1.法人サービスを矢継ぎ早に投入するKDDI、新ライバル「ドコモコムコム」に先手(10.1 日経XTECH)
「通信の領域では(競合の通信会社と)同じように見えるかもしれないが、当社はかなり早い時期からデジタルトランスフォーメーション(DX)の領域で、顧客の『本業』に貢献することを目指して実績を積み上げてきた。これからも追い付かれないようにする」。
KDDIの法人事業を統括する森敬一取締役執行役員専務は自信ありげにこう語った。同社は2021年9月28日に法人事業説明会を開き、新たな成長の柱と位置付ける「NEXTコア事業」の最新動向を説明した。
その1つが「ゼロトラスト」という新たな考え方に基づくセキュリティーサービス「KDDIマネージドセキュリティサービス」で、10月1日に開始した。顧客企業が利用しているセキュリティー対策サービスなどから取得したログを、KDDIが開発したログ分析基盤と出資先であるITセキュリティー企業ラックの自動分析エンジンでリアルタイムに分析。そこに両社が2018年に共同設立したKDDIデジタルセキュリティのサイバー分析官も加わり、顧客企業のシステムにおけるインシデント発生を早期に検知・対応するというものだ。
こうした法人サービスに加えて、KDDIは5G(第5世代移動通信システム)の領域で富士通と提携し、新たな市場開拓策を打ち出した。具体的には2022年度中をめどに、富士通が構築支援する地域限定の5Gネットワーク「ローカル5G」とKDDIの商用5Gネットワークを組み合わせて企業や自治体などに提供する予定。企業や自治体は屋内外にシームレスにまたがる通信環境を構築して、顧客や地域住民に5Gを活用したサービスを提供できるようになるという。
2.高速通信専用のチャネルが多数追加へ、6GHz帯の無線LAN「Wi-Fi 6E」の可能性(9.30 日経XTECH)
無線LANはオフィスや自宅、街中の施設などにおける無線インフラとして日常的に使われるようになった。その一方で、機器の増加による混雑や電波リソースを多く消費する新規格の登場により、良い条件で使いにくくなってきた側面もある。
こうした状況において注目したいのが、Wi-Fi 6の拡張仕様である「Wi-Fi 6E」だ。日本でこの仕様を使えるようになるのはこれからだが、普及が進めば無線LANが
Wi-Fi 6Eは無線LANの業界団体であるWi-Fi Allianceにおける呼称で、同アライアンスは「6GHz帯で機能するWi-Fi 6デバイスのブランド名」と定義している。IEEEにおける規格名はWi-Fi 6と同じIEEE 802.11ax(以下、802.11ax)である。そのため802.11axで規定されている最大伝送速度(9.6Gbps)や、複数端末で使う場合における電波の利用効率を高めるOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)の採用といった仕様はWi-Fi 6EでもWi-Fi 6でも同じだ。
Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eの違いは、後者が6GHz帯を使えることである。ちなみに802.11axでは、対象とする周波数が7.125GHz(7125MHz)まで拡大されている。
日本国内では現時点で、無線LAN向けに2.4GHz帯と5GHz帯の使用が認められているが、6GHz帯に関してはまだ認められていない。海外では、米国や韓国など一部の国で既に6GHz帯が使用可能になっている。
5GHz帯と6GHz帯では周波数の幅とチャネル数にかなりの差がつくと予想される。日本国内において、5GHz帯で使える周波数は5150M〜5350MHzと5470M〜5730MHzとなっている。これに対して6GHz帯は5925M〜7125MHzとはるかに大きな幅で検討が進んでいる。
日本国内における6GHz帯で使用可能な周波数とチャネル数は未確定である。その前提で、IEEE標準で規定された6GHz帯における想定チャネル配置を見ると、5925M〜7125MHzで使用可能になっているチャネル数は20MHz幅の場合で59。5GHz帯のチャネル数は日本の場合20である点を考えると約3倍になる。これが無線LAN用として追加される形となる。
3.SIMロック原則禁止でも乗り換えられない、iPhoneをまねしても痛い目に遭うだけ?(9.29 日経XTECH)
携帯電話端末を自社の回線でしか使えないように制限するSIMロックが2021年10月から原則禁止となる。格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)や新規参入の楽天モバイルは現状でもSIMロックを設定していない。携帯大手も一定の条件を満たせば解除しているが取り組み状況には温度差があり、総務省は「(端末)購入者の利便を損なう」「事業者間の競争を阻害する」として原則禁止に踏み切った。
SIMロック関連で残る課題は端末の対応周波数問題だろう。米Apple(アップル)のiPhoneは国内携帯各社の周波数に対応しているが、Android端末はそうとも限らない。端末が移行先事業者の周波数に対応していなければ乗り換えられない。結局、SIMロックを原則禁止にしても乗り換えの阻害要因が残っていることになる。このため、端末メーカーに「すべてのキャリア(携帯電話事業者)へ対応するよう義務付けるべきだ」といった強硬な意見も出ている。
ただ、すべてのキャリアへの対応を義務化してしまうと、端末の価格が跳ね上がるのは必至。これまで1社分で済んでいた周波数のテスト工程が4社分に膨れ上がるからだ。今後はキャリアアグリゲーションやデュアルコネクティビティーといった高速化技術で束ねる周波数の組み合わせも複雑になっていくため、テストの手間はさらに増える。すべてのキャリアで快適に使えることを担保するとなると、価格を上げざるを得なくなる。
ある携帯大手関係者はこう指摘する。「『iPhoneがすべてのキャリアに対応しているから他の端末メーカーも』という話になっているが、アップルだからこそ実現できている面がある。高価でも売れるようなブランド力がなく、販売台数の規模でも大きく劣るメーカーが単純にまねしても痛い目に遭うだけ。本音をいえば我々は義務化でも構わないが、日本の端末メーカーはますます苦しい立場に追い込まれることになる」。
今後はSIMロックが原則禁止となると、携帯各社は端末を独自に調達して販売する意義が薄れる。端末の販売収入は増えるかもしれないが、他社の回線と組み合わせて使われた場合は本丸の通信料収入を得られず、顧客の囲い込みにつながらないからだ。
にもかかわらず、ソフトバンクはここにきて独自端末の提供を増やしている。ドイツLeica Camera(ライカカメラ)が全面監修したスマホ「Leitz Phone 1」を2021年7月に発売したほか、新興家電メーカーのバルミューダが監修したスマホを11月以降に投入する予定だ。同社が9月14日に開いた説明会では質疑応答で独自端末の狙いを問われ、「端末と回線をセットで契約するユーザーがまだ多数いる。(提携先と)互いに深く技術などを交換しながら新しい試みを進められ、中長期的なメリットがある」(榛葉淳副社長)とした。
4.Wi-Fiでメッシュネットワークを簡単構築、「EasyMesh」とは(9.27 日経XTECH)
無線LANで「メッシュネットワーク」を構築するための標準規格。Wi-Fiアライアンスが策定した。複数のアクセスポイントが相互に接続することで電波を網目状に張り巡らし、広い範囲で安定した通信ができる。
Wi-Fiルーターから離れた場所では電波が届きづらく、通信が不安定になることがある。こうした問題を解決するための技術が「メッシュネットワーク」だ。
複数のアクセスポイントが相互につながって網目状(メッシュ)のネットワークを構成。これにより、親機となるWi-Fiルーターから離れた場所でも、安定した通信が可能となる。メッシュネットワークは、これまでWi-Fiルーターのメーカー各社が独自の方式を採用していた。そのため、利用できるのは同一メーカーの対応製品の組み合わせに限られていた。
そこで、Wi-Fiの普及を図る業界団体「Wi-Fiアライアンス」が、メッシュネットワークの標準規格として策定したのが「EasyMesh」だ。
EasyMeshでは、親機となる「コントローラ」や「エージェント」が、相互に接続して電波を張り巡らせる。パソコンなどの子機は、状況に応じて最適なエージェントもしくはコントローラに自動で接続し、最良の経路で通信する。
同じような機器に「中継機」があるが、同じ周波数帯で同時に送受信できない、2台以上の延長がしづらいといった弱点がある。メッシュネットワークでは、そうした中継機の弱点も解消されている。
5.単純なクラウド移行が「競争優位性の喪失」につながってしまう理由(10.1 ITmedia)
アクセンチュアが実施した企業のクラウド活用と事業継続への効果に関するグローバル調査によると、クラウドの価値を最大限に享受している企業には、複数の特徴があることが分かった。
アクセンチュアは2021年9月30日、世界25カ国16業界の経営幹部を対象にした企業のクラウド活用に関するグローバル調査の結果を発表。「これからのシステムの運用モデルとしてクラウドを活用し、マルチクラウド化によって継続的にビジネスの再創造を図っている企業は、コスト削減や効率化にとどまらず、新たなビジネス価値の創出に成功している」との見解を示した。
調査は、2020年後半から2021年前半にかけて、日本を含む25カ国の民間企業や公的機関の経営幹部約4000人を対象に実施。クラウドに関連するテクノロジーの導入や活用度合い、クラウド戦略や目標、クラウドに関するマネジメント手法、財務と運用パフォーマンスに関する指標、イノベーションやサステナビリティ(持続可能性)の成果に対するクラウドの貢献度合いなどに関するデータを収集、分析し、「Ever-ready for Every Opportunity:How to Unleash Competitiveness on the Cloud Continuum(あらゆる機会に力を備えるために:クラウドの継続活用で競争力を発揮する)」と題するレポートにまとめられた。
目先の利益を追うクラウド移行はなぜ「競争優位性の喪失」につながるのか
今後、企業が競争力を高めていくためには、AI(人工知能)や非接触技術、エッジコンピューティング、ロボティクス、AR(拡張現実)など、自社に必要となるテクノロジーを見極めた上で、それらを活用するためにクラウドの組み合わせを継続的に最適化し、新たな手法を取り入れながら事業を推進することが不可欠になる。
そのために企業は、クラウドを前提に事業運営を行う「クラウドファースト」戦略を採用することで、顧客体験の向上、ビジネスプロセスの高度化、サステナビリティにより配慮した製品開発を行うことが可能になる。
今回の調査レポートによると、クラウドを単発的なシステムの移行先や安価で効率的なデータセンターと見なしている企業では、もたらされる価値は限定的であることが分かった。
また、コスト削減を目的としてクラウドを活用している企業は、戦略的かつ柔軟にマルチクラウド化を推進している企業と比べ、競争優位性が劣ることも分かった。
アクセンチュアによると、パブリッククラウドやプライベートクラウド、エッジクラウドなどの各種クラウドサービスを活用している企業は多いが、それぞれのクラウドサービスの相互連携が取れているケースは多くないのが現状だという。
そのため、特定の部門でクラウド活用によるイノベーションの創出、データやベストプラクティスの活用といった試みを進めていても、全社的にそれらの恩恵を受けることができず、価値創出の妨げになっている。
一方、一部の企業は、クラウドをさまざまな運用形態に対応したテクノロジーの組み合わせと捉えた上で、クラウド活用を前提に5G(第5世代移動通信システム)やSDN(Software-Defined Networking:ソフトウェア定義型ネットワーク)を構築し、日々変化する事業ニーズに応える取り組みを進めるなど、「クラウドの価値」を最大限に引き出すことに成功している。
クラウド先進企業は、パブリッククラウドで得た知見や経験を自社のプライベートデータセンターやエッジデバイスにまで広げて活用し、業務変革を推進している。また、クラウドを継続的に利用することで大きな利益を生み出し、競合他社より優位に立っている他、未知のリスクに対する高い耐性も有しているという。
今回の調査結果では、クラウド先進企業は、コスト削減や効率化のために単発的にクラウドに移行している企業と比べて次のような特長があり、クラウド活用による「革新性」「コスト効率」「収益性」「社会的責任」の4つに注力していることが分かった。
また、今回の調査結果から、クラウド先進企業には、共通して取り組んでいる4つの主要なアプローチがあることが分かった。
1. 目標に向けて継続的にクラウドを活用
クラウド先進企業は、組織の全部門が同じ方向に進むために、自社のコアバリューや目標を明文化したビジョンを確立し、そのビジョンに沿って戦略を策定している。その上で、競争上の自社の強みと弱点を特定し、現状の能力と将来必要になる能力を正確に把握する。
2. テクノロジー活用の強化に向けて、クラウドを起点とした組織づくりを推進
3. 優れた体験の提供に向けてイノベーションを加速
クラウド先進企業は、顧客と従業員の優れた体験の創出に向けて優先的に投資している。これにより、例えば従業員はより高度な役割や新しい業務へのスキルアップ機会を得ることができ、顧客は店舗やオンラインショップを通じてパーソナライズされた購買体験を楽しむことができる。
4. 戦略に対するコミットメントを継続的に実践
クラウドの価値を最大化し、より高く、かつ実現可能な目標を達成するためには、クラウド機能の開発、拡張と高度化に全社を挙げて取り組む必要がある。そして、進化を続けるクラウドの可能性とそのベストプラクティスに関する情報を、企業全体で共有できる体制を構築することが重要となる。
そうしたクラウド戦略を進める上で必要なのは、経営幹部が、事業目標を定めて適切なリスクレベルを設定した上で、俊敏性と成長を重んじる組織文化を醸成していくことだ。「『実証実験』『イノベーション』『成長』によって定義される新たな企業文化はクラウドを中心に生まれる」ということを経営幹部が理解し、自信を持って取り組むことが大切だという。
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