週間情報通信ニュースインデックスno.1282 2021/06/26


1.グーグルが「脱クッキー」を2023年に延期、代替技術への逆風を収められるか(6.25 日経XTECH)
米Google(グーグル)は2021年6月24日(米国時間)、同社製Webブラウザー「Chrome」におけるサードパーティークッキーの取り扱いについて、2023年半ばから2023年末までの3カ月間で段階的に廃止すると発表した。同社はこれまで、2022年前半にも同クッキーを廃止する意向を示しており、計画を1年ほど延期した格好だ。グーグルが開発中の代替技術「FLoC(フロック)」を懸念する意見が影響したとみられる。

 グーグルは現在、FLoCを含むサードパーティークッキー代替技術の開発プロジェクト「Privacy Sandbox」に取り組んでいる。新たに公開したスケジュールによれば、同技術への移行と廃止を2段階で進める。まず2022年後半からのステージ1を、FLoCを含むグーグルが開発した代替技術への移行期間と位置付ける。同社は現在、日本を含む世界各国でFLoCを試験している。今後数週間で試験を終え、全てのChrome利用者向けに同技術の提供を始めた段階でステージ1の開始時期を発表するという。ステージ1は9週間を予定しており、同期間中にメディア企業や広告主企業に移行を促す。

 2023年半ばからのステージ2において、グーグルは3カ月をかけてサードパーティークッキーを廃止する。ステージ2は2023年後半に終える予定だ。ただ、これらのスケジュールを定期的に更新するとしており、さらなる変更に含みを持たせている。

 「Privacy Sandboxが全ての人に最高のプライバシー保護を提供すると信じている。新技術の評価に時間をかけ、フィードバックを集め、(中略)全ての開発者にプライバシー保護の最善の方策を提供しなければならない」。グーグルは発表文でこう述べた。

2.マイクロソフトがWindows 11を発表、リリースは2021年後半を予定(6.25 日経XTECH)
米Microsoft(マイクロソフト)は現地時間の2021年6月24日、オンラインイベントを開催し同社が提供するOSであるWindowsシリーズの新世代「Windows 11」を発表した。Windows 11はこれまでのシリーズと比べてデザインやユーザーインターフェースを簡素化したほか、これまで画面の左下に配置していた「スタート」ボタンを、画面中央下部に配置した仕様になるなどの変化を確認できた。Windows 11のリリースは2021年後半を予定しているという。

 イベントでWindows 11がコールされたのは、イベントが始まった11分後、現地時間の午前11時11分だった。イベントではマイクロソフトでCPO(最高プロダクト責任者)を務めるPanos Panay氏が「Windowsはこれまで35年間、私たちの生活の一部になっている。Windowsは(実家のように)慣れ親しみ安心を感じるものであるべきだと考えている」と語った。同氏はWindows 11を紹介するサイトで「現在のWindows 10と同じように、Windows 11への準備をしたり、Windows 11を展開したりできる」とコメントしている。

 マイクロソフトは2021年6月はじめ、Windowsの新シリーズに関するイベントの予告を発表し、開始日時と「what’s next for Windows」という文章を掲載していた。6月11日には動画サイトYouTubeにWindows 95やWindows XPなどの起動音を加工した11分間の関連動画をアップしている。

3.ヤフーが契約の「100%電子化」達成、ハンコ出社撲滅で手続き費用7割減(6.24 日経XTECH)
ヤフーは2021年6月24日、民間取引先との契約手続きを2021年3月までに全て電子サインへ切り替えたと明らかにした。契約手続きにかかる費用の削減や手続きの迅速化などの効果が出ているとする。

 同社は従来、取引先と売買契約や機密保持契約などを締結する際に紙の契約書を使っていた。その際、契約1件当たりにかかる費用は約4200円。具体的には、押印などを含む事務作業の人件費や紙の郵送費、収入印紙代などがかかっていた。電子サインへの切り替えにより郵送などの作業がなくなり、1件当たりの費用は約7割安い約1200円となった。

 同社は電子サインにより、最短数分で手続きが完了することもメリットに挙げる。紙での契約は取引先との間で契約書を郵送で往復させるため、少なくとも数日かかっていた。

 同社は新型コロナ禍でリモートワークを積極的に推進してきたが、契約手続きだけは紙の処理が残り、担当部署は押印のための「ハンコ出社」を強いられるという課題があった。これを解消するため2020年5月に「100%電子サイン化」を目指すと宣言。米DocuSign(ドキュサイン)の電子署名ツールを導入し、取引先にも電子サイン対応への協力を呼びかけるなどの取り組みを進めていた。

4.深センは世界初の5G SA全域展開都市」、Huaweiのイベントから(6.24 日経XTECH)
中国Huawei Technologies(ファーウェイ)は2021年6月17日、「Better World Summit for 5G+AR」と題するイベントにて、同社キャリアBG CMO(最高マーケティング責任者)のBob Cai氏による基調講演「5G+AR, Turning Dreams into Reality」の概要を自社ニュースリリースで紹介している。今後、AR(拡張現実)と5Gの連携により、双方がより活性化するとして業界への協力を求めている。今回のイベントに向けては、デバイスやアプリケーション、ネットワーキングの観点からAR業界を洞察する白書「AR Insight and Application Practice White Paper」も発表した。

 同社によると、AR市場は2025年までに3000億米ドルの規模に成長すると予測している。最初に導入される分野としては、教育、ソーシャルネットワーキング、ショッピング、旅行、ナビゲーション、ゲームなどがあり、現実世界とデジタル世界を融合し、夢を現実にする手段になるとしている。

 同社では、新型コロナウイルス感染症拡大により、直接顧客とアクセスできなくなった代わりに、新製品のデモンストレーションを、ARを活用しオンラインで紹介している。5G基地局の展開に向けてもARを活用し、迅速かつ効率的な作業を可能にしているという。

 今回のイベントでは、Huawei のAR作成技術のデモも披露。同社独自のアルゴリズムを使った「Air Photo」により、2次元写真を簡単にデジタルの3次元データに変換可能とする。併せて、ARモバイル端末開発用のプラットフォーム「Huawei AR Engine」も紹介。こちらはわずか10行のコードを書くだけで、ARアプリケーションを開発できるとしている。

 このほか、深セン通信管理局局長のHe Chengjian氏をはじめとする来賓の講演もあった。He Chengjian氏は、深セン市を5G SA(Standalone)サービスが全域に展開された世界初の都市であると紹介した。その上で、ARに代表されるICTサービスは今後、製造業、eコマース(電子商取引)、不動産、インテリアをはじめ、文化、スポーツ、観光、医療、教育などさまざまな分野で活用されていくとした。

5.携帯大手のゼロ回答にあぜん、5Gの大本命SA方式の提供巡り格安スマホに暗雲(6.23 日経XTECH)
5G(第5世代移動通信システム)の大本命とされるSA(スタンドアローン)方式の導入がいよいよ始まる。NTTドコモやKDDI、ソフトバンクは2021年度中の提供またはトライアル開始を予定している。

 4Gの交換機(EPC)に5Gの基地局がぶら下がる現在のNSA(ノンスタンドアローン)方式に対し、SA方式では5Gの交換機(5GC)と基地局を組み合わせて5G単独で動作する。ユーザーは超高速・大容量だけでなく、超低遅延や多数同時接続などのメリットを享受できるようになる。

 格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)もSA方式による5Gサービスの提供に向け、携帯大手と協議を進めている。しかし、総務省が2021年6月15日に開いた有識者会議でその進捗状況が報告され、あぜんとした。MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会が要望する提供形態に対し、携帯大手がほぼゼロ回答を示していることが明らかとなったからだ。

 MVNO委員会によると、SA方式における主な提供形態は、(1)L3接続相当、(2)ライトVMNO、(3)L2接続相当、(4)フルVMNOの4種類。このうち、MVNOが携帯大手と同時期にサービスを提供できそうなのは(1)L3接続相当だけという。ただ、この方式は携帯大手が提供するサービスの単純再販に近く、サービス設計の自由度がほとんどない。

 サービス設計の自由度が比較的高い(2)ライトVMNOの提供時期は2022年度以降。これにはひどい条件が付いている。「携帯大手が開放するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)をモニタリング関連の機能に限定し、すべてのMVNOが1つのスライスを共有する場合」だ。この条件以外の提供時期は見通せないという。

 これだけではない。(1)〜(4)のいずれの提供形態においても「既存LTEとの連携」「音声通話の実現方法」「MEC(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)の活用、連携」については取り扱いが未定という。前者2つは5Gサービスの提供に当たって必要な基本機能、残りのMECは遅延を抑えるためにネットワークのエッジ部分でデータを処理して通信を折り返すもので、スライシングと並ぶ5Gの目玉機能の1つだ。

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