週間情報通信ニュースインデックスno.1298 2021/10/16


1.ドコモが14日の通信障害で会見、「約200万人に影響、再発防止策は10月下旬に完了」(10.15 日経XTECH)
NTTドコモは2021年10月15日午後に会見を開き、前日14日に発生した通信障害の経緯と原因を説明した。15日午後2時時点でなお3G回線に通信しにくい影響が残っており復旧に努めている。田村穂積副社長は「ご迷惑をおかけしたお客様におわび申し上げます」と謝罪した。再発防止策は2021年10月下旬に完了するとした。

 同社の説明によれば、障害発生の発端は、タクシーの決済や自動販売機などIoT(インターネット・オブ・シングズ)回線サービスで使っている「加入者/位置情報サーバー」の旧設備から新設備への切り替え工事である。

 10月14日午前0時ごろから工事を始めたが、切り替えた新サーバーに不具合が生じたため、同日午前7時26分に従来サーバーに切り戻した。午後4時36分には、IoT機器に対して切り戻した従来サーバーに位置登録を促す措置を実施した。

 ここでIoT機器が想定を超える量の位置登録信号を送信したことでサーバーが輻輳(ふくそう)し、位置登録信号の再送によって午後5時ごろから交換機などドコモのネットワークでも輻輳が生じた。

 通信しにくい事態を受けて、午後5時37分からは全国で全ての位置登録信号を抑制するようにし、午後7時57分に完了した。しかしその後も、利用者からの音声通話やデータ通信のトラフィックが急増し、4Gや5G回線については15日午前5時ごろまで通信しにくい状況が続いた。

 NTTドコモは約8000万加入者のうち、端末の位置情報が更新できずに通信障害が生じたなど直接的な影響を被ったのは約200万加入者だったとしている。ただ、この数字にはその後の通信しにくい状況などの影響は含まれていないとみられる。輻輳が発生した時間帯の音声通話は前週比で15%少なかったといい、影響を受けた利用者はさらに増えるもようだ。

 再発防止策としては2点挙げた。ネットワーク工事などにおいて(1)通常運用と異なる状態になる工事や運用などでは処理能力を再確認する、(2)確認した処理能力を踏まえた適切な切り替えへと手順を見直す、である。2021年10月下旬に完了するとした。

2.楽天5G、上り下りとも国内最高速」、英Opensignalがリポート(10.15 日経XTECH)
独立系調査会社の英Opensignalは2021年10月14日、日本の通信事業者4社のモバイルネットワークをユーザーエクスペリエンスの観点で調査した「JAPAN モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」、および、5Gにフォーカスした「JAPAN 5G体感レポート」を発表した。日本各地で2021年6月1日から8月29日までの90日間にわたり調査した結果をまとめている。同日行われたオンライン会見では、同社分析担当副社長Ian Fogg氏による解説も行われた。

 「JAPAN モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」では、6つのメトリックスについて、4社のネットワークユーザー体感を比較。その結果、動画閲覧およびゲーム時についてはソフトバンク、音声アプリ時については、ソフトバンクと楽天、ダウンロード(下り)速度についてはNTTドコモ、アップロード(上り)速度については楽天、4G利用率についてはauが最も高得点を得たとしている。

 メトリックスごとに見ると、動画閲覧時やゲーム時、音声アプリ使用時のユーザー体感は4社拮抗しているが、ダウンロード速度では、NTTドコモが最下位の楽天に2倍以上の差をつけている。一方、アップロード時は、楽天が他に比べて3割以上高速となっている。

 5Gネットワークを比較する「JAPAN 5G体感レポート」では、7つのメトリックスについて調査している。ユーザーが5Gに有効接続できている時間の割合を示す5G利用率、ユーザーが5Gを体感できる場所の割合を示す5G到達率では、NTTドコモが1位となっている。動画体感では、ソフトバンクは楽天と共に1位となり、ゲーム、音声アプリのエクスペリエンスではソフトバンクが1位。5Gダウンロード、アップロード速度では、楽天が1位となっている。

 5Gダウンロード速度では、楽天が224.3Mビット/秒と群を抜いているが、4社すべてで100Mビット/秒を超えており、日本の5Gネットワークが4Gから大幅に高速化されていることが見て取れる。

 一方で、5Gに接続できない時も含め、5Gユーザーが体感する全体的なダウンロード速度についてみると、NTTドコモのスコアが最高となる。これは、楽天がNTTドコモに比べて5G接続可能な時間が短いことが影響している。4G接続時のダウンロード速度も含めれば、全体としてNTTドコモの体感速度の方が速いことになる。

3.5Gの真の性能を引き出すミリ波 サブ6、SA、O-RANとペアで新展開(10.14 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)は2021年10月4日、5Gの真の性能を引き出すためには、ミリ波の活用が不可欠だとするコラム「What is the missing piece of the 5G puzzle? How to plan for the future.」を自身のブログに掲載した。

 現在の5Gネットワークにミリ波を追加することで、ユーザー体験やネットワーク効率が著しく改善する。ミリ波周波数帯の超広帯域幅を活用することで、サブ6(6GHz未満の周波数帯)のみ使用時の19倍、LTE時の38倍の高速大容量化が可能となる。また、2026年までに現在の4.5倍増になるといわれるデータ消費量やクラウドゲームなどの新しい用途にも、迅速かつ効率的に対応できる。最新のベル研究所の調査では、5Gミリ波により、さらに柔軟で効率的なモバイルブロードバンド配信や展開が可能になり、通信事業者に多くの利益をもたらす。

 現在、移動通信事業者は、3.5GHzなどのサブ6を使った5Gサービス展開に焦点を置いているが、この周波数帯には容量拡大に必要な十分な帯域幅がない。デュアルコネクティビティーやキャリアアグリゲーションなどの技術で5Gミリ波とサブ6とを組み合わせることで、高コスト効率での大容量通信提供が可能となる。先のベル研究所の調査でも、混雑した繁華街やオフィス、屋内や屋内のイベント会場、ショッピングセンターなどへの導入例が紹介されている。また、最近のGSMAの調査では、通信量の多い場所にミリ波とサブ6の両方をサポートする5Gシステムを導入することで、サブ6のみの場合に比べ、総保有コスト(total cost of ownership、TCO)を最大35%削減できるとしている。

 移動通信事業者の短期的な投資分野としては、5G SA(Standalone)への移行が挙げられる。5G SAネットワークを導入することで、基幹ネットワークの遅延時間を著しく低減し、ネットワークスライシングや5Gネットワークの仮想化も可能になる。これに5Gミリ波を組み合わせることで、タイムラグを感じないクラウドゲームやXR(extended reality)など、超低遅延な新サービスの提供が可能となる。

 サブ6とミリ波を組み合わせることで、より高いサービス品質が必要となる分野にも対応できるようになる。例えば、産業用IoTでは、1ミリ秒程度の低遅延性と最大99.9999%の超高信頼性を求められる。Qualcommでは、こうした要件への対応に向けて、スマートファクトリー内の多様なユースケース、高速大容量通信やミッションクリティカルな通信、カメラセンサーなど複雑度の低いIoTデバイスなどを5Gミリ波に接続した場合のシミュレーションやフィールド試験を行っている。なお、日本やドイツなど多くの国々では、ミリ波を使ったプライベートネットワークやIoTの活用が進んでいる。

 3GPPリリース18では、5G Advancedとして、71G〜100GHzのミリ波帯や100GHz以上のサブテラヘルツ帯など、さらなる高周波数帯を使った大容量通信の検討が始まっている。最近の研究によると、およそ150GHzまでの周波数帯にて、指向性アンテナで初期1mを損失補償した後の伝搬損失のパターンは非常に類似している。周波数による差もわずか1dB/100m程度とのことで、標準的な5G小型基地局の対象範囲内では著しい問題にはならない。

4.KDDIの商用5G SAサービス、サムスン電子がvRAN提供(10.11 日経XTECH)
韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年9月30日、KDDIの中周波数帯5G SAネットワーク商用化に向けて、Samsungの完全仮想化無線アクセスネットワーク(vRAN)を提供すると発表した。

 Samsungの最新5G vRANを活用することで、ネットワークの柔軟性や拡張性、ネットワーク運用におけるリソース効率が向上する。また、クラウドの特性を生かしたコンテナベースのアーキテクチャーにより、ネットワーク管理の簡素化、自動化が可能になり、新サービス導入時にも、他への影響を最小限に抑えられるとしている。

  両社は、KDDIが2020年に開始した商用5G NSAや、2021年の700MHz帯を使った5Gサービス開始時にも協業を行っている。今回の5G SAについても、既にvRANとO-RAN準拠の他社製5G Massive MIMO無線装置を組み合わせた最初の5G SA通信実験を完了。今後は2022年第1四半期に最終試験を実施し、2022年後半には商用サービス開始を予定している。

5.EC、ドコモの5G+ローカル5Gの“ハイブリッド5Gネットワーク”を構築(10.15 日経XTECH)
NECは、10月15日に共創施設「ローカル5Gラボ」へパブリック5Gとローカル5Gのネットワークを設置し、ハイブリッド5Gネットワークを構築したと発表。両ネットワークの切り替えに成功し、ハイブリッド5Gネットワークの特徴を利用したソリューションの開発を進めるという。

 従来、ローカル5Gとパブリック5Gの両ネットワークを利用するためには、それぞれ専用の端末が必要だった。ハイブリッド5Gネットワークは1台の端末でネットワークを切り替えられるため、限られたスペースを有効に活用できるとしている。

 今回の検証ではローカル5GラボへNECのローカル5G基地局と、NTTドコモのパブリック5G基地局を設置。京セラの5G端末にパブリック5GのSIMとローカル5GのSIMを挿入し、両ネットワークへ切り替えが可能なことを確認した。また、ローカル5Gが圏外になった場合には自動的にパブリック5Gに切り替え可能なことも確認している。

 同社はハイブリッド5Gネットワークを活用したユースケースとして、製造業などのサプライチェーンへの活用を想定。拠点内ではローカル5G、拠点間の輸送時はパブリック5Gでデータ連携を行える他、ローカル5Gで伝送した現場の映像などをパブリック5G経由で現場管理者へ送信し、自身のモバイル端末でリモートを使った現場の確認や指示を行うなどの利用が考えられる。

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