週間情報通信ニュースインデックスno.1334 2022/7/2


1.Web 3.0でインターネットの新しい形を模索、脚光浴びる「メタバース」とは(7.1 日経XTEC)
コロナ禍を契機として、リモートワークや巣ごもり消費の拡大など人々のライフスタイルは大きく様変わりした。こうした潮流に合わせるように、ネットやITの世界では「Web 3.0」という新しい概念が広がりつつある。

 現在はWeb 2.0の時代とされる。Web 1.0はWebページ閲覧など当初の受動的な使い方を指すのに対し、Web 2.0はSNSなどを介したユーザー参加型のコミュニケーション形態を指す。ただ、Web 2.0サービスの多くは、サービスの利用と引き換えに個人情報の提供を求めることから、運営元のプライバシー侵害を問題視する声が高まりつつある。

 一方、Web 3.0は「分散型インターネット」と呼ばれる。特定のサーバーやサービスを介さずに、ユーザー自身で情報やコンテンツを選び、利用できる。そうしたWeb 3.0のビジョンと親和性が高く、インターネットの新しい形として脚光を浴びているのが「メタバース」だ。

 メタバースとは、インターネット上で実社会のような生活や事業活動が可能な仮想空間のこと。ユーザーは分身のアバターを仮想空間内に作成し、VRゴーグルなどを通じて移動・操作する。なお、VRは仮想現実を実現する技術そのものを指し、メタバースとは区別される。

 メタバースの分野に大きな力を注いでいるのは米メタプラットフォームズ(旧米フェイスブック)だ。同社は「Horizon Workrooms」というバーチャル会議室を提供。職場の同僚が操作するアバターと顔を合わせることで、円滑なコミュニケーションが図れるという。

 百貨店の三越伊勢丹も、新宿東口の街並みを一部再現した仮想都市空間「REV WORLDS」をスマートフォンアプリで提供する。仮想空間内に同社の仮想店舗を設置し、実際の商品も並べる。商品に近づくと値札が拡大表示され、オンラインストアで購入できる仕組みだ。

 上記2つのサービスは、特定の企業によって運営されており、運営元に縛られないというWeb 3.0の概念は実現しきれていない。メタバースには、こうしたクローズドなもの以外に、ほかのプラットフォームとつながり、相互に移動可能な「オープンメタバース」というコンセプトもある。このオープンメタバースこそWeb 3.0が目指す世界と言える。

 VRサービス開発企業のHIKKYはNTTドコモと業務提携し、オープンメタバースを実現するツールとしてVRエンジンの「Vket Cloud」を2021年11月から提供を始めた。

2.英Opensignalの最新5G体験調査、「最高速やゲームは韓国」「動画はスウェーデン」(6.30 日経XTEC)
独立系調査会社の英Opensignalは2022年6月22日(現地時間)、最新の世界5G体験ベンチマーク調査リポートを発表した。今回は、ブルガリアが下り速度など6部門で世界トップ15入りを果たし、マレーシアも3つの速度部門とゲーム体験でランキング入りを果たしている。また、プエルトリコが今回初めて5G可用性や5G到達度でトップに立っている。以下はその概要となる。

 5G下り速度では、韓国が2022年3月の前回調査に続きトップ(433Mb/s)となった。なお、前回、平均5Gダウンロード速度が300Mビット/秒を超える市場は、韓国、スウェーデン、アラブ首長国連邦(UAE)の3市場のみだったが、今回は、ブルガリア、ノルウェー、マレーシアも加わった。シンガポールは周波数が不足しているにもかかわらず11位に入っている。

3.複数のセキュリティー機能を一元的に提供、異業種の参入相次ぐ「SASE」とは(6.29 日経XTEC)
SASE(Secure Access Service Edge)は、ネットワークやセキュリティーに関する複数のクラウドサービスの機能を集約して一元的に提供するサービスである。調査会社の米ガートナーが2019年に提唱した。複数のサービスを集約して一元的に提供するセキュリティーの考え方をSASEと呼ぶ場合もある。

 ガートナーはSASEを構成するサービスを厳密には定義していない。だがCASB(Cloud Access Security Broker)、NGFW(Next Generation FireWall)、SD-WAN(Software Defined-WAN)、SWG(Secure Web Gateway)、ZTNA(Zero Trust Network Access)の5つのサービスが、SASEを実現する上で特に重要であるとされている。実際SASEを名乗るサービスの多くは、これらのサービスを含んでいる。

 CASBはSaaS(Software as a Service)の利用状況を可視化するサービスや仕組みである。可視化によって利用者にSaaSの適切な使用を促す。

 NGFWは機能を強化したファイアウオールだ。アプライアンスやクラウドサービスとして提供される。通信パケットのヘッダーに記載されている情報だけでなく、アプリケーション層の通信を解析したり、不審なアクセスを遮断したりする機能で端末を保護する。

 SD-WANはWAN(Wide Area Network)をソフトウエアで制御するサービスや仕組みである。ネットワークの構成や通信量を柔軟に変更できる。

 SWGは利用者のインターネット通信をチェックして、不審なサイトへのアクセスや危険なファイルのダウンロードを防ぐサービスや仕組みを指す。インターネット上でプロキシーとして機能する。

 ZTNAは利用者の情報や端末の状態をチェックし、クラウドやオンプレミスのサーバーへのアクセスを仲介する仕組みだ。

 ただし最近では、CASB、SWG、ZTNAの3つだけを統合したサービスを「SSE(Security Service Edge)」として提供する企業が現れている。SASEよりもコストなど導入のハードルを下げて、必要最小限のコンポーネントから提供しようというのがSSEである。

4.創造性を持つ「ジェネレーティブAI」、いったい何ができるのか(6.29 日経XTEC)
自ら新しい画像を生み出したり設計図を作ったりといった創造性を持つAI(人工知能)。米ガートナーはジェネレーティブAIについて、「サンプルデータから成果物のデジタル表現を学習し、独創的かつ現実的な新しい成果物を生成するAI」と定義している。

 ジェネレーティブAIは幅広い分野への応用が期待されている。ものづくりでは耐久性と軽量化を両立させる設計、化学分野では新素材や新薬の開発、IT分野ではコードの生成やアプリの操作画面の設計などへの応用が期待できる。ガートナーの予測では2025年までに、社会全体で生成されるデータのうちジェネレーティブAIによるものは現在の1%未満から10%に増える。さらに2027年までにメーカーの30%が製品開発の効率を上げるためにジェネレーティブAIを使い、先進創薬企業の50%が2025年までにジェネレーティブAIを使用すると予想する。

 ジェネレーティブAIは社会や経済に甚大な被害を及ぼしかねない危険性も併せ持つ。一例が本物と見分けがつかない生成物「ディープフェイク」だ。あたかも政治家や著名人本人が話しているかのような動画やフェイクニュースが生成されると、大きな混乱を来しかねない。悪意のあるコードの生成やデジタルアートの贋作(がんさく)といった悪用も懸念される。

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