週間情報通信ニュースインデックスno.1308 2021/12/25


1.DMG森精機が顧客接点DX、工作機械試せる「デジタルツイン」の成果(12.24 日経XTECH)
工作機械大手のDMG森精機が顧客接点のDXを進めている。商社や電話に頼っていた購入前後のサポートをオンラインに移行。購入前の加工精度チェックなども「デジタルツイン」で試せるようにした。

 金属を鋭利なドリルで削って複雑な形に加工する工作機械の世界最大手であるDMG森精機が、顧客接点のDX(デジタル変革)を進めている。

 2021年2月には、顧客が工作機械を購入する前に金属加工を試してその精度や生産性を確認する「テストカット」をデジタル化した。「デジタルツインテストカット」と呼ぶ取り組みで、工作機械のシミュレーター(デジタルツイン)で加工を試せるようにした。

 従来のテストカットには、DMG森精機のショールームにある実機を使っていた。それに対してデジタルツインテストカットでは、工作機械のドリル(工具)や金属の加工素材(ワーク)、ワークを固定したり回転させたりする治具に加えて、工作機械本体の物理特性もシミュレーター上で精密に再現。顧客はワークを工作機械に入れて切削加工する工程や、様々な加工条件の組み合わせなどを試せる。工具の振動など工作機械の物理特性も再現されているため、仕上がりの品質などを実機で加工した時と同じように確認できるとする。

 従来のテストカットは実機を使用するため、実機の空き状況のほか、素材や工具の調達期間などを考慮して作業期間を検討する必要があった。シミュレーターではいつでもテストカットができるため、顧客がテストカットを依頼してから完了するまでの期間を大幅に短縮できるようになった。ワーク1個当たりの加工時間が10分の工程なら2営業日で、1時間の加工なら3営業日、10時間以上の加工なら5営業日でテストカットが完了する。

 デジタルツインテストカットは、DMG森精機が2016年から進める顧客接点DXの一例だ。購入前の接点だけでなく、購入後の接点についても変革を進めている。同社の工作機械販売は商社経由が多く、これまでは顧客とダイレクトに接する機会は少なかった。

 この状況を変えたのが、工作機械の世界で始まった数十年に1度の大転換、3軸加工機から5軸加工機への移行だった。

2.企業向けルーターの利用実態調査で異変、常勝ヤマハが僅差で「首位陥落」(12.23 日経XTECH)
日経NETWORKでは企業ネットワークの利用実態を調べるアンケート調査を毎年実施し、利用しているネットワーク機器のベンダーなどを尋ねている。2021年は9月から10月にかけて実施した。有効回答数は943件。その調査結果をまとめたのが本特集である。

 記事では、スイッチ、無線LAN機器、ルーター/UTMの3部門のそれぞれでベンダーのシェアをまとめた。インターネットと社内ネットワークの境界に置くネットワーク機器として、主にルーターやUTM/ファイアウオールがある。ここではルーター/UTM部門の結果を見ていこう。

 ルーターベンダーでは根強い人気を得ていたヤマハがついに2位に陥落した。代わりに1位となったのはシスコシステムズでシェアは26.4%。ヤマハは25.2%で僅差だった。シェアが3%以上となった製品では1〜6位まで前回と同じ顔ぶれとなった。

 企業規模別で見ると、ヤマハは21〜500台の規模で首位を獲得。シスコシステムズは501台以上の規模で1位だった。ここでもシスコシステムズが大企業に強いという結果になっている。

 アンケートでは境界防御のために設置しているセキュリティー製品についても尋ねた。「UTMまたは次世代ファイアウオール」を導入しているという回答が最も多く53.5%。過半に達するという結果だった。前回は42.9%だったため、10ポイント以上増えたことになる。

 次は31.2%で「Webゲートウエイ」だった。これはWebアクセス時にマルウエア(ウイルス)や不正攻撃を検知するプロキシーなどが含まれる。仮想環境を利用して不正なプログラムかどうかを安全に検査するサンドボックス型製品を導入しているのは6.2%にとどまった。なお24.3%は境界防御のためのセキュリティー機器を導入していないと回答した。前回の20.3%より増えるという結果となった。

 では境界防御製品を導入している企業はどんなベンダーの製品を使っているのか。UTM/ファイアウオールベンダーの順位は米フォーティネットが前回に続き首位を維持した。そのシェアは38.2%である。ただ前回よりも若干ポイントを減らした。

3.働き方改革を阻害する「あの問題」、いまだワースト2位を維持(2021.12.22 日経XTECH)
新型コロナウイルスの感染拡大から2年弱、働き方改革を阻む諸問題は解決されたのだろうか――。2020年4月から定期的に実施してきたテレワーク調査の最新結果を見ると、なかなか解決が進まない、ある問題の存在が浮かび上がってきた。

 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは「働き方改革に関する動向・意識調査」を2021年10月に実施した。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で発出された緊急事態宣言(まん延防止等重点措置を含む、以下同)が全面解除されたタイミングで、在宅勤務の実施状況や課題について尋ねた。

 調査で「あなたがテレワークを利用する際に不便・不安と感じる点や、テレワーク利用の阻害要因になると思う点をお聞かせください」と複数回答可の形で質問した結果、首位は「同僚(上司や部下を含む)とのコミュニケーションに支障がある」で43.8%の人が選んだ。最大の課題は意思疎通にあり、チャットやWeb会議よりも対面の方が対話しやすいと、多くの人が感じていると推察できる。

 同じ対話でも、「取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある」と感じる人は16.6%にとどまった。取引先や顧客との対話は商談が中心であり、議題やテーマが決まっていることが多い。一方で社内の対話はアイデア出しや課題の洗い出しなど、フリーディスカッションのような形で進むケースが少なくない。話す相手や目的によっては、オンラインで補いやすいと言えそうだ。

 テレワークを阻害する要因の2位は「書類・伝票類(紙)を取り扱う業務(押印、決裁、発送、受領など)をテレワークの対象とできずに不便」で36.0%だった。3位は「ずっと自宅にいると、心身を仕事モードに切り替えにくい」(27.6%)、4位は「自己管理や時間管理がルーズになりがち」(25.0%)、5位は「テレワークで自己負担する通信費・光熱費がかさむ」(24.0%)だった。

4.5Gのアップリンクで約1Gbps達成、エリクソンなど3社が高速化(12.22 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)、オーストラリアTelstra(テルストラ)、米Qualcomm(クアルコム)は2021年12月16日(現地時間)、オーストラリアQueensland州のTelstra商用ネットワークを使った実験において、上りリンク時ピークレート1Gビット/秒(bps)に迫る通信速度を確認したと発表した。ライブ動画ストリーミングやソーシャルメディアを使った情報共有などをさらに円滑に行うための技術として活用できるとしている。

 今回の実験は、EricssonのNR-DC(New Radio-Dual Connectivity、5Gデュアルコネクティビティー)とキャリアアグリゲーション(CA)ソフトウエア、QualcommのSnapdragon X65 5Gモデム-RFシステムを搭載したスマートフォン型の試験機を使い、Telstra 5Gイノベーションセンターにて実施された。Telstraの中周波数帯とミリ波帯を組み合わせて使用することで、最大上りリンク時速度986Mビット/秒を実現した。この値は、現在のTelstra 5Gネットワークにおける上りリンク時速度の2倍以上だという。

 具体的にはEricssonのCAソフトウエアを使って、帯域幅100MHzの隣接する4つのミリ波を組み合わせるUL 4CC CA(上りリンク4コンポーネントCA)を実施。これにNR-DCを使って3.6GHz帯の同100MHzも組み合わせることで、今回の高速化を実現した。中周波数帯用には、EricssonのBaseband 6648とAIR 6488、ミリ波用には、Baseband 6648とAIR 5322を使用している。

 なお、今回の実験で使用したEricssonのNR-DCソフトウエアは、TDD方式の7.125GHz未満の中周波数帯と24.25GHz超の高周波数帯に対応し、既に商用展開可能という。UL 4CC CAを可能にするソフトウエアは、2022年第2四半期より全世界で商用開始予定。

5.5Gミリ波の性能測定、従来の指標では不適切 クアルコムが提言(12.21 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)は2021年12月15日(現地時間)、5Gミリ波の利点やその役割を明確に示すことができる新しいパフォーマンス測定方法について提言した。  5Gミリ波は、今や世界中で利用される技術となった。米国では、大手通信事業者の全てが5Gミリ波サービスを提供し、欧州でも、EUと英国を加えた国々のほぼ半数が5G用のミリ波周波数帯を割り当て済み、もしくは検討している。日本でも全ての移動通信事業者が商用ミリ波5Gを提供しており、中国では、Qualcommが協力して、今後5Gミリ波の試験運用を開始する。香港、シンガポール、韓国、台湾では商用ネットワークが運用開始し、オーストラリアでもネットワークが稼働開始している。

 こうした5Gミリ波の性能を測定する際、従来の測定方法を適用することは難しい。例えば、3Gや4Gの性能測定に使用される従来のメトリック(測定基準)を5Gミリ波に適用しようとすると、次のような課題に直面する。

エリアカバレッジ:5Gミリ波は、駅や空港、繁華街、ショッピングモール、イベント会場などで、サブ6GHz帯を補完する局所的な通信に使われることが多く、エリアカバレッジを計測することはあまり意味がない。 人口カバー率:5Gミリ波対応基地局の多くは居住地区ではなく、繁華街など人々が行き交う通信量の多い場所に設置される。よって、人口カバー率も、その性能を測る上で適切ではない。 接続時間やアクティブ時間:5Gミリ波のバースト転送機能は、サブ6(6GHz未満の周波数帯)より約10〜20倍高速となっており、高速通信を必要とするアプリケーションでのみ使用される。ミリ波は必要なデータをより速く転送できるため、他の通信との比較で接続時間やアクティブ時間を使うことは誤解を招く恐れがある。  5Gミリ波の性能を測定する最善の方法は、ミリ波にオフロードされた通信量を測定することだ。5Gミリ波通信は、スモールセルやLAA(免許不要帯を活用するLTE通信)やCBRS(Citizens Broadband Radio Service、共用周波数帯を使った市民ブロードバンド無線サービス)などと同様、移動通信における混雑緩和に重点を置いて設計されている。

 例えば、シカゴの繁華街にて、米Verizonの5Gミリ波サービスのデータ通信量を計測した結果、5G対応端末の通信量の46%がミリ波を介して送信されていた。

 この調査が行われた時点で、Verizonユーザーの5Gスマートフォン使用率は20%、加えてこのエリアのミリ波カバレッジは道路や公園などの屋外に集中していることを考慮すると、この比率は大きな意味を持つ。

 また今回、ミリ波とサブ6およびLTEネットワークによる動画ストリーミングやファイル転送などを行った調査では、ミリ波を使うことで劇的に高いバーストレート、および、平均下りデータレートを確認した。例えば、動画ストリーミングでは、データバーストの95%がミリ波を介して行われ、ミリ波のバーストレートは、サブ6の約10倍を記録している。

 このように5Gミリ波は、局所的な大容量通信を可能にすることで、増え続けるデータ需要に対応する。既にデータ通信の大部分のオフロードに使われ始めており、今後、5Gミリ波対応端末の普及が進めば、その割合はますます増大する。5Gミリ波の性能指標としてカバレッジや接続時間、アクティブ時間はふさわしくなく、通信量の測定が重要となる。

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