週間情報通信ニュースインデックスno.1280 2021/06/12


1.ブームが去ったAIの進化は止まるのか?「次世代AI戦略2025」著者が語る5年後(6.11 日経XTECH)
第3次??知能(AI)ブームが話題になって数年、AIについて声高に叫ばれる機会は減った。この状況をむしろ自然なことであり、今も進化が続いているとするのが、調査レポート『次世代AI戦略2025』だ。

 大植氏は「AIは、今後5年でこれまで以上の大きな変化が起こる可能性がある」と話す。今のAIはどんな状況にあるのか、社会や産業はどのように変わるのか。日経クロステックだけに語ってくれた大植氏の話を紹介しよう(聞き手は日経BP 技術メディアユニット 編集委員 中村建助)。

AIブームに陰りが出ているのではないかといわれています。
 「ブームが終わった」という事実をどう捉えるかということではないでしょうか。ブームは終わりましたが、日常に近づいていると捉えるべきです。
2000年ごろのインターネットのようなものです。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)もEC(電子商取引)もブームとはいいません。日常化したからです。ブームが終わって、さらに広がるというのが正解ではないでしょうか。

新たな波が来ているというわけですね。確かに『次世代AI戦略2025』ではまず技術面でブレークスルーを指摘しています。
 2025年までの時間軸を想定して、技術面でブレークスルーが4つあると考えています。
 まずはXAI(説明可能なAI)です。現在、さまざまな分野でAIが使われるようになっていますが、AIによる判断や予測の根拠が分からない、ブラックボックス化しているという批判があります。
 ブラックボックス化していることで抵抗感が生まれて、実際にAIの導入が進まない領域が出てきました。例えば採用など人事関連、あるいは金融の与信管理などがそうです。XAIであれば利用者の不安を下げることができます。少しずつ実用化も進んでいます。

 2番目は次世代ディープラニングともいうべき、Attention機構という技術です。現在の代表的技術であるCNN、RNNが進化したものといえます。2020年の夏、GTP-3という自動的に文章を作成するAIが話題になりました。

 3番目は、次世代の機械学習です。これまでのAIは利用の前提として大量のデータを使うのがほとんどでした。データの収集が進まず利用の障害になるケースもあったのですが、この問題を解決する技術が登場しつつあります。
 自己教師あり学習がその有力な候補です。自ら教師データを作ることで、少量のデータでAIが予測したり判断したりできるようになります。AIで制御するロボットや自動運転の分野での応用が進むでしょう。

 最後が記号推論との融合です。まだ研究段階の技術という側面が強いものの、5年の時間軸でみれば一気に実用化が進む可能性があります。
 AIにはボトムアップ型とトップダウン型があるといわれます。ディープラーニングはボトムアップ型のAIです。パターン認識などには優れるのですが、人のような常識、コモンセンスといったものはありません。
 これに対して記号主義から来ているトップダウン型のAIは、意識的で論理的な判断に優れています。いわば常識を備えたAIです。ボトムアップ型とトップダウン型の融合が実現すれば、よりAIの用途が汎用化されるでしょう。今後5年の間には、人間とより自然に会話できるAIアシスタントが実現するのではないでしょうか。

DXにAIは不可欠な技術だとも指摘していらっしゃいます。
 AIはDXの中核的技術といっていいでしょう。今、あらゆる企業にDXが必要になっています。既存のビジネスモデルを、デジタル、テクノロジーで変革しなければなりません。
 テクノロジーが進化によって、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などを用いて大量のデータの収集が可能になっています。こうした時代にDXに取り組まなければ競争力を失います。
 DXは企業にとっての一丁目一番地だと私はお話ししています。新型コロナウイルス感染症のような大きな変化が起こったときにも、人をアナログな接点から遠ざけることができるDXは大きな力を発揮します。実際にこの1年で想像以上にDXが進みました。

日本ではまだAI導入、あるいはDXに成功している企業は少ないのが現状です。理由はどこにありますか。
 いくつかの観点があります。1つはトップ、事業責任者のコミットがまだ十分でない企業があるからでしょう。日本でDXがうまくいっている会社は、トップがDXにコミットしています。
 残念ながらこういった企業は日本では主流ではありません。DXの手前の手前、アナログなデータをデジタル化するデジタイゼーションが実現できていればもういいだろうというところも多いのです。

2.「ミリ波5Gを欧州のデジタル経済けん引役に」、エリクソンが提言(6.11 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年6月7日、米Qualcomm(クアルコム)や英国に本社を置く調査会社Analysys Masonと協力してまとめたリポート「Status, costs and benefits of 5G 26GHz deployments in Europe」を発表した。今後、ミリ波5Gが欧州のデジタル経済をけん引する役割を担うとしている。

 3社では以前より、ミリ波と3.5GHz帯など既存の中周波数帯を組み合わせた5Gサービスの有効性を調査している。今回のリポートでも、この組み合わせが、イベント会場など高い通信負荷がかかる場所をはじめ、企業オフィス内や各種産業などで必要となるモバイルブロードバンド、FWA(fixed wireless access、固定無線アクセス)強化に向けて、最も効果をもたらすとしている。

 リポートでは、各種ユースケースの経済効果についても試算し、これらが、eMBB(enhanced mobile broadband、超高速大容量ブロードバンド)上で、ミリ波を活用して構築された場合には、投資の5〜20倍の利益が得られるとしている。具体的には、EU(欧州連合)27カ国にノルウェー、スイス、英国を加えた欧州30市場において、2040年までのGDP累積で、約200億ユーロの投資に対し1400億ユーロ超の利益が得られるとしている。

 リポートでは、今回の主要調査結果と提言として、下記3点を挙げている。

 (1)ミリ波帯は、中周波数帯を補完するものとして、eMBBの実現、家庭やオフィスへの5G FWAサービスの提供、および、産業デジタル化を支援する。規制当局はこれら実現に向けて、ミリ波帯の割り当てに優先順位を付けるべきである。
 (2)ミリ波5Gの導入は、欧州経済に多くの利益をもたらす。
 (3)今回調査対象とした複数の移動通信事業者は、ミリ波を使ったサービスで期待できる分野として、通信が混雑する場所でのeMBB、5Gを使ったFWA、スマートファクトリーやその他産業用アプリケーション、コネクテッドカーやイベント会場でのカバレッジ拡大などを挙げている。

3.3GPPが5G標準化作業の最新報告、リリース17で15の新機能を検討中(6.11 日経XTECH)
移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)はリリース17に向けた最新の活動報告をWebサイトに掲載した。SA2(Service &Systems Aspects:サービスおよびアーキテクチャー仕様検討グループ)議長であるPuneet Jain氏によるもので、下記はその概要となる。

 SA2では、ネットワークの主要機能やリンク方法などを含め、Stage 2でのシステムアーキテクチャー全体の仕様開発を担当する。

 リリース15では5Gシステムアーキテクチャーを決定し、リリース16では、産業自動化に向けた、Time Sensitive Communication(TSC)、超高信頼低遅延通信(URLLC)、非公共ネットワーク(NPN)、5Gシステム向けセルラーIoT(CIoT)に加え、5G無線有線コンバージェンス(5WWC)などを追加している。

 リリース17に向けては、2019年12月のTSG SA#89全体会議で決定した優先順位に基づき、下記項目について検討を行っている。

 (1)非公共ネットワークのサポート強化:非公共ネットワーク上での画像、動画、音声通信から緊急時サービス、遠隔からのプロビジョニングなどのサポート強化を行う。
 (2)産業向けIoTのサポート強化:時間的な制約を持つアプリケーションやリアルタイム性が求められる通信に向けた、IEEEのTime-Sensitive Networking(TSN)を含むTime Sensitive Communication(TSC)機能強化を行う。上りリンクなどでの時間同期、ユーザー端末間TSC、時間的制約を持つ5Gシステムに向けた機能強化とサービス品質改善などを行う。
 (3)エッジコンピューティングに向けたサポート強化:エッジコンピューティング環境で動作するアプリケーションに向けた機能強化を行う。動的な通信オフロード、アプリケーションサービス提供サーバー変更時の円滑な切り替え、IPアドレス変更通知が受け付けられない場合のPSA変更サポートなどが含まれる。
 (11)無人航空機システム(UAS)接続性、識別、追跡機能サポート:無人航空機(UAV)の識別やUAVへの認証などのUASによる運用管理、追跡や接続性確認などを、4G、5G両方の基幹ネットワーク両方でサポート可能にする。
 (13)高度な対話型サービスに向けた5Gシステム強化:クラウドゲーミングサービスなど対話型のサービス要件に向けて、5QI(5Gサービス品質指標)定義などを行う。
 (14)5Gロケーションサービスの強化(フェーズ2):5Gによる低遅延高精度なポジショニングサービス提供に向けた検討を行う。
 SA2では、これらリリース17 Stage 2の標準化作業を2021年6月までに完了する予定で進めている。なお、リリース17 Stage 3完了は2022年3月、ASN.1/Code完了は2022年6月を予定している。

4.日本企業はなぜ、データ活用でビジネス成果を出せないのか?――ガートナー調査(6.11 ITmedia)
日本企業はデータ活用に対する意識や関心は高いものの、データ活用から十分なビジネス成果を得られていない現状が、ガートナーの調査で明らかになった。分析スキルやデータリテラシーの不足などが阻害要因になっているという。

 ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2021年6月10日、日本におけるデータ活用に関する調査結果を発表した。ほとんどの日本企業は、データ活用から十分なビジネス成果を得られていない現状が明らかになった。

 ガートナーが2020年11月に実施した調査によると、回答者の60%超がデータ活用に対して課題意識を持っており、そのうち20%超が組織全体の課題(経営課題)として認識していた。

 同調査ではデータ活用によるビジネス成果の獲得についても尋ねており、成果を「十分に得ている」もしくは「ある程度得ている」と回答した割合は、2018年以降3年間の推移を見ても一進一退で、大きな変化はなかった。

 これらの結果から、日本企業のデータ活用に対する意識や関心は高いものの、データ活用よるビジネス成果の獲得は順調とはいえない状況が続いているとガートナーは分析している。

 調査では、ビジネス成果獲得の成功要因と阻害要因を、選択式でそれぞれ3つ尋ねた。

 その結果、成功要因として最も多く挙げられたのは「活用できるデータの種類・量・品質」(59%)で、「データ分析のスキル」(41%)、「ビジネス部門の理解や協力(36%)」が続いた。

 ガートナーでは、「活動できるデータの種類・量・品質」が成功要因として最も多く挙げられたのは順当といえると指摘。データを利活用してビジネス成果を得ようにも、肝心のデータや利活用できる環境がなかったり、不備が多かったりするのでは取り組みようがないと説明している。

 一方、阻害要因としては「関連スキルや人員の不足」と並び、「組織全体のデータリテラシーの不足」が挙がった(ともに58%)。

 今回の調査では、「分析スキル」は、成功要因としても、阻害要因としても上位に挙がった一方、「データリテラシー」は、阻害要因の上位に挙がったものの、成功要因として挙げた回答は多くはなかった。

5.5Gの課題とは? そして6Gに向けた展望は? ドコモが技術面での取り組みを解説(6.11 ITmedia)
ワイヤレスジャパン 2021にて、NTTドコモの谷直樹氏が「社会・産業のデジタル変革を加速する5Gの進化」と題して講演を行った。5G通信を安定させるためには、有線区間での低遅延や仮想化、無線アクセスネットワークのオープン化が重要になる。6Gに向けては、カバレッジの拡張、さまざまな産業向けの低遅延、高信頼通信は短期的な課題と認識している。

 ドコモは、新しいサステナブルな社会の具現化を目指し、ユーザーのあらゆる行動データを活用し、全てユーザー接点において価値を提供することを目指しているという。

 そのために取り組んでいるのが「サイバー・フィジカル融合」だ。リアルな空間でさまざまなデータを集め、サイバー空間で活用して未来予測、最適解を見いだし、リアルな空間(フィジカル空間)にフィードバックして社会課題を解決する。

 これを支えるコア技術として、リアルとフィジカルをつなぐ通信ネットワーク、ユーザー接点になるIoTデバイスや仮想空間につながるXRなどの仕組みが重要になる。サイバー空間においては、データ活用のテクノロジーも必要だ。谷氏はこれらに役立つ5G技術について説明した。

 ドコモの5G契約は2021年5月時点で400万を超え、3月末時点で574都市にて5Gサービスを提供している。また、5Gを活用してソリューションを作り出す「5Gオープンパートナープログラム」には5月時点で約4000社が参加しており、実証実験やサービス展開を進めている。

 ドコモの5Gエリア構築には、5G用に新たに割り当てられた3.7GHz、4.5GHz、28GHzの周波数を活用。3年後の2024年3月末には人口カバー率80%を目指している。

 1つ目は低遅延化のためのMEC(Multi-Access Edge Computing)。5Gは低遅延といわれるが、これは無線区間の話。実際にユーザーがサービスを利用するときには、インターネットの先にあるサーバにあるコンテンツを見るといった形になるので、有線区間における遅延が相対的に大きくなる。体感でも低遅延なサービスを提供するためには、ネットワークの中に対応する仕組み、MECを置く必要がある。

 それが「ドコモイノベーションクラウド」だ。ドコモのネットワークの中に置かれたクラウド設備で、セキュアで低遅延なサービスを提供している。現在は、東京、神奈川、大阪、大分の4カ所にMECを設置している。

 5Gのユースケースで多いのは映像伝送で、画像認識の仕組みの提供に必要な性能を実現するためNVIDIAとも協力している。法人顧客と250件以上の商用サービスの案件があるが、映像伝送とXRの案件が約6割を占めるという。「5Gの高速・大容量を生かしたビジネスが立ち上がりつつある」と谷氏は手応えを語る。

事例の1つとして「AceReal for docomo」を紹介。ARグラスをかけた現場の作業員は、ARグラス上に映った映像を見ながら作業をする。そのグラスから得られる映像を見ながら、センターでは熟練者が作業指示を出す。

 2つ目はソフトウェア化(仮想化)。汎用(はんよう)ハードウェアを活用し、その上にソフトウェアを置く仕組みだ。ドコモでは、コアネットワークについては、2016年3月からマルチベンダー環境での仮想化を始めており、「災害や故障に強く、コスト的にも効果が出ていることが実証されている」と谷氏。コアネットワークについては、2024年までに100%仮想化すべく進めている。

 3つ目はオープン化(O-RAN)。無線アクセスネットワークで親局と子局の間のインタフェースをオープン化して、さまざまなベンダーの装置をつなげられる形にしている。5Gは産業基盤になるので、いろいろなユースケースに対応する必要がある。「特に子局が多種多様になっていくので、それに対応するためには、さまざまなベンダーさんの装置を自由につなげられる環境が必要」(谷氏)とのことで、O-RANが進められている。

 4つ目の取り組みはフレキシブルネットワーク化(5GC)で、いわゆるスタンドアロンだ。今の5Gはコアネットワークに4Gのネットワークを使っているが、ドコモでは2021年の第3四半期に5Gのコアネットワークを導入し、スタンドアロンのサービス提供を開始するという。

 Beyond 5Gや6Gに関する課題も見えてきている。5Gにおける課題と重複しているところもあるが、カバレッジの拡張、さまざまな産業向けの低遅延、高信頼通信は短期的な課題と認識している。また、長期的な課題として、より高い周波数を使った非常に大容量な通信といったテーマもある。

 産業界からは工場内のカバレッジについてさまざまな要請があり、実証実験を行っている。「工場の中はいろんな構造物があり、遮蔽の影響を見ている。実際に工場で5Gを利用してもらうようにするには解決すべき課題がある」と谷氏は言う。工場の機材の情報を同期して連携する「TSN(Time-Sensitive Networking) over 5G」にも取り組んでいる。

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