週間情報通信ニュースインデックスno.1345 2022/9/17


1.光伝送装置のオープン化に勝機、NECがIOWN対応4製品を投入(9.16 日経XTEC)
 NECは2022年9月15日、オープン仕様に基づき、他社製品とも組み合わせられるようにした光伝送装置4製品を同年10月1日から出荷開始すると発表した。NTTの「IOWN構想」の通信基盤となる「APN(All Photonics Network)」にもいち早く対応。同社は今回の製品を皮切りに、世界で動き始めた光伝送装置のオープン化市場をリードし、「2027年度に同市場の25%のシェア獲得を目指す」(NECネットワークソリューション事業部門フォトニックシステム開発統括部長の佐藤壮氏)と意気込む。

 NECが新たに投入する光伝送装置の製品群「SpectralWave WXシリーズ」は、世界同時多発で進む光伝送装置のオープン化やディスアグリゲーション(機能分離)といった新たな潮流に準拠した。

 通信事業者のコアネットワークやメトロネットワーク、データセンター間ネットワーク(DCI)などの大容量通信に使われる光伝送装置は、これまで性能が重視されてきたために、シングルベンダーによる一気通貫のソリューションが一般的だった。結果として、異なるベンダーの機器による相互接続が難しかった。オープン化やディスアグリゲーションによって、ベンダーロックイン(ベンダーによる囲い込み)を脱却し、適材適所で柔軟に機器を組み合わせられるといった新たなメリットが生まれる。

 光伝送装置のオープン化やディスアグリゲーションの仕様化は、米AT&Tなどが中心となって設立された「Open ROADM MSA」、米Meta Platforms(Meta、旧Facebook)を中心とした「Telecom Infra Project(TIP)」、そしてNTTが推進する「IOWN構想」の仕様を策定する「IOWN Global Forum」といった団体において世界同時多発で進んでいる。

 NECが新たに発売するSpectralWave WXシリーズは、これらの団体が策定した光伝送装置のオープン仕様に準拠した。光伝送装置の機能ごとに装置を分離し、オープン仕様に基づいて異なるベンダー機器とも接続できるようにしている。

 NECはスイッチやルーター製品と同様に、光伝送装置の世界にもオープン化の波が浸透すると予想する。2025年度ごろにオープン化された機器で構成されたエコシステムが本格的に回り始め、2027年度には光伝送装置市場の20?30%がオープン化対応製品になるとみる。同社はこの時点でオープン化市場の25%のシェア獲得を目指し、「光伝送装置のオープン化市場のリーダーのポジションを取る」(NECの佐藤氏)と力を込める。

2.全銀システムに資金移動業者が接続可能に、APIゲートウエイも構築(9.15 日経XTEC)
全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は2022年9月15日、銀行間送金を担う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の参加資格を拡大すると発表した。現在は銀行などの預金取扱金融機関に参加を限定しているが、10月をめどに資金移動業者へ拡大する。これにより、全銀システムを介して、異なるスマートフォン決済サービス同士で直接送金するといったことが可能になる。

 9月15日に開いた全銀ネットの理事会で、資金移動業者への参加資格拡大を決めた。金融庁も関係する事務ガイドラインを改正する予定だ。全銀システムへの参加に当たり、資金移動業者は直接接続と間接接続の2つの形態から選べる。直接接続の場合、資金決済を最終確定させるため、日本銀行に当座預金を開く必要がある。

 全銀ネットは資金移動業者などが全銀システムに接続するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)ゲートウエイを構築する方針も明らかにした。現状は全銀システム独自の接続仕様に基づいた中継コンピューター(RC)を設置する必要があり、資金移動業者の重荷になる可能性があった。APIゲートウエイは現行の全銀システムを刷新する2027年までの構築を目指している。

3.日常的にニュースを得ているメディア、今も約7割がテレビと回答(9.14 日経XTEC)
NTTドコモ モバイル社会研究所は2022年9月14日、2022年1月にスマートフォンやケータイの所有者を対象に実施したメディア利用動向調査の結果を公表した。この調査では、週1回以上アクセスし日常的にニュース情報(報道)を得ているメディアについて聞いた。

 日常的にニュースを得ているメディアとして最も回答が多かったのは「テレビ」で、約7割だった。2010年からの推移を見てみても、毎年約7割が「テレビ」から日常的にニュース情報を得ていると回答しており、大きな変化はない。

 一方、「新聞」は年々、緩やかに減少している。2010年には約6割が新聞から日常的にニュース情報を得ていると回答したが、2022年には約4割まで低下した。

 2022年の結果を年代別に見ると、30代〜70代では「テレビ」が最も高かった。特にシニアの60代〜70代では約9割が「テレビ」からニュース情報を得ていると回答した。一方、10代〜20代では「ソーシャルメディア」がトップとなった。

 「新聞」は70代で約7割、60代で約6割、50代でも約5割と高い。しかし、10代〜30代は2割程度と低かった。

4.ノキア幹部が語る、他国と比べて日本の5G顧客満足度が低い理由(9.14 日経XTEC)
日本で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まって2年半が過ぎた。5Gエリアは徐々に広がり、国内の5G契約数も2022年3月末時点で4500万契約を突破した(総務省調べ)。

 だが利用者からは、5Gならではのメリットを喜ぶ声があまり聞こえてこない。調査会社のMM総研が2022年8月末に公表した調査からは、4Gスマホの利用者の約65%が5Gスマホの利用開始時期を未定としているという結果が明らかになった。「現状(4G)のプランや端末に満足している」という声が最も多く、現在の日本の5G契約数は、端末の買い替えによって自動的に5G契約が増えているだけという実態が浮かび上がる。

 「確かに日本は他国と比べて5Gの顧客満足度が低い。それは日本は他国と比べて4Gの体感品質が良く、5Gと4Gの差分を感じられないからだ」。こう指摘するのは、フィンランドNokia(ノキア) モバイルネットワークRAN 製品ラインマネジメント製品管理部門責任者のBrian Cho(ブライアン・チョー)氏である。

 同氏は「5Gと4Gの体感速度の差が1.5倍くらいだと利用者には違いが分からない。だが5倍くらいの差になると違いを感じ始めるので、顧客満足度が向上する」と続ける。

 日本の5G顧客満足度を高めるためには、4Gとの違いを明らかに感じるまで速度を上げていくしかない。同氏は、そのためには複数の周波数帯を束ねて速度を高める  日本の携帯電話事業者も5Gキャリアアグリゲーションを進めているが、現状では利用者の体感品質を大きく変えるほどのインパクトをもたらしていない。その背景には、日本におけるもう1つの特殊な事情があるという指摘がある。日本では、スループット向上に有利なアンテナ技術である「Massive MIMO」の5G基地局への導入が諸外国と比べて遅れているという点だ。

 スウェーデンEricsson(エリクソン)の日本法人は2022年7月、日本におけるSub6(6GHz未満の周波数帯)の5G基地局において、Massive MIMO対応アンテナの導入率が10%程度にすぎないという推測結果を示した。つまり、大半を占める残りの基地局は従来型のRRU(Remote Radio Unit)で構築していることになる。同社の推測によると、他国におけるMassive MIMO採用率は中国で9割以上、韓国においても約8割としている。

 Massive MIMOアンテナは、64空間多重で送受信可能なタイプなどがあり、空間多重数が増えれば増えるほどスループット拡大に有利になる。従来型のRRUは、2×2や4×4 MIMOのタイプがほとんどであり、Massive MIMOと比べて空間多重数が劣る。

 日本で5Gならではのメリットが少ないという理由には、5G基地局へのMassive MIMOの導入が世界と比べて遅れているという事情も見えてくる。もちろん日本は台風などの災害が多く、大型のアンテナを設置しづらいという理由もあるだろう。都心部のビル屋上は、スペース不足から大型のアンテナの設置が難しいという事情もありそうだ。

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