週間情報通信ニュースインデックスno.1316 2022/2/26


1.識者が激論、電気通信事業法改正を巡り総務省検討会はなぜ「炎上」したのか(2.25 日経XTEC)
インターネットの利用者情報保護について議論してきた総務省の有識者会議「電気通信事業ガバナンス検討会」(以下、ガバナンス検討会)は2022年2月18日、電気通信事業法改正に向けた報告書をまとめた。Webサイトやスマートフォンアプリケーションの利用者情報保護の規制を強化する。

 ただ、検討過程では事業者団体の反発を受け、当初案から規制強化の内容が後退するなど曲折を経た。

 報告書がまとめた規制強化のポイントは主に2つある。1つは大多数の国民がサービスを利用する大手の事業者に対する規制だ。利用者情報を適正に取り扱う社内ルールの策定や管理者の選任、情報取り扱い方針の策定と公表を求める。規律の対象として利用者数1000万人以上の大規模サービスを想定していて、既存の通信サービスに加えて大手のSNS(交流サイト)や検索サービスも含むとする。

 もう1点は、Webサイトやアプリの閲覧履歴やサードパーティークッキーなどの端末情報に関する規制だ。これらの情報を第三者に外部送信する際、原則として通知・公表を行い、もしくは利用者の同意取得かオプトアウト(事後的な拒否)の機会を提供することを求める。

 閲覧履歴や端末情報などは一般に、ターゲティング広告の配信などのためにWebサイトやアプリに設置された情報収集モジュールなどで収集、外部送信されていることが多く、こうした行為に一定の規律を設ける。規制の対象には、これまで「通信の秘密の保護」「検閲の禁止」以外は電気通信事業法の規律対象外だった「電気通信事業を営む者」も含む。

 総務省は今回の報告書を基に、電気通信事業法の改正案を2022年の通常国会に提出する予定だ。

 今回の報告書に示された規制強化の内容は、当初案からは後退している。例えば当初は閲覧履歴などを外部送信する際に、同意取得かオプトアウトを義務付ける方針だったが、事業者団体などからの反発を受け、通知・公表も認める形となった。

 利用者情報保護について、同検討会は当初2つの提案をしていた。1つは、2021年3月に明らかになったLINEの個人情報管理を巡る問題を受けたもので、利用者情報を保管するサーバー設置国名などの公表義務付けを検討していた。これは報告書では事実上見送られた。

 もう1つは、閲覧履歴や端末情報などの外部送信に係る規律である。これらは「通信の秘密」として保護されず事業者の間で「筒抜け」となり、利用者保護や通信の信頼確保が害される恐れがあることから、総務省の別の有識者会議である「プラットフォームサービスに関する研究会(以下、プラットフォーム研究会)」のワーキンググループで対応が検討されてきた。森氏はガバナンス検討会に加え、プラットフォーム研究会の構成員でもある。

 具体的には、2021年12月17日に新経済連盟が「電気通信事業法の改正の方向性に対する懸念について」とした文書を公開。規制強化の内容や、ガバナンス検討会での検討プロセスの不透明さなどを問題視した。あるIT企業の担当者は2021年11月下旬に規制強化の方針を知り、総務省に対して抗議をしたという。報告書案を公開した2022年1月14日のガバナンス検討会会合では、座長で東京大学公共政策大学院の大橋弘院長は「今回あるべき姿をしっかり議論できたかというと、至っていないとじくじたる思いだ」と述べて会合を締めくくった。

2.日本初、5G SAで「ABEMA」生中継を実施(2.21 KDDI)
KDDIは2022年2月21日、株式会社AbemaTV (以下 AbemaTV) が運営する新しい未来のテレビ「ABEMA」と共同で、日本で初めて 5G SA (スタンドアローン) を活用した映像の生中継 (以下 本取り組み) を実施します。

本取り組みは、同日午後7時から配信予定のHIPHOPチャンネル「ABEMAMIX」の一部で実施します。5G SA対応のスマートフォンとネットワークスライシング を活用して安定した映像中継を提供します。

なお、KDDIは2022年2月21日から、法人のお客さま向けに5G SAサービスを提供開始します。

KDDIは、2020年からノンスタンドアローン方式による5Gサービス (以下 5G NSA) を提供しています。5G SAは、コア設備 (以下5GC) を含めて5G技術のみで通信を可能とするシステムです。高速・大容量通信に加え、ネットワークスライシングなどの新たな機能の実装が可能になります。従来では有線回線が利用されていた産業へ5G SAを導入することで、無線化による業務効率化や低コスト化が期待されます。

3.「5G世界最速の韓国は平均で100Mbps突破」、Opensignal最新調査(2.24 日経XTEC)
独立系調査会社の英Opensignalが2022年2月にまとめた最新リポート「5G IMPACT ON THE GLOBAL MOBILE NETWORK EXPERIENCE」によると、5Gサービス開始後、世界におけるほぼ全ての地域で平均ダウンロード速度が向上し、世界最速の韓国で100Mビット/秒(bps)超、その他の地域でも2倍超となったケースがあることが明らかになった。

 調査では、5Gサービス提供開始前の2019年第1四半期と、多くの国で5Gサービスが展開された2021年第4四半期の動画閲覧時、ゲーム時体感、上り・下り方向速度などを比較している。100カ国中95カ国で平均ダウンロード速度が上昇するなどの性能向上が見られたという。

 韓国では、国内平均ダウンロード速度が2021年末に129.7Mビット/秒となり、2019年始めの52.4Mビット/秒から2.5倍近く向上した。同様に、ドイツで22.6Mビット/秒から48.7Mビット/秒、フィリピンで7Mビット/秒から15.1Mビット/秒、サウジアラビアで13.6Mビット/秒から31.1Mビット/秒、タイで5.7Mビット/秒から17.4Mビット/秒と、それぞれ2〜3倍の高速化を実現している。

 モバイルデータ使用量は年々増え続けているが、5G用周波数帯の導入とバックホールの改善により、5G導入済みの国の98%で、通信が最も混雑する時間帯の速度向上も見られたとしている。

 現在の5Gネットワークのほとんどは、3GPPリリース15に準拠している。リポートでは、今後、リリース16や17の標準化が完了すれば、応答性のさらなる向上が見込めるという。加えて、5G用の周波数帯がより多く確保されるようになれば高速化に拍車がかかり、最高の5G体験はこれからだとしている。

4.増えるのは実証実験ばかり、なぜ企業の現場に5Gソリューションの導入が進まないのか(2.21 日経XTEC)
5Gで企業のデジタル化が進むと言われて久しいが、商用サービス開始から2年が経過してもなお、企業の5G活用は実証実験レベルにとどまるものが大半で、現場での活用があまり進んでいない。企業が5Gを本格活用する上で不足している要素は一体何なのだろうか。

 5Gの商用サービスが始まっておよそ2年が経過した。かねて5Gは、遠隔操作などに役立つ低遅延や、IoTの活用を進める多数同時接続などの機能を持つことから、どちらかといえばコンシューマー向けよりも企業での活用のほうが注目を集めてきた。

 それだけに、5Gの企業活用に向けた取り組みは活発に進められている。とりわけ日本では少子高齢化による労働人口の減少が大きな社会課題となっているだけに、作業の自動化や遠隔作業など、5Gの性能を生かしたデジタル化ソリューション開拓に取り組む企業や自治体は増えており、導入に向けた実証実験は盛んに進められているようだ。

 2022年に入って筆者が取材した中でも、携帯電話事業者のパブリックな5Gネットワークだけでなく、ローカル5Gなども活用した企業や自治体の様々な取り組みがみられた。例えば2022年1月17日には、コニカミノルタとNECがローカル5Gを活用した2030年の工場生産の姿を示す「未来ファクトリー」の取り組みの一環として、工場で用いられるAGV(無軌道型無人搬送車)の高効率自動制御システムを共同開発したことを明らかにしており、コニカミノルタの研究開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」でその展示も開始している。

 2022年2月9日にはKDDIが、自動運転技術を手掛けるティアフォーや川崎重工業などと、5Gを活用した自動配送ロボットの公道配送実証を実施している。これはドライバー不足が課題となっているラストワンマイル配送の効率化に向けた取り組みで、PPP-RTK方式の高精度測位サービスを用いた、自動配送ロボットによる配送を実施するというもの。このロボットには遠隔監視や見守りなどの機能も備わっており、ロボットの運行だけでなく遠隔監視などにも5Gが活用されているという。
 それゆえ採用されたプロダクトはいずれも5Gネットワークの高速大容量や低遅延といった特徴を生かしながらも、具体的な社会実装が見込めるものとなっている。具体的には、5Gの低遅延を生かしてロボットを遠隔操作しラストワンマイルの配送を担うシステムや、5Gの高い性能を生かしてクラウド処理を活用し、XRを活用した観光周遊体験を低コストでより多くの観光バスに導入する取り組みなどだ。

 他にも多くの実証実験やソリューション開発に向けた動きは様々な企業や自治体が進めており、盛り上がっていることは理解できる。だがその内容を見て気になるのは、いずれも実証実験やその前段階のPoC(概念実証)レベルの話にとどまるものがほとんどで、実際に企業や自治体の現場で活用されている5Gソリューションがほぼ見当たらないということだ。

 国内で5Gの商用サービスが始まって2年が経過しており、当時から法人向けのソリューション開拓に積極的に動く企業はいくつか見られたものだ。にもかかわらず、なぜ企業での具体的な5G活用がなかなか進んでいないのだろうか。

 筆者が様々な企業から話を聞くと、最大の理由は5Gの性能にあるようだ。とりわけパブリックの5Gに関しては、現状4Gと一体で運用し、高速大容量通信のみ実現できるノンスタンドアローン(NSA)運用となっており、企業ニーズが高い低遅延・高信頼性など、5Gの機能をフルに生かせるスタンドアローン(SA)運用への移行は2021年の後半から始まったばかりである。

 一方、ローカル5Gは、2020年末よりSA運用が可能な4.7GHz帯の割り当てが始まっていることから、それに対応した機器を使えばSAでのネットワーク環境構築が可能だ。だが現状、ローカル5G向けの基地局やコアネットワーク用装置が高額で購入しづらいという問題がある。ほかにも、そもそも現在販売されている5G関連機器が、標準化団体の3GPPが定めた5Gの初期仕様である「Release 15」にしか対応していないことにも課題があるという。

 というのも5Gを導入したい企業の多くは、機器間でトラフィックの優先付けができるなど、より高度な性能を持つ次の仕様「Release 16」への期待感が強いといわれているからだ。現状の5Gでは性能面で不足があるとみられていることも、具体的な導入を阻む要因になっているように感じる。

 では一体、いつになれば企業や自治体で5Gの本格活用が進むのだろうか。各社から話を聞くと、その立ち上がりは2022年から2023年ごろになるとみているようで、理由は先に触れた性能面の問題が今後解決に向かうためである。

 例えば携帯電話各社のパブリックな5Gネットワークは、2022年にNSAからSAへと本格的な移行を進めるタイミングを迎えている。携帯電話各社もSA運用が企業向け5G活用の本命と見ていることから、SA運用への移行を機としてソリューションの本格展開を推し進めてくる可能性が高い。

 実際ソフトバンクは、パブリックな5Gネットワーク向けの電波を活用しながら、ローカル5Gのように場所を限定して提供する企業向けの「プライベート5G」を2022年度に提供開始する予定としている。企業向けの5Gソリューション開拓をあまり打ち出していない同社だが、プライベート5Gの展開後は急速に法人需要開拓へと舵(かじ)を切る可能性が高い。

 またRelease 16の仕様に対応する機器に関しても、やはり2022年から2023年にかけて出そろってくるとみられている。それに加えてローカル5Gに関して言えば、ここ最近基地局などでも徐々に低価格な製品が登場しつつある。今後価格や性能面でも企業ニーズに応える製品が増え、利用を後押しすると考えられる。

 もちろん現在の状況を見る限りでは、2022年の段階では環境整備が途上なだけあって登場するソリューションが急増するとは考えにくい。だが企業での導入事例が明確に現れ、具体的なユースケースと成果が見えてくれば、導入したいと考える企業が増え流れが大きく変わってくる可能性もあるだろう。ハードルはまだ少なからずあるが、目に見える形で5G活用が進むことを期待したいところだ。

5.NTT、スマートシティーで国際規格を日本で初取得 IT駆使した街づくり(2.25 ITmedia)
NTTは24日、スマートシティーの運営に関する国際規格「ISO37106」を日本で初めて取得したと発表した。

 NTTは24日、スマートシティーの運営に関する国際規格「ISO37106」を日本で初めて取得したと発表した。認証を受けたのは名古屋市東区の商業施設やオフィスビルが集まる一角。気候や人の動きなどのデータを分析した誘客や省エネにつながる空調管理、顔認証などを利用したオフィス業務の効率化など、IT技術を街づくりに生かす。

 ISO37106は、韓国の世宗市が2018年に世界で初めて認定されており、NTTの事例は11例目となる。中心市街地をスマートシティー化することで不動産価値の向上などが見込めるほか、運営のノウハウを行政インフラとして輸出するなど、自治体にとっても利点があるという。

 欧米各国や中国などはスマートシティー構築に積極的な姿勢を見せており、NTTも米ラスベガス市と共同事業を進めている。NTTと資本業務提携をしているトヨタ自動車も静岡県裾野市でロボットや人工知能(AI)を駆使した実験都市を開発する計画だ。

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