週間情報通信ニュースインデックスno.1274 2021/05/01


1.RPAとERPの組み合わせが生産性を上げる、有識者が語る業務DXの心得(4.30 日経XTECH)
業務の「超自動化」や効率化を実現するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増えている。その有力なITツールの1つが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)である。日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが2021年3月17日に開催した「ITイノベーターズ会議」では、大手RPAベンダー2社のキーパーソンが講演した。そこでの注目発言を見てみよう。

 「RPAツールを活用した、基幹系システム周辺部分の自動化が、より重要性を増す」。RPA業界で大手の一角を占める米UiPath日本法人の鈴木正敏取締役は、こう明言する。基幹系システムを改修しようとすると、時間とコストがかさむケースは少なくない。利用部門の自動化ニーズは高いものの、基幹系システムの機能追加・変更が難しい領域に対し、RPAツールを積極的に導入し、自動化を迅速に進めようということだ。

 先進事例の1つとして、鈴木取締役は三井情報を挙げる。同社は独SAPのクラウド型ERP(統合基幹業務システム)で基幹系システムを刷新するのに合わせ、UiPathのRPAツールで周辺業務を自動化。ERPとRPAの役割を明確に定義したことにより、短期間でプロジェクトを完遂したという。業務の超自動化を進めるには、ERPとRPAの両方を上手に使いこなすことが重要といえそうだ。

2.オープンAPI(Open Application Programming Interface)(4.28 日経XTECH)
業務システムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開して、外部のシステムと連携できるようにすること。一般的には、銀行が自社のシステムのデータや機能をAPIとして、Fintech企業など外部事業者に公開する取り組みを指す。

 日本でオープンAPIの普及のきっかけとなったのは、2017年5月の銀行法改正だ。法改正では、電子送金と口座管理を担う「電子決済等代行業(電代業)」を定義し、Fintech企業の法的位置付けを明確にすると共に、銀行に対して2020年5月末までにオープンAPIへ対応するよう努力義務を課した。これを境にオープンAPIに取り組む銀行が増え始めた。

 オープンAPIの普及により、Fintech企業は自社のサービスを銀行口座と連携するのが容易になり、利用者の利便性を向上させることができる。例えばマネーフォワードの家計簿アプリ「マネーフォワード ME」は、銀行の入出金明細をAPIを介して自動で取得し、食費や光熱費などのカテゴリーに自動分類する機能を持つ。クレジットカードのシステムともオープンAPIの仕組みを使って連携し、カード決済履歴も取得できる。

 以前、Fintechのサービスと銀行口座の連携には、スクレイピングという手法が用いられていた。この場合は、利用者のインターネットバンキングのIDやパスワードをFintech企業が預かり、その情報を使ってFintechサービスが銀行システムへログインしデータを取得する。利用者が銀行口座のIDとパスワードを第三者に預ける形となるため、セキュリティー上の懸念が指摘されていた。オープンAPIで連携する場合、IDとパスワードを預ける必要はない。

 公開するAPIは参照系と更新系に大別できる。参照系は取引履歴や残高の確認など口座情報を参照するためのAPI、更新系は口座振替など資金移動が発生する取引を扱うAPIを指す。更新系APIは参照系APIに比べてセキュリティーリスクが高いとみる銀行も多く、公開に向けてのシステム整備などに時間が掛かっているのが現状だ。

 オープンAPIの仕組みを使ったBaaS(Banking as a Service)に取り組む銀行も増えつつある。小売業など非金融事業者が顧客に対して、自前のサービスとして送金や融資、決済といった金融サービスを提供できるようにするものだ。

 例えば新生銀行は2020年3月から「BANKIT(バンキット)」というBaaSを提供している。2021年夏には、ファミリーマートがこのサービスを使い、スマートフォンアプリ「ファミペイ」で後払い、ローンといった金融サービスを提供する予定だ。GMOあおぞらネット銀行は「プラットフォーム銀行」というBaaSを運営し、参照系と更新系合わせて20種類以上のAPIを無償提供する。

 BaaSの登場によって、オープンAPIはFintech企業だけでなく、様々な業種の企業が利用できる仕組みとして普及が加速しそうだ。

3.NTTドコモが「健康・医療」を強化、オンライン診療システムのメドレーと提携(4.27 日経XTECH)
NTTドコモはオンライン診療システムなどを手掛けるメドレーと2021年4月26日に資本・業務提携したと発表した。メドレーが第三者割当増資で発行する普通株式93万3100株(持ち株比率2.93%)を取得し、ヘルスケア・メディカル領域を強化する。

 NTTドコモはこれまで「dヘルスケア」などヘルスケア領域を中心にサービスを提供してきた。メドレーとの提携でオンライン診療サービスを取り込み、健康増進を支援するヘルスケア領域のサービスから、早期発見や適切な治療につながるメディカル領域のサービスまでを一気通貫で提供していく。

 オンライン診療の普及に向けて、両社でオンライン診療アプリの共同運営に乗り出す。「dポイント」の会員基盤などNTTドコモの資産の活用や、オンライン診療を起点とした新たなサービスの展開も計画する。こうした取り組みによって、日本における未病・予防社会の実現を目指すとした。

4.端末とSaaSを一括保護でリモートワークの課題解決、デルが新バックアップサービス(4.27 日経XTECH)
デル・テクノロジーズは2021年4月27日、データバックアップの新たなクラウドサービス「Dell EMC PowerProtect Backup Service」を同年5月18日から提供すると発表した。パソコンやモバイル機器などの端末、業務アプリケーションのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)、複数クラウドに分散して保存するデータが主な保護対象だ。クラウド型バックアップ製品を提供する米Druva(ドゥルーバ)の技術を活用し、SaaSとして提供する。

 同サービスの対象はMicrosoft 365やGoogle Workspace、SalesforceといったSaaS、デスクトップパソコン、ノートパソコン、モバイル端末を含むエンドポイント、そしてオンプレミスとVMware Cloudのハイブリッド環境の3種類だ。端末内のデータとSaaS上のデータをひとつのサービスで保護できる。リモートワークの普及で社外から業務端末を使うケースが増えている。同サービスをリモートワークに伴うデータ保護の課題解決に役立てられるという。

 クラウド上のデータを保護する「PowerProtect Data Manager」の機能も強化する。従来の保護対象だったAmazon Web Services、Microsoft Azure、VMware Cloudに、Google Cloud Platformを加える。

5.利用拡大で好調Chromebook、どのくらい仕事に使えるか(4.27 日経XTECH)
米Google(グーグル)の「Chrome OS」を搭載したパソコン、Chromebookが注目を集めている。ギガスクール構想で多くの学校で採用されており、大手量販店でも専門のコーナーを見かけるようになった。Amazon.co.jpのノートパソコン売れ行きランキングを見ても、数モデルが上位に入っているので間違いなく売れている。テレビコマーシャルを見かけた人も多いだろう。

 グーグルは、WindowsやMacからChromebookへの移行は簡単だとアピールしている。確かに、Windowsを使い慣れているユーザーであれば、それほど迷わずに使い始められるだろう。個人的に、Windowsユーザーが初めてMacを使うのとChromebookを使うのとを比べると、分かりやすいのは間違いなく後者だと思う。

 そもそも、Chromebookの登場時からのコンセプトは、Webブラウザー「Chrome」上で動作するアプリを使えるパソコン――というものである。そのため何となくで操作しても使えてしまうわけだ。

 例えばランチャーは、Windowsのスタートメニューを使ったことがあれば直感的に使えるだろう。画面右下にある丸マークをクリックすると、最近使ったアプリと、アプリや設定などを探せる検索ボックスが表示される。ここでさらに上矢印マークをクリックすると、すべてのアプリが表示されるといった具合だ。

 ファイルの保存に関する作法はAndroidスマホに近い。こちらもさほど迷わないはずだ。

 当然ながら、グーグルのGmail、Google Keep、Googleマップ、Googleカレンダーなどのサービスは快適に利用できる。こうしたアプリのWeb版を、既にWindowsで利用しているのであれば、ほぼ同じ操作感で使えると考えていい。

 GmailやGoogleカレンダーに入力したデータはクラウドに保存されるので、ファイルの同期やデータの再入力について考える必要がない。ChromebookにWindowsで利用しているのと同じアカウントでログインすれば、すぐさまサービスを使えるようになっている。

 少々ややこしいのがアプリだ。現在のChromebookは、2種類のアプリを利用できる。1つはChrome向けアプリで、「Chromeウェブストア」からインストールして利用する。これに関しては、基本的にWindowsのChromeでも同じものが利用可能だ。

 そしてもう1つはAndroidのアプリである。こちらは、Androidスマホを使っているユーザーにとってはなじみのある「Google Play」からインストールする。ただし、古いChromebookでは利用できない可能性がある。また、Androidのアプリがすべて利用できるわけではない。どのアプリが使えるかは公表されていないので、使えるかどうかは探してみるしかない。

 2種類のアプリに対応したことで、作業の幅が大きく広がった。Chromeウェブストアだけでは物足りないと感じてたユーザーも満足度が向上したはずだ。

 例えば、米Microsoft(マイクロソフト)のExcelやWordといったOfficeアプリは、Google Playからダウンロードしインストールすることができた。Google Playでは、Googleスプレッドシートなどのグーグルによるオフィス系アプリも入手できる。

 昨今使用機会が増えているであろうWeb会議のアプリも配布されている。実際に、米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)が提供するWeb会議サービス「Zoomミーティング」用のアプリを使ってみたことがあるが、問題なく音声とビデオ、画面共有を利用した会議ができた。

 では、いま説明した状況にあるChromebookはどのくらい仕事に使えるのか。僕の答えは「妥協すれば使えるレベルだ」となる。

 つまり一般的な仕事なら、作業の8〜9割はChromebookでこなせるだろう。これ1台で済ませるのは無理があるが、2台目、3台目のパソコンとしてなら十分役立つはずだ。特に、出先でちょっと使う程度のモバイル専用マシンとしてはお薦めできる。Windowsとのファイルのやりとりも、OneDriveやGoogleドライブを使えば簡単だ。

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