週間情報通信ニュースインデックスno.1344 2022/9/10


1.衛星通信への対応が関心呼ぶ「iPhone 14」、だが気になる基本性能の停滞(9.8 日経XTEC)
米Apple(アップル)は2022年9月7日(米国時間)に新製品発表会を実施した。注目されるのはやはり新しい「iPhone 14」シリーズであろう。衛星通信を用いた緊急SOSやeSIMの積極化など通信面で注目すべき要素は多いが、一方で基本となる機能・性能面を見ると気になる部分も多い。

 ベーシックモデルの「iPhone 14」と上位モデルの「iPhone 14 Pro」シリーズは、ともにディスプレーサイズが6.1インチと6.7インチの2機種を用意。iPhone 12/13シリーズで販売不振となっていた「mini」のラインアップが姿を消し、ここ最近のスマートフォンのトレンドにならう形で大画面志向を強めたようだ。

 そしてiPhone 14シリーズで注目を集めたのは、衛星通信の活用であろう。これまであまり一般的とはいえなかった衛星通信だが、携帯電話の基地局を設置できない場所でも通信できることから、5Gの次の世代となる「6G」ではその活用が期待されており、ここ最近大きな動きも相次いでいる。

 実際、2022年8月25日には実業家のイーロン・マスク氏が設立した米SpaceXと、独T-Mobile(Tモバイル)の米国法人が共同で、衛星とスマートフォンで直接通信できるサービスを2023年より提供することを明らかにしている。また日本でも楽天モバイルが、米AST & Scienceに出資してスマートフォンと衛星を直接つないで通信できるようにする「スペースモバイル計画」を打ち出し、取り組みを進めている状況だ。

 そうしたこともあって、新しいiPhoneでも衛星通信が利用できるようになるのではないか、という臆測報道が出ており注目されていたのだが、実際にiPhone 14シリーズで衛星通信に対応したことには驚きがあった。ただその内容は、多くの人がイメージしていたものとは違っていたというのも正直なところであろう。

 というのもiPhone 14シリーズで提供されるのは、衛星通信を活用して携帯電話がつながらない場所から緊急SOSを発信できるというもの。衛星通信は一度に通信できる量が小さいのに加え、iPhone 14シリーズはスマートさを重視し、従来の衛星携帯電話機のように衛星と通信するための大型アンテナを搭載していないことから、利用用途を最小限に絞ったとみられる。

 それゆえ実際に通信するにはアプリの指示に従いiPhoneを衛星の方角に向ける必要があるなどの手間が発生する。加えて、送信できるメッセージもある程度限定されており、独自技術で圧縮して送られる仕組みだという。また衛星通信経由で送られたSOSのメッセージを専門家がいる中継センターで内容を判断、その上で緊急機関へ救援を要望する仕組みとなるようで、当初利用できるのは米国とカナダに限られるとのことだ。

 ただこの機能を緊急時に利用するだけでなく、位置情報を送り他の人と共有できるなど日常で利用できる仕組みも提供されるようだ。機能がかなり限定されているだけに、iPhone 14の投入で本格的な衛星通信の活用につながるとは考えにくいが、今後の衛星通信活用に向け1つの方向性を示したことは確かだろう。

 そしてもう1つ、通信に関して筆者が注目したのが、アップルがeSIMの活用を前面に打ち出したことである。アップルは2018年の「iPhone XS」シリーズからeSIM搭載モデルを用意するなど、以前からeSIMには積極的な姿勢を見せてきたが、今回のiPhone 14シリーズではより踏み込んだ措置を打ち出している。

 もちろんeSIMのみを搭載するスマートフォン自体は、日本でも楽天モバイルの「Rakuten BIG s」などいくつかのモデルが存在しており必ずしも珍しいわけではない。だがスマートフォン市場で大手の一角を占め、なおかつプラットフォーマーでもあるアップルがそうした機種を投入したことの意味は大きい。

 eSIMはすぐセットアップができるメリットがある一方で、スマートフォンやネットワークに一定の知識がないとセットアップにつまずくことも多く、現状はスマートフォン上級者が利用するものという印象も強い。それに加えて他社に乗り換える障壁が低くなることもあって、従来多くの携帯電話事業者はeSIMにあまり熱心に取り組もうとしなかった。だがアップルが今回eSIMに主軸を置くことを明確に示したことで、今後eSIMの普及促進に向け携帯電話事業者も大きく動く必要に迫られることになるだろう。

2.NECがネットワーク機器の真正性を可視化するソフト、まずシスコ製品が対象(9.9 日経XTEC)
NECは2022年9月9日、ネットワーク機器を対象に、メーカーの設計・製造段階から意図せず改変されていないことを指す「真正性」を可視化するソフトウエアの販売を始めたと発表した。工場出荷時に加えて、システム構築や運用の段階でも、ネットワーク機器の真正性を確かめられるようにする。顧客企業はサプライチェーン全体でサイバーリスクを検知しやすくなるという。

 NECは2020年から、シスコシステムズの不正検知技術とNECのブロックチェーン技術を組み合わせ、工場出荷時にシスコのネットワーク機器の真正性を管理する取り組みを進めてきた。新たに販売を始めた「NECサプライチェーンセキュリティマネジメント for ネットワーク」は、システム構築やソフトウエアの更新・追加、システム増設・保守、機器の撤去・廃棄まで管理のフェーズを広げた。

 まずNEC経由で提供するシスコのネットワーク機器を管理対象にする。対象機器は順次拡大していく予定だ。NECは今後5年間で3万台のネットワーク機器に同ソフトを導入することを目指す。価格(税別)は年額70万円から。2023年度にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)版の発売も計画している。

3.新登場の「Wi-Fi 6E」は買いか、無線LAN製品の選び方(9.7 日経XTEC)
失敗しない無線LAN製品の選び方のポイントは、細かい仕様もきちんと確認することだ。同じ規格に準拠した製品でも有線LANと違って、最大通信速度や対応する機能が異なる場合があるからだ。ここでは、無線LAN製品を選ぶ際に欠かせない、チェックすべき点を順番に見ていこう。

 近年は無線LANのことを「Wi-Fi(ワイファイ)」と呼ぶ。無線LAN製品の相互接続性を認証する「Wi-Fi Alliance(ワイファイアライアンス)」という団体が認めた製品が通常「Wi-Fi」と呼ばれる。

 製品のパッケージを見ると、準拠する規格として「Wi-Fi 6」や「IEEE 802.11ax」と表記が見つかる。2022年時点で主流である両規格は同じもので、正式な規格名がIEEE 802.11axで、Wi-Fi 6はWi-Fi Allianceが定めたIEEE 802.11axの愛称である。IEEE 802.11axを略した「11ax」「ax」をパッケージに記載している場合もある。

 Wi-Fi 6の拡張規格である「Wi-Fi 6E」対応製品が2022年9月に登場している。拡張規格といっても、Wi-Fi 6Eの正式な規格名はIEEE 802.11axでWi-Fi 6と変わらない。Wi-Fi 6EはIEEE 802.11axで定義されていた周波数帯のうち、6GHz帯も利用できるようになった製品を指す。Wi-Fi 6は従来の無線LAN製品で使われていた2.4GHz帯と5GHz帯にしか対応しない。

 国内では、総務省が2022年9月2日に電波法を改正する省令を出し、無線LANで6GHz帯を使えるようになった。6GHz帯は2.4GHz帯や5GHz帯よりも利用できるチャンネルが多く、複数のチャンネルを束ねて通信の高速化を図るチャンネルボンディングがしやすい利点がある。

 Wi-Fi 6Eに対応したAP機能を持つ無線LANルーターが発売されたばかりだが、Wi-Fi 6Eに対応したパソコンやスマートフォンがないと6GHz帯の通信はできない。Wi-Fi 6E対応の端末を持っていなければ、登場したばかりで価格が高くなっているWi-Fi 6E対応の無線LANルーターをあせって買う必要はない。

 冒頭で説明したように、無線LAN製品は機器によって最大通信速度が異なる。無線LANルーターやパソコンを購入するときは、規格だけでなく最大通信速度も確認しておきたい。

 無線LANルーターの場合、その最高速度は製品特長やパッケージなどに大きく記載されている。2.4GHz帯と5GHz帯の双方の速度が記載されているが、高速な5GHz帯の速度を重視する。一部の製品は、2.4GHz帯と5GHz帯の最高速度を加算し、速度の数値を大きく表記することがある。その場合も、仕様には2.4GHz帯と5GHz帯の速度が記載されているので、その5GHz帯の速度を確認すればよい。

 現在売っているほとんどのWi-Fi 6対応パソコンの場合、大半が米Intel(インテル)の拡張ボードを搭載している。その最高速度は、5GHz帯で2.4Gbps(2402Mbps)だ。Wi-Fi 6対応の無線LANルーターを購入するときは、それと同じかそれ以上の最大速度を持つWi-Fiルーターを選ぶと、性能を十分に発揮できる。スマートフォンやタブレットなどは、5GHz帯の最高速度が1.2Gbpsの製品が多い。もしスマホだけを接続するのであれば、最高速度が1.2Gbpsで安価な無線LANルーターを選ぶ手もありだろう。

 Wi-Fi 6対応製品はすべて、無線LANのセキュリティー機能であるWPA3に対応する。1つ前のWPA2も広く使われているが、2017年に第三者がデータを傍聴できる脆弱性が発見されてしまった。その脆弱性を悪用できる条件はかなり限られているため、今のところ大きな心配はないが、この脆弱性を解消したWPA3のほうが安心だ。

 無線LANルーターのパッケージで、バンドステアリングやビームフォーミング、MU-MIMOという単語を目にする。これらにも注目しよう。

 バンドステアリングは、周囲の電波状況を判断し状況に応じて5GHz帯から2.4GHz帯、またはその逆を切り替える機能だ。相互に切り替える機種もあれば一方通行の機種もあり、実装方法は機種によって異なる。バンドステアリングは接続台数が多い環境や、電波干渉が多い場所での利用で効果を発揮しやすい。

 ビームフォーミングは電波の波形を調節し、特定の位置における電波の信号強度を引き上げて通信できる仕組み。通信速度が向上し、遠距離で通信の安定が期待できる。無線LANルーターは端末の位置を把握しており、端末が動いても利用できる。

 MU-MIMOは、複数台に向けて通信を送信する仕組み。従来の無線LANの場合、複数の端末と通信するときは通信をいちいち切り替える必要があり、端末の台数が増えれば増えるほど速度が低下した。MU-MIMOは、ビームフォーミングを使い電波干渉が起きないよう複数の端末に向け、位相をずらしてデータを送信するため、速度低下が起こりにくい。無線LANルーターだけでなく端末の対応も必要になるが、最新の端末であれば対応している製品は多い。MU-MIMOはWi-Fi 5は下りのみ利用できたが、Wi-Fi 6からダウンロードだけでなくアップロードでも活用できるようになった。また、利用できる台数も最大8台に拡張されている。製品では「8 x 8 MU-MIMO」などと記載される。

 有線LANは長い間、最高速度が1Gbpsのギガビットイーサネットが使われている。ギガビットイーサネットには複数の規格があり、そのうちパソコンで使われるのが1000BASE-Tという規格だ。パソコンの仕様では1000BASE-Tと記載することが多い。ギガビットイーサネット以前は、10メガビットイーサネット(10BASE-T)やFast Ethernet(100BASE-TX)が利用されており、ギガビットイーサネットの有線LAN端子はそれらとも互換性があるため、「1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T」などと記載される。RJ-45は、LAN端子のコネクターの形状を表す。「RJ」はRegistered Jackの意味で「登録された端子」を意味し、「45」はLAN端子として使われる8ピンのモジュラージャック式コネクターを示す。

 最近は、ギガビットイーサネットより高速な10ギガビットイーサネットやマルチギガビットイーサネットなども登場している。10ギガビットイーサネットはその名の通り、10Gbpsが最高速度だ。パソコンで使われるのは「10GBASE-T」という規格。マルチギガビットイーサネットは、最高速度が5Gbpsの5GBASE-Tと、同2.5Gbpsの2.5GBASE-Tの2種類ある。従来の有線LAN端子と互換性を持つが、最高速度を発揮するには、接続した双方が同じ規格に対応する必要がある。

4.「Web会議で数十秒先に必要なデータ通信量」を予測し通信品質を保つ NTTが新技術開発(9.1 @IT)
NTTは、体感品質とデータ通信量を最適化する技術「Mintent」を確立した。Web会議の映像や音声の体感品質を保ちながら、データ通信量を最大63%低減できたという。

 NTTは「従来のWeb会議サービスは、利用者の端末が高速回線に接続されている場合など、映像品質を高めるために過剰なデータを送信しており、スループットが大きく変動した際に『品質の低い映像データの送信』に急には対応できずにWeb会議が途切れてしまうことがある」と指摘している。

 そこで同社は、各サービス利用者の「数十秒先の未来の体感品質」を満たす送信映像データ通信量を、Web会議サーバから得られるビットレートなどの映像情報から計算し、適正品質を維持可能なデータ通信量を利用端末に指示するようにした。これによって「適正品質を満たしつつ、少ないデータ通信量の、途切れにくいWeb会議」を実現したという。

 NTTは今後、Web会議以外のさまざまな通信サービスにおけるMintentの有効性を確認する予定だ。現在は、映像配信サービス視聴時の「視聴時間を長くしたい」といった要件やコネクテッドカー制御時の「車内外の状況から異常を検知したい」といった要件などに関する対応を想定しているという。

5.楽天が「Rチャンネル」のWebブラウザー版の提供開始、約40チャンネルを視聴可能に(9.7 日経XTEC)
楽天グループは2022年9月6日、無料のリニア型動画配信サービス「Rチャンネル」のWebブラウザー版の提供を開始したと発表した。これまでは同サービスに対応するスマートテレビで視聴できるようにしていたが、今回はこれに加えてパソコンやスマートフォンのブラウザーを通じて利用できるようにした。今後、スマホアプリの提供も予定する。

 Webブラウザー版のサービス提供に伴い、2022年9月6日から視聴時間に応じて「楽天ポイント」を付与する取り組みを開始した。視聴時間1時間ごとに1ポイントを付与するほか、毎月の総視聴時間の順位に応じたポイントの付与を常時実施する。9月6日から9月30日までの期間は、総視聴時間の順位に応じて付与するポイントを3倍にする。ポイントの受け取りには楽天IDが必要となる。

 「Rチャンネル」ではテレビ放送と同じように番組表に沿ってコンテンツを配信する。2022年9月6日時点のチャンネル数は約40チャンネルで、配信終了後1週間以内の見逃し配信も実施している。

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