられないといった課題があった。

 通信機器にあらかじめ埋め込む「eSIM」でも複数の携帯電話網を切り替えて実現できる。だがeSIMは比較的新しい通信機器向けの機能である。IIJのマルチプロファイルSIMは通信機器側がeSIMを利用できなくても、携帯電話網を切り替えて使える点に強みがある。IIJは「産業用IoT機器などは寿命が長く、古いものを使い続けることが多い。マルチプロファイルSIMを使えば、ハードウエアを作り替えなくても複数の携帯電話網を切り替えて使える」(IIJ広報)と強調する。

 IIJは同社の法人向けMVNO(仮想移動体通信事業者)通信サービスを活用するためのサービスとして、マルチプロファイルSIMを提供していくという。コネクシオが提供するIoT ゲートウエイ「CONEXIOBlackBear」にもIIJのマルチプロファイルSIMを搭載する予定だ。

5.「競争激化でKDDIとNTTドコモが躍進」、英Opensignalのモバイルユーザー体感調査(10.24 日経XTEC)
独立系調査会社の英Opensignalは2022年10月20日、「日本のモバイル・ネットワーク・ユーザー体感調査に関するオンライン会見」を開催、日本各地で2022年6月1日から8月29日までの90日間にわたり調査した結果を発表した。同社分析担当副社長のIan Fogg氏が解説した。

 前回調査(2022年4月公開、調査期間:2021年12月1日〜2022年2月28日)と同じく、15のメトリクス(指標)について、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルのネットワークユーザー体感を比較している。今回の特徴としては、前回無冠だったauが音声アプリ使用時ユーザー体感と5G利用率(利用可能な時間)で同率1位になったことが挙げられる。また、NTTドコモも、前回の評価をほぼ維持しながら、新たに動画や音声アプリ体感で高い評価を得ており、ダウンロード速度では5Gでもそれ以外の通信でも、単独で1位となっている。こうした結果を踏まえ、Fogg氏は「日本市場での競争が激化している」とコメントしている。

 動画閲覧時のユーザー体感では、NTTドコモがソフトバンクに追いつき、高い評価を得た。5G時のユーザー体感では、前回に引き続きソフトバンクが最も高い評価を得ている。ゲーム時体感では、5G時もそれ以外の通信時も、ソフトバンクが最も高い評価を得た。音声アプリ使用時のユーザー体感では、5G時はソフトバンクと楽天がほぼ同率で高評価を得ており、それ以外の通信時は、4社横並びとなっている。

 ダウンロード速度では、5G時もそれ以外の通信時も、NTTドコモが単独で1位となった。なお、アップロード速度では、前回に引き続き楽天モバイルが5Gでも全体でも断トツの1位となっている。

 ユーザーが5Gに有効接続できている時間の割合を示す5G利用率では、auがNTTドコモを抜いて、ソフトバンクとともにトップに立った。5G接続できる場所の割合を示す5G到達率では、前回のNTTドコモに加えソフトバンクが同率1位となっている。ともに10ポイント中3.2を獲得しており、全国のほぼ3分の1の場所で5Gにつながるようになったことを示している。なお、楽天モバイルは、これら指標で他に大きく後れをとっている。

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