週間情報通信ニュースインデックスno.1328 2022/5/21


1.「ミッドバンド5Gの開始でWi-Fiを上回る体験に」、英Opensignal報告(5.20 日経XTEC)
独立系調査会社の英Opensignalは2022年5月11日(現地時間)、5GとWi-Fiの体験比較調査結果を発表した。自宅や公共の場所ではこれまでWi-Fiの方がモバイル接続よりも快適とされてきたが、Cバンドなど中周波数帯を使った「ミッドバンド5G」のサービスが開始された米国では、その競争力が大幅に高まっているとしている。

 同社の調査によると、スマートフォンユーザーの平均5G下り速度はWi-Fiより速く、ゲーム時の体験でも、店舗やホテル、カフェなど公共の場で提供されているフリーWi-Fiに勝っている。5G使用時の体感は100ポイント中74.5、ミリ波を使う5Gの81.8に対し、フリーWi-Fiは72、家庭や企業向けWi-Fiが76.3となっている。

 平均下り速度では、フリーWi-Fiの23.3Mビット/秒に対して5Gは112.9Mビット/秒と4.8倍、ミリ波5Gは571.6Mビット/秒と24.6倍も高速だったという。家庭や企業向けWi-Fiは89.6Mビット/秒だった。

 平均上り速度では、5Gが15.6Mビット/秒と、4Gの7.9Mビット/秒のほぼ2倍だが、Wi-Fiの約19Mビット/秒よりは低速となっている。ミリ波5Gでは30.5Mビット/秒で、Wi-Fiより大幅に高速となる。

 Wi-Fiは免許不要の周波数帯を利用することで5Gと共存し、費用面や柔軟性、通信容量の点で5Gを補完する役割を持つと報告している。しかし、米国で中周波数帯の5Gサービスが開始され、性能が劇的に向上したことで、5Gが価格面以外でWi-Fi を上回る存在になりつつあるとしている。

2.AI活用が米国に追いついた」、PwC Japanが日本企業の活用状況を発表(5.19 日経XTEC)
PwC Japanグループは2022年5月19日にオンラインセミナーを開催し、日本におけるAI(人工知能)の活用状況に関する調査結果を発表した。同社が2022年1月にAIの導入状況を調査した結果、「全社的に広範囲にAIを導入」「一部の業務でAIを導入」と回答した割合が53%に上り、同回答の割合が55%だった米国と同程度まで追いついたとした。一方で日本企業のAI活用における課題としてPoC(概念実証)のROI(投資対効果)が測定できていないことと、AIが生み出すリスクをコントロールするAIガバナンス対策の実施が米国と比べて進んでいないことを挙げた。

 PwC Japanグループが実施した調査は、AIを導入済み、あるいは導入を検討中で、売上高500億円以上の企業の部長職以上300人を対象とした。2021年の調査で「全社的に広範囲にAIを導入」「一部の業務でAIを導入」と回答した企業の割合は43%で、2022年の調査結果は10ポイント向上した。AIの活用が広がる中で、「テーマの創出・企画」やPoCなどAI開発の各フェーズにおける内製開発や、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスなど他のテクノロジーとAIを融合する取り組みも広まっているという。

 一方でAI活用のプロジェクトがPoCで終わってしまうケースもまだ多く、PwCコンサルティングの藤川琢哉パートナーデータ&アナリティクスリーダーは「スモールスタートでプロジェクトを始めて全社展開していくための最初のステップとしてROI測定に取り組むべきだ」と述べる。同氏はさらに、AIガバナンスに関する課題として「AI固有のリスクへの注目度が低い」と指摘した。「セキュリティーやプライバシーなど従来注目されていたリスクの他に、公平性や説明可能性などAI固有のリスクがある。AIガバナンスへの理解を深め、固有のリスクへの対応が求められる」(同)。

3.テレワーク実施率の「ジグザグ傾向」ついに収束か、最新調査で判明(5.18 日経XTEC)
 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは「働き方改革に関する動向・意識調査」を2020年春から定期的に実施しており、2022年4月は5回目となる。最新の5回目調査では同年2〜3月における重点措置の最中と、3月以降の解除後について、テレワークの実施状況などを聞いた。

 まずは2〜3月(重点措置の最中)の結果だ。同期間中に「あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と尋ねたところ、「週3日以上」と答えた人は46.3%だった。

 重点措置が全面解除された3月以降について聞くと、週3日以上テレワークする人の割合は41.9%だった。重点措置の解除により、同割合は4.4ポイント下がった格好だ。

 重点措置や緊急事態宣言が発出されるとテレワークの実施率が上がり、解除されると下がる。このようなジグザグ傾向は新型コロナウイルスの感染症が広がり始めた2年前から継続している。

 グラフにしてみると、上下のジグザグ傾向は続いているものの、「振れ幅」は小さくなっていると分かる。2020年は緊急事態宣言が解除されると週3日以上テレワークする人の割合は22.0ポイントも減った。その後2021年には振れ幅が12.4〜13.2ポイントまで縮小。直近の2022年調査では、重点措置の最中と解除後の差が4.4ポイントまで縮んだ。

 今の傾向が続くと仮定すると、週3日以上テレワークする人の割合は40〜45%あたりに収束するかもしれない。一方でこの先、緊急事態宣言などが発出されなければテレワーク実施率が右肩下がりに落ちていく可能性もある。

 テレワークの本質はデジタル技術を活用した働き方改革であり、生産性の向上や付加価値の創出など、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)を成し遂げるための環境整備である。テレワークの実施率を維持することが目的となってしまっては本末転倒だ。とはいえオフィスへの出社に全面回帰するのも現実的ではないだろう。

 生産性アップや付加価値の創出といった観点から、最適な働き方を模索し続ける努力が引き続き求められる。

4.MVNOではiPhoneが遅くなる?モバイル通信にはびこる迷信(5.17 日経XTEC)
キャリアに比べてMVNO(仮想移動体通信事業者)ではスマートフォンの通信速度が遅い──。これは一面では正しいが、一面では誤りといえる。MVNOのほうが、通信速度が遅くなる原因にはいくつか考えられる。だが、ちまたで取り沙汰される原因の中には、「迷信」と呼ぶべきものもある。

 現在筆者は、主に通信やネットワークに起因するiPhoneトラブルの対策について取材しているが、その過程でインターネットイニシアティブ(IIJ)から興味深い話を聞いた。TwitterなどでMVNOの通信が遅い理由について一般の利用者が独自の説を展開し、それがある意味言いっ放しとなって独り歩きしているという。そうした「迷信」を2つ紹介しよう。

 1つ目は、キャリアに比べMVNOは電波の周波数帯域が制限されており、このため通信速度が遅いというもの。IIJによると、こうした意見は少なからず散見されるそうだ。実際には、周波数帯域に関してキャリアとMVNOで違いはない。なぜこうした誤解が生じるのか。IIJによれば「帯域」の意味を取り違えているからだという。

 一方、相互接続回線の帯域には制約がある。MVNOはキャリアに対して接続料を支払う必要があり、低廉な料金を実現するためにはむやみに帯域を増やすわけにはいかないからだ。このため、多くのユーザーが利用するお昼休みや通勤時間帯などには相互接続回線が混み合い、通信速度が遅くなるという現象が起こりやすくなる。この意味では、キャリアに比べてMVNOの通信速度が遅いというのは当たっている。

 2つ目の迷信は、MVNOは都会のほうが混みやすい、逆に人口の少ない地方のほうが混みやすい、といったものだ。こうした混みやすさに地域性はあるのだろうか。  IIJの場合、MNOであるNTTドコモとは東京と大阪の2カ所で相互接続しているが、それぞれ東西を分担しているわけではない。47都道府県のトラフィックはそれぞれ東京と大阪に集められ、IIJの設備に渡される。つまり、相互接続回線の混雑で速度が低下する場合、地域に関係なく、全国で混雑する形になるという。

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