週間情報通信ニュースインデックスno.1292 2021/09/04


1.AWSのネットワーク接続障害が約6時間後に復旧、ANAやドコモなどに影響(9.2 日経XTECH)
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)は2021年9月2日、6時間ほど続いたネットワーク接続の障害が復旧したと公表した。午後1時42分(日本時間、以下同)現在、サービスは正常に稼働しているという。

 AWSの運用状況を示すWebページの説明によると、午前7時30分から午後1時42分の約6時間にわたって、同社が「Direct Connect」と呼ぶ専用ネットワーク接続を利用した東京リージョンのAWSサービスへの通信でパケットロスが増加した。この通信の接続に使用する複数のコアネットワークデバイスの問題が要因という。

 この障害によって、AWSを利用する幅広い企業が影響を受けた。全日本空輸(ANA)は全国の空港にある有人カウンターの端末、Webサイトの国内線とツアー機能のそれぞれ一部が午前11時30分ごろから午後0時40分ごろまで利用できなくなり、8便に最大13分の遅れが生じた。日本航空(JAL)は航空機に搭載する貨物の重量バランスを計算するシステムをAWS上で運用しており、一時アクセスしづらくなった。「アクセスが完全に遮断されてはおらず、運航への影響はなかった」(JAL広報)としている。

 NTTドコモは同日午前9時ごろからdメニュー、dマーケットなどの一部サービスが利用しにくい状態が発生したが、午後1時42分に回復したと公表した。気象庁もWebサイトのリアルタイムコンテンツの更新に遅れが発生する場合があると公表していた。

2.中国の通信大手3社、5Gへの布石加速 産業のデジタル化推進(9.3 日経XTECH)
中国国有通信大手3社の中国電信(チャイナテレコム、China Telecom)、中国移動通信(チャイナモバイル、China Mobile)、中国聯合網絡通信(中国聯通、チャイナ・ユニコム、China Unicom)はこのほど、2021年6月中間決算を相次いで発表した。3社の合計売上高は8270億元(1元=約17円)で、業績が安定した上昇を見せた。中国経済・社会のデジタル化のデジタル化の加速に伴い、第5世代移動通信システム(5G)応用の潜在力喚起が加速しており、3社は人工知能(AI)、ブロックチェーン、モノのインターネット(IoT)などの新技術への布石を加速させている。

 5Gへの投資と建設は依然として通信大手の重点事業になっている。うち中国移動は今年、5G分野に1100億元を投資する計画で、上半期の実行ベース投資額は502億元だった。6月末までに50万1000カ所の5G基地局を開通し、全国の地級以上の都市の市街地、一部の県中心部、重点区域で5Gサービスを提供している。

 中国聯通と中国電信が進めるネットワークの共同構築・共有も新たな段階に突入している。2社が開通した5G基地局は6月末までに計46万カ所に上り、「一線都市」と呼ばれる北京、上海、広州(Guangzhou)、深?(Shenzhen)4都市の全カバーを実現した。4G・5Gネットワークの共同構築と共有により、2社は投資額を1000億元以上節約するとともに、鉄塔の使用料、電気料金、ネットワーク維持費などのコストのさらなる節約も可能になった。

 5Gの建設を推進するとともに、5Gの応用も新たな成長分野になりつつある。集計によると、大手3社の5G契約数は上半期に5億件に迫り、新たな応用も相次いだ。

3.国内データセンターが空前の新設ラッシュ、不動産投資会社まで乗り出す理由(9.3 日経XTECH)
日本のデータセンター(DC)業界は今、新設のラッシュを迎えている。東京エリアと大阪エリアを中心に、各所でDCの建設が進んでいる。

 米Equinixは2021年3月、東京エリアで12番目となる「TY12x」を千葉県印西市に開設した。段階的な拡張を計画しており、最終的には約1万7300m2のコロケーションスペースと最大54MWのIT電力(IT機器への供給電力)を提供する予定だ。

 EquinixのようなDC専業以外にも、KDDIやNTTコミュニケーションズ、英Colt GroupのColt Data Centre Servicesなど、通信系の事業者なども次々とDCを新設している。

 調査会社のIDC Japanによると、ITベンダーやIT サービス事業者、通信事業者、クラウドサービス事業者などが国内に所有または賃借しているDCの建物の延べ床面積の合計は2020 年末時点で245万7600m2だったが、2025年には約1.4倍の339万8000m2に増加する見通しだ。 東京ドーム(4万6755m2)20個の面積に相当するDCが新設されることになる。

 日本のDC市場はもともと、EquinixやColt Groupを除くと国内の事業者が中心だったが、近年ではオーストラリアのAirTrunkや米Digital Realty Trustといった海外勢の新規参入が相次いでいる。

4.ドコモが9月8日にeSIMの提供を開始、大手3社の対応方針が出そろう(9.1 日経XTECH)
NTTドコモは2021年9月1日、SIMカードを差し替えずにオンラインで携帯電話サービスを変更できる「eSIM」の提供を9月8日に始めると発表した。「ドコモオンラインショップ」やオンライン専用ブランド「ahamo(アハモ)」のサイトでeSIMの契約を申し込むと、最短1時間程度でサービスを利用可能になるという。

 端末を変えずに契約先の携帯電話会社を切り替える場合、これまでは電話番号など加入者情報(プロファイル)が書き込まれたSIMカードを差し替える必要があった。大手携帯電話会社では一般に、この作業を携帯ショップで実施している。こうした窓口を持たないMVNO(仮想移動体通信事業者)の場合、利用者の申し込み後にSIMカードを契約者に送付する手間やコストがかかっていた。

 一方のeSIMはネット経由で端末のプロファイルを書き換えるので、わざわざ携帯ショップに赴いたり、SIMカードが郵送で届くのを待ったりせずに済む。これにより回線切り替えのハードルが下がり新たな利用者を獲得しやすくなるとして、新興携帯電話会社の楽天モバイルや一部のMVNOが先んじて導入。政府も競争促進につながるとみて携帯大手にeSIMの導入を促してきた。

 加えて近年は米Apple(アップル)の「iPhone」や米Google(グーグル)の「Pixel」などeSIM搭載スマホの品ぞろえが拡大した。アップルの「iPad」、米Microsoft(マイクロソフト)の「Surface」などタブレットの対応も進んだ。

 こうした背景から携帯大手はeSIM対応を段階的に進めてきた。例えばソフトバンクは「ワイモバイル」とオンライン専用ブランドの「LINEMO(ラインモ)」で2021年3月から、「ソフトバンク」ブランドで7月からeSIMで契約できるようにした。KDDI(au)も2021年3月から「povo(ポヴォ)」、8月から「au」ブランドでのeSIM対応を始めた。「UQモバイル」ブランドでも9月中をめどに対応を始める方針だ。ドコモの今回の発表で大手3社の対応方針が出そろったことになる。

5.期待通りにコスト削減できないのはなぜか、名物CIOが語るクラウド活用の要諦(9.3 日経XTECH)
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための有力な手段として、クラウドサービスを導入する企業が着実に増えている。システムコストを抑制したり、システム導入速度を高めたりする手段としてクラウドへの期待は大きいものの、想定ほど成果を上げていないケースもある。

 クラウド活用で成果を上げるための注意点とは――。日清食品ホールディングス・執行役員CIO(最高情報責任者)を2021年3月末まで務め、同社のDXをけん引してきた喜多羅滋夫氏は、このテーマにどう取り組んでいたのか。

 日清食品時代にAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなど複数のクラウドサービスの導入・活用を指揮してきた喜多羅氏は、「クラウドの領域でもITベンダーに丸投げするのは得策ではない」と警鐘を鳴らす。では、どうすべきか。その要諦を押さえよう。

クラウドは経営サイドから見て魅力的なサービスである
信頼性は着実に向上、基幹系でも利用可能に
ITベンダー丸投げでは、クラウドを活用してもコスト削減は難しい
クラウドを使いこなすためには、社内にクラウド技術者を採用・育成すべき
外注と内製化の領域を整理し、少しずつ内製化できる範囲を広げよう


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