週間情報通信ニュースインデックスno.1284 2021/07/10


1.5G SAを使った113km長距離データ通信に成功、エリクソンが豪州で( 7.9日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年6月28日、オーストラリアTelstra(テルストラ)と連携した豪ビクトリア州ギプスランドでの5G SA(Standalone)データ通信試験にて、Telstra商用基地局から113km離れた地点との長距離データ通信に成功したと発表した。

 Telstraの850MHz帯とEricssonの商用無線装置Radio 221、最新商用5G SAネットワーク用ソフトウエアを使って、商用スマートフォン上で行われた。

 両社はこの実験結果を基に、オーストラリアの農村地域の接続性、利便性をさらに向上し、遠隔教育や遠隔医療などに活用していきたいとしている。

 このほか2021年6月30日には、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)と韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の協力を得て、世界初とするエンドツーエンドの5G環境におけるネットワークスライシング試験の様子も公表している。

 ドイツテレコムのBonn(ボン)研究所にて、Ericssonの5G基幹ネットワーク、5G無線アクセスネットワーク、スライスオーケストレーション、オーダリングオートメーションから成る商用レベル5G SAインフラを使って行われた。

 モバイルブロードバンド用とクラウドVRゲーム用に最適化された、2つの独立したネットワークスライスを用意。これにSamsungのGalaxy S21スマートフォンとVRヘッドセットを接続し、ゲーム用スライス側でも、高いスループットと安定した低遅延通信、優れた体験を確認できたとしている。

 この環境では、単一の物理ネットワークインフラ上に複数の仮想ネットワークを作成し、各スライスにて、顧客要求に応じて異なるサービス特性とサービス品質を提供。それぞれの品質を犠牲にすることなく、差別化された新しいサービスやビジネスモデルを開発できるとしている。

2.ファーウェイ排除で躍進のサムスン5G基地局、Open RANで加速( 7.9 日経XTECH)
 サムスン電子で目立ったのが、5G(第5世代移動通信システム)基地局などネットワーク分野だ。サムスン電子のネットワーク事業部はMWC直前の21年6月22日、単独オンラインイベントを開催した。「Samsung Networks : Redefined」をテーマに、基地局用の次世代チップ3種と次世代高性能基地局、5G仮想化基地局(vRAN)ソリューション、6Gに向けた投資状況などを発表した。

 ネットワーク事業部社長(President, Head of Samsung Networks)のチョン・キョンフン氏は、「世界市場で400万台を超える5G基地局を供給した。強力な仮想化技術と20年以上独自にチップを設計した経験で速いスピードで成長している」「全てのモノと人をつなぐ超連結時代の加速化をリードする」と強調した。

 サムスン電子のネットワーク事業は、世界の通信事業者から5G基地局を立て続けに受注するなど絶好調だ。18年には韓国のSK TelecomとKT、LG U+という3社、米国のSprint(スプリント、現T-Mobile US)とAT&T、19年にはカナダVideotron(ビデオトロン)と日本のKDDI、20年には米国のU.S.CellularとVerizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)、カナダのTERUS(テラス)、ニュージーランドのSpark New Zealand、21年にはカナダのSaskTel(サスクテル)、日本のNTTドコモ、そして英Vodafone(ボーダフォン)といった具合である。

 サムスン電子の仮想化基地局(vRAN)ソリューションは、汎用(はんよう)サーバー上でソフトウエアによる基地局機能を実現しながらも、ハードウエアベースの基地局とほぼ同じ性能を提供できるとしている。コンテナベースのアーキテクチャーを使用するため、ネットワークの効率的な管理と柔軟な展開を可能にするという。



3.アップルが日韓に5Gミリ波機種を投入か、注目はiPhone 13の動向( 7.7 日経XTECH)
みずほ証券は5G(第5世代移動通信システム)スマートフォンの出荷数量予想を2021年6月下旬に見直した。スマホの5G比率は2020年の19%から、2021年は41%(従来予想は40%)、2022年は56%(同55%)、2023年は65%になると予想する。5G端末普及の急拡大が続き、2022年には過半が5G端末になりそうだ。

 5Gの周波数帯には「サブ6」(6GHz未満の周波数帯)と「ミリ波」があるが、依然としてサブ6主体の成長が続くだろう。ただし、5Gミリ波機種を米国で展開する米Apple(アップル)が、2021年秋に発売すると予想される「iPhone 13」の動向に注目する必要がある。

 iPhone 13の2021年の生産台数は8900万台になると予想する(アップルの計画は約8500万台と想定)。そのうちの過半が、ミリ波機種で必要な「AiP(アンテナ・イン・パッケージ)」搭載品とみられ、ミリ波機種が米国以外(日本と韓国、もしかしたら一部欧州)にも展開される可能性がある。価格設定とともに、通信事業者がミリ波展開を積極化するかどうかを注目したい。

 スマホ出荷台数は2021年に13億6000万台(前年比5%増)、2022年は14億5500万台(同7%増)になると予想する。スマホの買い替え期間は3〜4年と短いため、新型コロナウイルス感染症が徐々に収束方向に向かう前提で、2022年以降は新興国を中心にペントアップ需要(繰越需要)がけん引するとみる。

 既に5G比率が75%を超える中国市場では、5Gが端末買い替え促進の役割を果たしているとは言い難く、消費者に対する5Gの訴求力向上には人口カバー率の上昇やサービス拡充、ゲームや動画、AR(拡張現実)関連などアプリの充実が必要とみる。

4.総務省調査では楽天が圧勝しドコモも善戦、不思議なahamo人気は本物か( 7.7 日経XTECH)
2020年12月に勃発した携帯電話の料金競争。携帯大手だけでなく、格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)まで巻き込んだ激しい争いとなる中、現時点で好調に映るのは楽天モバイルとNTTドコモだ。

 総務省が2021年6月に実施した利用者意識調査によると、新料金プランに「すでに乗り換えた」との回答は9.5%。移行先で最も多かったのは、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VI」で32.9%だった。以下、ドコモの「ahamo」が20.7%、ワイモバイルの「シンプルS、M、L」が13.0%、UQモバイルの「くりこしプランS、M、L」が12.3%、KDDIの「povo」が11.7%と続いた。

 さらに「今後乗り換えたい」「乗り換えるつもりだが検討中」とした回答者(27.5%)に移行先を聞くと、最も多かったのがドコモのahamoで29.7%。以下、楽天モバイルのRakuten UN-LIMIT VIが22.5%、KDDIのpovoが13.4%、ソフトバンクのLINEMOが10.4%といった順番だった。他のユーザー調査でも楽天モバイルとahamoの人気ぶりが目立つ。

 片やMVNOの立場で現在の状況を見ると、本来は獲得できていたかもしれない需要がUQモバイルやワイモバイルといったサブブランド、ahamoに代表されるオンライン専用プランに続々と流れてしまっている感がある。大手3社のつばぜり合いが激しくなるほど、MVNOは苦しい立場に追い込まれそうな気がしてならない。

5.東大中尾研とNEC系がソフトウエア基地局、ローカル5G向けに格安( 7.5 日経XTECH)
東京大学大学院工学系研究科の中尾彰宏教授と東京大学発ベンチャーであるFLARE Wireless、NECネッツエスアイは2021年7月から、ローカル5Gの実証利用を念頭に、企業や自治体向けに格安なソフトウエア基地局の提供を始める。中尾研究室が開発してきたソフトウエアベースの無線基地局装置を活用し、共同で事業展開する。格安なソフトウエア基地局を企業や自治体に提供することで、ローカル5Gの普及加速につなげる。

 提供するソフトウエア基地局「FW-L5G-1」は、一般的なサーバー上で動作する。20年12月に拡張されたローカル5G向けの4.7G?4.9GHzの周波数帯に対応する。価格は「基地局や置局設計、運用支援などすべて含めて2000万円程度。今後、どんどん安くしていきたい」(中尾氏)という。現状、数億円から数千万円かかるといわれるローカル5Gの導入と比較すると割安感がある。

 割安に加えてもう一つ特徴とするのが、「準同期TDD」と呼ばれる新たな5Gの運用にいち早く対応している点である。

 4.7GHz帯や28GHz帯などを使う5G通信は、TDD(時分割複信)と呼ばれる方式で、下り方向と上り方向のデータを時間軸上で瞬時に切り替えて送受信している。携帯電話事業者は下りと上りの比率を7:2などで運用しており、隣接する周波数帯を利用するローカル5Gも、干渉を抑えるために携帯電話事業者と同じ比率で運用する必要がある。

 一般消費者のニーズに対応するため、携帯電話事業者は下り方向の通信に多くのリソースを割り当てている。一方のローカル5Gは、撮影したカメラ映像の送信など、上り方向の通信により多くのリソースを割り当てたいケースが多く想定される。そのため総務省は20年12月、ローカル5Gにおいて、携帯電話事業者のTDDパターンと同期しつつ、一部の下りスロットを上りスロットに変更して運用できるようにした。これが準同期TDDである。

 提供を始めるソフトウエア基地局はこの準同期TDDにいち早く対応。下りと上りの比率を7:2のほか、4:4や3:5、2:6などに切り替えて柔軟に運用できる。下り上り比率を2:6で運用した場合、通常の運用よりも高速な上り通信のローカル5Gを実現できる。「ソフトウエアベースの基地局であるため、迅速に機能を追加できた」と中尾氏は話す。

 NECネッツエスアイは置局設計や施工、免許申請の支援などを担当する。中尾研究室とNECネッツエスアイは今後、共同出資会社の設立も計画し、事業を本格的に展開していく考えだ。



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