週間情報通信ニュースインデックスno.1320 2022/3/26


1.ソニーが4月からローカル5Gサービス、11axも使って下り4.1Gbps(3.25 日経XTEC)
ソニーワイヤレスコミュニケーションズ(東京・港)は2022年3月25日、国内で初めて集合住宅向けにローカル5Gを利用したインターネット「NURO Wireless 5G」の一般提供を同年4月1日より開始すると発表した。集合住宅の壁や近くの電柱などにソニーワイヤレスコミュニケーションズの基地局を設置し、家庭に貸し出した専用のホームルーターを介して通信サービスを提供する。

 通信速度は下りが最大4.1Gbps、上りが最大2.6Gbpsである。ローカル5Gに割り当てられたSub6の周波数帯を使った5G(第5世代移動通信システム)通信と、IEEE802.11axの通信を束ねて利用することでこの通信速度を達成した。月額基本料金が4950円(税込み)、事務手数料が3300円(税込み)とする。月単位の契約で、解約料は不要である。

希望の多い集合住宅などから基地局を順番に設置していくため、申し込んだらすぐにサービスを利用できるわけではない。

2.「Open RANで1000万超契約」のドコモ、海外輸出も加速へ(3.22 日経XTEC)
「Open RANを利用する通信事業者で1000万の顧客を抱えるのはNTTドコモだけだ。培ったノウハウを生かし、2022年度からOpen RANを本格的に世界に輸出していきたい」――。

 このように語るのはNTTドコモ 無線アクセス開発部長の安部田貞行氏だ。同社は2022年3月22日、Open RANの取り組みについての記者説明会を実施した。安部田氏は、ドコモがOpen RANに先駆的に取り組んできた点をアピール。自らOpen RANを活用するにとどまらず、海外の通信事業者向けにビジネスとしてノウハウを輸出する取り組みを加速する考えを改めて示した。

 Open RANとは、さまざまなベンダーの基地局製品をオープンインターフェースに基づいて組み合わせられる取り組みである。従来は同じベンダーの機器同士でしか接続できず、「テレビとビデオが同じメーカーでないとつながらないような状態だった」(安部田氏)。多様な機器を相互接続し、柔軟性や拡張性を高められるOpen RANは、世界の通信事業者の間で次々と採用が始まり、調査会社の当初予想を上回るペースで成長している。

 NTTドコモはOpen RANを推進する業界団体「O-RAN ALLIANCE」の創設メンバーであり、米国通信大手のAT&Tや中国通信大手の中国移動通信(チャイナモバイル)などとともに業界をリードしてきた。ドコモは20年3月に開始した5G商用サービスでも、「世界初」(安部田氏)というOpen RANを全面的に採用したネットワークを構築。ノウハウをためてきた。

3.ドコモもついに「なんちゃって5G」、4G電波の5G転用はなぜ今か(3.22 日経XTEC)
NTTドコモが2022年春から4G周波数帯の一部を5G(第5世代移動通信システム)向けに転用する方針を明らかにした。2年後の24年3月に人口カバー率90%超を目指す。

 NTTドコモはこれまで、4G電波を転用した5Gでは、速度が変わらない「なんちゃって5G」だとして転用に否定的だった。一方でソフトバンクとKDDIは、エリア展開に有利な低い周波数帯中心の4G電波を5Gに有効活用し、22年春には人口カバー率90%に近づくほど5Gエリアを広げた。

 結果的にドコモの5Gエリア展開は、他社と比べて2年近く遅れることになる。今回のドコモの方針転換は、他社に追いつくためには背に腹は代えられなくなったように見える。ただドコモが4G電波の5G転用に踏み切る理由は、それだけではないようだ。

 方針転換の理由についてのドコモの公式コメントは「5G契約数が増えてきたことにより、当初から状況が変化したため」である。ドコモはこれまで、未来永劫(えいごう)に4G電波の5Gへの転用を否定していたわけではない。5G導入の初期段階で4G電波を転用した場合、ドコモの利用者の大部分を占める「既存の4G利用者の品質が低下する」(ドコモ)という事情もあり、当初は転用に踏み切れなかったという。5G契約数が増えてきた段階で、4G電波の5Gへの転用を進める方針をあらかじめ示していた。

 もう一つ、ドコモが公式コメントで触れていない事情として、5G SA(Stand Alone)方式の本格展開に向けた準備という側面がある。SA方式は、コア設備を4G設備で流用していたこれまでのNSA(Non-Stand Alone)方式と異なり、すべて5G専用設備を使う。従来の超高速・大容量に加えて、超低遅延、多数同時接続といった機能も実現できるようになる。1つのネットワークを、用途に応じて仮想的に分割する「ネットワークスライシング」のような機能もSA方式を導入することで初めて可能になり、真の5Gのポテンシャルを発揮できると期待されている。

 一方、これまでの連載で筆者が指摘した通り、SA方式は当初、現行のNSA方式と比べて速度が低下する恐れがある。NSA方式の通信速度は、4G帯域も活用して通信速度を向上するのに対し、SA方式は4G帯域を使わず、5G専用帯域のみでサービスを提供するからだ。4G帯域によって底上げしていた分がSA方式ではなくなることで、そのままでは速度が低下してしまう。

 実際、ドコモが21年12月に法人を対象にサービス開始した5G SA方式の最大速度は、下り1.7Gビット/秒にとどまる。ドコモのNSA方式の場合、下り最大速度は4.2Gビット/秒に達している。

 ドコモは22年夏からSA方式をコンシューマーにも広げる計画だ。その際に、NSA方式と比べてSA方式の速度が劣化すると、コンシューマーに魅力をアピールしづらくなる。そこでドコモは、4G帯域を5G向けに転用することでSA方式で速度向上を図るわけだ。こうしてコンシューマーへのSA方式展開の準備をしたと考えられる。

4.ウクライナ侵攻の裏で何が? イーロン・マスクの“技術”が生命線に(3.24 ITmedia)
 最近、世界を取り上げた世の中のニュースはウクライナ一色である。先日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でスピーチをして話題になったが、ロシアとの停戦交渉はまだ続いており、出口はいまだ見えていない。

 そんなウクライナ戦争だが、実は民間企業のある製品が、今回の戦争でウクライナ側の戦いに一役買っており、今後の戦況にも大きな影響を与える可能性があるという。

 そのシステムは、「Starlink(スターリンク)」である。人工衛星で宇宙からインターネットに接続できるサービスを提供する、コミュニケーションのためのシステムだ。

 現在、私たちが利用しているハイテク製品は「デュアルユース」が多い。デュアルユースとは軍民両用という意味で、軍や政府が使うために開発されてきた技術が民間で広く使われるようになっていることを指す。インターネットやGPS、原子力技術、ロケットなども、衛星に使われるものとミサイルに使われる技術は基本的に同じである。

 スターリンクもそうしたテクノロジーの1つとなっている。ただこのテクノロジーの可能性は、戦争での利用にとどまらない。スターリンクが使われることで、今後インターネットのシステム自体を大きく変える可能性があるのだ。

 近い将来、米中(そしてロシアも)の覇権争いでデータの分断が起きるとも言われているが、これも「回避」できる技術になるかもしれない。

 スターリンクを立ち上げたのは、世界的な起業家であるイーロン・マスク氏だ。テスラの創業者で、宇宙開発を行うスペースXの創業者でもあるマスク氏は、スペースXの事業の一部としてスターリンクを2015年にスタートさせた。スターリンクは2000個以上の衛星をすでに運用しており、今後も小規模な衛星を多数打ち上げる予定でいる。

フョードロフ副首相はツイッターで「私たちはスターリンクのシステムをウクライナに提供してほしいとお願いする」というメッセージを2月26日に送った。24日のウクライナ侵攻の2日後のことである。ロシアは今回の侵略行為で、早い段階でウクライナの通信やコミュニケーションのシステムを破壊しようと狙っていた。その作戦はあまりうまくいっていないと報告されているが、少なくとも、ウクライナ国内のインターネットやコミュニケーションが遮断されることは、ウクライナ側もできれば避けたい。政府や軍の指揮系統を混乱させ、国民を不安に陥れることになるからだ。

 もともとインターネットは、世界と接続されている光ファイバーケーブルを海底から陸に揚げて、国内の通信基地から接続していく。ただそうした基地などが破壊されてしまえば、インターネットなどは使えなくなる。フョードロフ副首相がスターリンクを求めた理由は、それを避ける目的でもあった。

 するとマスク氏は27日にこうSNSで返信した。「スターリンクのサービスをウクライナで開始した。ターミナルをどんどん送る」

 そしてこれから、このスターリンクがウクライナの対ロシアのドローン攻撃作戦に使われていくという。衛星で接続されたドローンによって、ロシアの部隊や戦車を発見して攻撃を実施している。

 スターリンクは既に29カ国でベータ版の使用が始まっている。日本でも22年、KDDIのauで試験が始まるとも言われている。これが今後、世界に広がる可能性は高い。

5.楽天モバイルの通信速度を都内で検証 「人口カバー率96%」でどれだけ快適?(3.25 ITmedia)
 2022年2月4日、楽天モバイルは自社の基地局でエリアをカバーする「楽天回線エリアの4G人口カバー率が96%に到達した」と発表しました。データ無制限で使える楽天回線エリアが拡大したことは楽天モバイルユーザーにとって朗報といえます。しかし、楽天モバイルに割り当てられている周波は1.7GHz帯(Band3)のみで、電波が広く届きやすい700〜900MHz帯の「プラチナバンド」が割り当てられていない、基地局の数が大手通信キャリアに比べて少ない、といった理由で「楽天モバイルは(特に建物内で)つながりくい」といった声もあります。

 そこで今回は楽天モバイルの「人口カバー率96%」の発表を受けて、東京都内10か所にて楽天モバイルの通信速度を1日かけて測定してきました。比較対象として、MNOであるソフトバンクの「メリハリ無制限」、MVNOであるIIJmio「ギガプラン(ドコモ回線)」を用い、3社の通信速度を「ぱっと見」で比較できる記事にしました。今回の測定は3社の「通信速度」を計測したにすぎず、厳密に言えば「つながりやすさ」の測定ではありませんが、楽天モバイルの比較検討の材料の1つとして参考にしていただければと思います。

 調査条件は以下の通りです。
計測端末:iPhone 12 mini(iOS 15.2.1)
計測アプリ:Speed Test
計測時間帯:2022年2月17日10時〜18時(各地域による)
計測場所:渋谷駅〜新宿駅〜東京駅〜新橋駅〜品川駅〜上野駅〜西日暮里駅〜巣鴨駅〜高円寺駅〜吉祥寺駅
計測回数:各地域で1回※IIJmioギガプランはeSIMで速度測定したため、4G通信のみ。

オフィス街の速度測定の結果まとめ
 渋谷駅、新宿駅、東京駅、新橋駅、品川駅といった東京の代表的なオフィス街での結果と所感をまとめます。楽天モバイルの下り通信速度はおおむね、20〜40Mbpsを記録しました。「爆速」とまでは言えませんが、このぐらいの通信速度があればストレスなくスマホでブラウザを閲覧したり、YouTubeで動画視聴したりできるでしょう。JR東京駅の京葉線につながる地下コンコースや品川駅の商業施設内といった、建物内においても今回の計測では「とりわけ電波が悪い」とは感じることはありませんでした。
 「圧倒的な速さ」を実感したのは、ソフトバンクのメリハリ無制限。渋谷駅、新宿駅、東京駅(丸の内口)、品川駅では下り速度数百Mbpsと、「下り速度3桁」を何度も記録し、段違いの速さでした。一度もiPhoneのステータスバーに5Gの表示が出なかった楽天モバイルに比べ、ソフトバンクのメリハリ無制限ではiPhoneのステータスバーに5Gが表示されるときもありました。
 IIJmioの通信速度は楽天モバイルと近い20〜40Mbpsでした。IIJmioはMVNOサービスの1つで、昼時の通信速度は「出ても1〜2Mbps」という日もあり、平日の昼時は速度測定アプリを開くことすらできない日もあるぐらいです。しかし、この日の昼のIIJmioは特に遅いと感じることもなく、「瞬間的には」楽天モバイルより速く感じました。

オフィス街以外の速度測定の結果まとめ
 オフィス街の品川駅での計測を終えた後、上野駅、西日暮里駅、巣鴨駅、高円寺駅、吉祥寺駅といった東京23区の東部、西部方面で引き続き計測しました。計測時間は昼過ぎから夕暮れ時でしたが、この時間帯でも楽天モバイルは下り・上り速度ともにおおむね安定した結果でした。しかし、最後の吉祥寺サンロード商店街での「下り2Mbps/上り3Mbps」での結果には驚きです。1日の測定を通して、吉祥寺での楽天モバイルの通信速度がこの日ワーストの記録となってしまいました。

 ソフトバンクは相変わらずの速さです。上野駅の「パンダ橋」、巣鴨駅の「くぐる橋」では下り速度3桁を計測。特に欠点は見当たりませんでした。

 IIJmioも全く遅くならなかったというわけではありませんが、夕暮れ時でもストレスを感じることなく、通信が使えました。MVNOなので、多少通信速度にムラがあるかもしれませんが、料金節約派の方には向いているかもしれません。

 ホームページへ