週間情報通信ニュースインデックスno.1301 2021/11/06


1.今、最も足りないのはビジネスとITのモデル間を往復できる人材(11.5 日経XTECH)
新しいビジネスをつくり出す。すでにあるビジネスをもっと強くする。この2点が今求められていることだと私は考える。新たなインカムを生むビジネスを創出し続けないと企業として存続できない。現在のビジネスをより強くし、拡大し続ける必要もある。

 世間で騒がれているデジタルトランスフォーメーション(DX)もどちらかを指している。DXという言葉が消えても求められる2つのミッションは変わらないだろう。

 新規事業の開発やビジネス改革のやり方についてさまざまな提案がなされている。私はビジネスを俯瞰(ふかん)する手法としてデータモデルを使うことを提案したい。

 データの関連を描いたモデル、それをつくるデータモデリング、私が長年使ってきた道具であり手法である。ざっと40年間、曲折はあったが企業情報システムの世界でお世話になってきた。データに関わる仕事にこだわってきたため、データベースの見直しやデータモデリングの際、いまだに声をかけていただけるので、この世界にしぶとくかじりついている。

 データモデルはデータベースあるいはシステムの設計のためにつくられた。この役割は今後も変わらない。データモデルを用意し、ローコードツールを使えば高速で情報システムを構築できる。データモデルの効果がすぐに見える形で現れるので画期的と言える。

 これに加え、ビジネスの実務者がビジネスを創出したり強くしたりするときにもデータモデルが有用だと考えている。いきなりビジネス創出というと敷居が高いので、ビジネス上の課題を発見、発掘し、その対策を見いだすと言い換えて説明する。

 まず、自社あるいはグループ企業にとって現状のビジネスの根幹となっている顧客、商品・サービスは何かをしっかり把握する。その運営を担う製造現場や、物流部門、直接顧客と接する営業部門といった社内組織の構造と役割も捉える。このとき、顧客や商品・サービスを表すデータの関連をモデルとして描けば全体を俯瞰しやすくなる。

 全体を見渡して課題を発見したらビジネスを再定義する。自社にとって真の顧客はだれか、根幹となる商品や付帯するサービスは何か、といったことを考え、データモデル上で組み直す。再定義したモデルに基づいて新たな商品やサービスを開発、提供し、そのための組織を作り上げていく。新たな情報システムも用意する。

 新ビジネスの創出にまで至らなくても、課題を見つけ、対策のためにデータをうまく使えればビジネスを強くできる。データを使い回すことが経営の肝と言われる時代である。現状を正しく把握し、必要とするデータの所在を確認し、データ活用基盤を整備する。その時にもデータモデルが欠かせない。

 こうしたモデルを描けば、法人や個人の顧客の構造はどうなっているか、B to B(企業向け)ビジネスの場合、販売店の先の消費者までを相手にしないといけないのか否かなど、自社ビジネスを取り巻くリソースとそれらの関係が明らかになってくる。

2.ローカル5G活用で駅前広場の活性化目指す、ハートネットワークらが実証実験(11.4 日経XTECH)
ハートネットワークとNECネッツエスアイは2021年11月4日、ローカル5Gの環境を活用し、JR新居浜駅前広場の活性化を目指す実証実験を開始すると発表した。同年11月から2022年12月まで実施する。

 少子高齢化や人口減少が進む中で、地方都市における街の活性化は大きな課題となっている。今回の実証では、ローカル5G環境の活用によってこうした課題を解決し、魅力ある街づくりの実現を目指す。

 具体的には、リアルタイムで情報を更新するスマートサイネージや、360度映像をリアルタイムで配信するVRカメラ、ローカル5Gによる高速無線LAN環境を活用し、人が集まりたくなるような仕組みをつくる。これにより、活気ある魅力的な駅前広場の実現を目指す。さらに画像認識が可能な4Kカメラシステムを利用し、転倒検知や人流分析による安全・安心な街の実現を図る。

3.コロナ禍で変化したネットワーク、なぜ今パケットキャプチャーなのか(11.4 日経XTECH)
新型コロナウイルス禍で企業ネットワークの姿が変わってきています。ネットワーク管理にも変化に対応した手法が求められています。この特集ではネットワークを流れるパケットをキャプチャーして収集し、Pythonとリレーショナルデータベースを用いて精度よく解析するための実践的なテクニックを紹介します。第1回は社内ネットワークの変化と課題に焦点を当て、パケットキャプチャーとトラフィック解析の基本的な考え方について解説します。

テレワークの普及により急速に企業ネットワークの形が変わっています。社内システムをクラウドサービスにシフトしたり、VPN(仮想私設網)を活用して自宅とオフィスを結ぶリモートアクセスの利用率が高まったりしたことに起因します。新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の1つとして、これらの変化はあまりに急激に進んだため、できるところからやってみようといった、ある意味場当たり的な対応になったケースも多いのではないでしょうか。

 今後オフィスの在り方、仕事のスタイルが見直されていく中、ネットワークの応急処置的な設計を見直すタイミングがやってくるはずです。企業は在宅勤務の定着やそれに適応した仕事の進め方を模索していくことになるでしょう。新しいスタイルに合わせて制度やネットワークを再定義する際に、しっかりとしたサイジングや十分な拡張性、適切なチェック体制の確保が重要になります。

 実際、新型コロナ禍はネットワークにどのような影響を与えたのでしょうか。総務省のデータを見てみましょう。「令和2年版 情報通信白書」によると緊急事態宣言中、国内の昼間の通信量は最大約6割増え、世界のデータ通信量も前年同期に比べて2倍以上に増加しています。

 同じく総務省が2021年7月21日に公表した「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算(2021年5月分)」によると、ダウンロード、アップロードともにコロナ禍前に比べ、一般に業務時間帯である日中のトラフィックが倍増していると分かります。コロナ禍によって自宅からの通信量が増え、トラフィックが企業内に集約していた状態から大きく変化しています。

 企業ネットワークの変化において、クラウド利用やVPNでの接続といった宛先や経由ポイントの変更だけでなく、その用途の変化も進みました。Web会議サービスやVDI(仮想デスクトップ)などを多用するようになったことが挙げられます。

 従来のファイル転送中心のトラフィックが変化し、トラフィックに占めるWeb会議のようなリアルタイムコミュニケーションの比率が大きくなっています。ファイルのような単純なデータを伝達する通信から、音声と映像などのリアルタイム処理のための通信に変わることで、必要とされる情報の質と意味も変化します。

 起こりがちなネットワークの問題を解決する場面から考えてみましょう。在宅勤務をしていて遭遇するネットワークの問題として、レスポンスの遅延や突然の切断などが挙げられます。対策としてインターネット回線を切り替えたり、機器をアップグレードしたりするかもしれませんが、効果を得られないケースがあります。特にネットワークの遅延は様々な要因が考えられる難しい問題です。

 こうした場面で重要なのは、どのプロセスがどの程度遅いのかを客観的なデータを取得して評価することです。あるプロセスはいつもその程度の速さなのか、遅い場合と速い場合があるのかなど、状況を精緻に積み上げていき、正確に現状を把握した上で、効果を測定しながら試行錯誤していきます。こうして遅くなるメカニズムを明らかにすることが根本的な解決につながります。

4.阪神電鉄で車両と地上間でミリ波を使った伝送試験、IoTによるゴミ回収実験も(11.2 日経XTECH)
阪神電気鉄道とアイテック阪急阪神は2021年11月1日、駅ホームの更なる安全性向上の実現を目指し、鉄道車両と地上間でミリ波無線を活用した伝送試験を同月上旬に阪神線内の試運転列車で実施すると発表した。

この伝送試験では、駅ホームの端にカメラを仮設し、免許不要な60GHz帯のミリ波無線機を車両内および駅ホームに取り付ける。ミリ波無線を通じて車両の乗務員室内に映像を取り込み、その画質や伝送精度などを確認することで、実用可能性を検証する。

 ミリ波を、駅ホームの安全確認やメンテナンス、車内でのセキュリティー強化など様々な分野における鉄道運営への活用が期待されるものと位置付ける。今回の試験による基礎的な検証を行った後、ミリ波を活用したシステムの実用化に向け段階的に検証を進め、既存システムとの連携、車両間での検証拡大などを検討していく。

 両社は同日、IoTセンサーを利用し、阪神電車の駅でたまったゴミを効率的に回収するシステムの実証実験を、11月2日から2022年1月31日の予定で行うことも発表した。駅のホームやコンコースに設置しているゴミ箱の一部に、LPWAによる無線通信が可能な距離センサーを設置し、ゴミ表面との距離の縮小からゴミの堆積量の増加を判定する。ゴミ回収のタイミングの適正化やゴミ回収作業の効率化が期待できるとしている。

5.アバターで会議に参加、マイクロソフトが「Mesh for Microsoft Teams」を2022年に提供開始(11.6 ITmedia)
 Microsoftは、同製品の発表に至った背景に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として普及したテレワークの傾向2つを挙げる。1つ目は、テレワークする従業員の生産性が高いことだ。2つ目は、テレワーク中は同僚や仕事相手のプライベートな部分が見えず、人間関係やキャリアを築く機会が減ったことだ。

 Mesh for Microsoft Teamsは、テレワークで発生しがちなコミュニケーションの課題を解決するという。スマートフォンやPC、MRヘッドセットからアクセスでき、オンライン会議をよりパーソナルな空間として楽しめる仕組みをそろえた。

 人や場所、モノのデジタルツインが配置された「メタバース」と呼ばれる仮想空間では、それぞれのユーザーが固有のアバターを作成し、自身の音声に合わせて顔の表情も変化させられる。アバターの表現力を高めるアニメーションも用意し、両手が動くようにもするとしている。

 ユーザー同士はアバター使って仮想空間に集まり、コミュニケーションやコラボレーションを図れる。Microsoftはその効果について「同じ仮想空間を共有する1つのチームや1つのグループであることを全員に認識させ、堅苦しさをなくし、活発な参加を促すことで、チームの効率化と個人の積極性の向上を支援する」としている。

 Mesh for Microsoft Teamsのユーザーは、TeamsのWeb会議と同じ操作でメタバースでの会議に参加できる。その場合、静止画像やWebカメラの映像を使うのではなく、自身のアバターで参加する点が異なる。

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