週間情報通信ニュースインデックスno.1319 2022/3/19


1.6G要求条件の日本案、産官学が策定 標準化主導狙う(3.18 日経XTEC)
Beyond 5G/6Gを推進する国内の中心組織である「Beyond 5G推進コンソーシアム」は2022年3月18日、第3回総会を開催し、6G国際標準化に向けた日本案のベースとなる「Beyond 5Gホワイトペーパー1.0版」(以下、白書)を公表した。自動車や医療・介護、ロボットなど幅広い業界から意見を募り、ユースケースごとに求められる6Gの要求条件をまとめた。本白書をITU(International Telecommunication Union)など国際標準化団体における日本案としてインプットすることを目指しており、6Gに向けた標準化をリードしたい考えだ。

 同コンソーシアム白書分科会で主査を務めるNTTドコモ執行役員6G-IOWN推進部長の中村武宏氏は「さまざまな業界の方に見解を聞き、その結果を白書に反映した。ターゲットとなるKPIを明確にしているのが特徴だ」と説明した。

 例えば、ホログラフィック通信での非圧縮伝送の場合は数10G?数100Gビット/秒のスループット、機械のモーション制御の場合はローカル通信で100マイクロ秒の低遅延、遠隔手術の場合は10-7オーダーのエラーレートに抑える高信頼性など、ユースケースごとに細分化した要求条件をまとめた。

 白書にまとめた内容は、6Gに向けたビジョン勧告の策定を進める国際標準化団体「ITU-R WP5D」の22年6月会合にて、日本案としてインプットすることを目指す。  同コンソーシアムの企画・戦略委員会委員長を務める東京大学大学院工学系研究科教授の森川博之氏は、6G時代に向けてユーザー企業を積極的に巻き込む施策「WAKU WAKU 2030」を説明した。

2.サーバーレスファースト」がクラウドの新常識に、バッチ高速化には注目の新手法(3.17 日経XTEC)
クラウドが進化するスピードは衰えを見せない。特にAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudといった大手は矢継ぎ早に新サービスや新機能を繰り出してくる。利用者からのフィードバックを踏まえた機能改善も速いので、動向を注視しておかないとトレンドに乗り遅れかねない。

新常識1:サーバーレスサービスだけで業務処理が組める  新常識の1つめは、サーバーレスサービスだけで業務処理が組めるである。

 クラウドにはさまざま用途、形態のサービスがある。例えばMicrosoft AzureはIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)とPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)に関する200に上るサービスを提供している。

 IaaSが用意する仮想マシンやコンテナを使えば、これまで通り自分の好きなソフトウエアを導入して利用できる。そのため、開発や運用の形態は従来のオンプレミス(自社所有)環境と同様だ。これに対してPaaSのデータベースサービスなどは、ソフトウエアの導入や運用管理などをクラウド事業者が肩代わりするので、利用者はそうした作業負担をオフロードできる。

 PaaSの中でも最近、活用が本格化してきたのがサーバーレス型のサービスだ。利用者に代わってクラウド事業者がサーバーを構築し、処理を実行する。代表格といえるのがイベント駆動型のコード実行サービス「AWS Lambda(ラムダ)」である。何らかのアクションをトリガーに、あらかじめ利用者が用意したコードを実行する機能を備える。ストレージへの写真データの到着をトリガーにサムネイルをつくるといった軽い処理や、従来は仮想マシン上のアプリケーションで実行していた都度処理の移行先などのユースケースが知られる。

 サーバーレスサービスの活用法に詳しいオプタークの丸本健二郎代表は「何かをインストールして使うことはやめた」と、サーバーレスファーストの方針を話す。そのうえで、「クラウドが提供する小さなサービスを組み合わせてつくる」とクラウド上の開発方針を説明する。最近ではオーケストレーションサービス「AWS Step Functions」を使うのが定石になってきたという。

 サーバーレスで注目株の1つがコンテナ管理サービスである。「AWS FargateやGoogle CloudのCloud Runなど汎用性の高いコンテナがサーバーレスになり、まずはCloud Runでやってみようかといった流れになってきた」。野村総合研究所の遠山陽介クラウドインテグレーション推進部長は、いわゆるサーバーレスコンテナの動向をこう話す。

 DXに資するようなサービスでは改善や変更のスピードが求められるケースが多く、アプリケーションのデプロイ頻度を高める必要がある。この課題への回答の1つが、サービスを疎結合で用いるマイクロサービスアーキテクチャーであり、実行環境をすぐにつくれるコンテナである。コンテナが手軽に使えるようになってきたことで、マイクロサービスを試すハードルも下がるといえる。

3.音声翻訳や古い写真の高精細化、AIの活用で生活や仕事を便利に(3.15 日経XTEC)
グーグルの「Pixel 6」シリーズには、AI処理や機械学習に最適化された「Tensor」プロセッサーが組み込まれている。文字チャットによる会話や動画での会話を高精度でリアルタイムで翻訳できるようになった。

 Google ChatやLINE、Twitterなどのチャットアプリでも、入力したメッセージを瞬時に翻訳して相手に送信できる。以前から翻訳の機能があった「Google レンズ」もPixel 6での動作は快適だ。Tensorプロセッサーの恩恵によるものかは不明だが、英語の看板やメニューは瞬時に翻訳できた。

 テレワークの普及によって、Web会議での打ち合わせが当たり前になり、会議を丸ごと録画して議事録として保存する場面も増えてきた。録画動画は会議の様子を正確に残せるが、内容を知るには動画を見返す必要があって面倒だ。スマホを使って音声を自動的にテキストに起こせれば、要点を把握できて検索も可能だ。

 ビジネスではさまざまなテキストを扱うことがある。商品への問い合わせ、ネット上の口コミ、社員採用のエントリーシートの志望動機などからは、自社に対するイメージの変化などに気付くヒントが得られる。こうしたテキストの分析を人手ではなく自然言語処理の手法を用いて実現するのがテキストマイニングだ。

 テキストデータを単語に分割し、出現頻度や相関関係などを分析することで有益な情報を抽出する。難しそうだが、今はAIを活用したテキストマイニングツールが提供されている。ユーザーローカルの「AIテキストマイニング」のように無料で試せるサービスもある。

 グーグルが提供するスマホアプリの「Googleレンズ」は、AI画像認識によって撮影した画像から関連情報を検索してくれる。現実世界のレンズ(虫眼鏡)は、目では見えない細かいところを拡大してくれるが、Googleレンズならば被写体の情報や属性が見えてくる。

4.携帯電話事業者のニーズにこたえた第3世代「iPhone SE」、それだけに意外だった価格(3.14 日経XTEC)
米Apple(アップル)は米国時間の2022年3月8日に新製品発表会を実施した。目玉となったのはMac向けの新しいプロセッサー「M1 Ultra」とそれを搭載した「Mac Studio」だが、より多くのユーザーに身近なデバイスとして注目されるのは、やはり新しい「iPhone SE」と「iPad Air」の登場であろう。これら2つのデバイスの変化からアップルの狙いを読み解いてみたい。

 iPhone SEは2020年に第2世代モデルが登場したが、それから約2年での新機種投入は、初代iPhone SEからのモデルチェンジに4年を費やしたことを考えると次世代機の登場がかなり早まっている。新たに発表された新機種の1つとなる、第3世代の「iPhone SE」。ボディーデザインなどは従来と変わらないが性能は大幅に強化されている

 改めて第3世代iPhone SEの仕様を確認すると、第2世代iPhone SEの性能強化版というべき内容だ。実際、ボディーデザインは第2世代iPhone SEがベースとなっているようで、ディスプレーサイズが4.7インチ、Face IDを採用せずにTouch ID用のホームボタンを備えるなど、今となってはやや古さも感じさせる。

 その一方で、強化されたのがプロセッサーだ。第3世代iPhone SEは新たに、現行の「iPhone 13」シリーズと同じ「A15 Bionic」を搭載して大幅な性能向上を実現しており、カメラは1200万画素・F値1.8と従来と変わらないながらもコンピューテーショナルフォトグラフィーの活用でより手軽に高度な撮影ができるようになった。

 そしてもう1つ、新たに5G(第5世代移動通信システム)に対応したというのも大きなポイントとなっている。こうした変更は時代の変化を受けたものではあるが、iPhoneの中で最も低価格の領域を担うiPhone SEの底上げが図られたことは確かだ。

 そしてアップルのもう1つの狙いは、第3世代iPhone SEが低価格で5Gに対応したデバイスである点から見えてくる。なぜなら日本をはじめ世界各国の携帯電話事業者は、現在顧客の5Gへの移行を積極的に進めている。その上で、5Gに対応しながら低価格、かつ「iPhoneである」という第3世代iPhone SEは移行を促す強力な武器となり得るからだ。

 意外だったのが価格である。第3世代iPhone SEの価格は、Apple Storeでの販売価格で5万7800円(税込み、以下同じ)からとされており、当初の販売価格が最も安いモデルで4万9280円と5万円を切っていた第2世代iPhone SEから比べると大幅な値上げとなっているのだ。

5.なぜスマートフォン関連企業が相次いでEVを目指すのか(3.14 日経XTEC)
2022年3月4日、ソニーグループと本田技研工業(ホンダ)がモビリティー分野で戦略提携し、高付加価値の電気自動車(EV)を共同で開発・販売すると発表したことが大きな話題となった。ソニーグループ以外にも、ここ最近スマートフォンに関連する企業がEVに力を入れる動きが急加速している。なぜだろうか。

 2022年1月に米国・ラスベガスで開催された「CES 2022」に合わせてEV事業への本格参入を打ち出し、大きな驚きをもたらしたソニーグループ。そのソニーグループがEV事業に関して、2022年3月4日に新たな取り組みを発表し、再び大きな驚きをもたらしている。

 それは国内自動車大手のホンダと、モビリティー分野で戦略的提携をすると打ち出したことだ。その発表内容によると、今後両社で合弁会社を設立、その新会社を通じてEVを共同開発し、モビリティー向けサービスの提供と合わせて事業化する意向を確認したとのことだ。

 なお新会社の設立は2022年中を目指すとしており、新会社が開発するEVの初期モデル販売は2025年とされている。新会社では車両の企画から設計、開発、販売をする一方、製造はホンダの工場が担い、モビリティー向けサービスプラットフォームはソニーが開発して新会社に提供する形になるという。

 一連の提携における両社の目的は明確だろう。ソニーグループは自ら強みを持つイメージセンサーをはじめとして、新しいモビリティーを実現する上で求められる多くのデジタル関連技術、そしてエンタテインメント関連の技術やサービスに強みを持つ。だがEV参入を打ち出したとはいえ自動車の開発や製造に関する実績はない。

 一方のホンダは自動車メーカーであり、実際に多くのEVの開発や製造、販売も手掛けるなどモビリティーに関する実績は豊富だ。だが今後広まるであろう新しいモビリティーを実現するためのデジタルに関する技術はあまり持ち合わせていないことから、将来に備えパートナーを必要としていたといえる。

 それゆえ今回の提携は共に不足していたパーツを埋め、EVを軸に新しいモビリティーを実現するための提携といえる。両社が設立する新会社でどのようなEVが開発されるのか、現時点では分からない部分も多いが、両社の相性は悪くないと感じられ、今後の展開に期待したいところだ。

 ここ最近、スマートフォンに関する動向を追っていると、ソニーグループに限らずスマートフォンに関連する企業のいくつかが、EV事業の強化に乗り出すケースが増えているように感じている。 中でも象徴的な動きとなったのは中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)のEV参入である。同社は2021年9月1日にEVの事業化に向け子会社の「Xiaomi EV」を設立、10年間で100億ドル(約1兆1480億円)を投資して本格的なEVの開発を進めるとしている。

 なぜスマートフォンに関連する企業がEVを目指すのかといえば、1つ挙げられるのは自動車のEV化、そしてデジタル化が進むにつれ、スマートフォンで培われたデジタル関連技術やデバイスが生かせるからこそだろう。

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