週間情報通信ニュースインデックスno.1304 2021/11/27


1.高額過ぎる「BALMUDA Phone」、問われるバルミューダの販売戦略(11.26 日経XTECH)
家電メーカーのバルミューダは2021年11月16日、同社初のスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表した。コンパクトなサイズ感と独特のデザイン、ソフトウエアなどで強いこだわりを打ち出す一方、性能はミドルハイ相当ながら価格は10万円を超え、かなり高額なことから必ずしも好意的に受け止められたとは言い難い。こだわりも強いが課題も多いBALMUDA Phoneを、バルミューダはどうやって販売していくのだろうか。

 バルミューダは、独自の工夫やデザインと技術によって、通常の家電メーカーとは一線を画す家電を相次いで開発し、扇風機やトースター、電子レンジなど様々な家電でヒットを獲得していることで知られている。そのバルミューダがスマートフォンに参入するとあって、期待が高まっていた。

 そして2021年11月16日、バルミューダはついに発表会を開いて同社初のスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表した。その内容はバルミューダらしく、通常のスマートフォンとは一線を画す内容であった。実際、BALMUDA Phoneのディスプレーサイズは4.9インチと、6インチを超える大画面が一般的となっているスマートフォンの中ではかなりコンパクトだ。

 BALMUDA Phoneは単にコンパクトというだけでなく、デザインにもかなり特徴がある。それは直線を排し、全面的に曲線を取り入れたデザインであること。手にしたときのフィット感が重視し、側面や背面に丸みを持たせている。あえて表現するならば、米Appleの初代「iPhone」や「iPhone 3G」に近い印象を受けるデザインだ。

 そしてもう1つ、BALMUDA Phoneの特徴として挙げられたのがアプリだ。BALMUDA PhoneはOSに「Android 11」を採用しているが、スマートフォンの体験価値を変えるべく、スケジューラーやメモ、時計などスマートフォンに標準で入っている基本アプリの多くを独自開発しているという。

 例えばスケジューラーは、予定の表示をピンチ操作で1日から1年まで簡単に変更でき、ドラッグとピンチ操作だけで目的の日の予定を確認しやすくしている。メモも同様に、作成したメモを好きな場所に配置でき、スケジューラー同様ピンチ操作でメモ一覧を拡大・縮小し、目的のメモを見つけやすくするインターフェースが導入されている。

 だがBALMUDA Phoneの発表直後、SNSなどでは失望の声が広がった。その最大の理由は価格にあるといえよう。BALMUDA Phoneは自社独自の販売と、ソフトバンクからの販売という2つの販路がある。その価格は前者が10万4800円、後者に至っては14万3280円と、大画面と高性能のチップセットやカメラを備えたハイエンドモデルに匹敵する価格である。

 それでいてBALMUDA Phoneはディスプレーサイズが小さい上、チップセットに米Qualcomm(クアルコム)製のミドルハイクラス向けとなる「Snapdragon 765」、背面カメラは4800万画素のものが1つだけと、決して性能が高いとは言えない。スマートフォンとしての性能や高い付加価値、コストパフォーマンスなどに期待していた人たちから失望の声が出るのも無理はない。

 ただ、仮にBALMUDA Phoneの販売が順調に進んだとしても、アプリのOSアップデートへの対応という非常に大きな課題が待ち構えている。

 スマートフォンは家電製品とは異なりOSのアップデートが定期的に実施され、アプリもその都度新しいOSに合わせた変更が求められる。しかもBALMUDA Phoneはホーム画面など基本的な部分にもかなり手を加えていることから、新しいOSに対応しながらも従来の体験価値を変えないための修正や改良が必要になり、それが大幅なコスト増要因となって経営を圧迫しかねない。

2.自動文字起こしやリアルタイム翻訳、グーグル「Pixel 6」のビジネス向け機能を試す(11.26 日経XTECH)
米Google(グーグル)が2021年10月末に発売したフラグシップスマートフォン「Google Pixel 6」シリーズは、AIやカメラの映像処理に強いグーグルの独自プロセッサー「Google Tensor」搭載が特徴だ。それにより日本語の自動文字起こし、リアルタイム翻訳、写真に写り込んだ不要なものを消す機能などを備え、海外とのやり取りや資料作成などに強い、ビジネス利用に向いたスマホといえる。Android OSを開発しているグーグル純正のハードウエアで、グーグルの最新機能をいち早く確認できるのも魅力だ。Google Storeでの直販価格は、6.4型の「Pixel 6」が7万4800円から、6.7型の「Pixel 6 Pro」が11万6600円から(いずれも税込み)となっている。

 Google Tensorの特徴の1つは、言語処理を高速に行えること。使ってみてまず便利に感じたのは、日本語に対応した自動文字起こし機能だ。

 プリインストールされている「レコーダー」アプリを起動して録音を開始したら「文字起こし」をタップする。すると、録音している日本語がほぼリアルタイムでテキストに変換される。録音データの再生画面で「文字起こし」をタップしてテキスト化することもできる。

 新機能のリアルタイム翻訳機能もビジネスの役に立ちそうだ。チャットアプリの翻訳では、LINEやFacebokなどのメッセージがシステム言語と異なるかどうかを検出し、異なる場合に翻訳して表示する。こちらから日本語で入力すると、相手側にはその母国語で表示される。Google Tensorにより、クラウドを使わずにローカル(オンデバイス)で処理でき、レスポンスが素早い。

 自動字幕起こし機能もビジネスに使えるだろう。海外の音声や動画を自動翻訳して字幕を付けたり、最大48言語に対応した通訳モードなども利用したりできる。こうした機能は、海外の動画や発表会の視聴に役立つ。以前からあるが、Googleレンズで画像に含まれるテキストを翻訳する機能は、海外の書類を読み取るのに利用できる。

 さらに「Google翻訳」は文字起こしと同様に、日本語をかなり正確に聞き取って外国語に翻訳してくれるし、ある程度早口の外国語を聞き取って日本語に翻訳することもできる。日常会話や、海外のホテルや観光地での会話なら問題なくこなせそうだ。

3.GやWi-Fi6活用で製造業はどう変わる、エリクソンが最新リポート(11.25 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年11月17日、製造業で進む大規模な変革を調査した最新リポート「The rise of the smarter, swifter, safer production employee - Future of enterprises 2nd edition」を発表した。2030年までに、生産性や効率性、従業員の安全性確保に向けて、情報通信技術を駆使した製造支援ツールの導入が進むとしている。

 リポートによると、今後10年以内に製造業では平均8割の業務自動化が進むという。今後5年以内には、情報通信技術を駆使した製造支援ツールの活用が2倍以上増えると予測する。こうしたツールには、AI(人工知能)ソフトや動画認識、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、遠隔管理装置やAGV(automated guided vehicles、無人搬送車)、デジタルツイン、従業員と一緒に作業を行う産業用協働ロボット(co-bot)、従業員の身体に装着し、その動作をサポートする外骨格型デバイスが含まれている。

 さらに製造支援ツールについては、10社に7社が「5G(第5世代移動通信システム)やWi-Fi 6など最新の無線ネットワークを使って今後5年以内に少なくとも5種類、10年以内に7種類以上導入したい」と回答している。

4.IIJ、冷蔵庫大のデータセンターをエッジ向けに提供開始( 日経XTECH)
 インターネットイニシアティブ(IIJ)は2021年11月24日、冷蔵庫大のデータセンターである「マイクロデータセンター(MDC)」を提供し、運用や監視を請け負うサービスを開始したと発表した。端末の近くでデータを処理するエッジコンピューティングでの利用を主に見込む。

 MDCは高さ1〜2メートルほどの冷蔵庫大の箱に、サーバーの冷却用空調や無停電電源装置(UPS)、遠隔操作による電子錠などの機能を盛り込んだ小型のデータセンターになる。今回のサービスでIIJは、オーストラリアのMDC専業メーカーであるZella DC(ゼラディーシー)の製品を採用した。

 屋内に設置するタイプの「Zella Pro」と屋外に設置するタイプの「Zella Hut」を用意する。料金は個別見積もりだが、運用と監視のサービスの月額利用料金は約10万〜20万円の見込み。設置工事費や電気代が別途かかる。

5.米T-モバイルのミリ波5Gが全米2億人カバーへ、年末予定を前倒し(11.24 日経XTECH)
米T-Mobile(T-モバイル)は2021年11月15日(現地時間)、同社の高速大容量5Gサービス「Ultra Capacity 5G」が全米2億人を対象とする規模に達したと発表した。当初目標の2021年末を前倒しして達成した。今後2年以内に米国人口の90%超に当たる3億人への対応を実現するとしている。

 Ultra Capacity 5Gはミリ波など高い周波数を使う高速大容量のサービスである。T-モバイはこのほか、周波数の低い600MHz帯を使った5Gサービス「Extended Range 5G」も提供している。全米3億800万人が対象となる広大なカバレッジを実現している。同社はこの2つの5Gサービスを組み合わせることで、全米で最も広域に、信頼性の高い5Gサービスを提供可能とする。

 その根拠としてT-Mobileは、Ultra Capacity 5Gの接続性の高さを挙げている。米Verizonや米AT&Tも同様な2タイプの5Gサービスを用意しているが、T-Mobileは独umlautの協力を得てシンシナティ、クリーブランド、オーランド、ソルトレークシティーの4都市で調査を実施。Verizonのミリ波5Gサービス「Ultra Wideband」やAT&Tのミリ波5Gサービス「5G+」の接続可能時間は全通信時間中0〜数%程度、一方のUltra Capacity 5Gは75%近くの接続を実現したという。それにより、T-Mobileの5Gダウンロード速度はAT&Tの4倍、Verizonの3倍高速としている。また、Verizon とAT&Tの高速5Gサービスはエリアがスタジアムの一部や屋外などに限られているとも指摘している。

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