1.30Gbps以上に超進化、次世代無線LAN「IEEE 802.11be」の実力(11.11 日経XTECH)
現在の最新無線LAN製品である「Wi-Fi6」。その後継となる「Wi-Fi7」になる見込みの仕様の標準化が、米国の学会である「IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)」の標準化組織「IEEE-SA(Standards Association)」 の作業班「IEEE 802.11 WG(Working Group)」で進んでいます。それが「IEEE 802.11be 」(以下11be)です。11beは、MAC(Medium Access Control)層から上位層への通信レベル(MAC SAP)で30Gビット/秒(bps)以上の最高スループットを目指しています。
現在、Wi-Fiとして一般に認知されている無線LANシステムは、IEEE 802.11 WGにて、物理層とMAC層における通信機能やマネジメント機能を規定しています。2021年9月現在、市中における最新の無線LAN製品の多くは、2019年9月に業界団体「Wi-Fi Alliance」が開始した「Wi-Fi 6」認証を取得した機器です。Wi-Fi 6は、IEEE 802.11WGで策定されたIEEE 802.11ax(以下11ax)ドラフト版仕様を基に、Wi-Fi Allianceによる相互接続試験プランの認証をパスした機器を指します。この11ax規格はIEEE 802.11WGにおいて、2021年2月に標準化が完了しました。
IEEE 802.11WGでは、11axの次世代規格として、11beの規格化に向けた議論が進行中です。11beではAR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)/MR(Mixed Reality)や8K以上の高精細ビデオ、クラウドコンピューティング・ゲーミング、リモートオフィスなどをユースケースとして、MAC層から上位層への通信レベル(MAC SAP)で30Gビット/秒以上の最高スループットを目指しています。また11beでは、これまで無線LANで用いられてきた2.4GHz/5GHz帯に加えて、11axで利用可能になった6GHz帯の帯域も対象周波数とします。
11beでは、30Gビット/秒以上の最高スループットのほか、最低遅延やジッターの改善などを目指しており、これらの規定はこのPARにて記載しています。
11beにおける技術トピックは、周波数利用効率向上や広帯域化機能の高度化、マルチリンク機能、マルチAP(Access Point)協調・連携機能、最低遅延・ジッターの改善機能、緊急通報を実現する機構など、さまざまな要素を含みます。
11beは、2024年5月の標準化完了の目標時期としています。Wi-Fi 6認証機器が11axのドラフト版を基に標準化完了前に市場に登場したように、11beにおいてもこのドラフト2.0版を基にした製品が2022年〜2023年に登場すると予測されます。
2.パナソニックが新たな近距離無線、狭い範囲でセキュアに高速通信(11.11 日経XTECH)
パナソニックは2021年11月10日、数mm〜数十cmと狭い範囲で、高速通信可能な新たな近距離無線通信技術「PaWalet Link」を開発したと発表した。磁界を利用した通信方式で、実効速度が数M〜数百Mビット/秒と高速通信に対応する。セキュリティーを担保するために、通信範囲を抑えられる点が特徴である。電動の小型スクーターや電気自動車(EV)、産業用ロボットなどへの用途を開拓したい考えだ。
PaWalet Linkの最大の特徴は、あえて通信範囲を狭めつつ高速通信可能にした点だ。「無線LANは通信速度が非常に速い一方で、通信範囲が広範囲でセキュリティーや干渉に不安がある。通信範囲を絞ったBluetooth通信も10m前後に伝搬してしまう。交通系ICなどで利用するNFCはかなり通信範囲を制限できるが、通信速度が遅くなる」(パナソニックコーポレート戦略・技術部門事業開発室主幹技師の古賀久雄氏)。パナソニックは、通信範囲が狭く高速通信可能な通信技術のニーズがあると捉え、PaWalet Linkを開発した。
PaWalet Link技術はループアンテナを介して送受信する。必要な通信速度に応じ、アンテナの大きさや送受信のアンテナ間距離などの数値を決められる仕様としており、用途ごとに通信範囲を制御できる。干渉するほど端末同士が近くても、チャネルの切り替えで干渉を回避できる仕組みにもなっている。
PaWalet Linkの実用化の時期は未定であるものの、「技術的に確立している」と古賀氏は続ける。モビリティー分野以外に「製品内部のコネクターを減らすような活用法もある。無限回転ができる監視カメラ、ロボットアームなど」(パナソニックコーポレート戦略・技術部門事業開発室主幹技師の松尾浩太郎氏)といった多数のアプリケーションに利用を広げていきたい考えだ。
3.静岡県やソフトバンクなどが自動運転実験、交通監視に「5G SA」を活用(11.9 日経XTECH)
静岡県と掛川市は2021年11月9日、5G(第5世代移動通信システム)を使った自動運転の実証実験を東急やソフトバンクと共同で実施すると発表した。5Gには、従来方式の「NSA(Non-Stand Alone)」ではなく、新方式の「SA(Stand Alone)」を利用する。地域交通の課題解決を目的とした「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」の一環で、12月16日から22日まで実施する予定だ。
県内の複数都市を走行する2台の自動運転車両の運行状況をコントロールセンターからリアルタイムで監視し、必要に応じて車両を遠隔操縦する。車両やシステムの提供と運行管理を東急が担当する。
具体的には、人工知能(AI)を使った画像解析機能を搭載するカメラを運行ルートにあらかじめ複数台設置しておく。これらのカメラで対向車や歩行者などを検知した場合、映像をコントロールセンターに伝送し、車両の遠隔監視や遠隔操縦に利用する。映像伝送にはソフトバンクが2021年10月に提供を開始した5G SAの商用ネットワークを使う。
携帯電話事業者が現在提供している5Gサービスのネットワークは、ほとんどがNSAを採用している。NSAでは、4Gネットワークで通信を確立したうえで、5Gネットワークで高速・大容量のデータ通信を行う。5G単独では動作しないため「Non-Stand Alone」と呼ばれる。一方、SAは5Gネットワークだけで動く。データ通信の遅延時間が4Gよりも大幅に短くなるなど、5Gのメリットをフルに生かせるようになる。
4.いまさら聞けない「バイト」の“謎” 誰が考えたのか?(11.13 ITmedia)
データ量を示す単位である「バイト」。その名前はどのように生まれたのか。よく目にするようになった「テラバイト」(TB)は、どの程度の大きさなのか。これらの疑問に答えよう。
企業や個人は膨大な量のデータを生成するようになるにつれて、データの量を表すさまざまな単位を目にするようになった。キロバイト(KB)、メガバイト(MB)、ギガバイト(GB)――。「バイト」(Byte)という単位の前にさまざまな接頭辞が付いてデータ量の大きさを表す。近年、特に身近になったテラバイト(TB)は、ビッグデータ時代を代表する言葉の一つだと言える。
2007年に日立グローバルストレージテクノロジーズ(現HGST)が、当時としては異例となる容量1TBのHDDを発売した。今やHDDかSSDかを問わずTB規模の容量は当たり前になるなど、ストレージの進化は著しい。一方で「1TBは実際、どのくらい大きいのか」と聞くと、首をかしげる人がいる。TBを理解するには、他の単位と比較して考えるのが近道だ。
ほとんどのコンピュータでは通常、1バイトは8bit(ビット)だ。ビットはバイナリディジット(Binary Digit:2進数字)の略語。0または1の2進値を持つ、コンピュータにおけるデータの最小単位だ。メモリは通常、1つのメモリセル(データの記録素子)に1または0に応じた所定量の電荷(物体が帯びる電気量)を蓄えることにより、値を記憶する。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)コンピュータサイエンス学部創設者のフレッド・ブルックス氏は、故ワーナー・ブッフホルツ氏がIBM在籍時にバイトという言葉を考案したと説明する。ブルックス氏によると、ブッフホルツ氏は1956年に、スーパーコンピュータの起源だといわれる「IBM 7030」の設計に携わっていたときに、バイトを考え出した。IBM 7030は、IBMとして初めてトランジスタを使って構築したコンピュータだ。
TBに話を戻そう。1TBは1024GBに等しい。1GBは1024MB、1MBは1024KB、1KBは1024バイトだ。言い方を変えれば、1TBは1兆995億1162万7776バイトとなり、これは10億7374万1824KB、104万8576MBに等しい。
現在販売されているメモリやストレージでは、容量の単位はTBが最大だ。TBより大きい単位として、ペタバイト(PB)、エクサバイト(EB)、ゼタバイト(ZB)、ヨタバイト(YB)、ブロントバイト(BB)などがある。PB規模の記憶装置が登場するのは、時間の問題だ。
5.北海道電力が発電所におけるローカル5Gの実地検証を開始(11.13 ITmedia)
北海道電力が発電所構内にローカル5Gを構築して、火力発電所における現場業務の生産性向上と技術継承の効率化を目指す。
北海道電力と北海道電力グループ企業である北海道総合通信網(以下、HOTnet)は2021年11月1日、苫東厚真発電所構内(石炭火力発電、総出力165万kW)でローカル5Gを活用する実地検証を開始した。検証期間は2021年11月〜2022年3月を予定している。
北海道電力とHOTnetは、2020年度には苫東厚真発電所構内に構築した構築した自営等BWAによる、火力発電所における現場業務の効率化に向けた検証を実施している。HOTnetが2021年11月1日に総務省北海道総合通信局よりローカル5Gの基地局および陸上移動局の無線局免許を取得したことを受け、新たに次世代規格である5Gの通信環境を構築して以下の4項目を検証する。
ローカル5Gの電波到達状況や通信速度などの通信状況
無線監視カメラやヘッドマウントディスプレイ(HMD)、自走式点検ロボット、無線センサーによる現場の映像や設備データを利用した中央操作室などでの遠隔監視の有効性
HMDを活用した熟練者、メーカー技術者による遠隔指導やMR(Mixed Reality:複合現実)技術を活用したノウハウ取得の有効性
異常の早期発見や故障の防止、設備利用率向上を目的としたO&M(Operation and Maintenance:運用管理と保守整備)の高度化に向けて無線センサーなどの各種情報端末から設備データや運転データを収集、蓄積してAI(人工知能)で解析するための詳細設計
ローカル5Gには公衆の無線網では電波の届きにくい場所でも5G環境を構築できる、自社専用であるためデータ通信を容量無制限で利用できる、社外の通信網を使用しないため耐災害性が高く、セキュリティ面でも優れるといったメリットがある。なお、ローカル5Gの基地局および陸上移動局の無線局免許取得、ローカル5Gを活用した取り組みは北海道内初となる。
ローカル5G導入にあたっては日鉄ソリューションズがノキア製ローカル5Gソリューションの販売、無線設備の設置工事、システムの運用保守を担当している。
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