週間情報通信ニュースインデックスno.1285 2021/07/17


1.ITUの目指す5G、「実現にはもう2GHzほど必要」 GSMA報告(7.16 日経XTECH)
移動通信関連の業界団体GSMA(GSM Association)は2021年7月8日、ITU(International Telecommunication Union、国際電気通信連合)が求める高速データ通信実現に向けては、今後10年で中周波数帯における平均2GHzの周波数(帯域幅)を確保する必要があるとするリポート「Vision 2030 Insights for Mid-band Spectrum Needs」を発表した。世界36都市での調査結果として、この2GHzの確保により、環境への影響を最小限にしながら、5G消費者の費用負担も削減できるとしている。

 今回の調査では、一般消費者や企業に下り速度100Mビット/秒、上り速度50Mビット/秒のデータ通信を提供するというITUの目標を実現するには、事業者が2030年までに、3.5GHz帯、4.8GHz帯、6GHz帯などの免許を得る必要があるとしている。この周波数の追加がなければ、5Gの可能性を完全に引き出すことは難しく、それを補完するためにアンテナ数や基地局を増やせば、炭素排出量や顧客の費用負担が増加する。周波数を追加できれば、炭素排出量を2〜3倍削減でき、移動通信の持続可能な発展が望めるとしている。

2.企業も行政機関も「アジャイル開発」、契約で見過ごせない3つのポイント(7.16 日経XTECH)
 DX(デジタルトランスフォーメーション)を追い風に、企業も政府も新しい事業やサービスを提供するためアジャイル開発に注目している。ただアジャイル開発はそれだけで効果を得られる「魔法のつえ」ではない。専門家への取材を基に、企業や行政機関が外部ベンダーに委託してアジャイル開発を進めるとき、契約において重要となる3つのポイントを紹介する。

第1のポイント:定量的で具体的な目的を書く
 最も重要なポイントは「契約の目的」である。「将来の新しい業務でどんなメリットを得たいのか、定量的で具体的な目的を契約に書き込む必要がある」。システム開発を巡るユーザー企業と開発ベンダーの紛争に詳しいITコンサルタントで、政府CIO補佐官も務める細川義洋氏はこう強調する。

 細川氏は「アジャイル開発では、目的の達成に必要な機能が途中で変わってもよい」と続ける。例えば、EC(電子商取引)サイトを開設している企業が1年後に高齢者からの売上高を2倍に増やす目標を立てた場合、1年後に実現したい業務の姿が開発契約の「目的」となる。

 目的を達成するため、例えば3カ月後に最低限の機能として、文字のサイズを大きくした高齢者向けのページを希望したとしよう。その後、高齢者にインタビューすると紙の注文書をファクスで送るほうが、ハードルが低いと分かった。この場合、高齢者向けページは不要となり、新たにファクス経由の注文機能が必要な機能に取って代わるわけだ。

 機能は目的を実現するための手段でしかない。1年後などの業務の姿を描き、それを目的として明確に定めて契約に書いておくと、さしたる成果物もないままアジャイル開発が続いても契約違反にならないといった事態を回避できる効果もあるという。

 IT契約において目的が重要なのは、アジャイル開発に限った話ではない。ウオーターフォール型開発でも同様に重要だ。

3.セールスフォースとAWSが協業、コンタクトセンター向けサービスで新機能(7.15 日経XTECH)
セールスフォース・ドットコム(東京・千代田)は2021年7月15日、コンタクトセンター向けの新サービス「Service Cloud Voice」の提供を始めた。カスタマーサービス向けクラウド「Service Cloud」のオプションサービスとして提供する。価格は利用者1人あたり月額6000円(税別)から。

 Service Cloud VoiceはAmazon Web Services(AWS)のコンタクトセンターサービスである「Amazon Connect」とセールスフォースのService Cloudを統合したパッケージだ。セールスフォースの米国本社である米Salesforce.comは、AWSの提供元である米Amazon Web Servicesと2016年に連携を発表している。以来、戦略面での提携や技術動向の情報交換を行ってきたが、具体的なサービスでの協業は今回が初めて。

 セールスフォースの湯浅雅達執行役員ソリューション営業本部本部長は「Amazon.co.jpで本を買うのと同じくらい簡単に、コンタクトセンターにおける顧客管理やCTI(コンピューター・テレフォニー・インテグレーション)、音声認識、AI(人工知能)を活用できる状態の実現を目指してこのビジネスを推進する」と意気込みを語った。

 同社はService Cloud Voiceの特徴として、「音声と非音声のチャネル統合」、「AIによるエージェント支援」などを挙げた。「AIによるエージェント支援」では音声認識技術を活用し、会話内容をリアルタイムでテキスト化する。テキスト化された内容とService Cloud内の顧客情報を組み合わせ、AIがコールセンターのエージェント(オペレーター)に対して顧客への回答内容を推薦する。

4.NTTドコモ、法人5Gビジネスを早期に数十億円規模に エリアが鍵(7.15 日経XTECH)
NTTドコモは2021年7月15日、5G(第5世代移動通信システム)を活用した法人ソリューションビジネスを早期に数十億円規模に拡大する考えを明らかにした。5Gを活用したソリューションを企業が体験できる場を21年度内に全国50拠点に設置するなどしてビジネス拡大を急ぐ。携帯電話各社は政府による値下げ圧力によって、主力の一般消費者向けビジネスが曲がり角を迎えている。次なる成長分野の一つとして、法人分野の競争が激しくなってきた。

 NTTドコモは20年3月の5G商用化以降、全国で約300件の法人や自治体向けに5Gを活用したサービスや実証を手掛けてきた。そんな5Gを活用した法人向け商用案件のうち、映像伝送が35%、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などのXRが28%と、映像関連のニーズが高いことが分かったという。

 そこでNTTドコモは、リュックに背負えるサイズの4K映像・中継ソリューション「LiveU」や、自由視点映像配信ソリューション「SwipeVideo」など、5Gを活用した法人向け映像ソリューションを続々と増やしている。

 XR分野では、遠隔作業支援のニーズが約7割と非常に高く、さらにデバイスの軽量化へ要望も高いことからサービスを拡充する。具体的には、米Google(グーグル)のグラス型ウエアラブルデバイス「Glass Enterprise Edition 2」を21年8月10日から発売する。Glass Enterprise Edition 2は、重さが約46gと軽量である点が特徴だ。

 NTTドコモの坪内氏は、5Gに特化した法人ソリューションビジネスの現況について非開示としたものの「20年度の法人ソリューションビジネス全体の収益は1000億円を超えた。まだ5Gの割合は少ないものの今後、5Gのエリア拡大とともに急速に広がると考えている」と語った。

5.3GPP、5G-Advancedの標準化に着手 RANグループが項目検討開始(7.13 日経XTECH)
移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)は2021年7月6日、リリース18の無線アクセスネットワークに関する初のワークショップを開催したと発表した。500社以上のパートナー企業や団体が集まり、eMBB(enhanced mobile broadband、高速大容量通信)関連案件、eMBB以外の案件、これら両方に関連する案件の3分野に分けて、5G-Advancedの標準化に向けた項目検討を開始した。

 リリース18は、2021年12月の全体会合にて検討項目の優先順位を決定し、その後2022年3月を目標にRAN4ワーキンググループにて、無線性能やプロトコルに関する項目承認を行う。RANグループでは、リリースに向けた活動期間を暫定的に1年半としているが、これも、オンラインで実施する第93回RANグループ全体会合の結果を受けて、2021年9月に最終決定する予定である。

 今回のワークショップでは5G-Advancedへの進化に向けた協議を行っている。RANグループ議長のWanshi Chen氏によると、モバイルブロードバンドの進化とさまざまな業界への5G展開、短期的なニーズと中長期的なニーズ、デバイスの進化とネットワークの進化など、全体的にバランスのとれた内容になっているという。

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