週間情報通信ニュースインデックスno.1338 2022/7/30


1.KDDI通信障害で気になる携帯回線のマルチキャリア化、2つの実現手法とは(7.29 日経XTEC)
KDDIが2022年7月初めに起こした携帯電話サービスの通信障害。その影響は音声通信だけでなくデータ通信にも及び、IoT(インターネット・オブ・シングズ)用途でKDDIのモバイル回線を利用していた多くの企業を直撃した。KDDIはIoT向けのモバイル回線を国内で約1500万回線提供しており、今回の通信障害によって最大1割に影響が出たとしている。

 こうした事態をきっかけに現在、複数の携帯電話事業者のモバイル回線を併用して冗長化する「マルチキャリア化」に企業の関心が集まってきている。モバイル回線がIoTシステムの「単一故障点」になるのを防ぎたいからだ。

 モバイル回線をマルチキャリア化する方法は主に2つある。1つは、SIMの2枚差しが可能な産業用ルーターを導入し、異なる携帯電話事業者のSIMを契約する方法だ。サン電子やセイコーソリューションズなど、いくつかの通信機器メーカーがこうしたルーターを販売している。

 この方法では、複数の携帯電話事業者と契約してSIMを調達したり、ルーターを設定したりする手間がかかる。一方、モバイル回線の切り替えを柔軟に制御できるのがメリットだ。

 利用イメージは、データ通信の有無や電波の強度、圏内か圏外かなどをルーターで監視し、あらかじめ設定した条件に従って回線を自動的に切り替えるといった形だ。「ping」コマンドを使ってテスト用のパケットを任意のサーバーに送信し、正しく通信できるかどうかで切り替え制御できるルーターもある。

もう1つは、1つのSIMでマルチキャリアに対応。

2.Emotet「第3波」が襲来、一段と増した厄介さにどう対処するか(7.28 日経XTEC)
メール経由で拡散するマルウエア「Emotet(エモテット)」が三たび猛威を振るっている。トレンドマイクロの調査によれば、2022年2月から国内で感染した端末の検出数が増え始め、3月には4万件を超えた。4〜5月はいったん減少したものの、6月には2万6000件超と再び増加に転じている。

 今回の検出数の増加は、いわば「第3波」である。Emotetが初めて登場したのは2014年だが、世界的に注目された「第1波」は2017〜2018年。Emotetがトロイの木馬やランサムウエアといった他のマルウエアの搬送役として利用されるようになり、日本や米国の政府が注意喚起する事態となった。その後いったん収束したものの2019〜2020年にかけて再び検出数は増加。この「第2波」も国内外に大きな被害をもたらした。そして2022年に入り「第3波」がやってきたというわけだ。

 Emotetは1度「消滅」したはずだった。欧米8カ国の法執行機関や司法当局などが「第2波」後の2021年1月に、攻撃者がEmotetを遠隔操作する「コマンド・アンド・コントロール(C&C)サーバー」を一斉停止(テークダウン)させたのだ。しかし10カ月ほどでC&Cサーバーは復活し、第3波を起こした。復活の背景をトレンドマイクロの岡本勝之セキュリティエバンジェリストは「Emotetはランサムウエアなどのマルウエアに感染させるのに使い勝手がよかったため、再び利用されるようになったのではないか」と推測する。

 しかも復活したEmotetはセキュリティー機器による検出を回避する機能を強化していた。具体的には2021年11月にEmotetが使う通信プロトコルが変化した。それまではC&Cサーバーへの通信にHTTPを利用していたが、復活後はHTTPSを使うようになり通信内容を把握するのが一段と難しくなった。

 さらに感染力も高まった。2021年12月には、Windowsが標準搭載するアプリケーションのインストール機能「Windows App Installer」を悪用するEmotetが登場した。具体的には、Windows App Installerに含まれるWindows AppX Installerの脆弱性を利用して、正しいアプリをインストールするかのようにEmotetをインストールさせる。

 それまでメール受信者のパソコンをEmotetに感染させるには、不正なマクロを含んだ添付ファイルを実行させる必要があった。これに対し新たに登場した手法では、添付ファイルではなくメールの本文中にURLを記述する。URLをクリックすると、インストーラーがダウンロードされ、他のアプリと同じようなインストール画面が表示される。ユーザーが誤って「Install」ボタンを押してしまうと、Emotetをダウンロードしてきて感染してしまう。

 Emotetへの感染対策は、添付ファイルのマクロやショートカットファイル、メール本文中のURLをむやみに実行しないことだ。不要な感染を防ぐためにも、Microsoft Officeについては「マクロを無効にする」または「マクロを実行しない」と設定しておきたい。初期設定でマクロは無効になっているが、マクロを含むOfficeファイルを開くと、メッセージバーに「コンテンツの有効化」ボタンが表示される。ボタンを押してしまうとEmotetに感染するので注意が必要だ。

3.5Gと6Gをつなぐ「5.5G」、ファーウェイが提唱する「実現すべき特性」とは?(7.29 日経XTEC)
中国Huawei Technologies(ファーウェイ)は2022年7月22日(現地時間)、5Gと6Gをつなぐ「5.5G」で実現すべき特性として、10Gビット/秒の通信速度と1000億台の大量機器接続、AIを活用したネットワーク最適化の3点を同社イベント「Win-Win?Huawei Innovation Week」にて提唱した。同社の無線ソリューション部門長であるYang Chaobin氏による基調講演「Continuous Innovation Towards 5.5G for a New Journey of 5G Industry」の中で明らかにされた。以下はその概要となる。

 5G強化:新しいユーザー体験やサービスを提供する上では、5Gのさらなる強化が必要となる。XRをはじめとする一般顧客向けサービスにはさらに10倍の高速化が、ビジネス向けには、上り速度高速化とセンシング能力向上が必要不可欠となる。5.5Gでは、10Gビット/秒の下り速度、1Gビット/秒の上り速度、1000億台のIoT機器接続、AIを使った高度な運用管理が必要となる。

 下り速度10Gビット/秒:10Gビット/秒の下り速度を実現するには、サブ100GHz帯の超広帯域幅の利用と、超巨大アンテナアレー(Extremely Large Antenna Array、ELAA)が必要となる。ELAAを使うことで、高周波数帯でもCバンドと同等のカバレッジが提供可能となる。Huaweiでは、ELAA対応の「MetaAAU」を既に30都市以上に商用展開、6GHz帯でのフィールド試験も完了し、Cバンドとの併用で、屋外のみならず屋内カバレッジも確保できることを確認している。今後、ミリ波活用により、5キロメートル先での最大10Gビット/秒の通信も可能となる。

 上り速度1Gビット/秒:上りと下りの通信を分離し、既存のFDD周波数帯に加え、新たに上り専用の周波数帯を用意することで、上り速度1Gビット/秒も可能となる。Huaweiでは既に、鉱業や鉄鋼業などの分野で上り通信と下り通信の分離を実用化し、100チャンネルの高画質映像中継やパノラマ映像での遠隔操作などに必要な高速上り通信を提供している。

 1000億台接続:5GをベースにしたIoT向け規格RedCapやNB-IoT、passive IoT(自身では電源を持たず、他から電力供給を受けるIoTデバイス)などにより、今後10年以内に1000億台接続が可能になる。RedCapはeMBBより低消費電力、高コスト効率、passive IoTも安価で、Huaweiの検証では200メートルを超える長距離カバレッジも可能だ。これにセンシングを統合し、ミリ波の広帯域幅を活用して精度向上を行うことで、スマート輸送での例外識別、スマートファクトリーでのジオフェンシング(特定エリアに仮想的な柵を設置)や、デジタルレプリカ構築なども可能になる。

 AI活用:5.5Gでは、サービスの運用管理簡素化、ネットワーク最適化に向けて、AIを使ったネーティブインテリジェンスを導入する。これにより、リアルタイムセンシング、モデリングや多次元的な観測などが可能となるほか、オンデマンドでのリソース再構築も可能となり、最適なユーザー体験、容量の提供などが可能となる。不具合発生時の対応自動化も可能になり、運用管理も簡素化できる。

4.Amazonが全国18カ所に配送拠点新設、置き配や翌日配送を拡大(7.27 日経XTEC)
アマゾンジャパンは2022年7月27日、日本全国の18カ所に配送拠点「デリバリーステーション」を新設すると発表した。新たに700万点以上の商品の翌日配送が可能になるのに加え、10県で置き配指定サービスを新たに利用できるようになる。

 2022年10月までに、青森県、岩手県、秋田県、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、愛知県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、熊本県、沖縄県の1都13県にデリバリーステーションを開設する。これにより5000人以上の雇用機会を創出するという。

 青森県、岩手県、秋田県、長野県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、熊本県、沖縄県では新たに置き配指定サービスを始める。新型コロナ禍で高まる非接触需要に対応するとともに、再配達を減らすことで二酸化炭素の排出量削減を目指す。

5.NTT東が「地域エッジクラウド」提供開始、マイクロソフトのAzureをベースに(7.26 日経XTEC)
NTT東日本は2022年7月25日、「地域エッジクラウド」の提供を同日に開始したと発表した。

 NTT東日本は、地域の情報を地域エッジで効率的に収集・分析し、それらをセキュアーに流通させることで地域社会全体でデータを共有・活用、様々な分野における地域活性化を目指す「REIWAプロジェクト」を推進している。同プロジェクトの一環として、地域エッジクラウドを開始した。

 地域エッジクラウドは、NTT東日本のデータセンターにマイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」と同様のGUIを使用した「Microsoft Azure Stack Hub」基盤を配備し、格納するデータの所在を明確にした地域のクラウドサービスとして提供する。地域のユーザー事業者のネットワークとIP/VPNの閉域網や学術情報ネットワークと接続することで、高セキュアー化や低遅延化を図った形でクラウドサービスを利用できるできるようにする。

 今後、今回のサービスの提供を皮切りに、NTT東日本のアプリケーションに加えてNTTグループや他社アプリケーションを地域エッジクラウド上に組み込むことで、機能を拡充していく。

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