1.NECが5G共創スペースを刷新、「ローカル」の冠外した理由とは(6.9 日経XTEC)
NECは2022年6月9日、川崎市にある玉川事業場内に5G(第5世代移動通信システム)の社会実装を進めるための共創拠点「NEC CONNECT 5G Lab」をオープンさせた。
2020年3月から運営していた「NECローカル5Gラボ」をリニューアルし、一般企業が自営の5Gネットワークを構築できるローカル5G、携帯電話事業者が運営するパブリック5G、LTE、Wi-Fi、IoT(インターネット・オブ・シングズ)機器向けのLPWAといった多様な無線通信環境を拠点内に用意。また、企業システムを利用するユーザーや端末の近くでデータ処理をするエッジコンピューティングや、パブリッククラウドの利用環境も整備した。
顧客企業やパートナー企業はこれらの環境を使い分けながら、5Gを活用したサービスの実証や用途開拓を進められるという。NECがこの日報道陣に公開したデモでは、ローカル5Gとパブリッククラウドを介した低遅延のロボット制御を手始めに、ドローンによるインフラ設備の無人点検や工事現場における建設機械の遠隔操作といったユースケースを披露した。
2.防水・FeliCa対応スマホが急増、その裏にある端末メーカーの競争環境の激変(6.10 日経XTEC)
オープン市場向けスマートフォンのメーカーはこれまで、防水・FeliCaといった日本独自のニーズへの対応に消極的だった。ここ最近、対応端末が急増しており状況が急速に改善しつつあるようだが、このことは従来の市場の垣根を越えメーカー間の競争が新たな段階に突入しつつある様子も示している。
日本のスマートフォン市場は大きく分けて、携帯電話事業者4社から販売される端末の市場と、MVNOや家電量販店などから販売される端末(かつてのSIMフリー端末)のオープン市場が存在する。このうち前者はハイエンドからローエンドまでバリエーションに富んだモデルが用意されるが、後者ではラインアップがミドルクラス以下の低価格なものに偏りがちだった。
その理由は、端末の値引きがないためだ。現在は政府の規制によって携帯電話事業者による端末の値引きに規制があるが、それでも一部例外を除けば回線契約と同時に端末を購入することで2万2000円までの値引きは可能であるし、4社が提供する端末購入プログラムを利用することで、一定期間利用後に端末を返却する必要はあるものの、その間は新しい端末を安く利用できる。
だが海外メーカーがスケールメリットを生かし低価格を実現するには、海外で販売されている端末をほぼそのままの形で投入し、カスタマイズは最小限にして追加コストを抑える必要があった。そのことで日本のユーザーの間で不満が高まっていた。というのも、IP68の防水・防塵(ぼうじん)性能や、「おサイフケータイ」などを利用するためのFeliCaといった、日本でニーズの高い機能・性能に対応するスマートフォンがオープン市場であまり投入されてこなかったからだ。
だがここ最近、その状況が大きく変わりつつある。というのもオープン市場向けに投入される海外メーカー製の低価格スマートフォンの中に、防水・FeliCaに対応する製品が急増しているからだ。
実際中国の小米集団(シャオミ)が2022年4月に発売した「Redmi Note 10T」、そして米Motolora Mobility(モトローラ・モビリティ)が2022年6月に発売した「moto g52j 5G」は、いずれもIP68の防水・防塵性能とFeliCaに対応しながら、3万円台の価格を実現している。またシャオミが2022年5月に販売した「Redmi Note 11 Pro 5G」も、FeliCaのみの対応だが4万円台と、比較的安価に購入できる。
なぜここまで急速に防水・FeliCa対応が進んだのかといえば、1つは後発のオッポやシャオミの影響が大きい。両社が日本市場に進出したのは5年以内と最近なのだが、それだけに先行するメーカーと差異化して日本の消費者から信頼を勝ち取るべく、目を付けたのが防水・FeliCa対応のカスタマイズだった。
ただもう1つ、防水・FeliCa対応が進んだ要因として、総務省のガイドラインによって2021年10月1日以降、発売された端末に対してSIMロックが原則禁止された影響も少なからずあるのではないかと筆者はみる。
このことはメーカー側からしてみると、SIMロック原則禁止措置によってオープン市場の競合他社だけでなく、携帯電話大手が販売する端末とも競争する必要が出てきたといえる。そのためには端末自体の競争力を高める必要があり、携帯電話事業者が販売するモデルに多く搭載されている、防水・FeliCaへの対応も進める必要が出てきたといえそうだ。
そしてこのことは、SIMロックの存在で市場が分離されていた時代が終わり、端末メーカー同士の競争が新たな段階に突入し、販路を問わず販売できる総合力が問われる時代が訪れたといえるだろう。行政による端末値引き規制で冬の時代を迎える端末メーカーだが、SIMロック原則禁止措置による競争環境の変化で今後さらなる競争の激化と淘汰が進む可能性が高まったといえそうだ。
3.AIの思考を人間が助ける「プロンプトエンジニアリング」、能力の劇的進化に要注目(6.10 日経XTEC)
AI(人工知能)による思考を人間が助ける「プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)」が注目されている。様々な質問に答えられる最新AIの「巨大言語モデル」は、質問の仕方を工夫すると、AIによる回答の質が変わることが分かったためだ。この工夫をプロンプトエンジニアリングと呼ぶ。
言語モデルとは、自然言語による質問応答や文書生成などができるAIである。その中でも最近登場した米OpenAI(オープンAI)のGPT-3や米Google(グーグル)のPathways Language Model(PaLM)は、あたかも人間が書いたかのような文章を出力できることで注目されている。これら最新の言語モデルはパラメーターの数が数百億〜数千億にも達することから、従来の言語モデルと区別して巨大言語モデルと呼ばれる。
巨大言語モデルに質問する際のユーザーインターフェース(UI)は、プロンプトと呼ぶ。Windows OSの「コマンドプロンプト」でおなじみの、あのプロンプトだ。人間が巨大言語モデルのプロンプトに質問文を入力すると、巨大言語モデルは回答を出力する。
最新の巨大言語モデルの場合は、AIに質問をする際に、例題と回答例もプロンプトに入力する。するとAIは例題で示された回答パターンに従って、新しいタイプの質問に答えてくれるのだ。
例えばグーグルの兄弟会社である英DeepMind(ディープマインド)が2022年4月に発表した「Flamingo」の場合、例題として動物の画像、回答例としてその動物の名前と生息場所を説明する文章をいくつか入力する。その上で質問としてフラミンゴの画像を入力すると、「これはフラミンゴです。カリブ海地域や南アメリカで見かけられます」という回答を出力する(本来の文章はすべて英語、以下同じ)。
これはいわば「画像を分析してその動物の名前と生息場所を回答するAI」を開発しているようなものだ。しかしプログラミングは必要ない。人間はAIに対して「例題と回答例」を与えるだけでよい。
さらにグーグルが2022年4月に発表したPaLMの場合は、PaLMに入力する例題の回答例に、最終的な答えを出すまでの解き方を加えてやる。そうするとPaLMは、解き方も含めて答えを出力するようになる。
興味深いことにPaLMでは、例題で示した解き方が丁寧であるほど、PaLMの解き方も丁寧になり、それによって回答もより正確になるのだ。グーグルが論文で示した例に基づいて説明しよう。
つまりプロンプトエンジニアリングとは、AIによる思考の助けになる問題と回答例を、人間が工夫して考えてやることなのだ。
巨大言語モデルとプロンプトエンジニアリングによって、人間とコンピューターの付き合い方が大きく変わることになりそうだ。プロンプトエンジニアリングに要注目である。
4.NTTとNTTドコモが6G実用化へ富士通やNEC、ノキアと提携拡大(6.9 日経XTEC)
NTTとNTTドコモは2022年6月6日、6G実用化に向けた実証実験を、富士通、NEC、フィンランドNokia(ノキア)の3社と連携して進めると発表した。サブテラヘルツ波を含めた周波数帯の新たな有効利用技術やAI活用技術の開発に焦点を当てた実験を実施していくとしている。
NTTとNTTドコモは、2030年ごろの6Gサービス提供開始を目指して、NTTは光・無線通信に関わる要素技術、NTTドコモが実用化を見据えた応用技術の研究開発を進めている。今後は、富士通、NEC、Nokiaと協力しながら、2022年度内に屋内での実証実験を手掛け、2023年度以降は屋外での実証実験にも着手するとしている。
5.HTTP/3が正式に勧告、脱TCP時代の幕開けか(6.8 日経XTEC)
インターネット関連技術の標準化を手掛けるIETF(Internet Engineering Task Force)は2022年6月6日(米国時間)、通信プロトコル「HTTP/3(HyperText Transport Protocol/3)」を「RFC 9114」として勧告した。HTTP/3はインターネット通信の多くを占めるWebにおける通信プロトコルの最新版である。
最大の特徴は、トランスポートのプロトコルに「QUIC(Quick UDP Internet Connections)」を採用した点。QUICは2021年にIETFで「RFC 9000」として勧告された。その名前が示すように、TCP(Transmission Control Protocol)ではなく、UDP(User Datagram Protocol)に基づくプロトコルだ。TCPが備えていた再送制御の仕組みや、TLS(Transport Layer Security)による暗号化処理をQUICが実施する。
HTTPでは基本的に1対のリクエストとレスポンスが独立して呼び出される。それらを個々に処理すると効率が下がる。そこでHTTP/3では、複数のリクエストとレスポンスをまとめた仮想的なパイプラインで処理することで、コネクション確立やエラー処理などのオーバーヘッドを低減させて高速化を図る。
従来のHTTP/2およびHTTP/1では、トランスポートのプロトコルにTCPを使っていた。しかしTCPは通信データ量のかなりの部分をプロトコルによる制御が占めている。このため遅延の影響を受けやすく、オーバーヘッドも大きい。
特に無駄が多いのが再接続時の処理だ。HTTPは暗号化処理の際にTLSを併用する。このため再接続時にはTCPで接続を確立した後に、さらにTLSによるネゴシエーションが必要だった。HTTP/3はQUICを採用することで、こうしたオーバーヘッドを排除している。
HTTP/3はもともと米Google(グーグル)が開発していた。対応するWebサーバーが増え、Google以外にも多くの事業者がHTTP/3への対応を進めている。米Q-Successの調査によると、2022年6月時点で約25%のWebサイトが既にHTTP/3に対応しているという。
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