週間情報通信ニュースインデックスno.1283 2021/07/03


1.NEC社長「5G時代にオープン化は必須」、大手寡占へ対抗(7.2 日経XTECH)
「第5世代移動通信システム(5G)の長期的な成長にオープンアーキテクチャーが欠かせない」――。NECは2021年6月30日、スペインのバルセロナで開催した世界最大級のモバイル展示会「MWC Barcelona 2021」(以下、MWC)に合わせて自社イベントを開催し、同社代表取締役執行役員社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏がこう力を込めた。

 森田氏が繰り返し訴えたのは、5Gにおける「Open RAN」の重要性だ。オープン仕様に基づいてさまざまなベンダーの基地局を自由に組み合わせられる新しいネットワークを構築していくことで、「新たなプレーヤーがエコシステムに参加し、イノベーションをけん引する可能性がある。クローズドなエコシステムでは、そのようなことが起こりにくい」(同氏)とする。ネットワークのオープン化によって、大手企業が寡占する世界にない新たな価値が生まれると強調した。NECはMWCの前後に、欧州の大手通信事業者である英Vodafone Group(ボーダフォン)とドイツDeutsche Telekom(ドイツテレコム)に対し、Open RANに対応した5G基地局装置を提供することを発表している。

 NECの5Gビジネスの強みとして森田氏は、ミッションクリティカルなシステムを提供している点や、オープンアーキテクチャーを基盤にした5Gソリューションの知見があること、システムの構築を一手に引き受けられることなどを挙げた。加えて子会社で、ネットワークの運用支援システム(OSS)やビジネス支援システム(BSS)などを手掛ける米Netcracker Technology(ネットクラッカーテクノロジー)の技術を利用し、5Gネットワークの運用を自動化していくという。

 NECは2030年に向けて、人に寄り添う「暮らし」や時空間や世代を超えて共感を生む「社会」、カーボンニュートラルを含めた活動で地球との共生を狙う「環境」といったキーワードを示す。こうした未来を築く上で「5Gとオープンアーキテクチャーは重要な基盤の一部になるだろう」(同氏)とした。

2.サムスン、ネットワーク仮想化と5Gチップセットの最新戦略を発表(7.1 日経XTECH)
韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年6月22日、オンラインイベント「Samsung Networks: Redefined」を開催し、同社の5Gと次世代ネットワークに関するビジョンを発表した。次世代ネットワーク推進は仮想化に焦点を当てる。5Gでは自社の最新チップセットを使ってさらに革新的な製品展開を進めるとしている。

 無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、RAN)から基幹ネットワークに至るネットワーク全体を仮想化することで、ソフトウエアのみでのアップデートが可能になるなど、その拡張性、柔軟性が著しく向上し、ネットワーク管理が効率化する。Samsungでは、下記のようなソリューションを用意し、ネットワーク仮想化を推進している。

Samsung vRAN:ベースバンドユニットのすべての要素を仮想化し、世界初とする商用5G RANの完全仮想化を実現。この技術を採用したMassive MIMO対応無線装置にて、マルチギガビット/秒の高速通信が可能であることも確認している。

Samsung vCore:クラウドベースのコンテナ化されたアーキテクチャーを用いることで、最適なパフォーマンスを確保しながら、運用自動化も可能にする。世界初とする5G NSA(Non-Standalone)vCoreの商用化もこの技術を使って実現。今後はその高い順応性と拡張性を生かして、ビジネス向け新サービスの提供や機能アップグレードを迅速に行っていく。

 Samsungでは、スマートファクトリーや4K動画を使った施設監視システムなどに向けたプライベート5Gネットワーク提供を進めている。またPS-LTE(Public Safety(公共安全)LTE)向けネットワーク機器、端末やアプリケーションを開発し、世界初とする3GPP準拠のPS-LTEを韓国全土に展開。クラウド上MCPTX(Mission-Critical Push-to-X)ビデオ電話実験なども行っている。

3.NECがドイツテレコムに5G基地局、英ボーダフォンに次ぐ海外受注(6.29 日経XTECH)
NECは2021年6月29日、ドイツの大手通信事業者ドイツテレコム(Deutsche Telekom)が計画する商用プロジェクト「O-RAN Town」の中で、超多素子アンテナ(Massive MIMOアンテナ)を搭載した5G(第5世代移動通信システム)基地局装置を提供すると発表した。NECは英国大手通信事業者Vodafone Group(ボーダフォン)の5G基地局ベンダーにも採用されており、基地局のオープン化の波に乗って相次いで海外受注を決めた形になる。

 ドイツテレコムはオープン仕様に基づいてさまざまなベンダーの基地局を自由に組み合わせられる「Open RAN」の業界団体「O-RAN Alliance」の設立メンバーの1社。同社は大規模な商用Open RANを展開していくプロジェクト「O-RAN Town」を進めており、ドイツ・ノイブランデンブルクの住人約6万5000人に対してOpen RANを活用した4Gと5Gサービスを提供する計画だ。

 NECはこのプロジェクトに対し、ネットワークの仮想化などを手掛ける米マベニア(Mavenir)と共同で、O-RAN Allianceが定めるオープンインタフェースに準拠した5G基地局装置を提供する。同プロジェクトにはNECとマベニアのほか、米Intel(インテル)や富士通も参加する。

 NECとマベニアは今後、欧州で本格的にOpen RANを展開していくことを目指し、研究室や実環境でOpen RANを活用した5G基地局装置の相互接続性などの検証や最適化をさらに進めていくという。

4.「Zoom」快進撃 ステイホームが加速させた驚くべき成長の軌跡(7.2 ITmedia)
コロナ禍を経てすっかり市民権を得たリモートワークや在宅勤務。Zoom Video Communications(以下、Zoom)のWeb会議ツール「Zoom」をはじめとする各種ビデオ会議ツールの恩恵により仕事がはかどっていることに疑いはありません。読者の皆さんは「いま、画面見えていますか?」と1日に何回言いますか。

 Zoomといえばセキュリティへの懸念や中国当局との関係が問題視されたこともありますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがもたらした変化の中で、世界中の人々が大きな恩恵を受けていることは言うまでもありません。在宅勤務でも高い生産性を維持していることはもちろん、国境が閉鎖されている中で同僚や恋人との連絡手段として、Zoomを活用している人は少なくないでしょう。あるいはオンラインでの習い事への活用など、ビデオ会議の用途はさらに広がり、中でもZoomは最も人気のある選択肢の一つとなっています。

 2021年1月末の第4四半期決算で、Zoomは売上高の記録を更新しましたが、続いて2022年度の売上高ガイダンスを39億7500万ドルから39億9000万ドルの間に引き上げることを発表しました。

 Zoomの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるエリック・S・ユアン氏は、2021年6月1日に発表された決算報告の中で次のような熱いメッセージを送っています。

 「仕事はもはや物理的な場所ではなく、空間である。Zoomはあなたのチームがつながり、最高のアイデアを実現するための力となる。より高い柔軟性や生産性、幸福感を与えるハイブリッドワークへの進化をリードするためにエネルギーを注いでいる」

 働き方の多様化によりオンラインでのやりとりが当たり前になったと同時に、人が集うイベントもオンライン化が加速しています。2021年5月には仮想イベントプラットフォーム「Zoom Events」を発表。Zoomの快進撃は、しばらく続きそうですね。

5.「鉄道路線5G化」で5Gエリアを急速に広げるKDDI “パケ止まり”対策でも先行(7.3 ITmedia)
KDDIは東京の山手線全30駅および大阪の大阪環状線全19駅のホームに5Gの基地局を設置。同社は、利用者の導線に沿った5Gのエリア化を行っており、人口カバー率が90%に達する2021年度末までには、関東21路線、関西5路線に5Gを拡大していく予定だ。大手3社のエリア展開の方針を振り返りつつ、鉄道を中心に5Gのエリア化を進めるKDDIの狙いに迫る。

 大手キャリアが5Gのエリア展開を加速させている。NTTドコモは、衛星との干渉問題が起きない4.5GHz帯を中心に、出力を上げたマクロ局を展開。基地局数は、6月末時点で1万を突破した。対するKDDIやソフトバンクは、5G用の新周波数帯は3.7GHz帯が中心で、マクロでの調整が難しい一方で、4Gから5Gに転用した周波数帯を使い、エリア展開を加速している。

 サービス開始から1年がたち、大手3社は5Gのエリアを急速に拡大している。2021年度末(2022年3月)にはドコモが人口カバー率約55%、KDDIとソフトバンクは人口カバー率90%を達成する予定。現時点でも5Gがスポット的にしか利用できなかったサービス開始当初と比べ、徐々に“面”としてのエリアができつつある。実際、東京でのエリアマップを見てみると、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社とも、主要な駅を中心にしながら、繁華街やオフィス街を広い範囲でカバーできるようになりつつあることが分かる。

 ただし、エリア拡大の手法はキャリアによって少々異なっている。5G用に割り当てられた新周波数帯を使い、「瞬速5G」をうたうのがドコモだ。同社は、2020年夏から出力を上げたマクロ局の運用を開始。その数が徐々に増え、都市部ではエリアの面展開ができつつある。

 マクロ局を展開する上で有利に働いているのが、衛星との干渉が少ない4.5GHz帯(n79)だ。3社とも5G用の周波数帯として3.7GHz帯(n77/n79)が割り当てられているが、衛星との干渉調整が必要になる。エリアをまとめて広げれば広げるほど、干渉が起りやすくなるため、地道なチューニングが必要になるというわけだ。ドコモが新周波数帯にこだわり、「瞬速」をうたう理由もここにある。こうした周波数戦略が功を奏し、6月28日には5Gの基地局が1万局に達した。

 そのため、4.5GHz帯を持たないKDDIやソフトバンクは、5Gのエリア拡大には4Gから5Gへの周波数転用を活用する。KDDIは700MHz帯(n28)と3.5GHz帯(n78)を5Gに転用済み、ソフトバンクは700MHz帯と3.5GHz帯に加え、1.7GHz帯(n3)も5G化している。3.5GHz帯の周波数特性はSub-6のそれに近い一方で、いわゆるプラチナバンドに近い700MHz帯や、既存の基地局が多い1.7GHz帯はエリアを広げやすい。転用した周波数帯で面展開しつつ、スループットを必要とするエリアにはピンポイントで3.7GHz帯やミリ波を導入していくのが、2社に共通した戦略だ。

 KDDIはiPhone 12シリーズ導入時に「au 5Gエクスペリエンス」を開始した。これは、5G接続時かつデータ無制限プラン加入時のみ、動画やFaceTimeの画質を上げたり、特別なコンテンツにアクセスできたりする仕掛けだ。スヌーピーのARコンテンツは、データ無制限プランでなくても利用できるが、スループットの数値ではなく体験価値を重視したという意味では、au 5Gエクスペリエンスの延長線上にある取り組みといえる。

 ユーザーの体験や体感を重視するのは、通信品質の改善にも共通した姿勢といえる。それを端的に示しているのが、“パケ止まり”への対応だ。パケ止まりとは、5Gのエリアの端で発生する、通信不能状態のこと。エリアが狭く、4Gのようにセル同士が重なり合っていないがゆえに起こる現象で、4月ごろからSNSを中心に「5Gなのに通信ができない」といった不満の声を見かけるようになった。

 中でも、ahamoの開始による5Gユーザーの急増や、エリアの拡大が重なったドコモの名前が挙げられるケースは多い。こうした指摘を受け、ドコモはユーザーに対し、一時的に5Gをオフにするよう促しつつ、6月末までに基地局のパラメーターを調整。もともとは5G接続時に、5Gの周波数を優先してデータ通信していたが、電波強度が弱い場所では5Gに接続したまま4G側にデータを流すよう、ネットワークにチューニングを施した。

 NSA(ノンスタンドアロン)の5Gは、まずアンカーバンドと呼ばれる4Gに接続したあと、5Gの周波数帯を追加。その際には、EN-DC(E-UTRA New Radio Dual Connectivity)と呼ばれる技術で、キャリアアグリゲーションのように4Gと5Gを束ねて通信する。このEN-DCでつながっている4Gにデータを流すようにしたのが、ドコモの取った対策だ。

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