週間情報通信ニュースインデックスno.1288 2021/08/07


1.楽天が通信網の「完全仮想化」技術をドイツに輸出、目指すはAWSで稼ぐアマゾン(8.5 日経XTECH)
「うまくアイデアが機能している」。楽天グループが2021年8月5日朝にオンライン開催した事業説明会。三木谷浩史会長兼社長がこう語ったのは、自社で開発した「完全仮想化」と呼ぶ通信技術の輸出戦略についてだ。

 同社は前日の8月4日夜、ドイツで4番目の携帯電話会社として名乗りを挙げている通信会社の1&1と、モバイルネットワークの整備で長期的に提携すると発表した。1&1が整備する5G(第5世代移動通信システム)などのネットワーク設計から保守まで包括支援するという。

 この提携のポイントは、楽天グループが世界に掲げる「RCP(Rakuten Communications Platform)」を1&1が包括的に採用する点だ。RCPとは、楽天が日本の携帯電話サービス向けに導入した携帯電話ネットワークの仮想化技術や機能を、海外の通信事業者に外販していく枠組みのこと。汎用サーバー上に実装可能な基地局やコアネットワークのソフトウエア、運用管理用のシステムなどをパッケージにして提供するものだ。

 巨大な装置産業である携帯電話事業は、大規模な設備投資をどれだけ継続できるかがものをいう。特に設備投資の7〜8割を占めるとされる基地局のコストをいかに抑えるかが重要なカギを握っている。世界の携帯会社は中国の華為技術(ファーウェイ)やフィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンの製品を使うのが一般的で、この3社で世界シェアの8割近くを占める。各社は基地局設備を高価な専用機器として販売しており、抜本的にコストを抑えるのが難しい市場構造になっていた。

 RCPの場合、コアネットワークだけでなく基地局まで「完全仮想化」して、サーバーとソフトを分離させた構造になっている。「サーバーには一般のデータセンターにあるような汎用品を使えるので安価に調達でき、システムの拡張も比較的容易」「調達先の選択肢が広がるというメリットも」「日本では従来方式でネットワークを構築した場合に比べて設備投資で4割、運用では3割のコストを削減できている」――。そんなアピールをしながら、楽天グループは世界各地の通信会社にRCPの採用を働きかけてきた。

 こうした取り組みは徐々に実を結びつつある。例えば、2020年9月にスペインの大手通信事業者のテレフォニカと、2020年10月にサウジアラビアの大手通信事業者Saudi Telecom Company (stc)とモバイルネットワーク技術の連携を進める覚書を締結。そして今回は一段と踏み込み、実際にRCPを全面的に採用したモバイルネットワークを作ることになったわけだ。

2.100円ショップで手に入る、テレワークを助けるお役立ち製品(8.5 日経XTECH)
ステイホームが常態化し、テレワークや巣ごもりに適したデジタルグッズの進化が止まらない。外の音も聞こえる骨伝導式ヘッドホン、さまざまな定型的な操作を登録できるキーボードなど、新しいニーズを捉えた注目製品を厳選して紹介する。

 SDカードとmicroSDカードの読み書きができるUSB接続のメモリーカードリーダー。両端がType-A端子とMicro-B端子になっている。USB On-The-Goにも対応。Type-A端子を使えばパソコンから、Micro-B端子を使えばスマートフォンやタブレットからメモリーカードの読み書きができる。なお、カードスロットは排他利用となっており、メモリーカードを2枚同時に挿すと、両方とも認識されない。

黒いゴム製の半球型のスタンド。断面の部分にある凹凸を合わせるとボール状になり、持ち歩きにも便利だ。材質はゴム足などに使われている黒いゴムで、パソコンを滑らずしっかり支えられる。

マウスパッドの表面のシートが透明になっており、めくり上げてメモや写真を挟んでおける。透明シートはそこそこの固さがあるが厚みのある名刺などを入れるとマウスを動かしづらくなるので注意が必要だ。

 液体タイプのガラスコーティング剤。薄く塗り広げて乾かせば、フィルム状の保護膜ができる。専用の不織布が入っており、均一に塗り広げられるのでスマートフォンの画面でもきれいにコーティングできる。古くなったスマートフォンは専用の保護フィルムが入手できなくなる場合があるので、重宝しそうだ。スマートウオッチのガラス面の保護にもよいだろう。さほど耐久性はないので、時々剥がして塗り直すとよい。

 メールの着信を確認したり、社内ネットワーク接続の認証をしたりと、自宅でも仕事にスマートフォンを使う機会は意外に多い。いつでも素早く確認するにはこうしたスタンドがあると便利だ。このスタンドは税込み220円と100円ショップの商品としては高額だ。しかし、フレキシブルアームやクリップも備え、220円でも十分に格安と言える。アームにはややしなりがあるので、あまり伸ばさずに使う方が安定するだろう。

3.中小企業の8割が「ファクスで受発注」の現実、DX時代に日本の競争力が失われる(8.5 日経XTECH)
日本の中小企業の7〜8割は受発注をファクスでやり取りしている――。

 経済産業省が帝国データバンクに委託した「経営診断ツールの認知・活用状況及び、決済・資金調達の実態に関する調査」の調査報告書(2019年2月公開)を基にした数字だが、これをどう思われただろうか。「ファクスは便利だから、さもありなん」だろうか。もしそうだとしたら、「会社全体の業務プロセスを考える」という視点からは残念な感想である。

 ファクスは確かに便利な道具である。電話だけでやり取りすることに比べれば、証跡も残るし、より間違いのない受発注処理ができる。しかしながら、ファクスは紙に記して情報を送り、紙の形で受け取る仕組みだから、送信して受け取ったらそこで終わりだ。システム的に次のアクションにつながることはない。

 例えば、部品製造会社が販売管理システムを導入して受発注を管理しようとしても、注文をファクスで受けると、販売管理システムにファクスを見ながら手作業で入力する必要がある。部品を納品する際も、発注元に納品データを受け取る仕組みがなければ、納品伝票はファクスで送るか、納品物に同封することになるだろう。発注元の社内でも同様に手作業が発生する。以降、請求処理に至るまでファクスまたは郵送でのやり取りが続く。

 このように日本の中小企業の8割は毎日、何十枚、何百枚のファクスをやり取りしたり、伝票や請求書を郵送したりしながら、受発注から請求に至るまでを処理しているのだ。

 その結果、月締めの会計処理の際には、1カ月分のファクスや紙の書類をひっくり返しながら入金を確認し、売掛金の消し込み作業を行っている。その作業はとても非効率で、時間ばかりかかる生産性の低い仕事であることは容易に想像がつくだろう。2017年3月の中小企業庁の調査では、4割の中小企業が売掛金の入金確認作業に10時間以上を費やしているとされる。

 このような話をすると、「どうして受発注データをメールに添付して送らないのか」と聞かれることが多い。メールでやり取りすれば、紙を介在するファクスの煩わしさはなくなるのではないかという趣旨である。冒頭で紹介した調査でも、メールを利用している割合は多い。

 しかし会社全体の業務プロセスという観点では、メールもファクスと大同小異だ。メールに添付して発注データを送っても、受け取った側はデータをそのまま販売管理システムに連動させることはできない。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのツールを使って、それなりの仕組みをつくらない限り、メールでは途切れのない円滑な業務プロセスを構築することはできないのだ。

 このコラムで何度か書いてきた通り、部分的な電子化と全体最適の業務プロセス構築の間には大きなギャップがある。部分的な電子化を積み上げたところで、全体最適の業務プロセスはできない。全体最適の業務プロセスをつくるためには、個々の担当者の仕事の仕方に捉われることなく、全社視点で仕事の流れを整理し直す必要がある。これが経営力を高める業務プロセスを構築するということだ。経営者はぜひとも、部分的な電子化ではなく、全体最適のビジネスプロセス構築を目指してほしい。

 会社間の受発注情報を電子的にやり取りする仕組みは、EDI(電子データ交換)と呼ぶ。その歴史は古く、1980年代に流通業界を嚆矢(こうし)として産業界ごとに取り組みが始まった。2000年代の前半には流通業界のEDIとか、自動車産業のサプライチェーンごとのEDIが出来上がっていた。ただし大企業を中心とする産業別EDIには、コストの観点から中小企業の大半は取り込まれていない。

 大企業の経営者に「中小企業の8割は受発注にファクスを使う」という話をしてもピンとこないのは、ご自分の目の届く取引範囲では古くからEDIが構築されていたからだろう。 しかし大企業であっても、中小企業や小規模事業者との取引はある。両者の間には、厳然としてファクスのやり取りが存在する。大企業にとっては部分的な仕事なので、経営者の目に届くことは少ないが、中にはファクスの集中処理センターをつくっている大企業もある。

 いずれにしても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代に、中小企業の8割が受発注をファクスで行っているという実態は、わが国全体の競争力を考えた場合、由々しきことだ。

 日本の経済界においても、大企業から小規模事業者に至るまでが商流と金流の出発点である受発注業務を協力し合って電子化していく。そのことがわが国のDXの大事な基盤をつくることになると思うのだが、いかがだろうか。

4.Windows 365 Cloud PCに寄せる期待、個人向けDaaSが欲しい(8.3 日経XTECH)
米Microsoft(マイクロソフト)は2021年7月14日、Windows OSの仮想デスクトップ環境をクラウドで提供する「Windows 365 Cloud PC」を同年8月2日から開始すると発表した。データセンターのサーバー上に構築した仮想マシンでデスクトップ環境を稼働させ、利用者のクライアント端末に画面情報を送信する「DaaS(Desktop as a Service)」と呼ばれるサービスだ。米Amazon Web Services(AWS)なども同様のサービスを提供しているが、デスクトップOSの市場で圧倒的なシェアを持つマイクロソフトが本腰を入れるとあって大きな注目を集めている。

 今回の発表で残念だったのが、個人向けのメニューがなかったことだ。基本的には企業による利用を前提にしたもので、「Business」と「Enterprise」という2種類のプランが明らかになっている。オフィスソフトの「Microsoft 365 Personal」のような個人向けのプランは発表されていないので、現時点ではプライベートで気軽に使えるサービスではなさそうだ。

 DaaSの基本的なコンセプトは、「クライアント端末での処理を最小限に抑え、ほとんどの処理をサーバー側で実行する」というシンクライアントの構成だ。こうした構成自体は決して目新しいものではなく、PCが登場する以前のホストコンピューターの時代から存在する。

 シンクライアントのブームはその後も浮き沈みを繰り返した。最近はクラウドの普及を受けて再燃している。特に現在のブームを後押ししているのが、新型コロナウイルスの影響によるテレワークの増加だ。情報漏洩の対策がしやすいリモートワークの手段としてDaaSの利用が急速に広がっている。米ガートナーの調べでは、2019年に6億1600万ドルだったDaaSの市場規模は2022年には約4倍の25億3500万ドルに拡大する見通しだ。

 ただし、AWSが提供している「Amazon WorkSpaces」などの既存サービスは企業向けで、個人では手が出しづらい。価格も以前に比べて安くなったとはいえ、個人利用でストレスなく使えるスペックのデスクトップ環境が利用できるサービスはまだまだ高額だ。

5.Xiaomi、6月の世界スマートフォン出荷で初首位に(8.6 ITmedia)
香港に拠点を置く調査会社Counterpoint Reserachは8月5日(現地時間)、6月1カ月間の世界のスマートフォン市場調査で、中国Xiaomiが販売台数で初めて首位に立ったと発表した。

 5月は韓国Samsung Electronicsが首位、米Appleが2位だった。Xiaomiは6月にこの2社を抜いた。

 Counterpoint Researchの調査では、Xiaomiは2021年第2四半期(4〜6月)の売り上げでは世界2位(1位はSamsung)。2011年の創業以来、累計8億台近いスマートフォンを販売してきた。

 Xiaomiは6月、コロナ禍のパンデミックから回復途上にあった中国、欧州、インドなどで販売を伸ばした。また、Samsungは同月、製造拠点の1つであるベトナムでのパンデミックで製品不足に直面していたこともXiaomiにとっての追い風になったとCounterpoint Researchは分析した。

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