週間情報通信ニュースインデックスno.1279 2021/06/05


1.OPPO、5G SA方式のeSIM機能を世界初搭載 仏タレスと提携(6.4 日経XTECH)
中国スマートフォン(スマホ)大手のOPPO(オッポ)はこのほど、eSIM接続管理の世界的リーダーであるフランスの電子機器大手タレス・グループと提携し、新たに市場へ投入するフラッグシップ級の第5世代移動通信システム(5G)対応スマホ「OPPO Find X3 Pro」に、単独運用が可能な5Gスタンドアローン(SA)方式のeSIM機能を世界で初搭載すると発表した。

 eSIMはあらかじめ端末に埋め込まれた本体一体型SIMだ。スマホやスマートウォッチなどウェアラブルデバイスのほか、今後はIoV(車のインターネット)や産業用インターネットなどへの幅広い利用が見込まれている。

 OPPOによると、本体一体型のeSIMに5GのSA方式を率先して採用するのは、5Gの未来に向けたタレスとの先端技術の模索だ。

2.ITベンダーへの期待高まる、産業分野の5G市場動向をIDCが調査(6.4 日経XTECH)
IT専門調査会社のIDC Japanは2021年6月4日、産業分野向け5G(第5世代移動通信システム)市場の動向を発表した。ローカル5Gを活用する意向を持つ企業が支援を受けたいベンダーを調べたところ、全般的にIT系ベンダーが支持を集めた。ユーザー企業は5Gの技術単体ではなく、アプリケーションと5G通信インフラを組み合わせたソリューションの提供を求めているとも分かった。

 新型コロナ禍でAR(拡張現実)/VR(仮想現実)に注目が高まり、規制緩和なども相まって、2020年ごろから5Gの実証実験が多数取り組まれるようになった。5Gコアネットワークを使うスタンドアロン方式の5Gが主流となる見込みで、2022年ごろから商用導入が始まるという認識が共通化した。スタンドアロン方式では高速大容量、低遅延、多数同時接続といった5Gの特徴を生かせるため、提供できるサービスの幅も広がる。

 5G提供ベンダーはこれまで「まず5Gありき」で活用方法を検討していたが、2020年以降は「どういう課題を解決したいかが先行し、解決手段の1つとして5Gの活用を提案する流れに変化している」(IDC Japanの小野陽子コミュニケーションズリサーチマネージャー)。課題はユースケースが少ないことであり、多くのベンダーが共創プログラムを立ち上げて、ソリューションの開発やビジネスマッチングに取り組んでいる。

 IDC Japanは5G提供ベンダーに対し、ユーザー企業の「5G以外の」ニーズに合致したソリューションの提供が必要だと提言した。5G単体では各ベンダーはサービスを明確に差別化しにくいからだ。「5Gと親和性が高い、自社の得意分野のソリューションを増やすことが5Gビジネスで勝つポイントになる」(小野リサーチマネージャー)とした。

3.もはや勝負あり? KDDIや米ベライゾンがAWS活用にかじを切る理由(6.4 日経XTECH)
KDDIや米Verizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)、スペインTelefonica(テレフォニカ)、そして米国の楽天モバイルとも言うべき第4の携帯電話事業者であるDish Network(ディッシュ・ネットワーク)――。ここに来て、世界の通信事業者が続々と米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のクラウドサービスを活用したキャリアネットワークの構築やエッジサービスの提供に動きだしている。

 ディッシュは2021年4月21日、21年後半から米国の一部で開始予定の5G(第5世代移動通信システム)ネットワークについて、AWSのさまざまなサービスを用いて構築することを明らかにした。AWSの各種サービスをオンプレミス環境で実行できる「AWS Outposts」などの機能を用いて、Open RANや仮想化をフル採用したネットワークを構築するという。ディッシュは、世界的に注目を集めている楽天モバイルの仮想化ネットワークの形態をさらに一歩推し進め、AWSの機能をフル活用する。

 日本でも通信事業者によるAWSの活用が進む。KDDIは20年12月、同社の5Gネットワーク内にAWSのサーバーを設置し、アプリケーション開発者などがAWSのさまざまな機能を低遅延で利用できる「AWS Wavelength」サービスを開始した。キャリアネットワーク内に設置したAWSサーバーをMEC(Multi-Access Edge Computing)として扱い、通常のAWSと同様の操作感で低遅延な環境を利用できる点が特徴だ。

 これまで、AWSを活用してキャリアネットワークを提供するには、通信品質の面で「キャリアグレード」を担保できないとする見方があった。さらに通信事業者にとって新たな収益確保の機会となるエッジをAWSの機能に頼ることは、「クラウド大手の軍門に下るに等しい」(業界関係者)と見る向きも多かった。

 だがここに来て、通信事業者が続々とAWS活用にかじを切る理由として、AWSがここ数年積極投資してきた低遅延機能が、いよいよキャリアが求める通信品質に追いついてきたという事情がある。「工場内のIoTのユースケースなど、遅延にシビアな利用形態が増えてきた。クラウドのデータセンターで折り返すのではなく、もっと手前で処理したいというニーズに応えるため、ここ数年でAWS WavelengthとAWS Outposts、AWS Local ZoneというAWSサービスを立て続けに拡充した」とアマゾンウェブサービスジャパン ソリューション アーキテクトの松尾 康博氏は語る。

 AWS Wavelengthは前述の通り、キャリアの5Gネットワーク内の場所を提供してもらい、AWS自身がAWSサーバーを設置する形態だ。AWS Outpostsは、幅広い企業を対象に、オンプレミスにAWSサーバーを設置する。AWS Local Zoneは、AWSが提供するデータセンター群を表す「AZ(Availability Zone)」をより顧客に近いエリアに張り出す形態だ。「これら3つは兄弟のようなもの。目的は低遅延の実現で一緒だが、運用方針が少し違う」と松尾氏は続ける。

 例えばAWS Outpostsを使って、キャリアネットワークを構築するケースを考えてみよう。AWS OutpostsはAWSのサーバー機能そのものを通信事業者のネットワーク内に設置できるため、キャリアグレードの遅延条件を十分に満たせる。AWSの操作感で、キャリアネットワークを構成するソフトウエア機能を実装できる。実際、ディッシュやテレフォニカジャーマニーは、5Gのコアネットワークの機能をAWS Outposts上で構成しようとしている。

 AWSの機能を用いてエッジサービスを提供できるAWS Wavelengthについても、米国ではベライゾンがいち早く提供を開始している。「米国では複数の映像をPicture in Pictureにして配信する際のレンダリングを、AWS Wavelengthを活用するような取り組みも登場している。MECの活用したサービスは、実際モノになるかどうか分からない分野も多い。MECサーバーを自前で設置すると失敗した際に損失が大きいが、AWS Wavelengthのような仕組みを用いるとリスクを抑えられる」と松尾氏は語る。

4.異業種もローカル5Gを導入しやすく、5G-SDCが導入ガイド(6.1 日経XTECH)
5G(第5世代移動通信システム)を活用した産業DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を目指す業界団体「5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム(5G-SDC)」は2021年6月1日、ローカル5Gの導入を検討している企業や自治体を対象に、導入情報をまとめた「ローカル5G入門ガイドブック」を公表した。5G-SDCのWebページから無料でダウンロードできる。ガイドブック公開によって、幅広いユーザー企業や自治体のローカル5Gへの理解を深め、導入に向けた機運を高めたい考えだ。

 今回公表したガイドブックは、情報通信分野との接点が少なかった企業や自治体でも、ローカル5Gの導入を具体的にイメージしやすい内容になっている。特に製造業が工場にローカル5Gを導入し生産性向上につなげる事例を手厚く紹介。導入検討からサービス開始までトータルで約6.5カ月のスケジュールが必要といった具体的なノウハウなども記載している。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の調査によると、ローカル5Gの世界の市場規模は30年に10.8兆円まで拡大すると見込む。5G-SDCでは今後もガイドブックを定期的に更新し、次は建設現場におけるローカル5G導入のノウハウを追加する予定という。

 5G-SDCはJEITAが事務局となり20年9月に設立された。会員の大部分を大手ゼネコンや損保、小売りなど一般企業で構成している点が特徴だ。ユーザー企業の視点で、5Gを活用した産業DXを推進することを目指しており、21年6月時点で127社/団体が加盟する。

5.「ワイヤレスジャパン 2021」開幕 ローカル5Gの最新動向が分かる展示をチェック(6.2 ITmedia)
通信の最新動向が分かる展示会「ワイヤレスジャパン 2021」が東京ビッグサイト・青海展示棟で6月2日から4日まで開催されている。会場ではローカル5Gを手掛ける事業者も出展しており、ローカル5Gのソリューションや技術動向を把握できる。

 京セラグループのKCCSモバイルエンジニアリングは、ローカル5Gで利用できる京セラ製「5Gコネクティングデバイス」や、各種ネットワーク機器を展示している。

 中でも目を引いたのが、イタリアJMA製の屋内用ミリ波無線機「IOTA」。ミリ波は直進性が強いため、屋内の遮蔽(しゃへい)物に当たると電波が減衰しやすいが、IOTAではデジタルビームフォーミングと円偏波を利用して障害物の周りに反射させ、複数のビームを同時に使用することで屋内でも広範囲をカバーできるという。

 KCCSは2020年からJMAと協業しており、IOTAはキャリアやローカル5G事業者への納入を視野に入れている。同社によると、JMAの製品は他社に比べて低コストで運用できるという。ローカル5Gは工場を始め屋内での導入が多く想定されているため、IOTAのような製品は多くの企業から引き合いがありそうだ。

 沖電気工業は、無線局の免許申請や通信環境の検証などのローカル5G支援サービスを提供しているが、ソリューションも提供すべく、自社の本庄工場で実証実験を行っている。1つが製造現場の完成品検査。高精細カメラで撮影した映像をローカル5G経由でAIエッジに送信し、画像処理をすることで製品に問題がないかを判定する。これによってミスの見逃しを防ぎ、作業時間を約15%短縮できたという。

 レンジャーシステムズは、ローカル5GとプライベートLTE(sXGP)のソリューションを展示。同社はLTEと5G(NSAとSA)をサポートする「WG2モバイルコア」というコアネットワークを手掛けている。SaaS型で提供しているため、企業は専用のハードウェアを購入せずに、セキュリティがより強固なプライベートネットワークを構築できる。現在提供しているのはLTE用のコアネットワークだが、2021年内に5Gのコアネットワークも実装するとのこと。

 ファーウェイ・ジャパンは、ローカル5GのNSA(ノンスタンドアロン)/SA(スタンドアロン)に対応したCPE(ルーター)を展示。それぞれミリ波に対応したものと、Sub-6に対応したものがあり、ミリ波対応製品の方が小型だ。ミリ波の基地局やベースバンドユニットも紹介。いずれも国内のローカル5Gでも運用されているという。

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