週間情報通信ニュースインデックスno.1348 2022/10/8


1.ECがベクトル型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」新モデル、クラウド提供も検討(10.7 日経XTEC)
NECは2022年10月7日、ベクトル型スーパーコンピューター「SX-Aurora TSUBASA」の新モデルを同日から販売すると発表した。CPUのコア数を従来の10コアから16コアに増やし、3次(L3)キャッシュをシリーズで初搭載したことなどで、演算性能を従来機比で2.5倍に高めた。価格は2億500万円(税別)からで、2024年度までに100億円の売り上げを目指す。機器の納入は2023年3月31日から予定する。

 NECはこれまでHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)を研究領域を中心に販売してきた。SX-Aurora TSUBASAを利用した、国立研究開発法人海洋研究開発機構が運用する「地球シミュレータ」が代表的だ。新モデルは既に東北大学のサイバーサイエンスセンターが2023年8月に運用を始める大規模科学計算システムでの採用を決めている。

2.日本郵政子会社-ソフトバンク裁判の深層、工事遅延の損害金161億円巡り泥沼の展開に(10.7 日経XTEC)
回線工事の遅延を巡り、日本郵政子会社とソフトバンクが互いを訴えた裁判。東京地方裁判所は2022年9月、ソフトバンクに約108億円の賠償命令を出した。一方、日本郵政側には追加業務の報酬として約19億円の支払いを命じた。日経コンピュータの取材によると、双方が控訴したことも明らかになっている。一審判決まで7年もの歳月を費やした事件の経緯を裁判記録から読み解く。

 「工事の遅延によって損害を被った。作業を担当したソフトバンクと管理業務を担った野村総合研究所は連帯で約161億円の損害金を支払え」「遅延によって生じた追加業務の報酬として、日本郵政インフォメーションテクノロジーは約239億円を支払え」――。

 日本郵政グループの通信回線敷設工事の遅延を巡り、2015年に日本郵政子会社の日本郵政インフォメーションテクノロジー(JPiT)と、ソフトバンクや野村総合研究所(NRI)が互いに巨額の損害金や報酬を求めた裁判。冒頭の2件とは別にNRIも日本郵政側に約13億円の報酬を求める反訴を起こし、泥沼の訴訟合戦へと発展した。

 その後、実に約7年に及ぶ裁判を経て東京地方裁判所が2022年9月9日に下した判決は、ソフトバンク側に約108億円の支払いを命じるものだった。東京地裁は予定通りに工事を終えなかったソフトバンク側に非があったと判断した一方、日本郵政側にも契約外の追加業務の報酬として19億円を支払うよう命じた。NRIについては、損害金の支払いも追加の報酬も認めなかった。裁判記録を基に、一審判決の経緯を読み解く。

 問題となったプロジェクトの始まりは2013年に遡る。当時、日本郵政グループは全国の郵便局やゆうちょ銀行など、グループ各社の共通インフラとして利用している「郵政総合情報通信ネットワーク(PNET)」を、主としてメタル回線を利用する4次PNETから光ファイバー回線を中心とした5次PNETに更改する計画を進めていた。PNETは1987年に始動したサービスで、接続するのは店外ATMを含む全国2万7000拠点。日本郵政グループにとって欠かせないインフラだ。5次PNETへの切り替えはトラフィック増大への対応や回線コスト削減の狙いがあった。

 PNETはセンター側通信網と拠点側通信網があり、それぞれ1系網と2系網で構成される。1系網はネットワークに高い信頼性が求められるデータのやり取りに使い、バックアップによる保全に加え、帯域保証型の通信を基本としている。2系網はネットワークに経済性を求めた回線で、バックアップによる保全はなく、ベストエフォート型の通信のみに利用される。今回のプロジェクトでは拠点側通信網の1系網と2系網の双方が問題となった。

 JPiTは5次PNETへの切り替えに当たり、調達区分ごとに入札の手続きを実施。4次PNETはNRIに一括で発注する形だったが、5次PNETでは「低コストを実現させるために、発注内容を業務ごとに分割し、原告JPiTが、各ベンダに対し、直接発注することになった」(判決文)。ネットワーク機器の導入はNEC、ネットワーク管理システムの導入はNTTデータといった具合に各社が受注し、ソフトバンクは通信回線敷設工事を請け負った。ソフトバンクの受注額は、1系網の請負契約が148億500万円、2系網の請負契約が174億3000万円だった。

 裁判の当事者であるNRIもネットワークの移行管理・調整業務を受注。つまり、ソフトバンクが通信回線の敷設工事を担い、NRIが管理する体制が組まれたわけだ。だが、この体制が後に波乱を巻き起こすことになる。

3.ドコモ「eSIMを標準搭載に」、冬春モデルのスマホ全6機種に採用(10.6 日経XTEC)
NTTドコモは2022年10月6日、スマートフォンやタブレットなどの2022年冬〜2023年春商戦向けモデルを発表した。このうちスマホは全6機種をeSIMに対応した。SIMの交換などを必要としないeSIM対応機種の拡充によって、オンラインショップで新規契約や機種変更をしやすくする狙いがありそうだ。

 同社はeSIMを巡り、2021年9月にオンラインでeSIMの発行手続きを提供開始。既存ユーザーに向けたeSIM発行手続きは2021年10月に休止したが、2022年9月に再開していた。

 スタンドアロン(SA)方式の5G(第5世代移動通信システム)に対応した端末は、Galaxy Z Flip4、同 Fold4と据え置き型データ通信端末の「Wi-Fi STATION」の3機種にとどまった。SA対応端末のラインアップ方針について松野部長は「フラッグシップ機はSAに対応することを予定しているが、現時点ではミリ波(に対応した通信モジュール)を搭載することにより、価格や本体デザインへの影響があるのは間違いない」と指摘。普及価格帯の端末への拡充方針については「5G(に対応したスマホの拡充過程)と同様に、時間がたてば部材価格(の低下)やチップサイズの小型化などにより広まっていくと考えている」とした。

4.iPhoneがぐっと使いやすくなるWindowsとの連携、Appleのサービスやアプリを活用(10.6 日経XTEC)
アップルのサービスと聞くと「Macを持ってないので関係ない」と思う方も少なくないだろう。ところが、Apple IDを持っていれば、アップルのWebサービスをWindows上で動くWebブラウザーでも利用できる。また、Windowsや米Google(グーグル)のWebサービスと連携できる、iPhoneやiPadのアプリもある。

 基本的な使い方は簡単で、Webブラウザーで「icloud.com」にアクセスするだけだ。サインインページが表示されるので、AppleのIDとパスワードを入力すればOK。Webブラウザー上で各アプリが利用できる。

 WindowsのWebブラウザーでicloud.comにアクセスすると、メールや連絡先、写真などのアイコンが並んでいるので、利用したいものを開けばOKだ。

 まずはメモを開いてみよう。すると、iPhoneやiPad、Macで作成したメモがそのまま開ける。出先でiPhoneに記録したメモ、iPadに手書きした議事録などもすべて閲覧できる。もちろん、編集にも対応しており、すでに書いたメモを編集できる。また、新規のメモも作成可能だ。メモに貼り付けた写真やスキャンした書類なども利用は可能だが、WindowsのWebブラウザーから貼り付けることはできないようだ。

5.すかいらーくやファミマに見るロボット活用の極意、利点は人手不足解消だけにあらず(10.3 日経XTEC)
「ガストやしゃぶ葉などロボットを導入済みの業態で新しく作る店舗や改装する店舗は、全てロボットが通ることを前提としたレイアウトで設計している」。ファミリーレストラン大手、すかいらーくレストランツの花元浩昭営業政策グループロボット導入責任者はこう語る。深刻さを増す人手不足に新型コロナ禍による消費者の生活様式の変化と、従来のビジネスモデルの見直しを迫られるファミリーレストラン業界。すかいらーくグループはロボット前提の店づくりをすることで最大限にロボットの性能を生かし、よりよいサービスの提供を目指す。

 ロボットが通る前提のレイアウトとは何か。段差をなくしたり通路を広めにしたりして、ロボットが従業員や客の邪魔をせずスムーズに動けるよう間取りを設計する。床材の継ぎ目に金属部品などを使わず、「使用する素材を変更し、ロボットが通行する際に振動が起きないようにするなど随時工夫をしている」(花元氏)。

 すかいらーくグループが導入したロボットは、配膳用途の「ベラボット」だ。ネコのようなかわいらしい見た目は、子供から高齢者まで幅広い年齢層の客に人気だという。同社グループは現在、1800店舗で2500台のベラボットを導入している。

 ロボットを動かすITシステムに店舗のレイアウト情報を読み込ませ、ロボットの通行パターンを設定している。店舗ごとにレイアウトが異なるため、各店舗の導入担当者がその店舗に合った行動パターンを設定する。ドリンクバーの前ではほかの通路とは違い、真ん中よりもドリンクバーと反対側に寄って走行するなどロボットの走行方法に工夫を凝らした。

 すかいらーくグループがベラボットの活用を進める目的は、従業員の負担を減らしてよりきめ細かいサービスを可能にし、顧客満足度の向上につなげることだ。「今と同じ従業員数で、より多くの時間を接客に割けるようになった。ベラボットの助けを得て従業員に余裕ができ、トイレやドリンクバーの清掃の頻度が上がることで店内の清潔感が上がった」(花元氏)。

 特にランチタイムなどのピーク時には従業員の配膳や下膳の手間が減り、より良いタイミングで下膳できるなど、よりきめ細かく客に気配りできるようになった。ロボット1台の平均走行距離は1日当たり5キロメートル以上。店舗の従業員はそれだ  ファミリーマートはTelexistence(テレイグレジスタンス)が開発したロボット「TX SCARA」を2022年8月から順次導入している。用途は店舗のバックヤードにおける飲料の補充だ。アームを使ってバックヤードの飲料保管用冷蔵庫からボトルや缶を1本ずつ取り出し、店舗側の飲料陳列棚に置いていく。AI(人工知能)を搭載し、自動で動く。ロボットが飲料を倒したり棚から落としてしまったりした緊急時には、テレイグジスタンスの担当者が遠隔操作に切り替え、ボトルを起こしたり拾い上げたりする。

 ファミリーマートはこの飲料補充ロボットを2024年度までに300店舗に導入する予定で、まずは今年度中に関東地域の直営店約30店舗に導入する見通しだ。ファミリーマートの狩野智宏執行役員は導入開始にあたって「店舗ごとに少しずつ環境が変わる中でロボットを導入して、想定した働きをしっかりできるか、人と一緒にはたらくことでどのくらい効率化できるか検証したい」と意気込む。

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