週間情報通信ニュースインデックスno.1281 2021/06/19


1.グーグル「FLoC」に逆風、アマゾンがブロックと米メディア報道(6.18 日経XTECH)
米技術メディアのDigidayは2021年6月15日(米国時間)、米Google(グーグル)が開発中のネット広告技術「FLoC(Federated Learning of Cohorts、フロック)」を米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が自社サイトでブロックしたと報じた。グーグルはサードパーティークッキーを代替し、効果的なネット広告配信を可能にする技術として、FLoCを世界中で試験している。世界最大のEC(電子商取引)サイトであるアマゾンでFLoCが機能しないとなれば、同技術の精度に疑問符が付き普及の妨げになる可能性もある。

 FLoCとは、グーグルのWebブラウザー「Chrome」が備えるAI(人工知能)を使って利用者の興味や関心を推測し、ネット広告の配信に使う技術である。閲覧履歴が似た人を数千人単位のグループ(コホート)にまとめ、利用者をいずれかのコホートに割り当てて広告配信に利用する。利用者がグーグルや一般のWebサイトと共有するのはコホートの情報のみで、Web閲覧履歴そのものは端末側だけに保存するため、グーグルは利用者のプライバシーを守れるとしている。

 Digidayはアマゾンと同社傘下の食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」、靴のネット通販「ザッポス」などのWebサイトのコードを調べた。Chrome利用者がこれらのサイトを訪れた際に、訪問者の行動分析結果をコホートにまとめたり利用者を割り当てたりしないよう、グーグルに伝えるコードが存在したという。アマゾンが所有する多くのドメインでは、「HTMLページからレスポンスヘッダーを送信するという、グーグルが推奨する方法を採用している」(Digiday)。ただ、ホールフーズだけは別の手法を採用していた。調査に協力した技術者によると、ホールフーズの手法は「(アマゾン側の)見落としか、何らかのテストのためにアマゾンが意図的に選択した可能性がある」(同)という。

 DigidayはアマゾンがFLoCをブロックする理由として、同社サイトにおける行動履歴データを守りたいためと説明している。商品の購入や検索、レビューといった「貴重なデータを、グーグルや他のアド(広告)テクノロジー企業のような部外者に利用されるのは得策ではない」(同)。ネット広告事業における競争上の判断もあるという。Digidayによればアマゾンも独自の広告識別子を発表する予定で、「グーグルが支配しているネット広告市場に対して、アマゾンはより多くの広告費を獲得したいと考えている」(同)。

 ある広告代理店幹部はDigidayに対して、「アマゾンの訪問者データがなければグーグルのFLoCは不利になる可能性がある」と語ったという。「あなたのアマゾンの閲覧履歴こそがあなたの正体」(別の協力者)であり、アマゾンの閲覧履歴を使えないとすればFLoCの広告配信精度は不十分なものになると示唆した。FLoCをブロックすればアマゾン自身もデメリットを被る可能性があるが、「アマゾンが持つ消費者の情報の宝庫を考えれば、(FLoCをブロックして得られなくなる)情報の価値は限られている」(Digiday)。

 グーグルは2022年初めにもChromeにおいてサードパーティークッキーを取得しないようにすると表明し、代替技術としてFLoCの開発と試験を進めている。FLoCに対してはデジタル分野のプライバシー保護を掲げる団体の米EFF(Electronic Frontier Foundation、電子フロンティア財団)が反対を表明するなど、批判が相次いでいる。

2.光アクセス網の構成をループに一変、NTTがIOWN構想向けで新方式(6.18 日経XTECH)
NTTは2021年6月18日、同社が掲げる光技術を活用した次世代情報通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想に向けて、新たな光アクセス網の構成方法を確立したと発表した。現在、世界で一般的に採用されているスター型ネットワークトポロジーを一新し、ループ状のネットワークを多段でつなぐ新たなネットワークトポロジーを提案する。新たなネットワーク構成によって信頼性を高められるほか、需要が急激に変化した場合にも柔軟に対応できるようになる。今後4?5年でスマートシティーなど実網への導入を目指す。

 IOWN構想は、光を中心に現在の情報通信技術を一変していこうというNTTの壮大な計画だ。その基盤となるネットワークが、「1人1波長」を扱えるようにする「オールフォトニクス・ネットワーク」である。今回、新たに確立したネットワーク構成は、このオールフォトニクス・ネットワークの実現に向けた手段となる。

 具体的には、都市間を結ぶようなメトロネットワークに加えて、ラストワンマイルを含むアクセスネットワークのエリアについても、ループ状のネットワークトポロジーを使う。光ファイバーの心線を束ねて、拠点となる通信ビル近傍のエリアをカバーするループ配線と、その先にぶら下がる、一般家庭や基地局などのエリアをカバーするループ配線といった具合に、多段階でループ状ネットワークを張り巡らせる。

 現在の光アクセス網は、FTTH(Fiber to the Home)用途がメインであり、光ファイバーを家庭近くのスプリッターで分岐するといったスター型ネットワークトポロジーが採用されている。初期コストを抑えて効率的に各家庭に光回線を設置できる一方、急な需要増に対応しづらいという課題があった。実際、光ファイバーはここに来て、移動通信基地局に多く使われるようになり、光回線が不足する事態が起きている地域もある。スター型のネットワークトポロジーにおいて、ある地域で光ファイバーが足りなくなった場合、中心となる通信ビルから新たにネットワークを引く必要があった。

 多段ループ型のネットワークトポロジーの場合、光ファイバーの心線を多数束ねたループ配線を活用することで、ある地域で光ファイバーが足りなくなった場合も、柔軟に光ファイバーを融通できるようになる。光ファイバーがループ配線となっているため、ある地域に最も近いポイントには、上位の拠点から右回り、左回りと2系統の光ファイバーが来ている。片側の光ファイバーが足りなくなった場合、もう一方の系統の光ファイバーを活用すればよい。ループ配線によって冗長化され信頼性も高められる。

 ループ型のネットワークトポロジーは一方で、ネットワーク運用上の複雑性が増すという課題がある。NTTはこうした課題を解消するために、運用方法についても今後検討を進める。今後4?5年後にスマートシティーなど特定のエリアへの導入を目指し、30年代の商用化を狙うIOWN構想に向けた基本的なネットワークトポロジーとしてさらに研究開発を進める。

3.パンデミック収束後もオンライン時間の拡大続く、エリクソン調査(6.17 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年6月9日、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)収束後も、オンラインは消費者の日常生活にさまざまな形で関与し続けるとする調査リポート「The future urban reality Consumers’ outlook on a new urban reality for 2025.」を発表した 。世界31市場の23億人の一般消費者から得た意見に基づき、パンデミック後、2025年までの消費者生活について考察している 。

 これによると、現在のリモートワークやeラーニング、デジタルヘルスやオンラインショッピングでの食料品調達に加えて、今後人々は、平均2.5件の新しいオンラインサービスを取り入れるようになる。そうして得られた余暇時間は、旅行のほか、生活の質の向上や、友達、家族過ごす時間に費やすようになる。

 パンデミックによるオンライン活用が進んだ結果、パンデミック収束後も、それ以前と比べて平均週10時間、オンライン時間が増える。こうした動きにより、以前からオンラインに深く依存していたユーザーとそれ以外の消費者とのギャップが狭まり、オンラインサービスはさらに一般消費者に不可欠なものとなっていく。

 今回のリポートで報告されている主な内容は下記の通り
2025年までにさらに進むオンライン化:消費者の2人に1人が、スキルアップのためにeラーニングを活用している。また、世界の消費者の半数以上が、今後、自分の娯楽活動全てがオンライン化していくだろうとしている。3人に1人以上が、食料品などの購入もオンライン上で済ませるようになると回答している。

64%の消費者が社会的ストレス上昇を予想:5人に3人が、適正な収入を維持するには複数の仕事を掛け持ちする必要があると回答。同時に7割の消費者が、健康的な生活を維持できることを望んでいる。

便利な生活はプライバシーを侵害:75%の消費者が2025年には生活がさらに便利になると回答する一方で、7割はオンラインのセキュリティーとプライバシーへの配慮がもう少し必要としている。

地産地消への期待:世界の消費者の半数は、環境への配慮も含め、今後の新たな基準として、地産地消に力を入れるべきだと考えている。

気候変動や汚染への懸念と旅行への関心:消費者の半数が気候変動や汚染への懸念を表明する一方で、67%が旅行に行きたいと考えている。ほとんどの消費者は、もっと持続可能な旅行の選択肢を導入すべきだと考えているが、今後、旅行に飛行機を使わないと答えたのは3人に1人にとどまる。

オンライン環境への依存:オンライン環境への依存はパンデミック収束後も継続し、2025年までに、オンラインに費やす時間は平均週10時間増えると予想される。今よりさらに平均2.5件オンラインサービス活用数が増え、デジタルテクノロジーが社会の隅々にまで広がるデジタルインクルージョンの時代にますます近づいていく。

4.ライカ初のスマートフォン「Leitz Phone 1」登場 ソフトバンクが独占販売、18万7920円(6.17 ITmedia)
ソフトバンクが6月17日、ライカ(Leica)ブランドのスマートフォン「Leitz Phone 1(ライツフォン ワン)」を発表した。7月以降に発売する予定で、6月18日から予約を受け付ける。価格は18万7920円(税込み)を予定しており、「トクするサポート+」を適用できる。なお、SIMロックは掛けられていない。

 Leitz Phone 1は、ライカがハードウェアからソフトウェアまでトータルで監修した初のスマートフォン。メーカーはシャープが担当している。またLeitz Phone 1は日本でのみ販売するモデルで、ソフトバンクが独占販売する。

 スマートフォンのカメラとしては最大級(シャープ調べ)となる1型センサーを搭載しているのが特徴。F1.9と焦点距離19mmの7枚構成レンズを採用しており、最大6倍のデジタルズーム撮影できる。保存形式はJPEGだけでなくRAWにも対応している。モノクロ写真を撮影できる「Leitz Looks」モードも用意した。画素数はアウトカメラが2020万、インカメラが1260万となる。

 カメラ以外のスペックは、同じくライカ監修の1型センサーを搭載した「AQUOS R6」と共通している部分が多い。ディスプレイは約6.6型のPro IGZO OLEDを搭載しており、最大240Hzの駆動が可能。プロセッサはSnapdragon 888、メインメモリは12GB、内蔵ストレージは256GB。容量5000mAhのバッテリーを内蔵している。また最大1TBのmicroSDも利用できる。

 通信は5Gに対応しており、通信速度は下り最大2.4Gbps、上り最大110Mbpsとなる。この他、IP68の防水やおサイフケータイにも対応する。OSはAndroid 11をプリインストールしている。サイズは約74(幅)×162(高さ)×9.5(奥行き)mm、重量は約212g。

5.ソースネクストの「ポケトーク」に新機能 グループ翻訳とWeb会議への字幕付与に対応(6.15 ITmedia)
ソースネクストは2021年7〜8月にかけて、オンライン翻訳デバイス「ポケトーク(Pocketalk)シリーズ」の初代モデルを除く全機種に無償のソフトウェア更新を実施する。これにより、新機能として「グループ翻訳」と「ポケトーク字幕」が追加される。

 グループ翻訳は、複数のポケトークをつないで複数言語の話者とコミュニケーションを取れる機能だ。1つのグループには最大100人まで参加できる。

 使い方は、通常のポケトークとほぼ同様だ。グループチャット画面を開いた後、ボタンを押しながらポケトークに話しかけると、参加者にテキストでその内容が送付される。テキストは、参加者ごとに指定した言語に翻訳される。逆に、別の参加者がポケトークに話しかけて送信したテキストは、自分が指定した言語に翻訳される。

 ポケトーク字幕は、Windows 8.1/10 PCのカメラ映像に翻訳した字幕を合成する機能だ。時期は未定だが、Mac(macOS)にも対応する予定はあるという。

 Windows 8.1/10では、仮想カメラアプリとして組み込まれる。この仮想カメラを有効にした状態で、ポケトークで「ポケトーク字幕」を起動して話しかけると、カメラの映像に翻訳文(字幕)がリアルタイム合成される。外国語の話者とのWeb会議において、より迅速にコミュニケーションを取れるようになるという。

 仕組み上、ポケトーク字幕はWindows上でカメラを扱える全てのアプリで利用できる。ソースネクストとしては「Zoom」「Microsoft Teams」など、主要なWeb(ビデオ)会議アプリに対応する予定だという。

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