1.NECプラットフォームズが工場や店頭など向けに新タブレット端末、来春から販売(9.2 日経XTEC)
NECプラットフォームズは2022年9月2日、新しい業務用タブレット端末「TWINPOS Sx(ツインポス エスエックス)」を発表した。販売は2023年3月23日から始める。標準価格は税別で35万4000円から。
TWINPOS Sxは、工場や倉庫、小売店舗のバックオフィスなどでの業務や、店頭での接客支援や受付業務など、幅広い場面での利用を想定している。専用のクレードルなどを介してIoT(インターネット・オブ・シングズ)デバイスを含む様々な機器と連携できる。
1m(メートル)からの耐落下強度や防じん・防滴性能を持たせたり、抗菌・抗ウイルス仕様にしたりする。きょう体の背面にカーブするデザインを採用して、接客業務でも利用しやすくするという。搭載するタッチパネルのサイズは11.6型ワイド。搭載OSは「Windows 10 IoT Enterprise 2021 LTSC」になる。
2.AWSは今や半導体メーカー、サーバーを「メインフレーム化」させた驚きの開発史(9.2 日経XTEC)
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)は、クラウドで使用する数百万台以上のサーバーハードウエアをすべて自社で開発・製造してきた。そのハードの中身が近年、市販のPCサーバーとは大きく異なり、メインフレームに近い構成になっていた事実が明らかになった。
AWSのサーバーが「IBMメインフレーム互換」になったわけではない。AWSは2012年、AWS専用サーバーハードの内部に、CPUとは別にI/Oやサービス管理を担う専用プロセッサーを自社で開発して搭載する方針を決断した。そうした専用プロセッサーを使う手法は、メインフレームを参考にしたものだったと、AWS幹部が2022年8月にオンライン講演で明らかにしたのだ。
その幹部とはAWSのJames Hamilton(ジェームス・ハミルトン)シニア・バイス・プレジデント(SVP)だ。ハミルトン氏はこれまでも、自社イベントのAWS re:InventでAWSの内部仕様を明らかにしてきた。今回はAWSのサーバーに2000万個以上も搭載されてきた独自半導体「Nitroチップ」の開発史を、2022年8月3日に開催したイベントAWS Silicon Innovation Day 2022の講演「History of Silicon Innovation at AWS」で解説した。
具体的にはNitroチップは現在、ネットワークのパケット処理や暗号化処理に加えて、ハイパーバイザーや各種管理ソフトウエアが担うクラスター管理やセキュリティー管理、パフォーマンス監視などのワークロードを処理している。
ハイパーバイザー上で稼働する仮想マシンではなく、ハイパーバイザーを介さないベアメタルサーバーを提供することは、当時のAWSにとっては不可能だった。EC2を使うユーザーが他の顧客の領域やAWSのシステム領域に侵入できなくする様々なセキュリティー機能が、ハイパーバイザー上に実装されていたためだ。「AWSはセキュリティーを最優先する」(ハミルトン氏)との原則はゆずれない。
そこでデサンティス氏が考案したのは「サーバーの中にサーバーを設ける」というアイデアだ。物理サーバーの内部にサービス管理専用サーバーを内蔵し、物理サーバーへのあらゆるトラフィックをサービス管理専用サーバーで隔離する。こうすればハイパーバイザーを介さなくても、サーバー資源を安全にユーザーに提供できるようになる。当時のデサンティス氏はこのアイデアを「すべてのコンピューターにドングル(専用デバイス)を導入する」と表現していた。
そこでAWSが考えたのは、自社専用サーバーを垂直統合で開発する手法をより進め、チップまで自社開発することだった。まずは今は存在しないネットワーク管理チップメーカーである米Bigfoot Networks(ビッグフットネットワークス)や、同じく今は存在しないプロセッサーメーカーである米Cavium(カビウム)などと協力し、自社チップの開発を始めた。
AWSはその後、イスラエルの半導体メーカーAnnapurnaLabs(アンナプルナラブズ)を2015年に買収し、Nitroチップの完全な自社開発を始めた。そして現在はNitroチップ以外にも、ARMサーバーCPUである「Graviton」や機械学習の推論専用チップである「Inferentia」、機械学習のトレーニング専用チップである「Trainium」、SSDコントローラーなどの半導体を自社開発している。AWSは今や半導体メーカーにもなった。
よって筆者はハミルトン氏が「サーバーはワンチップになる」と宣言している以上、AWSがワンチップサーバーを開発しているだろうと推測している。そして将来AWSが発表するであろうワンチップサーバーは、高い信頼性や可用性を確保する仕組みを踏まえると「ワンチップメインフレーム」と呼ぶのがふさわしい。筆者はそう考えているのだ。
3.1ミリも納得できない」、視界不良の楽天プラチナバンド再割当て(9.1 日経XTEC)
楽天モバイルがNTTドコモとKDDI、ソフトバンクに対して「プラチナバンド」と呼ばれる電波が届きやすい周波数帯の再割当てを求めている件について、双方の対立が激しくなっている。「1年以内」のプラチナバンド利用を要求する楽天モバイルに対し、既存3社は「10年程度の移行期間が必要」などと反論。移行費用額や負担の考え方についても隔たりが大きく、両者の主張は平行線をたどっているからだ。プラチナバンドの再割当て事態が、5G展開を遅らせかねず社会的損失をもたらすという指摘もある。楽天のなりふり構わない要求は、業界に大きな波紋を広げている。
「これまでの既存3社の説明は、到底合理的とは思えず、時間稼ぎとしか思えない。他社と同様の人口カバー率に達するためにはプラチナバンドが必要になる。現在、フェアな競争ができているとは1ミリも思っていない」
楽天モバイルが前代未聞のプラチナバンドの再割当てを求めたのは、総務省が2020年末から2021年8月まで開催した有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」において。NTTドコモとKDDI、ソフトバンクに割り当てられた800M?900MHz帯の電波を一部縮減し、3社から「5MHz幅?2」ずつ新免許人(楽天モバイルを想定)に割譲する案を提案した。
既に利用中の電波の一部を奪ってまでしてプラチナバンドを欲しいという楽天モバイルの要求に対し、既存3社は当然猛反発。ただ先の通常国会では、既存免許人の電波の有効利用が十分ではない場合などにおいて、既に割り当てられた周波数帯を新免許人に再割り当てできる電波法の一部を改正する法律が成立した。2022年10月1日に施行予定となっている。
つまり楽天モバイルは、プラチナバンドの再割当てに伴って自ら費用負担する考えはさらさらなく、既存3社の費用負担で電波を更地に戻し、1年以内に譲渡せよと求めていることになる。
「移行期間は10年」「費用は新規事業者が負担するべきだ」
楽天モバイルの半ば強引な要求に対し、既存3社も黙ってはいられない。2022年8月30日のヒアリングでは、既存3社は真っ向から反論した。
4.5Gの本命「SA方式」がスマホ向けに始動、利用者のあまりの無関心にがくぜん(8.31 日経XTEC)
NTTドコモは2022年8月24日、5Gの本命とされる「SA(スタンドアローン)方式」の提供をスマートフォン向けに始めた。法人向けには専用データ通信端末と組み合わせて2021年12月から提供していたが、一般ユーザーも5G SAを体験できるようになった。
とはいえ、発表時点の対応端末は4機種(予定を含む)。提供エリアも主要ターミナル駅の周辺やイベント会場、商業施設など、ごく一部に限られる。同社は2023年3月末までに全国47都道府県への展開を目指すとしているが、例えば東京都は2022年8月時点で丸の内駅前広場の1カ所だけである。
新サービスを利用する当面のメリットは「超高速・大容量」。5G SAの通信速度は下り(受信)で最大4.9Gbps、上り(送信)で最大1.1Gbpsのため、大容量コンテンツを快適に楽しめる。ただ、これまでも下りが同4.2Gbps、上りが同480Mbpsだったので、多くの人にとっては「現状で十分」となりそうだ。
このように“お寒い”状況なのだが、興味深いのはドコモが今回設定した5G SAのオプション料金である。終了時期未定のキャンペーンで当面は無料とするものの、月額550円(税込み)とした。KDDIやソフトバンクなどの競合他社も「右にならえ」で追随してくる可能性がある。
携帯大手は長らくARPU(契約当たりの月間平均収入)の下落に苦しんできた。メインブランドは使い放題の導入で伸びしろが限られ、サブブランドをはじめとした小中容量プランへの移行加速がボディーブローのように効いてきている。そこに官製値下げで追い打ちをかけられた。いかに「メインブランドに寄せていくか」「バンドルサービスを増やしていくか」が問われるが、一般ユーザー向けの5G SAの導入はARPUの新たな押し上げ要因となりそうだ。
もっとも、オプション料金には釈然としない部分も残る。5G SAで期待が高まるのは通信品質などの要件に応じてインフラを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」や、ユーザーの最寄りとなるネットワークのエッジ部分で処理することにより遅延を抑える「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)」。一定以内の遅延時間を保証するなどの対応サービスの登場が想定されるが、その場合は上記のオプション料金とは別料金となる可能性もあり得るという。
ドコモは今回のオプション料金について、「エリア構築のコストなどを総合的に勘案して設定した」と説明する。今後登場が想定される用途別の「+α」の機能とダブルで課金するのか、それとも今回のオプションは無料のまま続け、最終的には用途別の課金だけに絞るのか。あるいは5G SAの本格展開を契機に料金体系を抜本的に見直し反転攻勢を仕掛ける選択肢もあるはずで、しばらくは模索が続きそうである。
5G SA時代の料金体系はさておき、現実は厳しい。調査会社のMM総研が2022年8月25日に公表した「5Gスマートフォンの導入実態・利用意向調査」によると、5Gスマホの利用者は2022年7月時点で21.8%。4Gスマホ利用者に5Gスマホの利用意向を聞いた結果、最も多かったのは「5G通信サービスの利用は考えていない」の46.8%だった。3年以内の移行検討者は約35%にとどまった。
最近の新端末はほぼ5Gスマホなので、端末を買い替えれば自動的に5Gスマホの利用者となるわけだが、あまりの関心の低さにがくぜんとしてしまった。利用しない理由は「現在利用している端末で満足しているから」が59.4%、「現在契約しているプランで満足しているから」が53.5%と、多数を占めた。これが5Gの実力値なのだろうが、携帯各社は魅力を十分に打ち出せていない、または伝えられていないということになる。
MM総研が2022年8月25日に公表した別の調査結果「携帯電話の月額利用料金とサービス利用実態」によると、スマホ利用者の月間データ通信量は平均で9.34ギガバイト(2022年7月時点)だった。増加傾向にあるとはいえ、2021年12月時点の8.95ギガバイトから微増にとどまった。5G契約者は4G契約者の約1.5倍のデータ通信量を利用しているとのデータはあるものの、5Gのポテンシャルを十分に生かし切れていない印象を受ける。
こうした状況を招いている最大の理由は提供エリアの狭さだ。現状では5Gを訴求しても意味がないとの判断なのかもしれないが、このままでは提供エリアが広がってもキラーとなるコンテンツやサービスの不在で苦しみそうな気がしてならない。5Gの成否は携帯各社の今後の成長を大きく左右するだけに一層の知恵と工夫が求められる。
5.イーロン・マスクの「Starlink」もスマホ直接通信へ、iPhone 14も衛星対応?(8.30 日経XTEC)
起業家のElon Musk(イーロン・マスク)氏率いる米SpaceX(スペースX)は2022年8月25日(米国現地時間)、巨大衛星通信網「Starlink(スターリンク)」の第2世代において、衛星とスマートフォン(スマホ)を直接通信できるようにすると発表した。海の上や山間部など現在の携帯電話網では圏外になるケースが多い場所でも、特別な端末を使うことなく通信できるようにする。衛星とスマホの直接通信は、楽天モバイル(以下、楽天)などが協業する米国の新興衛星通信事業者AST & Science(以下、AST)も取り組みを進める。米Apple(アップル)が近々発表するとみられる次期iPhoneも、衛星との直接通信に対応するという噂が流れている。
「スターリンクの第2世代は、スマホと直接通信できるようになる。帯域はそれほど広くないが、テキストメッセージや写真のほか、セルゾーンにそれほど人がいない場合は動画を送受信できる可能性がある。何よりも携帯電話の圏外をなくせることが重要だ。人々の命を助けられる」
2022年8月25日(米国現地時間)、米通信事業者であるT-Mobile US(TモバイルUS)との共同会見に登壇したスペースXのイーロン・マスク氏は、スターリンクの新たなサービスについてこのように語った。
第2世代のスターリンクでは、TモバイルUSが持つミッドバンド(PCS、1.9GHz帯)の周波数帯をサービスリンクに使い、既存のスマホと衛星を直接通信できるようにする。2023年後半の試験サービス開始を目指す。
現在試験運用中の第1世代のスターリンクは、低軌道(LEO:Low Earth Orbit)に人工衛星を多数打ち上げ、衛星専用の周波数帯をサービスリンクに使ってブロードバンドサービスを提供している。端末は直径約50センチメートルのアンテナを備えた専用の送受信機だ。
専用端末を使わず、既存のスマホで衛星と直接通信できるようになれば、使い勝手が大きく向上する。地上の基地局では圏外になるような海の上や山間部などで遭難した場合も、手持ちのスマホを使って衛星経由で助けを求められる。
イーロン・マスク氏と共に発表イベントに登壇したTモバイルUS CEO(最高経営責任者)のMike Sievert(マイク・シーベルト)氏は「過去40年間、我々の業界の最大の弱点だった圏外をなくすことができる。TモバイルUSの代表的なプランにおいては、無料でサービスを提供したい」と語った。同氏は、同様の取り組みを国際ローミングに使って世界に広げたいとし、世界の通信事業者に参加を促す招待状を送ったという。
第2世代のスターリンクは、あくまで緊急時の通信手段にとどまりそうだ。通信速度は、衛星がつくるセルゾーンごとに2M?4Mビット/秒にとどまる見込みという。そのため、当初はテキストメッセージやMMS(Multimedia Messaging Service)、一部のメッセージアプリからスタートする。その後、順次、データ通信や音声通話にも対応していく計画だ。
スターリンクの第2世代も、ASTと同様に地上のスマホの微弱な電波を受信するために「巨大なアンテナを採用する」(イーロン・マスク氏)という。マスク氏も、地上からの微弱な電波を確実に拾えるのか、ドップラー効果の影響を解消できるのかといった点が技術的な課題になると指摘する。「ラボの実験では、実際に動作が可能という点を確信している」と同氏は語り、スターリンク第2世代の成功に向けて自信を示した。
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